うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

~カメラが撮らえた~新島八重・山本覚馬・新島襄の幕末・明治

2014年02月28日 | ほか作家、アンソロジーなど
編集・著吉海直人、執筆・西沢教矢、中村祐子

 2013年4月発行

 山本覚馬の新発見写真を含む、200点もの古写真・資料を収録した新島八重古写真帖の決定版。

1章 山本家と会津藩の群像
   八重の生い立ち
    砲術師範の家に生まれた男勝りの娘
   戊辰戦争の開戦
    終始将軍家のために戦った松平容保と会津藩
   会津戦争と篭城戦
    押し寄せる新政府軍と山本八重の戦い
2章 山本覚馬の幕末・明治
   覚馬と象山塾
    江戸の佐久間象山の下で幕末の英傑たちと学ぶ
   覚馬の京都時代
    仇敵の薩長の人士に認められ維新後は京都の近代化を狙う
3章 新島襄・八重と同志社創設
   新島襄の渡米
    国禁を犯して米国に密航 キリスト教に触れその伝道者に
   同志社の設立
    襄・覚馬・八重の尽力が実ったキリスト教学校の開校
   晩年の八重
    四十四歳で襄を失った八重は篤志看護婦に生き甲斐を見出す
4章 幕末・明治の肖像
 徳川慶喜、松平春嶽、井伊直弼、徳川慶勝、榎本武揚
 松本良順、孝明天皇、近衛忠煕、三條実美、久坂玄瑞、
 宮部鼎蔵

 新島八重、山本覚馬、新島襄を中心に、彼らが交流を持った人々の現存する写真人物を100名以上。その肖像と、詳細な解説とともに掲載する古写真帖。
 八重とその家族、会津藩の人々や明治に維新に名を残す人物、同志社創設までの各時代ごとに、ゆかりの史跡や遺品も紹介。






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会津戦争全史

2014年02月24日 | ほか作家、アンソロジーなど
星 亮一

 2005年10月発行

 白虎隊、斗南藩の「悲劇」はなぜ起こったか仮借ない攻撃と略奪に明け暮れる薩長軍。前近代的な戦術の下、非戦闘員も動員し藩を挙げて玉砕した会津軍。正義なき内戦の真実を、膨大な史料から第一人者が詳述。

第1章 鳥羽伏見の戦い
第2章 戦火東北に迫る
第3章 奥羽鎮撫総督
第4章 白河大戦争
第5章 越後、磐城に戦火拡大
第6章 会津国境破れる
第7章 会津鶴ヶ城攻防戦
第8章 白旗をかかげて降参
終 章 会津戦争の意味

 会津戦争は「新政府軍と旧幕府軍の戦い」ではない。非寛容の精神で残虐行為に走る薩長軍に対して、正面から戦闘を挑んだのだ。戦略なき会津軍は「武士道」のもと非戦闘員をも動員し、悲劇へと突き進むー。幕末の会津藩を追い続けた著者が描く一大戦記。
 実際に会津戦争を体験した、柴五郎始め、女性や農民など多岐に渡る人々の実存する手記や証言も掲載され、余り知られていなかった事実がここに浮かび上がる。
 多くの悲劇をもたらした戊辰戦争に、意味はあったのかを問い掛ける。
 官軍の名の下に行われた、目を覆いたくなるような虐殺。普通の人が戦場といった特殊な場で、ここまで代われるのか…。
 白虎隊の悲劇を知らない日本人は居ないだろう。だが、真実は白虎隊以上に壮絶だった。
 そんな戊辰戦争を踏み台にして誕生した、新政国家。我々が生きる時代の幕開けに犠牲になった人々を忘れてはならない。そう思わずにはいられない。
 是非とも読んでいただきたい一冊。
 薩長側の方、西郷隆盛、桂小五郎など明治の偉人と言われる人への思慕が払拭されますよ。
 余談ではあるが、当方は、新政府側でもなければ、幕府側でもないが、戊辰戦争は、江戸城開城にて終結させるべきであり、会津攻めは、日本人独特の単なる遺恨・妬みといった短絡な感情であったと考える。
 そして、歴史上、一番嫌いな徳川慶喜。彼が腹を切れば、いったい何万人の人命が救われたのだろうか…。その前に、当時の将軍が彼でなければ…歴史にもしもはないが、そう思わずにはいられない。


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江戸人のしきたり

2014年02月24日 | ほか作家、アンソロジーなど
北嶋広敏

 2007年5月発行

 副題
 日本橋、天麩羅、三社札
 寺子屋、歌舞伎、吉原…
 日本人の知恵と元気の源泉

 100万人が暮らす、当時、世界最大の経済・リサイクル都市であった江戸の衣食住、娯楽、規律など、00年前の日本人が生活するための知恵を紹介。

第1章 大江戸の春夏秋冬
 江戸っ子の初詣ー方角を重視した理由
 江戸名物の桜餅、その誕生秘話 ほか
第2章 江戸っ子の生活模様
 家財は湯沸かしだけ、一年中、質屋に通う
 長屋の家賃は月1万7000円 ほか
第3章 江戸っ子の教育と豊かな文化
 江戸っ子が好んだ「粋」とは?
 時刻を知らせる鐘はどこで撞いたのか ほか
第4章 恋と情事と吉原と
 銭湯に備えつけの石ーその使用目的は何か
 江戸のソープランド、「湯女風呂」の繁盛ぶりとは?  ほか
第5章 将軍と鬼平
 江戸のシンボル、「日本橋」の由来とは?
 将軍はどんな一日を過ごしていたのか ほか

 将軍から庶民まで、江戸人の暮らしや疑問が一挙に分かる。







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大江戸事件帖お散歩マップ

2014年02月24日 | ほか作家、アンソロジーなど
お江戸歴史探訪研究会


 2011年9月発売

 大江戸八百八町を揺るがした14の騒動。歴史に名を残す(?)あの人は、どこで、どのように生きていたのか…。事件はどこで起きたのか。
 あの有名人(?)の足跡を古地図と現代地図たどる。

八百屋お七 
 恋に焦がれて火を付けた15歳の美少女
絵島
 門限破りで実兄の首を刎ねられた大奥女中
白子屋お熊
 不細工な夫を殺し損ねた美人妻
平井権八
 遊女が愛した同僚殺しのイケメン剣客
鬼坊主清吉
 いつのまにか神になった荒稼ぎの色男
鼠小僧次郎吉
 武家屋敷専門「たぶん3千両」盗んだ大泥棒
松平外記
 同僚3人を殿中で斬殺した剛毅の旗本
河内山宗春
 水戸藩を強請って獄死したチョイ悪直参坊主
め組の辰五郎
 力士と喧嘩して羽子板になった火消の頭領
天一坊
 案外真実だったかもしれない将軍の「ご落胤」蔦屋重三郎・山東京伝
 松平定信に弾圧された江戸の出版人
由井正雪・丸橋忠弥
 同時多発テロをしくじった江戸の革命家
関鉄之介
 大老暗殺後、1年半逃げ回った幕末の志士
大石良雄
 リーダーとして仕事を果たした昼行燈親父
大江戸グロッサリー 

 史実としては知っていた事件ではあるが、地図や史跡を視覚的に目にすることで、分かり易く、かつ「ここで生活したり、歩いていたのか」と思うと、自身が足を運んだことのある場所を、改めて感慨深い。




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春告鳥~女売らない十二か月~

2014年02月19日 | 杉本章子
 2010年4月発行

 「女用知恵鑑(おんなようちえかがみ)宝織(たからおり)」なる占い本を巡る女たちの吉凶を描いた12編。

一文獅子(いちもんじし)
冬蒼(そよご)
春告鳥(はるつげどり)
空木(うつき)
つばめ魚(うお)
あした天気に
ト一(といち)のおれん
秋鯖
ごんぱち
夕しぐれ
お玉
万祝(まんいわい) 計12編の短編集

一文獅子(いちもんじし)
 町内の厄介者である市五郎に、ご開帳の金銭を差し出さなかったばかりに、その腹いせに菊次が大山参りに出掛けている間に、市五郎に手込めにされたお千代。
 それを知ると菊次は外に女を作り、お千代にとっては居たたまれない日が続くが、どれだけ菊次に冷たくされても、決して口には出来ない秘密があった。
 それは、手込めにされたのは、菊次の妹のおきみだったのだ。

主要登場人物
 お千代...菊次の女房
 菊次...元浜町の指物師
 市五郎...元浜町の若者頭
 おきみ...菊次の妹、浅草並木町の茶漬け屋の女房.0

冬蒼(そよご)
 仙太は、商いの途中で、お里にふと心を引かれる。だが、お里の様子から所帯持ちであることは歴然。
 にわか雨に傘を差し掛け、お里の事情を知ると、駿河国から江戸へと駆け落ちをしたのだが、相方が行方不明になったと分かる。
 仙太のお里に対する思いは深まり、所帯を持とうとするも、行く方知れずの相方によって、お里は遊郭へと売られてしまう。

主要登場人物
 仙太...下谷広小路・「ねずみびき」の見世物師
 小虎...南京ねずみ
 お里...駿河国千福村・五人組頭の娘
 竜雲齋...下谷広小路・占い師
 
春告鳥(はるつげどり)
 家格の釣り合う武井家に嫁いだ咲江は、夫・左門に馴染めないことに苦悩するも、姑のしげ世とは良好な関係を築いていた。
 だが、咲江の曾祖母の形見の櫛を左門がねだった事から、隣家からの注進により、左門には囲っている女がいることが分かる。
 子までなしており、義父・義母も承諾のことであった。
 離縁を申し出た咲江は、淡い恋心を抱いてた早川万之助の後妻に入ることになる。櫛が身代わりとなり、凶を吉へと変えたと松乃は語る。

主要登場人物
 安藤咲江...御家人・御留守居番与力・安藤与十郎の娘
 安藤松乃...咲江の祖母
 武井左門...御家人・大番頭与力、咲江の夫
 武井しげ世...左門の母、咲江の義母

空木(うつき)
 火事で父親と兄を失い、店の再建のならず、祖父、母を養う為に茶汲み娘となったおゆう。だが、祖父の薬療がかさみ、裏で客を取る。
 そこに、岡っ引きと吉原会所の男衆が乗り込み、隠れ私娼の罰として3年間の吉原年季務めを余儀なくされる。
 何不自由のないお嬢さんが一夜にして何もかもを失くし、親族や旧知の人の無情さに晒され、茶汲み娘、罠にはめられ女郎へと…次々に襲う不幸に己は空木であるとおゆうは、身の不幸を思う。
 
主要登場人物
 おゆう...本所弥勒寺門前・水茶屋若松の茶汲み娘(元横山町・油屋佐野屋の娘)→吉原万字屋の見世昼三・花さと花魁
 源七...小間物売り、実は吉原会所の男衆

つばめ魚(うお)
 婿養子・栄次郎を迎えるも、商いも半端な上に、次々と色事が絶えず、ついに離縁し、女手ひとつで伊勢長を取り仕切るお孝。
 詮之助と互いに引かれ合うも、伊勢長狙いと疑られるのを拒む詮之助。ならば、伊勢長を捨ててつばめ魚のように身ひとつで飛んで行くと決心するのだった。
 
主要登場人物
 お孝...日本橋本船町・活物問屋・伊勢長の跡取り
 早見詮之助...伊勢長の深川熊井町・活場の雇い人→後に差配(元御家人の三男)
 お麻...お孝の妹、地引河岸肴納屋高野屋に嫁入り

あした天気に
 お紺には、幼い時分から話を聞いただけで、その未来が見える不思議な力があった。だが、それを口に出したことはない。
 娘になり野田屋に奉公に出るが、そこの隠居が病いの床にある中、呪術の封印が説けたためと咄嗟に悟る。
 その不思議な力のため、嫁ぐことも諦め、奉公も辞め、母に仕立ての腕を仕込んでもらい、ひとりで生涯を終える覚悟を決めるが、幸福の足音がそこまで来ていた。

主要登場人物
 お紺...花川戸町・醤油素酢問屋野田屋の女中
 おいね...お紺の母親、大丸の仕立屋、縫い物の師匠
 幸太...お紺の幼馴染み、大工の小僧

ト一(といち)のおれん
 浅草寺門前に捨てられていたおれんは、浅草駒形町・田楽家の養女となり養父母に慈しまれたて育ったが、義兄がおれんを女として見る年頃になり、養家から出奔。
 行く宛のないところを、香具師の藤次郎に矢場娘の仕事を紹介される。決しておれんをそくばくしない藤次郎に惹かれ情婦となり、矢場を持たせてもらう。
 そんなある日、おれんの実の親が、捨て子ではなく勾引しであったおれんを探し歩いていたことを知り、対面するも、名乗り出るのを躊躇い、そのことから、矢場女であり、妾であることが恥なのかと藤次郎との間に亀裂が走るも、藤次郎の深い思いが、おれんを幸せに導く。

主要登場人物
 おれん...浅草・浅草寺裏手奥山の矢場・いち藤の女将、
 若狭家藤次郎...浅草・浅草寺裏手奥山の香具師の親方

秋鯖
 千住掃部宿の米問屋上田屋から、日本橋伊勢町の米問屋井筒屋嫁いだおたみは、娘2人を産んだが、未だ男子を挙げていない。
 それを不服に思う夫・直太郎との仲もぎくしゃくし、直太郎は外で女遊びをしている様子。
 店の方も疎かな直太郎よりの二男の久次郎に乗っ取られそうな勢いである。
 そんなある日、直太郎が鯖の食あたりで倒れる。同時に離れで暮らす久次郎の女房・おそのも同じ症状である。
 2人の関係を悟ったおたみは、店を久次郎夫婦に渡さないため、直太郎の不義理を許さじとばかり、作をこうじるのだった。

主要登場人物
 おたみ...日本橋伊勢町・米問屋井筒屋の嫁
 井筒屋直太郎...おたみの夫
 久次郎...直太郎の実弟
 おその...久次郎の女房

ごんぱち
 中木場島崎町の材木問屋島徳の三代目・栄太に引かされ、自前芸者となった小新。男前で金もある栄太の囲われの身ではあるが、好いて好かれた間に幸せを抱いていた。
 だが、元来女好きの栄太が、柳橋の芸者・音丸と子まで成したと聞き、家作を返して縁を切る決意をする。
 栄太はそれを拒むが、芸者としてのプライドがそれを許さない小新。
 やがて栄太は、商いが成り行かずに命を絶ったと人伝に聞く。そして、栄太の実母が金策に困り、栄太に小新が貰った家に住ませろと押し掛けて来るのだが、既に別れた時に小新が買い取っていたのだった。
 一度は撥ね付けた小新だったが、老母の窮状を目の当たりにすると、同居を受け入れる。

主要登場人物
 小新...葭町・芸者屋吉橘屋の半玉
 近与...上木場西永町・材木問屋の主
 
夕しぐれ
 子供屋桔梗屋の女将・おけいが、見世内で元回し方の菊次郎を殺めた。
 二人は情人の間柄であったが、菊二郎が桔梗屋を乗っ取ろうとし、金子の要求をしてきたため、見世を守る為に殺めたのだと、おけいは証言する。
 だが、殺し方が腑に落ちない弥吉は、真実を探る。そこには、占いにより翻弄された哀れな真実が浮かび上がった。

主要登場人物
 弥吉...深川入船町汐見橋西の岡っ引き
 米松...弥吉の手下、いなり寿司屋
 桑山了伯...深川入船町汐見橋東の町医者
 おけい...深川永代寺門前仲町・子供屋桔梗屋の女将

お玉
 実母ながら千賀の義姉・佳詠に対する態度が気に入らない雪絵。佳詠は先妻の娘で、後添えの千賀とは幾つも年が離れていないことから娘とも思い辛いのかも知れないと分かりつつも、佳詠に母を見る思いであった。
 ある日、庭先で拾った仔猫を玉と名付け可愛がり、玉の首紐に文を忍ばせ、若党・周吾との道ならぬ恋をしてた。
 そして、良縁に恵まれた雪絵だが、周吾への思いを断ち切れず、二人は出奔を決意する。
 雪絵目線とお玉目線から物語が進行していく。その入れ替わりが自然である。

主要登場人物
 岡本雪絵...勘定奉行・岡本忠次郎正成の二女
 岡本佳詠...雪絵の義姉(先妻の娘)
 お玉...雪絵の愛猫

万祝(まんいわい)
 十の年に嫁入りまでの数年を、元大奥女中だった叔母に養女となったお梶。女子としての印を見た晩、叔母のお妙から、大奥で流行っていた一冊の占い本「女用知恵鑑宝織」を譲り受ける。
 常陸屋佐太郎に嫁し、男子を揚げるも、夫は外に女を囲い、女児二人を成したばかりか、暖簾を引き継ぐと大っぴらに妾宅へと足を向ける日々。
 そんなある日、木更津・河岸問屋佐貫屋の竹二郎を預かるのだが、その晩に、妾と海遊びに出掛けていた佐太郎が妾娘もろとも、藻くずと消える。
 その後の一切合切を取り仕切ってくれた竹二郎と深い仲になるも、お梶は女て一つで息子・佐吉を育て上げ常陸屋の暖簾を守ったのだった。
 だが、死に直面した時、竹二郎から貰った万祝の長半纏を、お官の掛け無垢にして欲しいと遺言を残す。

主要登場人物
 お梶...日本橋室町一丁目・本両替屋広田屋の娘
 お妙(弥生)...大奥年寄り・藤尾の部屋子→江戸橋広小路南本材木町・茶の湯生け花指南、お梶の叔母
 常陸屋佐太郎...小網町一丁目・奥川筋船積問屋の惣領息子
 佐貫屋竹二郎...上総国木更津北片町・河岸問屋の二男
 
 一冊の、生まれ月による占い本「女用知恵鑑宝織」を、縁あって開いてしまった12人の女が辿る運命。前世の行いが今生に影響を及ぼしているといった占いを信じて翻弄される者。その解釈を逆手に取る者。運命からの脱却を願う者。
 それぞれの人生の重責の中で、選択や生き方を描いている。
 武家、町人、女郎など身分に捕われずに、女心に恋、家族との絆、そして情などやはり人として生きる上で欠かせない題材をテーマに12編の物語が進行する。
 切ない終末もあり、明るい未来もあり、本当に悲喜こもごもの人生。どこで歯車が狂うなんて誰にも先は分からないのだ。
 占いに翻弄されて、そこを見落とすなといった教訓と同時に、江戸の人々とは、現在よりも占いや神仏に親しんでいたことが読み取れる。
 読み易く、かつ内容がかぶることない、「さすが」杉本氏の短編集であった。読み応えあり。




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宮部みゆきの江戸怪談散歩

2014年02月14日 | 宮部みゆき
 2013年10月発行

 「三島屋変調百物語」シリーズを始め、怪談物語の舞台となった地図でたどり、設定の背景などを著者が語るほか、対談や、著者推薦の怪談小説を収録。

江戸怪談散歩のはじめに
三島屋変調百物語の舞台を歩く
宮部怪談の舞台を歩く
本所深川七不思議を歩く
北村薫×宮部みゆき やっぱり怪談が好き!
宮部みゆきの怪談を味わう
宮部みゆき推薦! 私の好きなこの話

 「三島屋変調百物語」、「本所深川七不思議」の舞台となった地を、地図、写真、錦絵で紹介。物語を振り返りながらでも良し、同時に照らし合わせても、イメージが画像となって現れる。
 推理作家・北村薫氏との対談では、推理小説、時代小説など枠に捕われないお二方の小説論や、江戸の不思議、怪談のロジックを語り合う。
 そして、宮部氏が選んだ、読んでほしい厳選小説4編を収録。
 宮部みゆき作
 「おそろし~三島屋変調百物語事始~」より「曼珠沙華」
 大好きだった兄の吉蔵が人を殺め島流しとなった。待ちに待った赦免だったが、殺人者の家族としての月日の流れは、藤吉(藤兵衛)へ残酷な選択をさせる。

 「幻色江戸ごよみ」より「だるま猫」
 火消しになりたいが、火事場で足が竦んでしまう臆病な文次は、ひさご屋の角蔵に預けられるが、それでも火消しの夢を捨て切れずにいた。そんな折り、角蔵は己昔は火消しだったと打ち明ける。

 宮部みゆき推薦
 「指輪一つ」 岡本綺堂著
 「怪の再生」 福澤徹三著






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山本兼一さん死去

2014年02月14日 | 山本兼一
 13日、直木賞作家の山本兼一さんが亡くなられました。まだ57歳の若さです。
 私は、著名な「火天の城」、「利休にたずねよ」などは読んでおりませんが、「とびきり屋見立て帖」シリーズのファンで、第4弾を心待ちにしておりました。「オール読物」にて、新作3編まで読ませていただきましたが、更なる進展を待っていた矢先です。
 残念でなりませんが、ご本人も、もっともっと執筆したかったことでしょう。
 ご冥福をお祈り申し上げます。

雪に咲く

2014年02月07日 | ほか作家、アンソロジーなど
村木嵐

 2013年12月発行

 第17回松本清張賞受賞作家・村木氏が、「越後騒動」をテーマに、越後高田藩を守るために戦った小栗美作を清冽に描いた時代小説。


第一章 銀の雨
第二章 春、東西
第三章 高田大地震
第四章 猫じゃらし
第五章 雁木道
第六章 騒動
第七章 冬ふたたび
第八章 雨の降る 長編

 時は、江戸幕府が開かれ50年近く。越後高田藩主・松平光長の元へ、豊後へ流されていた弟や妹が戻された。
 後に筆頭家老になる小栗美作は、光長の妹・お閑にひと目惚れし娶るも、中々に子が育たず、漸く授かった大六をお閑は目の中に入れても痛くないほどの河合が利用であった。
 大六には、お閑の血筋から徳川家康にも通じ、藩主控えとなる可能性もあり、それを危惧した美作は、早々に家老職を譲ろうと思案する。
 だが、平穏にはゆかず、降り積もる雪、大地震、大火、継嗣争い、藩を二分する御家騒動、取り潰しの機会を窺う幕府など、次々と降りかかる難題に、美作は対峙を余儀なくされていく。
 また、藩を二つに割る御家騒動に乗じて、この機に藩を取り潰そうとする幕府の思惑も絡み、美作は否応なく大きな渦に飲み込まれていくのだった。

 敵はどこに、誰が見方か敵なのか…。切ないラストではあるが、武士らしい潔さに凛々しさを感じる逸作。
 作者は女性であるも、骨の太い男性的な広い視線で描かれており、「越後騒動」についてもっと知りたくなった。
 そして、世の中の無情を感じ入った終焉であった。今の時代にも通じる、正義感の強い、人の良い人間は損をする。「情けは人のためならず」は強うしないのだ。だが、それを信じる実直な人物に小栗美作守は描かれている。
 大六の生き様に、武士道について考えさせられる。こんな時代、こんな思い、こんな生き方が数百年前にはあったのだ。

主要登場人物
 小栗美作守...越後国高田藩筆頭家老

 荻田本繁...越後国高田藩次席家老

 片山主水...越後国高田藩家老

 松平光長...越後国高田藩藩主

 市正...光長の弟

 大蔵...光長の弟

 お閑...光長の妹、美作守の妻
 大六...美作守・お閑の嫡男

 浅茅...お閑の侍女

 真砂...幕府密偵、浅茅の姉

 酒井雅楽頭忠清...幕府老中

 渡辺大隅守綱貞(熊)...町奉行。雅楽頭の腹心










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