うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

明治・金色キタン

2015年11月11日 | 畠中恵
 2015年11月発行

 江戸が明治に改まって20年。煉瓦街が並ぶ銀座は、夜を照らし出すアーク灯が灯る東京でも一番のモダンな街へと変貌していた。
 そこにモダンとは掛け離れた、江戸の遺物のような、掘立小屋のような派出所があった。だが、それは建物だけではなく、明治の世では消えてしまったと思われている妖たちが跋扈していたのである。「明治・妖モダン」シリーズ第2弾。


第一話 赤手と菜の花

第二話 花乃と玻璃

第三話 モダン 美人くらべ

第四話 闇の小道

第五話 上野の競馬

第六話 祟り、きたる

終            短編連作

 巡査の滝と原田は、日々持ち込まれる事件や相談事の解決に奔走する。だがこの2人とその周囲には、時折、妖も姿を現すのだった。
 不忍池の競馬場、女学生と結婚事情、頼母子講等に奔走しながらも、全編を通し廃仏毀釈によって消えた寺と仏像の謎解きも描かれている。

主要登場人物(レギュラー)
 原田巡査...銀座煉瓦街四丁目・交差点派出所勤務の警官
 滝駿之介巡査...銀座煉瓦街四丁目・交差点派出所勤務の警官
 百木賢一(百賢)...銀座煉瓦街三丁目牛鍋屋・百木屋の主
 百木みなも...賢一の長妹
 百木みずは...賢一の次妹
 赤手...銀座煉瓦街三丁目裏路地・煙草商
 お高...三味線の師匠
 騙しの伊勢...詐欺師
 長太...かっぱらい

※お詫び
 申し訳ありません。未だ読んでおらず、何時になったら読めるかも分かりませんので、概要だけ記させていただきます。講読次第、更新させていただきます。


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うずら大名

2015年11月11日 | 畠中恵
 2015年9月発行

 「御吉兆!」と鳴く勇猛果敢な鶉(うずら)を連れた若き隠居大名・有月。泣き虫で人に振り回されてばかりの村名主・吉之助。昔なじみだった二人が再会し、江戸を揺るがす難事件、背後に蠢く策謀に挑む!

うずら大名
御吉兆聞こえず
大根一万本
書き付けの数字
佐久夜の初泳ぎ
江戸の合戦 長編

 若き日に同じ道場に通った貧乏武家の部屋住み・有月と百姓の三男・吉也。
 今や豊島村の村名主となった吉之助(吉也)は、然る大名家へ向かう途中に辻斬りに襲われるも、「御吉兆ーっ」という鳴き声と共に飛び込んできた一羽の白い鶉とその飼い主である侍に命を救われる。そして、その侍こそが、十数年振りに再会した有月だった。
 だが、大名を自称する有村は、どう見ても怪しく謎めいていた。鶉の佐久夜と、正体不明の自称大名の有月に振り回されながらも、泣き虫吉之助が幕府を揺るがす陰謀に挑む。

※お詫び
 申し訳ありません。未だ読んでおらず、何時になったら読めるかも分かりませんので、概要だけ記させていただきます。講読次第、更新させていただきます。


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竈河岸(へっついかし)~髪結い伊三次捕物余話~

2015年11月11日 | 宇江佐真理
 2015年10月発行

 髪結いと同心の小者の、二足の草鞋を履く伊三次の人情捕物劇と、その家族との繋がりを描いたシリーズ第14弾。

空似
流れる雲の影
竈河岸(へっついかし)
車軸の雨
暇乞い
ほろ苦く、ほの甘く 計6編の短編連作

空似
 龍之進の妻・きいは、ある日伊三次にそっくりな男に出会った。その男・伊三郎は、名も姿形も見れば見る程伊三次と他人とは思えない。
 そんな出会いを忘れていた頃、伊三郎に殺人の容疑が掛る。それは昔、伊三次に掛った容疑とこれまた酷似していた。
 伊三郎の無実を訴えるきいにほだされ、龍之進は真実を突き止めようと動き出すが、そこには奉行所の薄汚い体質の壁があった。

流れる雲の影
 不破友之進の妹・よし乃の催す与力の妻たちの茶会の手伝いに駆り出されたきい。そこの顔を出す戸田うめは要注意人物であると聞かされていたが、案の定、無礼な物言いをされ、思わず反撃をしてしまった。
 そんな頃、きいと小平太を育ててくれた、伯父夫婦の住まう大伝馬町の善右衛門店では、家族に見捨てられた寄せ場帰りの男と、孫娘の心温まる交流が始まっていたのだが…。
 きいはその男に、自分を捨てた母親がの面影をを重ね合わせるだった。

竈河岸(へっついかし)
 不破友之進の小者・増蔵が寄る年波に勝てず十手を返上したいと申し出た。空いた穴を埋めるべく小者に、龍之進は心当たりがあったが、その者を採用する事は、同輩たちの反感が否めないだろうと考え、皆の意見を聞き、全員の賛同が得られたならばといった条件付きで採用しようと心を決める。

車軸の雨
 いよいよ次郎衛が竈河岸の十手を預かり、政吉の元へ修行に通い出した。次郎衛はやる気満々で、正吉も引き受け、事は順調に進むかと思われたが、そんな矢先、次郎衛の叔父が意味深によいこ屋を訪れた。
 翌日、実家へと戻った次郎衛は、そのままよいこ屋へとは戻らず、おのぶは不安な日々を過ごす。

暇乞い
 蝦夷松前藩家老の蠣崎昌年が参勤で出府したが、養生の為下屋敷に留まっていた。天皇の上覧を得た程の絵師でもある昌年に、茜は伊与太の話をすると、昌年は是非会ってみたいと言う。困惑しながらも松前藩下屋敷を訪った伊与太に、昌年は本画の才能があると言う。
 そして昌年から頂戴した高価な絵の具を芳太郎に勝手に使われた伊与太は、ついに堪忍袋の尾が切れ、歌川国直の元を飛び出すのだった。

ほろ苦く、ほの甘く
 お文は、伊与太からの文で、葛飾北斎の肝煎りで、信州小布施に出向いたことを知り驚く。そして茜にそのことを知らせる前に、茜には伊与太から絵が届いた。そこには結髪亭北与と雅号が記されている。歌川国直に師事している筈の伊与太がなぜ、葛飾北斎一門の雅号を名乗るのか。伊与太から送られた絵に秘められた意味とは。
 伊与太不在の江戸で、伊三次一家、師匠の歌川国直、そして茜の中で、それぞれが伊与太の存在感を噛み締めるのだった。

主要登場人物
 伊三次...廻り髪結い、不破友之進の小者
 お文(文吉)...伊三次の妻、日本橋前田の芸妓
 伊与太(結髪亭北与)...伊三次の息子、芝愛宕下の歌川豊光の門人
 お吉...伊三次の娘
 九兵衛...伊三次の弟子、九兵衛店の岩次の息子
 岩次...新場魚問屋魚佐の奉公人
 不破友之進...北町奉行所臨時廻り同心
 不破いなみ...友之進の妻
 不破龍之進...友之進の嫡男、北町奉行所定廻り同心
 不破茜(刑部)...友之進の長女、本所緑町・蝦夷松前藩江戸下屋敷の奥女中(別式女)
 不破きい...龍之進の妻
 不破栄一郎...龍之進の嫡男
 笹岡小平太...北町奉行所同心、元北町奉行所物書同心清十郎の養子、きいの実弟
 おふさ...伊三次家の女中、松助の妻
 歌川国直...日本橋田所町の絵師、伊与太の師匠
 芳太郎(歌川国華)...国直の弟子
 片岡監物...北町奉行所吟味方与力
 緑川平八郎...北町奉行所臨時廻り同心
 緑川鉈五郎...平八郎の嫡男、北町奉行所隠密廻り同心
 橋口譲之進...北町奉行所年番方同心
 春日多聞...北町奉行所年番方同心
 西尾左内...北北町奉行所例繰方同心
 古川喜六...北北町奉行所吟味方同心
 三保蔵...不破家の下男
 おたつ...不破家の女中
 増蔵...門前仲町の岡っ引き
 さの路...松前藩江戸上屋敷の御半下女中 
 薬師寺次郎衛...松島町・駄菓子屋よいこやの主、元小十人格(旗本格)薬師寺図書次男、本所無頼派

 伊三郎...松島町・小料理屋あけびの主
 葛飾北斎...浮世絵師
 山中寛左...内与力
 正吉...増蔵の手下
 おこの 正吉の女房
 おのぶ(小勘)...次郎衛の女房、浜町河岸・梅木の芸妓
 庵原よし乃...北町奉行所吟味方与力の妻、不破友之進の妹
 庵原さよ...庵原家の嫁
 兼吉...大伝馬町の善右衛門店の鳶職、きいの伯父
 おさん...兼吉の女房、きいの伯母

 宇江佐先生、素敵な江戸を描いてくださってありがとうございました。私が時代小説に引き込まれていったのは、宇江佐先生の情景描写力や、知らなかった素敵な日本語に魅せられたからです。
 伊三次シリーズも、新たなステージへと移行し。先生の中にはプランもあられたことでしょう。伊与太と茜の恋の行方も永遠に分からなくなってしまいました。
 また、日々成長する栄一郎。小平太。九兵衛…まだまだ将来の楽しみな登場人物も永遠に年を取らなくなってしまいました。
 いつかこんな日は誰しも必ず訪れるものですが、宇江佐先生、早過ぎます。御無念のほどお察し申し上げます。
 そして御冥福を心よりお祈り申し上げます。       合掌



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宇江佐真理先生 訃報

2015年11月08日 | 宇江佐真理
 大好きな作家の宇江佐真理先生が、7日、乳癌のため北海道函館市内の病院で亡くなられました。
 その訃報に、呆然としております。先生の作品は全て読ませて頂いており、最近では、新刊本発売を待ち切れず、雑誌掲載文を読んでおりました。
 私を時代小説に引き付けてくれたのも宇江佐先生でした。最初に読ませて頂いたのは「卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし」でした。
 女性の心理、男性の心理、子どもの…老若男女を問わず、その人間のバックボーンに相応しい描写。何より、文章から伝わる江戸の情景に魅せられ、以後、読みあさりました。そして、日本語の美しさを教えてくれたのも宇江佐先生の文章でした。
 「髪結い伊三次」シリーズも、未だ未だ終焉をみておらず、いち読者として、先が気になるところではあります。闘病を告白なさった折り、「書きたいものは大体書いた」というようなことをおっしゃっておられましたが、最も無念な想いを抱いておられるのは、宇江佐先生でしょう。66歳は早過ぎます。
 心から御冥福をお祈り申し上げます。合掌

帰蝶(きちょう)

2015年11月07日 | 諸田玲子
 2015年10月発行

 大胆な推理を交え、謎に包まれていた信長の正室の生涯を描く衝撃作!  女性の目線から、信長の天下布武と本能寺の変を描き切った力作長編。

歳月(さいげつ)
本能寺の変
阿弥陀寺(あみだじ)にて 長編

 斎藤道三の娘であり、織田信長の正室となった帰蝶。嫁して後は、美濃から来た姫ということで、濃姫と呼ばれた。
 美濃衆の期待を一身に背負い、戦乱の世の常として同盟の為の礎となった帰蝶は、夫・織田信長に怯えながらも、奥を取り仕切り、逞しく生きていた。
 だが、本能寺の変で信長が明智光秀に伐たれると、その運命は一転する。
 信長、嫡男・信忠の横死を安土城で聞いた帰蝶は、側室や子どもたちを連れて日野城へと逃れる。
 そして時代は、豊臣秀吉の天下から関ヶ原の戦いへとめまぐるしく移りゆくなか、帰蝶は、漸く己自身の生き方を見出していく。

 織田信長に嫁して後、プツリとその消息が消えた帰蝶。斎藤道三亡き後は、利用価値が無くなり、殺害された。美濃へ戻されたなどの推測がされていたが、近年、信長の三男・信孝の庇護にあったとされている。
 そんなミステリアスな帰蝶の生涯を、諸田氏が研ぎすまされた洞察力で生き生きと描いた逸作。
 個人的に、帰蝶のその後は、歴史上屈指の気になることであり、実に興味深く読んだ。



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