うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

こいごころ

2022年09月13日 | 畠中恵
2022年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第21弾。

おくりもの
こいごころ
せいぞろい
遠方より来たる
妖百物語 計5編の短編連作

おくりもの
 長崎屋の主人・藤兵衛は、取引先の料理屋・三野屋の息子・庄一郎が、瀬戸物問屋・伊和野に麻疹をうつしてしまい、そのお詫びと見舞いの品を送りたいが、良き案がないかと、相談を受けた。
 しかし、これには藤兵衛も困り果て、跡取り息子の一太郎へとお鉢が回ってきたのだ。
 妖たちも奔走しての「おくりもの」とは…。

こいごころ
 一太郎の夢の中に、狐の妖の中でも霊力に優れた、狐仙の地位にある老々丸と、その弟子であるが、能力が満たず、このままでは生命も覚束ない、小狐の笹丸が現れた。
 老々丸が言うには、笹丸を生かすために、一太郎の祖母である大妖・皮衣に渡を付け、荼枳尼天の下に送って欲しいとのことだった。
 一太郎の異変に気付き、仁吉と佐助夢に割って入り込もうとした時、時を超超えて弾き飛ばされていた。
 
 切ないラストに鼻の奥がツンとした。この一編、シリーズ最高峰と言っても過言ではない。

せいぞろい
 おたえ発案の一太郎の誕生祝いを、長崎屋は奉公人も交えて催された。そこに招かれなかった妖たちは不満である。そこで、妖たちの為に一太郎は、ごく内輪の膳を整えることとした。
 だが、それを聞き付けた妖たちも、あちこちから現れ、果ては日限の親分までもが楽しみにしているようだ。到底、長崎屋では収容し切れず、野広徳寺を借りることに。これには僧侶も加わっての大宴会。
 そこに、先に大店から千両箱を盗んだものの、それを誰ぞに盗まれ返された盗人たちが、隠し場所を長崎屋へと思い込み…。

遠方より来たる
 一太郎掛かり付けの町医者・源信が隠居を決めた。源信に勝るとも劣らない医師探しに、長崎屋は思案する。町内の面々も興味津々。何故なら、長崎屋が決める医師こそ腕が良いだろうと、決定を待っているのだ。
 乗じて、多くの医師が名乗りを上げた。中でも鳥辺野からはるばる足を運んだ、流浪の僧でもある医師・火幻。腕は確からしいが、実は妖・火前坊だと名乗る。

妖百物語
 大店の米屋・大貫屋が座主を務める、百話話し終えると、本物の妖が出現すると言う、百物語に誘いを受けた一太郎。奉公人に扮する貧乏神の金次、風野こと屏風のぞき、そして妖医者の火幻まで誘われているから堪らない。
 本当に妖が現れ、それが見知った者であった場合、素知らぬ振りは、礼儀にうるさい妖には厳禁なのだ。すると、一太郎始め4人の秘密が暴露されてしまう。
 百話終える前に、妖が現れる前に、早々に退散の予定を立てていると、どこからか剣呑な話しが耳に入り…。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 屏風のぞき…付喪神、長崎屋奉公人・風野
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神、長崎屋奉公人・金次
 
 おしろ...猫又
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 禰々子...関東河童の大親分
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 寛春…秋英の弟子
 黒羽坊...元小田原の天狗、寿真の弟子
 戸塚宿の猫又の長...虎
 老々丸…化け狐=狐仙
 笹丸…化け狐
 田貫屋…化け狸
 火幻…妖の僧・医師。別名・火前坊
 六鬼坊…信濃の山の大天狗


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