うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

新選組 永倉新八外伝

2018年02月07日 | ほか作家、アンソロジーなど
杉村悦郎


 2003年12月発行

 新選組の三番組隊長として、幕末を闘い抜いた永倉新八の曾孫(ひまご)・杉村氏による、維新後の永倉新八像。

序章
第一章 明治二年東京浅草
第二章 北海道松前
第三章 北海道小樽
第四章 東京浅草北清島
第五章 北海道樺戸
第六章 東京断章
第七章 晩年の小樽
終章

 新選組本体と袂を分ってからの永倉の半生を、曾孫である杉村氏が、伝来の資料と、親族からの証言でつづり、永倉の生き方や家族との繋がりを描いている。

 明治維新となり、佐幕派として闘い抜いた剣客たちは、明治の時代をどう生きたのか。新選組の生き残りである永倉新八のその後がしっかりと描かれており、大変興味深く読んだと同時に、何故、永倉は幕府側の人間として、謹慎しなかったのだろうか? といった大いなる疑問も解けた。待っていた一冊である。
 

和菓子を愛した人たち

2017年09月23日 | ほか作家、アンソロジーなど
虎屋文庫著

 2017年6月発行

 誰にでも、思い出に残る和菓子がある。
 歴史上の人物100人と和菓子の繋がりを、現存する文献から解読。天下人、武将、文豪などから市井に生きる人々まで、時代に愛され続けた和菓子とその歴史を綴る。

第1章 文学の名脇役
第2章 あの人の逸話
第3章 心が通う贈り物
第4章 徳川将軍をめぐる人々
第5章 江戸の楽しみ
第6章 旅で出会う
第7章 我、菓子を愛す
第8章 茶人の口福
第9章 思い出は永遠に

 興味津々の和菓子に遭遇。あの人が食した和菓子を食べてみたい。食指も動く、一冊。

江戸を愛して愛されて

2017年01月29日 | ほか作家、アンソロジーなど
杉浦日向子

 2016年10月発行

 単行本未収録の、江戸に関するエッセイ集。全集に収められたまま読めなくなった漫画「横の細道」ほか、「呑々まんが」も全話完全収録。「新春・江戸之七景」など、イラストエッセイも多数収録した、貴重な一冊。

ぉいち 四季折々の江戸(吉原の初春/江戸の初春 ほか)
にぃ 江戸のアレコレ(江戸の女たち/江戸の、時間感覚・金銭感覚 ほか)
さん 旅ゆけば、江戸(旅ふたたび/甲賀お忍びの里右往左往 ほか)
しっ 粋で泰平(風流といふ話/粋の達人ー衣・食・住 ほか)
ごぉ! 漫画(ぶらり俳諧散歩まんが・横の細道/呑々まんが)

 江戸庶民の暮らしぶりが、学べる一冊。堅苦しくなく、読み易い。



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歴史のなかの家族と結婚~ジェンダーの視点から~

2016年08月20日 | ほか作家、アンソロジーなど
服藤早苗/監修 伊集院葉子・栗山圭子・長島淳子・石崎昇子・浅野富美枝/著

 2011年4月発行

 男女の出会いと結婚、家と家族の営み、育児や老いの問題など、家族と結婚の日本史をたどった家族のあり方の歴史と現在。

第1章 古代 共同体に育まれる家族(伊集院葉子)
恋イコール結婚の時代 母の許しと共同体の承認 通い婚から同居へ 離婚 性への女の拒否権 家父長制の未成立と双系的・両属的社会 里刀自、家刀自の指 揮下での共同労働 経営手腕を振った富豪の刀自たち 命がけの出産と多産報奨 父の育児と男子教育 共同体の老人扶養慣行 百姓の葬地、貴族の営墓

第2章 中世 「家」成立の時代(栗山圭子)
当事者同士の結婚から親の決める結婚へ 婿取婚から嫁取婚へ 不均衡な男女関係 夫による離婚権の把握 強姦の発生 遊女の性格変化 男色 白拍子から猿楽能へ 「家」の成立 「家」の経営と相続 家長と家妻の共同経営 生まれる子ども・死ぬ子ども 子どもの成長と養育 「家」と老人 別墓から同墓へ 家族を持てなかった人々

第3章 近世 嫁入り婚と小家族の展開(長島淳子)
身分によるさまざまな結婚のかたち 結婚の過程と嫁入り婚の儀式 身分・階層差による夫婦関係 離婚の実態と縁切寺 村の若者による娘・後家の性支配 遊 廓の成立と私娼 江戸の同性愛と異性装者 近世家族の歴史的位置 階層差による経営形態の諸相 農家の性別役割分業 出産の習俗と堕胎・間引き 育児と公 的支援制度 老人の位置と養生訓 葬送儀礼と墓参 シングルとして生きる

第4章 近代 都市家庭の形成と結婚観の変化(石崎昇子)
恋愛の自由・結婚の自由 神前結婚式の始まり 性の二重規範 少なくなる離婚 公娼制批判の始まり 戦争と軍「慰安所」 同性の恋愛を生きる 明治維新と 明治民法 夫婦中心の都市家庭の形成 良妻賢母規範の誕生と変容 「産児制限」の誕生 仕事と育児の両立への提言 老後の保障は社会権 少なかった単身者  明治民法改正の試み

第5章 現代 多様化する家族と結婚のかたち(浅野富美枝)
個人の権利となった結婚の自由 多様化する結婚式 問われる夫婦のきずな 変わる離婚 後を絶たない性暴力6 深刻化する性の商品化 多様な性愛 変わる 制度としての家族 日本経済を支える家族 性別役割家族の確立とゆらぎ 生殖をめぐるポリティクス 少子化のなかの子育て 高齢社会と高齢者 変わる葬送 と墓 増える単身者と家族のゆくえ




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幕末下級武士の絵日記〜その暮らしと住まいの風景を読む〜

2016年07月18日 | ほか作家、アンソロジーなど
大岡敏昭

 2007年5月発行

 幕末の暮らしを忍藩の下級武士が描いた「石城日記」。
 家族や友人、寺の和尚や料亭の女将たちと仲睦まじく交わり、書を読んで歌を唄い、食や酒を大いに楽しむ。家族団樂、褌一丁での読書、素人歌舞伎などの描写は、飄々とした作者の人柄がにじみ出ており、思わず吹き出すような滑稽味にも溢れている。封建的で厳格な武士社会のイメージを覆し、貧しくも心豊かな人生を謳歌した下級武士たちの、真の日常生活がわかる貴重な記録。

1章 石城の一週間
2章 石城たちが暮らした城下町
3章 自宅の風景
4章 友人宅の風景
5章 中下級武士の住まい
6章 寺の風景
7章 料亭の風景
8章 世相と時代
9章 ふたたび自宅の風景



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レンズが撮らえた〜日本人カメラマンの見た幕末明治〜

2016年07月18日 | ほか作家、アンソロジーなど
監修/小沢健志 編集/高橋則英

 2015年5月発行

 写真術の草創期、欧米の近代科学導入に積極的な各藩と蘭学者たちによる研究と実験の成果によってもたらされた肖像写真中心を中心に、貴重な古写真で見る幕末明治。

カラー特集 写真で見る幕末明治
●幕末明治の日本の写真師たち
 幕末諸藩の写真研究
 殿様が撮った幕末明治
 甦る幕末の長崎
 熊本の写真師・冨重利平
 横浜の写真師たち
 外国人がお土産にした横浜写真
 江戸・東京の写真師たち
 明治の写真心得事情
 小川一眞による文化財調査写真と美術出版物
 明治の裸婦は惑わせる
 雲をも凌ぐ展画
 北海道開拓写真
●主な写真
梅の花を活ける女性/侍姿の役者/公家姿の役者たち/雪の日の外出姿の女性/庭園と二人の女性/亀戸天神の藤棚/日本初のヌードポスター/笊味噌漉売り/玩具屋/田子の浦からの富士を望む/老夫婦/松子と高杉晋作の遺児・東一/関取と太刀持ち



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レンズが撮らえた〜幕末明治日本の風景〜

2016年07月18日 | ほか作家、アンソロジーなど
小沢健志・山本光正著

 2014年5月発行

 日本の初期写真にによって蘇る、当時の風景。

カラー特集 幕末・明治の街道を往く
日本の町並みと風景を見る 江戸時代の街道と旅
●東海道の町並みと風景
東京都/神奈川県/静岡県/愛知県/三重県/滋賀県/京都府 ほか
●関東・甲信の町並みと風景
東京都/埼玉県/千葉県/茨城県/栃木県/群馬県/山梨県/長野県 ほか
●北陸・中部の町並みと風景
福井県/石川県/富山県/新潟県/岐阜県 ほか
●近畿の町並みと風景
大阪府/奈良県/和歌山県/兵庫県 ほか
●中国の町並みと風景
鳥取県/島根県/岡山県/広島県/山口県 ほか
●四国の町並みと風景
徳島県/香川県/愛媛県/高知県 ほか
●九州・沖縄の町並みと風景
福岡県/佐賀県/長崎県/熊本県/大分県/宮崎県/鹿児島県/沖縄県 ほか
●東北の町並みと風景
青森県/岩手県/宮城県/秋田県/山形県/福島県 ほか
●北海道の町並みと風景
函館 ほか



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レンズが撮らえた〜150年前の日本〜

2016年07月18日 | ほか作家、アンソロジーなど
監修/小沢健志

 2013年9月発行

 日本の初期写真に写し出された150年前の人々の暮らしと生活(飴細工、スイカ売り、指物師、食事の支度をする人たち、ほか)。
 そして日本各地の風景(松島、鎌倉、中禅寺湖、有馬温泉、伊勢神宮、ほか)。
 幕末~明治中期に撮影された写真を掲載。

カラー特集 写真で見る幕末・明治
●主な写真
人力車に乗る女性/団扇を持つ女性/横浜ステーション/駕籠に乗った女性/さまざまな髪型/後ろ姿/日光東照宮唐門/芝増上寺有章院/霊廟/飴細工屋/西瓜売り/雲竜水/笊売り/指物師/甘酒売り/大八車



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チュウは忠臣蔵のチュウ

2016年05月14日 | ほか作家、アンソロジーなど
田中啓文


 2011年4月発行

赤穂浪士の討ち入りは本当に義挙だったのか? エピソードの大半が講談「赤穂義士伝」と史実との入り混じりなのだ。斬新な視点で「忠臣蔵」を読み替えたユーモア時代小説。

第一日
第二日
第三日
第四日
第五日
第六日
千秋楽 長編

 浅野内匠頭の刃傷から始まる、「忠臣蔵」。忠義の義士の美談として伝わるが、元禄でも平成でも、人は人。案外、現実はこうだったかも知れないと思える人間描写が実にユニーク。
 まあ、有り得ない出来過ぎのシーンはあるが。
 大石内蔵助率いる赤穂浪士達が向かった討ち入り先とは…。

 とにかく面白い。吉良贔屓の自分にとっては、「良くぞ書いてくれました」。の一冊。 

主要登場人物
 浅野内匠頭長矩…播磨赤穂藩・第3代藩主
 吉良上野介義央…高家肝煎
 大石内蔵助良雄…播磨赤穂藩・筆頭家老
 阿久里(壽昌院>瑤泉院)…浅野内匠頭長矩の正室、初代備後国三次藩主の浅野長治の三女
 柳沢吉保…江戸幕府大老格、甲斐甲府藩主
 徳川綱吉…江戸幕府第5代将軍
 徳川光圀…常陸水戸藩・第2代藩主

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カメラが撮らえた 幕末・明治の肖像

2015年10月02日 | ほか作家、アンソロジーなど
歴史読本編集部編

 2015年3月発行

 吉田松陰や、大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公で松陰の妹・文の家族肖像写真や、長州藩士たち。また、戊辰戦争を闘った新政府軍、幕府軍の要人や、幕末から明治の著名人たちの肖像写真を集成。

吉田松陰と激動の幕末

第一部 幕末
倒幕にかけた青春 ―長州藩―
幕末志士の群像
敗れざる者たちの肖像
滅びゆく者たちの軌跡
外国人が撮らえたサムライ
時代を動かした人びと 幕末編

第二部 明治
新生日本が抱えた“陣痛”
明治新政府の元勲たち
明治日本と富岡製糸場
時代を動かした人びと 明治編

 見応え有り。浅田次郎氏が、「他藩の者たちがあれだけ写しているのに、金持ちだった新選組の写真がほとんどないのはおかしい。きっとどこかに埋もれているのだろう」よいった内容で書かれていたのをふと思い出した次第。
 確かに、観たい! 新選組の集合写真。

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「幕末」に殺された女たち

2015年09月07日 | ほか作家、アンソロジーなど
菊地明

 2015年5月発行

 安政の大獄、桜田門外の変、池田屋事件、水戸天狗党、戊辰戦争…。時代に翻弄され、歴史 の片隅に忘れられていった女たちの命。彼女たちの身に降り掛かったのは、果たして運命だったのか…。

梅田雲浜の妻・信―国事に奔走する夫を支えながら病死した女

洋妾・斎藤きち―米国総領事に雇われ、人々の蔑みを受け続けて自殺した女

関鉄之介の妾・瀧本―桜田門外の変の関係者として捕らえられ、拷問を受けて死んだ女

児島強介の養母・手塚増子―坂下門外の変によって捕縛され、獄中死した息子を見送って病死した女

清河八郎の妻・蓮―反幕攘夷派の夫の身代わりとして捕らえられ、出獄後に急死した女

岩亀楼の遊女・喜遊―「ラシャメン」になることを拒絶して自殺した女

井伊直弼の妾・村山可寿江―生き晒しにされたうえ息子の命を奪われ、絶望のなかで最期を迎えた女

勝野豊作の妻・ちか―安政の大獄で出奔した夫を庇って投獄され、夫の死を知らずに病死した女

芹沢鴨の妾・梅―壬生浪士組の暗殺事件の犠牲となった女

武田相模守の母・某―天誅事件に巻き込まれて殺害された女 ほか全22編

 黒船来航を機に、未曾有の激動の時代を経験することとなった日本。新しい日本を夢見た男たちの陰で、運命の悪戯に翻弄され、命を落とした女たち。その22人を通して描いた、もうひとつの幕末維新史。

 読み応えあり。そして、心が震えるような衝動に駆られる。こんな時代があっての現在を噛み締めさせられた。




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江戸群盗伝

2015年09月04日 | ほか作家、アンソロジーなど
半村良

 1996年6月発行

 盗賊たちの義理と人情を描いた傑作時代小説。

其の一・夜がらす五兵衛
其の二・じベたの甚六
其の三・桔梗屋四郎兵衛
其の四・扇屋おりく
其の五・賽銭吉右衛門
其の六・犬走りの長吉
其の七・先達貫太郎
其の八・なおし屋富蔵
其の九・沖の六兵衛 計9編の短編連作

 時は天保。白鳶の徳兵衛と幸手の惣右衛門という大盗人の下で、狙う相手は、不正に蓄財する大商人や、鼻持ちならな い大名たちといった見逃せない面々。
 人を殺めず華麗な盗みの職人芸を極めながら、「粋」に命を張った裏社会の闇に生きる盗賊たちの生き様を描く。

 面白い。江戸っ子の義理と人情が胸に響く。

主要登場人物
 猫足の勘次(煙管職人)
 間男七之助 
 白鳶の徳兵衛
 幸手の惣右衛門
 夜がらす五兵衛
 じベたの甚六
 桔梗屋四郎兵衛
 扇屋おりく
 賽銭吉右衛門
 犬走りの長吉
 先達貫太郎
 なおし屋富蔵
 沖の六兵衛

 五郎蔵…岡っ引き


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山月庵茶会記(さんげつあんちゃかいき)

2015年06月05日 | ほか作家、アンソロジーなど
葉室麟

 2015年4月発行

 「陽炎の門」、「紫匂う」に続く、「黒島藩シリーズ」第3弾。長編

 かつて藩内の政争に敗れた柏木靫負は、家督を養子に譲り、京、江戸にて千利休の流れを汲む高名な茶人として名を馳せていた。
 そして16年振りに国元(九州豊後鶴ノ江の黒島藩)に戻り、山裾の庵・山月庵にて隠遁生活を送りながら、茶会に16年前の派閥抗争に関わった客を招く。
 それは、妻の死の真実を知るためだった。次第に明らかになる妻の抱えた謎。そして藩政との絡み。

 一転二転の展開と、あっと驚く結末に圧倒される。ほかの作品も是非、読みたくなった。





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会津白虎隊~物語と史蹟をたずねて~

2015年06月01日 | ほか作家、アンソロジーなど
星亮一

 1988年1月発行

未曾有の危機
横浜の異人館
驚愕の日々
仙台藩出兵
青春のときめき
仙台・米沢・会津会談
火を噴く土湯峠
七ケ宿
白石会談
世良誅殺 ほか

 鳥羽伏見の戦いに破れ、会津へと引き揚げた会津藩松平家中を、慶応4年3月から、9月22日鶴ヶ城に白旗が挙るまでの会津戦争を、つぶさに追った作品。
 会津家臣たちの行動や考えは小説仕立てであるが、その史実はルポとして詳細に記録されている。
 会津戦争を知る上で、貴重な資料とも言えるだろう。現在絶版であり、これまた貴重な一冊。
 登場人物は、全て実存の人物。
 凄く内容が分かっているなあと感じながら読んだのですが、一度文庫で読んでいました。それでも史実が分かって面白い。


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