うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

うめ婆行状記

2016年03月21日 | 宇江佐真理
 2016年3月発行

 北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、堅苦しい武家の生活から離れ、気ままな独り暮らしを楽しもうとするが…。
 笑って泣いて…。家族や夫婦の絆を描いた、著者の遺作となった長編時代小説。

うめの決意
うめの旅立ち
うめの梅
うめ、悪態をつかれる
盂蘭盆のうめ
土用のうめ
祝言のうめ
弔いのうめ
うめ、倒れる
うめの再起 長編

 醤油問屋・伏見屋の長女として生まれ たうめは、「合点、承知」が口癖のきっぷのいい性格。
 縁あって武家に嫁いだが、その、北町奉行同心だった夫・霜降三太夫を、卒中で亡くした後は、堅苦しい武家の生活から抜け出してひとり暮らしを始める。
 気ままな暮らしを楽しもうとしていた矢先、甥っ子の鉄平に隠し子がいることが発覚する。
 それが、思わぬ大騒動となり、渦中に巻き込まれたうめ。ひと肌脱ごうと奔走するのだが…。

 これにて、宇江佐先生の著書が最後になりますので、大切に読みたいと思っております。



※お詫び
 申し訳ありません。未だ読んでおらず、何時になったら読めるかも分かりませんので、概要だけ記させていただきます。講読次第、更新させていただきます。





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擬宝珠(ぎぼし)のある橋~髪結い伊三次捕物余話~

2016年03月20日 | 宇江佐真理
 2016年3月発行

 髪結いと同心の小者の、二足の草鞋を履く伊三次の人情捕物劇と、その家族との繋がりを描いたシリーズ第15弾にて最終巻。3作の短編に、シリーズ第8弾「我、言挙げす」から、第9弾「今日を刻む時計」までの10年間を描いた長編「月は誰のもの」(2014年10月発行/文庫)を収録。

月夜の蟹
擬宝珠(ぎぼし)のある橋
青もみじ 計3編の短編連作
月は誰のもの 長編

月夜の蟹
 蕎麦屋・笠屋で喰い逃げがあり、不破龍之進の小者となり十手を預かった薬師寺次郎衛が捕獲した。捕まったのは鳶の菊次郎。だが、その菊次郎は、上総国の水野壱岐守藩士で、家老見習いの永井捨之丞の名を挙げ、代金を支払ってもらえると言うのだった。
 どうも、長井が菊次郎を面白がって連れ歩いているらしく、菊次郎はそれを勘違いして放蕩を尽くしているらしい。だが、長井が飽きた時…龍之進と次郎衛の不安が的中する。
 一方龍之進の妻のきいは、呉服屋に嫁いだ幼馴染みに招かれたのだが、大層不機嫌であった。

擬宝珠のある橋
 伊三次は、得意客の日本橋佐内町の箸問屋・翁屋で、普請作業をする大工の親子を見た。翁屋七兵衛の話では、その大工の親方・徳次と女房は、共に子連れの再婚同士。息子たちが家庭を持っても、三軒長屋で仲良く暮らしていると聞き、羨ましく感じていた。
 そして、その女房が旧知のおてつだと解る。だが、おてつは元の嫁ぎ先の舅が、ひとり残され、惨めに切らしていることに心を痛めているのだった。
 一方、義兄の梅床の客・庄七が、おてつの舅と知ると、庄七の生き甲斐の為にひと肌、助言をする。

青もみじ
 きいは、大伝馬町の伯父の元を訪った帰り、変わり果てた姿の太物問屋・秩父屋の娘・おくにを見掛けた。確か、嫁いだ筈であったが、出戻っていたのか…。それよりも常人とは思えないその様子に不信を抱き、幼馴染みのおせんに尋ねると、嫁ぎ先で不当な扱いを受けて、気の病いに陥っていると言う。
 心配になりおせんを伴い秩父屋を訪ねると、実の娘ながらも不当な扱いを受けるおくにの姿があり、きいは憤りを否めない。程なくして、おくにが体調を崩し、明日をも知れないと聞く。

 宇江佐先生の急逝により、連載は完結をみずに終了となりました。先生の中には多くの着想もおあいだったと思われます。
 伊与太と茜の恋の行方しかり。新たに岡っ引きとなり、レギュラー入りした薬師寺次郎衛の活躍…。
 登場人物の、これからが気になりますが、同時に伊三次やお文がこれ以上老いることなく、江戸を生きていくのだなあと思うことにしました。
 この後のストーリは、我々読者のひとり一人が、自在に思いを巡らせ、記憶の中に生き続けることでしょう。                                           合掌 

主要登場人物
 伊三次...廻り髪結い、不破友之進の小者
 お文(文吉)...伊三次の妻、日本橋前田の芸妓
 お吉...伊三次の娘
 不破友之進...北町奉行所臨時廻り同心
 不破いなみ...友之進の妻
 不破龍之進...友之進の嫡男、北町奉行所定廻り同心
 不破きい...龍之進の妻
 不破栄一郎...龍之進の嫡男
 笹岡小平太...北町奉行所同心、元北町奉行所物書同心清十郎の養子、きいの実弟
 おふさ...伊三次家の女中、松助の妻
 三保蔵...不破家の下男
 薬師寺次郎衛...松島町・駄菓子屋よいこやの主、元小十人格(旗本格)薬師寺図書次男、本所無頼派
 正吉...次郎衛の下っ引き
 おのぶ(小勘) 次郎衛の女房、浜町河岸・梅木の芸妓

月は誰のもの(2014年10月発行/文庫) 
 火事で全てを失った伊三次一家のそれから。空白だった10年の間に、何が合ったのか?
 伊三次は姉の嫁ぎ先の梅床に、お文は、伊与太と共に、芸妓屋・前田に身を置き、暫し離れての暮らしを余儀なくされていた。
 そんな中、お文は偶然にも実の父親に出会い、不破龍之進は、若かりし頃の宿敵・本所無頼派の薬師寺次郎衛とひょんな事から巡り会い、親交を深める。
 そして伊三次にも、淡い恋心が芽生え…。
 一方で、味噌・醤油問屋・野田屋の主殺しの下手人とされる稲助の冤罪を晴らすため、不破友之進、伊三次、緑川平八郎が走る! 
 現行のシリーズは時代が進み、出番の少なくなった不破友之進、伊三次のコンビが活躍する、ファン待望の一冊である。

 ああ、あの10年をこういった形で繋いでいったのかと、今更ながらに宇江佐氏の文才に感動。

主要登場人物
 伊三次...廻り髪結い、不破友之進の小者
 お文(文吉改め桃太郎)...伊三次の妻、日本橋前田の芸妓
 伊与太...伊三次の息子
 不破友之進...北町奉行所定廻り同心
 不破いなみ...友之進の妻
 不破きい...龍之進の妻
 不破龍之進...友之進の嫡男、北町奉行所番方若同心、八丁堀純情派
 松助...不破家中間
 緑川平八郎...北町奉行所隠密廻り同心
 緑川鉈五郎...平八郎の嫡男、北町奉行所番方若同心、(元八丁堀純情派)
 橋口譲之進...北町奉行所番方若同心、(元八丁堀純情派)

 春日多聞...北町奉行所番方若同心、(元八丁堀純情派)
 西尾左内...北北町奉行所番方若同心、(元八丁堀純情派)
 古川喜六...北北町奉行所番方若同心(柳橋料理茶屋川桝からの養子。前本所無頼派/元八丁堀純情派)
 片岡監物...北町奉行所吟味方与力見習い
 薬師寺次郎衛...駄菓子・よいこやの主、元小十人格(旗本格)薬師寺図書次男、(元本所無頼派)
 小勘(おのぶ)...日本橋前田の芸妓、次郎衛の女房
 増蔵...岡っ引き(門前仲町)




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