うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

いつまで

2023年08月18日 | 畠中恵
2023年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第22弾。

いつまで 長編

1
 からくりで、薬を調合し、薬種問屋・長崎屋の手伝いとなれば。一太郎は、知恵を捻る。そんな折に、町医者として働く火幻の住まいに、西国からの妖が押し掛けて、大変迷惑していると言う。一方、噺家の場久が、住まいにも、一太郎の住む離れにも、寄席にも姿を見せない日が続き、一太郎は、夢の中に場久を探しに出かけようとするが…。

2
 以津真天の策略により、悪夢の中に入り込んでしまった一太郎。幸い抜け出し、そこは江戸ではあったが、5年後だった。その江戸で長崎屋は、薬種屋・大久呂屋の台頭や嫌がらせにより、経営難に。このまま、5年後の世界で生きるか、危険を承知で5年前に戻るかの決断を余儀無くされる一太郎だった。
 
3
 5年後の世界へと戻り、上野広徳寺に身を置いた一太郎を、関東河童の大親分・禰々子が見舞う。そして、長崎屋の窮地を救うべく、大久呂屋に盗まれた「薬升」を取り戻そうと動く。一方、長崎屋の妖たちは、広徳寺の高僧・寛朝に力を借り、大久呂屋にに乗り込み「薬升」を手に入れようと画策する。
 そして、一太郎は、ある決断をする。

4
 大久呂屋に盗まれた「薬升」を処分し、一件落着。そんな安堵も直ぐに保全へと変わる。大久呂屋が、一太郎を探し求めていると知り、まずは身を隠すことに。すると、闇中から現れた仏像を巡り、5年後へと飛ばされた意味を知ることとなった一太郎。
 大久呂屋の裏には、以津真天が。幾つもの点が、線へと繋がる。
 
 主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 屏風のぞき…付喪神、長崎屋奉公人・風野
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神、長崎屋奉公人・金次
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 火幻…妖の僧・医師。別名・火前坊
 以津真天…怪鳥。西国の妖
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 禰々子...関東河童の大親分
 杉戸...関東河童
 松戸...関東河童
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 大久呂屋…薬種屋


おやごころ

2023年07月07日 | 畠中恵
2023年5月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第9弾。

たのまれごと
こころのこり
よめごりょう
麻之助走る
終わったこと
おやごころ 計6編の短編連作

たのまれごと
 さる旗本から、嫡男の素行の悪さを調べて欲しいと、相馬家に依頼があった。吉五郎から相談を受けた麻之助は、早速調べに入るが、そこには、二男の結婚話しが絡んでいるのだった。

こころのこり
 三つの江戸店の大番頭から、失せ物探しの依頼が舞い込んだ。どれもが身体極まる重要な品である。似たような話に麻之助は不思議な思いだが、妻・和歌の実家の西森家や朋友・八木清十郎のところにも同じような話しが舞い込んでいると言う。
 麻之助は和歌の助力もあり、難題解決に挑むのだった。

よめごりょう
 麻之助の義理の父・西森金吾の従兄弟の子を名乗る西森太助が、和歌は己の許嫁だったと、高橋家にやって来た。目的の意味も分からぬ麻之助は、一括するが、その訳を調べようとしていた時、新米定廻り同心の大森三郎四郎から、両国の小間物屋・笹間屋の盗人騒ぎの助っ人を頼まれる。お門違いな頼みに断ったものの、それを聞いていた町娘たちから、盗人騒ぎを引き受ける代わりに、三行半を貰い受けて欲しいとの交換条件が持ち込まれ、本来の目的を忘れ、奔走するのだったが…。そしてその中に、太助と揉めていたお琴が居たのだった。

麻之助走る
 麻之助が町で華やかな布を目にした頃、麻之助の友、清十郎が、支配町の相談事が減っていることを明かした。聞けば、ほかの町名主も減っているらしい。時を同じくして、神田の高利貸し・丸三が、最近新規の客が増えていることを明かす。
 麻之助が、相談事の減っている町名主の支配町と、丸三に金銭を借りた、新規の客の住まいを地図に書き込んでみたところ、意外なことが分かる。

終わったこと 
 川野美衣から、藍のかす模様の着物の笠を被った男に付け狙われている。そんな相談を受けた。だが、美衣は、与力の娘である。なぜ、町名主に相談が持ち込まれるのか? 麻之助には不可解であったが、親友の相馬吉五郎と、一葉を通してのこの案件は、怪しまれる、元許嫁の与力・鳥井虎五朗の裏付け捜査だけとのことだったので引き受けたものの、麻之助までもが、危うい目に。
 そして大名家や奉行所を巻き込んだ事件との相互性など、大事になっていくのだった。

おやごころ
 息子・宗吾をもうけた麻之助と和歌夫妻。町名主・高橋家にとっても跡取りの誕生とあり、誰しもが喜び満ちていた。
 そんな最中、長男長女を縁付かせた、一膳飯屋の富田屋から末娘は嫁がせず、生涯家で長男夫妻の手伝いをさせるとの話があり、親子であっても子に対しての思入れが違うものだと、麻之助は言葉を失った。
 その末娘・お幸の嫁入り先を探したり、ほかの縁もまとめたとの評判になった麻之助。全く身に覚えのないことなのだが、今度は、元大奥お年寄りの美代から、縁者の縫箔屋・羽奈屋の妹贔屓から、妹が望む、姉の縁談相手を妹に。そして次の姉の相手にまで。気の毒仕切りとの相談を持ちかけられる。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所与力
 高橋和歌...麻之助の妻、町名主・西森金吾の娘
 高橋宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
 西森金吾….町名主
 高橋和歌….麻之助の妻、金吾の娘
 八木安…清十郎の妻
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 大森三郎四郎...北町奉行所定廻り同心
 久助...岡っ引き
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 川野美衣...北町奉行所与力・川野主水の娘、一葉の友人
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫

忍びの副業

2023年04月18日 | 畠中恵
2023年3月発行

 太平の世の中で、活動、活躍の場を失っていた甲賀忍びに、次期将軍・家基の警護役として白羽の矢が立った。

忍びの副業 上巻
 第一章 忍びの副業
 第二章 天女の笑み
 第三章 闇の中にあり
 第四章 斑猫の毒
 第五章 甲賀と伊賀

 将軍・家治の唯一の実子・家基の警護役となった弥九郎ら3人は、一族復活の期待を担い、忍びの技を駆使して、職務に励む。


忍びの副業 下巻
 第六章 家を継ぐ者
 第七章 死の一報
 第八章 くノ一の花嫁
 第九章 毒の噂
 第十章 鷹狩り

 家基に、裏切者が出没しているという噂が流れ、「若君殺しの毒」とされる斑猫の毒が売買されているらしい。折しも家基の鷹狩りに先駆け、剣呑な事件が重なって…。

 キャラ説明が丁寧な、畠中氏らしくないと感じた。状況が浮かびにくいのと、内容も推理が先立ち、わざわざ忍び物にする意図が(当方未熟なため)読み取れなかった。

主要登場人物
 滝川弥九郎…甲賀忍者の末裔。四本の打鉤を自在に使う
 望月十郎…甲賀忍者の末裔。首飾曲玉秘伝占術が得意
 土山蔵人…甲賀忍者の末裔。火薬を使った秘の技使い
 土山吉乃…甲賀忍者の末裔。蔵人の姉。忍び鎌使い

 徳川家基…十代将軍・家治の世継ぎ。西之丸様
 田沼意次…江戸幕府老中
 羽奈森恵吾…西之丸・小姓組
 兵藤…書院番

こいごころ

2022年09月13日 | 畠中恵
2022年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第21弾。

おくりもの
こいごころ
せいぞろい
遠方より来たる
妖百物語 計5編の短編連作

おくりもの
 長崎屋の主人・藤兵衛は、取引先の料理屋・三野屋の息子・庄一郎が、瀬戸物問屋・伊和野に麻疹をうつしてしまい、そのお詫びと見舞いの品を送りたいが、良き案がないかと、相談を受けた。
 しかし、これには藤兵衛も困り果て、跡取り息子の一太郎へとお鉢が回ってきたのだ。
 妖たちも奔走しての「おくりもの」とは…。

こいごころ
 一太郎の夢の中に、狐の妖の中でも霊力に優れた、狐仙の地位にある老々丸と、その弟子であるが、能力が満たず、このままでは生命も覚束ない、小狐の笹丸が現れた。
 老々丸が言うには、笹丸を生かすために、一太郎の祖母である大妖・皮衣に渡を付け、荼枳尼天の下に送って欲しいとのことだった。
 一太郎の異変に気付き、仁吉と佐助夢に割って入り込もうとした時、時を超超えて弾き飛ばされていた。
 
 切ないラストに鼻の奥がツンとした。この一編、シリーズ最高峰と言っても過言ではない。

せいぞろい
 おたえ発案の一太郎の誕生祝いを、長崎屋は奉公人も交えて催された。そこに招かれなかった妖たちは不満である。そこで、妖たちの為に一太郎は、ごく内輪の膳を整えることとした。
 だが、それを聞き付けた妖たちも、あちこちから現れ、果ては日限の親分までもが楽しみにしているようだ。到底、長崎屋では収容し切れず、野広徳寺を借りることに。これには僧侶も加わっての大宴会。
 そこに、先に大店から千両箱を盗んだものの、それを誰ぞに盗まれ返された盗人たちが、隠し場所を長崎屋へと思い込み…。

遠方より来たる
 一太郎掛かり付けの町医者・源信が隠居を決めた。源信に勝るとも劣らない医師探しに、長崎屋は思案する。町内の面々も興味津々。何故なら、長崎屋が決める医師こそ腕が良いだろうと、決定を待っているのだ。
 乗じて、多くの医師が名乗りを上げた。中でも鳥辺野からはるばる足を運んだ、流浪の僧でもある医師・火幻。腕は確からしいが、実は妖・火前坊だと名乗る。

妖百物語
 大店の米屋・大貫屋が座主を務める、百話話し終えると、本物の妖が出現すると言う、百物語に誘いを受けた一太郎。奉公人に扮する貧乏神の金次、風野こと屏風のぞき、そして妖医者の火幻まで誘われているから堪らない。
 本当に妖が現れ、それが見知った者であった場合、素知らぬ振りは、礼儀にうるさい妖には厳禁なのだ。すると、一太郎始め4人の秘密が暴露されてしまう。
 百話終える前に、妖が現れる前に、早々に退散の予定を立てていると、どこからか剣呑な話しが耳に入り…。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 屏風のぞき…付喪神、長崎屋奉公人・風野
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神、長崎屋奉公人・金次
 
 おしろ...猫又
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 禰々子...関東河童の大親分
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 寛春…秋英の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 戸塚宿の猫又の長...虎
 老々丸…化け狐=狐仙
 笹丸…化け狐
 田貫屋…化け狸
 火幻…妖の僧・医師。別名・火前坊
 六鬼坊…信濃の山の大天狗

またあおう しゃばけシリーズ外伝第2弾

2022年04月24日 | 畠中恵
2021年11月発行

長崎屋あれこれ
はじめての使い
またあおう
一つ足りない
かたみわけ 計5編の短編連作

 「しゃばけ」20周年! 記念は、 7年振りになる「しゃばけ外伝! 」。一太郎を取り巻く妖や人。それぞれが大活躍。

長崎屋あれこれ
 広徳寺の高僧・寛朝が、伽藍の屋根で同じく寛永寺の高僧・寿真と般若湯と称して呑み過ぎ、足を滑らせて落ちたと、師を嘆く秋英。たわいも無く、長崎屋のいち日は過ぎてゆく。

はじめての使い
 戸塚宿の猫又・とら次と、藤沢宿猫又・くま蔵が、一太郎に白狐に秘薬・きつね膏薬を届ける重責を担った。初めて己の宿を出るとら次と、くま蔵。やはり、街道筋には悪い輩がいるもので…。

またあおう
 ひょんなことから、連仲間・大亀屋の付喪神となっている草双紙の修理を請け負った長崎屋の妖たち。何とか、付喪神を助けようと必死になるも、その草双「紙桃太郎」の中に引き込まれ、どうやら鬼の役を担わされそうになる。

一つ足りない
 中国なら流れ着き、九州河童の長となった九千坊。安住の地と思えた九州も、九千坊の持つ秘薬を巡り、猿との戦いが始まりそうになる。そこで、手下総勢九千を従え、海を北上した九千坊。頼りの.関東河童の大親分・禰々子が、人と猿に捕まったと。
 異なる地での河童の秘薬を巡った諍いが始まる。

かたみわけ
 時は進み、長崎屋の主人となった一太郎。だが、周りを固める妖たちは、年も取らずば姿も変えず、あいも変わらず、一太郎を守っている。
 その一太郎が商いの為不在の折、上野広徳寺の高僧・寛朝の跡を継いだ、秋英から、寛朝のかたみわけの折に、付喪神や妖を封じ込めた遺物の封印が解かれ、それらが世に放たれてしまったので、是が非でも探す手伝いを。と、こわれたのだ。
 手分けしてことに当たった長崎屋の妖たち、三つまでは難なく解決したが、手強い残り三つ。そんな降り、小坊主の寛春が妖に捕まっているらしい。まずは、寛春奪還へと動き出す。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 禰々子...関東河童の大親分
 杉戸...禰々子の手下
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 寛春…秋英の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 戸塚宿の猫又の長...虎
 虎の曽孫…とら次
 藤沢宿の猫又の長...熊市
 熊市の曽孫…くま蔵
 九州河童の王…九千坊
 九千坊の手下…青茶
 月丸...幽霊

御坊日々

2022年01月27日 | 畠中恵
2021年11月発行


 時は、明治20年。僧冬伯の元へは困りごとの相談に日々客人が訪れる。僧侶兼相場師の型破りな僧侶と弟子の名コンビが、檀家たちの悩みを解決しながら、亡き師僧・宗伯の死の謎解きと、寺の再興を願う。

色硝子と幽霊
維新と息子
明治と薬
お宝と刀
道と明日 計5編の短編連作

 エンターテイメント小説の決定版。面白さと、そこに広がる情景に引き付けられ、一気に読み終えた。続編を期待する。

主要登場人物
 冬伯…浅草寺町・東春寺住職兼相場師
 玄泉…冬伯の弟子
 敦久…東春寺隣接の玉比女神社宮司、元冬伯の兄弟子
 一久・真次…敦久の弟子
 八仙花の女将…上野の料理屋
 辰馬…檀家、上野貧民窟の頭→役者
 夢屋昌太郎…檀家、小間物屋の主人、元小間物屋・井十屋の跡取り
 西方…檀家、警官→上野貧民窟の住人→本所の寮の番人
 大山…檀家、氏族・斬られ役役者
 



しゃばけごはん

2022年01月09日 | 畠中恵
2021年11月27日発行

 しゃばけシリーズ20周年を記念して、若だんなが食べた「あの味」を楽しめる「しゃばけ」初のレシピブック発行。

一、若だんなの食卓
 卵焼き/雷豆腐/あげと葱のうどん/胡椒飯/鰯の照り焼き/茶巾たまご/焼茄子/小豆粥 /湯豆腐

二、豪華! お花見弁当
 鯛の塩焼き/帆立貝の串焼き/たけのこの木の芽和え/蒟蒻の辛味煮転ばし/さやいんげんの胡麻和え 
 /海老の酒煮/三種の混ぜ飯/豆腐田楽

三、江戸の料理屋にて
 魚の白和えと蕪の風呂吹き/蜆の飯と蜆汁

四、妖たちとの宴会
 やなり稲荷/味噌漬け豆腐/葱鮪鍋

五、しゃばけグルメ
 奈良茶飯/炒り豆と醬油豆/夜鷹蕎麦と焼き味噌/味噌漬けの牛肉

六、お待ちかねのおやつ
 三春屋の茶饅頭/栄吉の辛あられ/いつものお団子

 若だんなも妖も大好きな卵焼き、仁吉や佐助が給仕してくれる小豆粥。豪華な花見弁当、宴会の葱鮪鍋、やなり稲荷。宿場町の奈良茶飯、天狗と食べた夜鷹蕎麦。三春屋の茶饅頭に、栄吉の辛あられ……「しゃばけ」シリーズに登場する江戸料理全33品を再現。手軽に家庭で楽しめるように、レシピ付き。

 以前、発売当時「やなり稲荷」は試してみたが、それ以来の「奈良茶飯」に挑戦。今後も江戸料理を拵えてみようと思う。

もういちど

2021年11月06日 | 畠中恵
2021年 月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第20弾。

もういちど
おににころも
ひめわこ
帰家
これからも 計5編の短編連作

もういちど
 夏にはまだ早い四月。いつにない猛暑で一太郎は寝付いていた。町々では、雨乞いの祈祷を行うほどで、あちこちで呼び出された龍神たちが、大川から神田川にうじゃうじゃいるのだった。
 その川を船で、根岸の寮まで療養に赴こうとしていた一太郎たちだったのだが、龍神の反乱で一太郎は船から放り投げられ、あわや川の中。
 無事引き上げられはしたが、その姿は、赤子へと変化していたのだった。

おににころも
 僅かの間に健康な5歳児へと、成長した一太郎。兄やたちからはキツく外出を禁じられていたが、たまたま野草探しをしていた勘助なる少年の手伝いをすることに。
 勘助は、貧しさからじきに奉公に出ると言う。ほかにも幼くして奉公に出る子どもが多いらしい。
 不審に思った一太郎。どうも先の川の反乱に原因があるようだ。

ひめわこ
 あっと言う間に12歳くらいにまで成長した一太郎。そんな訳で一箇所に住まい続けることが困難となり、両国・回向院近くに住まい移りをした。
 江戸の大繁華街・両国見物を楽しむ中、宮芝居の一座に傾倒し、その役者でもある浪人の五郎左衛門から剣術指南を受けることになった。
 だが、五郎左衛門が元の仕官先の旗本の三男により、厄介ごとに巻き込まれ、一太郎の身も剣呑なことに…。
 そして成長を続ける一太郎の健康な身体に、何やら異変が。

帰家
 十カ月振りに日本橋の長崎屋に戻った一太郎。待っていたのは、幼な馴染みの美春屋栄吉が修行を終え帰宅して居ることと、その栄吉の縁組がまとまったと言う、目出度い話だった。
 鯉吉の嫁になるのは紙屋・如月屋のお多真。だが、この縁組に何かしら不安を感じた一太郎。そんな折に一太郎の持ち物が何者かに持ちさられ…探すうちに如月屋の秘密や意外な盗人の存在が明らかになる。

これからも
 長崎屋へ戻った一太郎。ひょんなことから荷車の荷台の下敷きになってしまい、長く寝付くことになった。その原因ともなった編笠の青い着物の男正体を探るべく、妖たちが総動員。すると、3枚の青い着物が見付かる。それも、皆、思いも寄らぬところからだった。
 なんでも持ち去られた龍の石を取り戻そうと、その石の所在を探ってのことだったらしい。
 一太郎が赤子に戻った天変地異が、ほかでも異変を起こしていたのだった。

かたみわけ
 時は進み、長崎屋の主人となった一太郎。だが、周りを固める妖たちは、年も取らずば姿も変えず、あいも変わらず、一太郎を守っている。
 その一太郎が商いの為不在の折、上野広徳寺の高僧・寛朝の跡を継いだ、秋英から、寛朝のかたみわけの折に、付喪神や妖を封じ込めた遺物の封印が解かれ、それらが世に放たれてしまったので、是が非でも探す手伝いを。と、こわれたのだ。
 手分けしてことに当たった長崎屋の妖たち、三つまでは難なく解決したが、手強い残り三つ。そんな降り、小坊主の寛春が妖に捕まっているらしい。まずは、寛春奪還へと動き出す。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 禰々子...関東河童の大親分
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男、一太郎の幼馴染み
 お多真…紙屋・如月屋の娘
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家


いわいごと

2021年04月29日 | 畠中恵
2021年2月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第8弾。

こたえなし
吉五郎の縁談
八丁堀の引っ越し
名指し
えんむすび
いわいごと 計6編の短編連作

こたえなし
 富籤に当たった3人の若者。その金子で旅に出ようと約束をしていたらしいのだが、行く先が三者三様にもめ出し、その仲裁役を押し付けられた麻之助。旅先を決めればいいだけと安易に考えていたのだが、その実、3人共、それぞれに金子違った入りようがあり、もはや旅立とうとする気のある者は居なかった。
 麻之助は、縁組の話の出ている相手・花梅屋のお雪と共に、彼らの望みを叶え流べく、動くのだった。するとどうしたことか、三人三様の夢が…。

吉五郎の縁談
 吉五郎の縁談がまとまり掛け、義父の小十郎は、与力へと昇進があるのではと、噂される矢先、なんと、吉五郎の行李の中から、血まみれの鮪包丁が出てきた。この行李は、奉行所へと持参する物で、小者がずっと担いでいる。一体、いつ、どこで、誰が、どのように、中に仕込むことが出来たのか、麻之助と清十郎は、吉五郎の足取りを辿って見ると同時に、何やら吉五郎の縁談話と小十郎の昇進話に関わりがあるように思われてならないのだった。

八丁堀の引っ越し
 北町奉行所定町廻り同心の相馬小十郎が、異例の抜擢で、吟味方与力へと出世した。同心と与力では、扶持も拝領屋敷も雲泥の差である。吉五郎もさながら娘の一葉も多忙を極める中、麻之助と清十郎らは、引っ越しを買って出た。
 与力に相応しい家財一式などを持ち込むの.神田の高利貸し・丸三、札差・大倉屋であり。ひと段落着くや、この度の人事にて、前任者の退職のわけや、奉行所にはびこる商人との癒着、賄賂などへと憶測が進み…。

名指し
 亡くなった町名主・横尾家の支配町四町を誰が引き継ぐかで、集められた日本橋の北辺りに支配町を持つ町名主たち。父・宗右衛門の命で麻之助も道々したのだが、どうした訳か、横尾家に変わる町名主が晴雨式に決まるまでの間、麻之助が仮に受け持つ運びになった。
 しばらく町名主不在だった横尾家の支配町四町からは、矢継ぎ早に訴えがあり、お気楽・麻之助は大忙しとなる。

えんむすび
 麻之助の元に、一気に三つの縁組みが持ち込まれた。だが、十五、十六、十七と若く、いずれも町名主の娘である。後妻でなくても幾らでも良縁がありそうだ。案の定、ひとりは、大名家の側室に請われ、ひとりは、大名家への武家奉公を望み、ひとりは、既に決まった相手が居るらしい。
 清十郎、吉五郎、丸三の力を借りて、麻之助は真相に挑むのだった。
 そして、麻之助の縁組みは、思わぬ方向に転がり出す。

いわいごと
 和歌との婚礼が無事決まり、その打ち合わせの為に、高橋家で顔を合わせた宗右衛門と西森金吾。その大切な場に、料理屋花梅屋のお雪が、許嫁とその母を伴い、至急の話があると高橋家を訪ったのだ。
 和歌の勧めもあり、麻之助が話を聞くこととなったのだが、その内容は、お雪の持参金である沽券が失せたということだった。
 自身の祝言前に、ひと騒動となった麻之助。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 高橋宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 丸三...神田の高利貸し
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
 大倉屋....札差、お由有の実父
 大倉屋冬太郎....大倉屋の総領息子
 お浜....料理屋花梅屋の隠居
 お雪....料理屋花梅屋の孫娘
 樽屋....町年寄り
 俊之助....樽屋の手代
 西森金吾….町名主
 西森和歌….金吾の娘

いちねんかん

2020年10月24日 | 畠中恵
2020年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第19弾。

いちねんかん
ほうこうにん
おにきたる
ともをえる
帰宅 計5編の短編連作

いちねんかん
 父・長崎屋藤兵衛と母・おたえが、連れ立ち一年ほど、別府温泉に湯治に行くと言う。その間、長崎屋の身代を任されたのは一太郎。この間に、何か新たな商品を売り出そうと考えるのだった。
 だが、先走った番頭・久郎兵衛が、とんでもない失態にて五十両を盗み取られてしまった。一太郎は、これをどう裁くか…。

ほうこうにん
 長崎屋の主人・藤兵衛不在の間、一太郎が寝付かないように側に仕えることを目的に、屏風のぞきと貧乏神の金次がそれぞれ、薬種問屋と廻船問屋の手代として奉公することになった。そんな折、取引のある京の十ノ川屋の手代を名乗る熊助なる男が、高直な紅餅を仕入れにやって来たのだ。だが、金の匂いがしないと、金次が熊助の偽りを見抜き、事は片付いたかに思われたのだが、熊助の方が一枚上手で、長崎屋は翻弄されることとなる。
 
おにきたる
 西国から疫病が流行り出し、江戸の町も脅かされるようになった。その疫病を流行らせていると自称するのは、疫病神と疫鬼。疫病封じの「香蘇散」を売り出す長崎屋にて、疫病を流行らせたのは我なり。勝敗は、一太郎をどちらが殺めるかで決着を付けると言い出した。神を束ねる大黒主命と、災いの神・大禍津日神の力を借りて、疫病神と疫鬼を懲らしめようと。

ともをえる
 「香蘇散」の効果から、大坂の本家薬種屋・椿紀屋の娘婿選びに、江戸・椿紀屋の大元締・吉右衛門から指名されてしまった一太郎。仁吉・佐助抜きで、江戸椿紀屋の別邸に泊り込んでの人選選別となった。候補は、大坂両替・椿紀屋の次男・達蔵、京・紅椿紀屋の次男・次助、同じく京・薬種・椿紀屋の四男・幸四郎である。だが、それぞれに思いもあり、また、事情もあった。
 江戸・椿紀屋に奉公中の京・紅椿紀屋の三男・昌三は、婿がねではないものの、中々の人物であり…。

帰宅
 一年の湯治に出掛けていた藤兵衛とおたえの帰宅も間も無くとなった。店の収支が若干足りなくはあったが、妖たちが小銭で遊ぶこともあるので、気にも留めていなかった一太郎の元に、大店の旦那衆の集まりの話が、日限の親分からもたらされた。
 このところ、大店では小僧や手代が店の銭をくすめ、それを湯屋で知り合った者から伝授されたのだと言う。どうも彼らを手引きに仕立て大店を襲う強盗ではないかと、皆懸念しているのだ。
 その懸念が現実なり、長崎屋に現れた盗賊たち。妖たちはここぞとばかりに力を発揮する。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 久郎兵衛…薬種問屋長崎屋の番頭
 忠七…廻船問屋長崎屋の番頭
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家

猫君

2020年02月16日 | 畠中恵
2020年1月発行

猫君
猫宿の長(おさ)
猫宿始まる
あわれみの令
合戦の一
合戦の二 長編連作

 花のお江戸に隠された、猫又の陣地六つ。花陣・姫陣・祭陣・武陣・黄金陣・学陣。各陣の新米猫又は、将軍様の庇護のもと、江戸城内の学び舎「猫宿」で修業に励む。猫宿の長は、魔王と呼ばれたあの戦国武将。みかんたちの力を試そうと様々な試練が課せられて―。お江戸猫又ファンタジー。

主要登場人物
 みかん(明楽)…祭陣。新米猫又
 ぽん太…祭陣。新米猫又
 白花…花陣。新米猫又
 鞠姫…姫陣。新米猫又
 猫宿の長(織田信長)…六陣を御する猫又界のトップ
 和楽(明智光秀)…祭陣。猫術の師
 夢花…花陣。化け学の師
 吉也…黄金陣。猫又史の師
 加久楽…祭陣。みかんの兄者
 由利姫…姫陣。鞠姫の姉者
 我治楽…祭陣の占い師
 猫君…猫又界の英雄。謎の存在
 徳川家斉…第11代将軍

 これぞ、お江戸ファンタジーである。目の付け所も流石だ。実存した人物を絡め進行するポップな物語で、読み易い。
 ただ、畠中さんにしては、キャラの服飾や表情設定が希薄だったかなあ。相手が猫であるからか? 事件を織り込みすぎたのか? 「あわれみの令」、「合戦」と進むに連れ、個人差はあるので、あくまでも自分の意見であるが、面白味が薄れていった感が否めない。
 加えてこれはどうでも良いのだが、この新米猫たち、余り講義を受けていないようだが、実戦優先? 


わが殿

2020年01月15日 | 畠中恵
2019年11月発行

 幕末の越前大野藩。土井家七代目藩主・利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、わずか八十石の内山家の長男・七郎右衛門。奇抜な作で大野藩の再生に奔走する。


序  殿十五歳  七郎右衛門十九歳
一章 殿二十七歳 七郎右衛門三十一歳
二章 殿二十八歳 七郎右衛門三十二歳
三章 殿三十二歳 七郎右衛門三十六歳
四章 殿三十三歳 七郎右衛門三十七歳
五章 殿三十六歳 七郎右衛門四十歳


六章 殿三十九歳 七郎右衛門四十三歳
七章 殿四十四歳 七郎右衛門四十八歳
八章 殿四十五歳 七郎右衛門四十九歳
九章 殿四十六歳 七郎右衛門五十歳
十章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳
終章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳 上下巻 長編

 幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、莫大な借財を抱えた大野藩も例外ではなかった。
 時の藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、藩財政を立て直そうとする。
 その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
 銅山の開拓や、特産品の強化などで、借財を返し終えた七郎右衛門は、更には、上方に藩の店を出店。果ては、船を買い取り、北方との取引で利益を上げることに成功すれど、実弟・隆佐と藩主・利忠による藩校創立やら、蝦夷開拓やらと次々と入り用な金子は増えるばかり。
 七郎右衛門は奔走するのだった。
 
 著者初の実存する人物をテーマに書き上げた、珠玉の一冊。
 これはかなり面白く、興味深い作品だった。文自体もこれまでの作品とは一線を画し、著者にとっての新境地とも言えるだろう。
 ラスト一文の素晴らしさは、著者作の「こころげそう」を彷彿とさせる。この方の物語の締め方は決まる! と、毎度ながら感嘆する。
 是非とも、読むべき作品である。


主要登場時運物
 土井利忠...土井家七代・大野藩主。藩の財政を立て直すべく、藩政改革を断行。
 内山七郎右衛門...大野藩士。利忠に登用され、奇抜なアイディアで財政改革の実務を担う。後の家老。
 内山隆佐...七郎右衛門の次弟。文武ともに優れ、若い頃から才能を評価され、登用されるが、金勘定は苦手。
 内山介輔...二十歳離れた七郎右衛門の末弟。武芸に優れたしっかり者。
 中村重助...利忠の覚えめでたい大野藩重臣(家老)。


てんげんつう

2019年09月26日 | 畠中恵
2019年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第18弾。

てんぐさらい
たたりづき
恋の闇
てんげんつう
くりかえし 計5編の短編連作

てんぐさらい
 寝付いていた一太郎の元に、国中から良薬が届けられる中、西の天狗姫・花風が、神薬を3粒携えやって来た。
 なんでも、一太郎の祖母(ぎん)で大妖・皮衣と、江戸の始まり頃に神が落とした7粒の神薬を多く拾う賭けをしたらしい。
 既に3粒集めた天狗姫・花風は、己が勝ったら仁吉と所帯を持つことを条件にしていたと言う。すなわち押し掛け花嫁だった。
 一方、一太郎の許嫁である於りんが、中屋共々神隠しにあったかの如く消えていた。
 一太郎、仁吉、佐助は、この二つの謎解きに奔走する。

たたりづき
 一太郎の祖母(ぎん)で大妖・皮衣と大喧嘩をした仙狐の子の仙太が、ぎんへの逆恨みから、一太郎の縁故の者を祟ったと言うから、大騒ぎ。
 だが、祟った相手は、ぎんの孫である一太郎の許嫁の於りんの養父、深川材木問屋・中屋の主人の縁戚のその寺の住職の弟子といった、何とも遠い遠い相手。
 だが、放ってはおけない一太郎は、仁吉、佐助始め、妖たちと祟られた主を助けるべく動く出したのだ。
 相手は上野真正寺の東山という若い僧だが、住職の南山は、近頃おかしな風評を立てられ困っていると言う。
 その裏には、東山の生い立ちに秘密があった。東山こそが、火事で行く方知れずとなった上野の仏具屋・上川屋の跡取りであると、主張する、上川屋の暖簾を守り続けた番頭。だが、その財を我が物にしようとする親戚筋の企み…。

恋の闇
 許嫁の於りんの義父である中屋に後妻話があると言う。ただ、気になるのは、その相手が山姥ではあるまいか。と言うこと。
 一方、三春屋の栄吉に、札差の娘との縁組話が舞い込んでいると耳にした一太郎。良縁ではあるのだが、栄吉の身上に大分違いがあり、見目形だかりではなく、実家の三春屋も大店のような話になっていた。
 縁組話が重なり目出度いことではあるが、いずれも手放しには喜べないおかしな尾ひれが付いて回る。
 一太郎が、早々事情を探ると、どうも仲人が金銭欲しさに強引な話をあちこちに持ち込んでいるらしと分かり…。
 果ては、山姥、駆け落ちと、話が繋がって行くのだった。
 
てんげんつう
 「てんげんつう」から雨が降るとの知らせを受け取った一太郎。「てんげんつう」なる者に心当たりはないのだが、その予想は的中。すると、「てんげんつう」本人が長崎屋に現れ、可愛がっていた猫に、お礼にと千里眼を貰ったものの、その能力を持て余し、是が非でも普通の人間に戻れるように取り計らって欲しいとこうのだった。しかも、願いを聞き届けなければ、その力で嫌がらせをすると宣う。
 迷惑な一太郎は、上野広徳寺の僧侶・寛朝に託したのだが…。

くりかえし
 深川材木問屋・中屋の於りんからの誘いで、深川の桜見物に出掛けた一太郎と妖たちだが、当日、於りんが桜の毛虫を払おうとして、酷くかぶれた為に、桜見物は中止となってしまった。
 桜の木を覆うように毛虫が這っていると聞いた一太郎は、それを確かめに足を向ける。すると、職人風の男たちが、毛虫を「常世神」だ。と言い、一太郎に向かって、袋いっぱいの毛虫を投げ付けたからたまらない。一太郎はかぶれの為に寝つく羽目に陥った。
 屏風のぞきたちの働きで、男たちは、染井村の染花屋の植木職人であることが分かったのだが、なぜ毛虫を「常世神」などと崇めるのか気になり、貘の妖・場久の力を借り、夢のうちに男たちの動向を探ることに。
 
主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 皮衣(ぎん)...一太郎の祖母、妖
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 禰々子...関東河童の大親分
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男(安野屋で修行中)、一太郎の幼馴染み
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 南山...上野真正寺の住職
 東山…上野真正寺の僧侶
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 於りん 深川材木問屋・中屋の娘・一太郎の許嫁(いいなずけ)

つくもがみ笑います

2019年08月11日 | 畠中恵
2019年1月10日発行

付喪神となり、話したり動き出したりする古道具たちと共に暮らす、古道具屋兼損料屋の出雲屋のちょっぴり不思議なファンタジー小説「つくもがみ貸します」の第3弾。

第一話 つくもがみ戦います
第二話 二百年前
第三話 悪の親玉
第四話 見つかった
第五話 つくもがみ笑います 計5編の短編連作

 見知らぬ男たちに拐かされた出雲屋のつくもがみたち。そこで、久徳屋のつくもがみと知り合いとなった。その主人は、十夜を「兄さん」と呼ぶ不思議な若者・春夜。
 出雲屋のつくもがみたちは、「大江戸屏風」に迷い込み、二百年前にタイムスリップした理、旗本屋敷の幽霊退治に駆り出されたりと、大忙し。

 新たなキャラクターを迎え、面白さ倍増。今後の展開に期待大の同シリーズ。早くも次回作に期待を寄せている。

主要登場人物
 十夜(とおや)...清次・お紅の養子
 出雲屋清次...深川・古道具屋兼損料屋の主
 お紅...清次の女房
 そう六...絵双六の付喪神
 羽子・無患子...羽子板の胡鬼
 野鉄...蝙蝠の根付けの付喪神
 月見夜...掛け軸の付喪神
 うさぎ...櫛の付喪神
 猫神...猫の根付けの付喪神
 利休鼠...鼠の根付けの付喪神
 五位...煙管の付喪神
 黄君...琥珀の帯留の付喪神
 お姫...姫様人形の付喪神
 唐草...金唐革の紙入れの付喪神
 青海波...守袋の付喪神
 悪徳屋(久徳屋阿喜夜)...両国・口入屋の主人
 春夜…悪徳屋の養子
 安真刀…脇差の付喪神
 加羅刀…大刀の付喪神
 文字茶…茶碗の付喪神
 青馬…陶器の付喪神
 蜂屋(篠崎)勝三郎…旗本
 山白伊勢守貞勝…四千石の旗本
 市助...小間物屋・すおう屋の三男、十夜の幼馴染み
 こゆり...鶴屋の長女、十夜の幼馴染み

かわたれどき

2019年04月11日 | 畠中恵
2019年2月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第7弾。

きみならずして
まちがい探し
麻之助が捕まった
はたらきもの
娘四人
かわたれどき 計6編の短編連作

きみならずして
 麻之助の元に、神田の塗り物問屋・楓屋を名乗るおりょうという娘が訪ないを入れた。その用件は、この度の縁組の下見だと言う。
 寝耳に水の麻之助だったが、どうやら、お由有の実父・札差の大倉屋、吉五郎の養父・北町奉行所同心の相馬小十郎、神田の高利貸し・丸三らが、競って麻之助の縁組をまとめようとしているらしい。
 麻之助は、誰がおりょうとの話を進めているのかを調べるうちに、「おりょうと縁のあった相手は皆不幸に見舞われる」といった剣呑な噂を耳にするのだった。

まちがい探し
 地本問屋・喜楽屋から、金魚の絵を持ち込んだ男を捜し出すように頼まれた麻之助。町名主の仕事として引き受けるが、喜楽屋の手代・熊助は、自分こそがその絵師だと、見え見えの嘘を付き…。
 探索を始めた麻之助は、料理屋・花梅屋に辿り着き、そこで、遠縁に当たる呉服太物問屋・笹川屋の娘・お珠、そのお珠と何やら揉めていた貸本屋の竹五郎に出会う。
 そして、熊助と竹五郎に絞られた絵師探しは、思わぬ人物を炙り出していくのだった。

麻之助が捕まった
 神田で、地代賃料業を営む五国屋夫婦から、昔、泣く泣く手放した息子の為吉の行方を探して欲しいと、頼まれた麻之助。程なく品川の米屋・白川屋に奉公する為吉は見付かったのだが、その養父母は既にみまかり、実子か否か定かでないと、五国屋の腰は引けている。
 為吉が実子である証し探しに、花梅屋のお雪が一計を投じ、麻之助、吉五郎、清十郎らは動き出すが、そこに、為吉の義弟(養家の実子)の幸太郎が、とんだ災いを招いており、ことは為吉や五国屋にまで及び…。

はたらきもの
 天狗や怪異の噂が江戸を飛び交っていた。そんな折り、麻之助、清十郎、吉五郎、両国の顔役・貞吉の四人は、 両国橋近くの料理屋・南北屋へと呼び出されたのだった。彼らを呼び付けたのは、札差の跡取り息子三人(大倉屋冬太郎、中森屋秋太郎、虎白屋春太郎)。
 どうやら総領息子の己よりも、麻之助等の方が重く見られていること立腹の様子。
 そして彼らは、江戸を賑わす剣呑な噂の出所を調べろと、麻之助たちに威圧するのだった。

娘四人
 日本橋界隈を盗賊が荒し回っていた。奉行所は面目を掛け、盗賊を捕獲せねばならない。
 そんな折り、日本橋の両替屋・小加根屋は、長年に渡り、同心・和木坂剛一郎が受持っていたのだが、訳を明確にしないまま、新人の前川へと交代した。
 そのことにより、世間では小加根屋の非ぬ噂が流れ、長女の縁組にも差し障りが出る有様。
 ことを重く見た二女・緒りつが、与力・北山の娘であるお紀乃を通し、北町奉行所同心・相馬家に相談を持ち込んだことから、町屋の問題は町名主の跡取りの麻之助、町名主の清十郎がことの次第を突き止める運びとなり…。
 そこに絡む、男女の思い。果たして…。
 ここに詳しくは記さないが、畠中氏にしては珍しい結びで興味深い。

かわたれどき
 深川の出水に料理屋花梅屋の孫娘・お雪が飲み込まれ、一晩川に浸かりながらも、一命を取り止めた。お雪を救ったのは、両替商矢田屋の婿養子・八三郎。
 妻のお市を探すために船を出したところ、木にしがみついたお雪を救い出したのだった。健康を取り戻したお雪だったが、ポッカリと記憶が抜け落ち、それは何やら怖いものを見たかららしい。
 麻之助は事情を探る為に八三郎を訪うのだった。だが、矢田屋の奉公人と八三郎の関係に違和感を感じ得ない。お市と八三郎の関係にも剣呑な噂があった。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 頼町おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
 大倉屋....札差、お由有の実父
 大倉屋冬太郎....大倉屋の総領息子
 お浜....料理屋花梅屋の隠居
 お雪....料理屋花梅屋の孫娘
 お紀乃....北町奉行所与力・北山の娘
 緒りつ....日本橋・両替屋小加根屋の二女