うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

かわたれどき

2019年04月11日 | 畠中恵
2019年2月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第7弾。

きみならずして
まちがい探し
麻之助が捕まった
はたらきもの
娘四人
かわたれどき 計6編の短編連作

きみならずして
 麻之助の元に、神田の塗り物問屋・楓屋を名乗るおりょうという娘が訪ないを入れた。その用件は、この度の縁組の下見だと言う。
 寝耳に水の麻之助だったが、どうやら、お由有の実父・札差の大倉屋、吉五郎の養父・北町奉行所同心の相馬小十郎、神田の高利貸し・丸三らが、競って麻之助の縁組をまとめようとしているらしい。
 麻之助は、誰がおりょうとの話を進めているのかを調べるうちに、「おりょうと縁のあった相手は皆不幸に見舞われる」といった剣呑な噂を耳にするのだった。

まちがい探し
 地本問屋・喜楽屋から、金魚の絵を持ち込んだ男を捜し出すように頼まれた麻之助。町名主の仕事として引き受けるが、喜楽屋の手代・熊助は、自分こそがその絵師だと、見え見えの嘘を付き…。
 探索を始めた麻之助は、料理屋・花梅屋に辿り着き、そこで、遠縁に当たる呉服太物問屋・笹川屋の娘・お珠、そのお珠と何やら揉めていた貸本屋の竹五郎に出会う。
 そして、熊助と竹五郎に絞られた絵師探しは、思わぬ人物を炙り出していくのだった。

麻之助が捕まった
 神田で、地代賃料業を営む五国屋夫婦から、昔、泣く泣く手放した息子の為吉の行方を探して欲しいと、頼まれた麻之助。程なく品川の米屋・白川屋に奉公する為吉は見付かったのだが、その養父母は既にみまかり、実子か否か定かでないと、五国屋の腰は引けている。
 為吉が実子である証し探しに、花梅屋のお雪が一計を投じ、麻之助、吉五郎、清十郎らは動き出すが、そこに、為吉の義弟(養家の実子)の幸太郎が、とんだ災いを招いており、ことは為吉や五国屋にまで及び…。

はたらきもの
 天狗や怪異の噂が江戸を飛び交っていた。そんな折り、麻之助、清十郎、吉五郎、両国の顔役・貞吉の四人は、 両国橋近くの料理屋・南北屋へと呼び出されたのだった。彼らを呼び付けたのは、札差の跡取り息子三人(大倉屋冬太郎、中森屋秋太郎、虎白屋春太郎)。
 どうやら総領息子の己よりも、麻之助等の方が重く見られていること立腹の様子。
 そして彼らは、江戸を賑わす剣呑な噂の出所を調べろと、麻之助たちに威圧するのだった。

娘四人
 日本橋界隈を盗賊が荒し回っていた。奉行所は面目を掛け、盗賊を捕獲せねばならない。
 そんな折り、日本橋の両替屋・小加根屋は、長年に渡り、同心・和木坂剛一郎が受持っていたのだが、訳を明確にしないまま、新人の前川へと交代した。
 そのことにより、世間では小加根屋の非ぬ噂が流れ、長女の縁組にも差し障りが出る有様。
 ことを重く見た二女・緒りつが、与力・北山の娘であるお紀乃を通し、北町奉行所同心・相馬家に相談を持ち込んだことから、町屋の問題は町名主の跡取りの麻之助、町名主の清十郎がことの次第を突き止める運びとなり…。
 そこに絡む、男女の思い。果たして…。
 ここに詳しくは記さないが、畠中氏にしては珍しい結びで興味深い。

かわたれどき
 深川の出水に料理屋花梅屋の孫娘・お雪が飲み込まれ、一晩川に浸かりながらも、一命を取り止めた。お雪を救ったのは、両替商矢田屋の婿養子・八三郎。
 妻のお市を探すために船を出したところ、木にしがみついたお雪を救い出したのだった。健康を取り戻したお雪だったが、ポッカリと記憶が抜け落ち、それは何やら怖いものを見たかららしい。
 麻之助は事情を探る為に八三郎を訪うのだった。だが、矢田屋の奉公人と八三郎の関係に違和感を感じ得ない。お市と八三郎の関係にも剣呑な噂があった。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 頼町おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
 大倉屋....札差、お由有の実父
 大倉屋冬太郎....大倉屋の総領息子
 お浜....料理屋花梅屋の隠居
 お雪....料理屋花梅屋の孫娘
 お紀乃....北町奉行所与力・北山の娘
 緒りつ....日本橋・両替屋小加根屋の二女