うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

まことの華姫

2016年10月22日 | 畠中恵
 2016年9月発行

 人形遣いの月草と、姫様人形お華の迷コンビが江戸の事件を快刀乱麻!


まことの華姫
十人いた
西国からの客
夢買い
昔から来た死
終  短編連作

 江戸両国の見世物小屋では、人形遣いの芸人・月草と、相方の木偶の姫様人形・お華が大人気になっていた。
 その芸は、月草がひとり二役で、話芸を繰り広げるだけではなく、お華は、単なる人形ではなく。「まことの華姫」の異名を持つ程に、真実を言い当てると、もっぱらの評判を呼んでいた。
 なぜなら、お華の目は、真の井戸から真の井戸から引き上げられた、水を固めたような玉で創られていたのだ。

まことの華姫
 姉の死は、実の父が原因かもしれないと疑う、小屋一帯の地回りの娘・お夏。

十人いた
 七年前の大火事で幼な子を失い、諦めきれずに我が子を捜し続ける夫婦に、突然十人の子どもが名乗りを上げる。

西国からの客
 行方知れずとなった親友かつ義兄を捜しにはるばる西国からやってきた若旦那。

夢買い
 華姫が「真」を話すと聞き付け、それ盗み出そうとする者あり、安い木戸賃で小屋に入り、「真」を語らせようとする者あり。

昔から来た死
 火事で傷を負い人形師を続けられなくなったがために、添えなくなった元許嫁のお路が夫殺しの嫌疑が掛っていることを知った月草だったが。

 「うーむ」。どうにも畠中恵さん“らしからぬ”作品に感じた。結局お華(華姫)はただの木偶人形なのか…。
 釈然としない。個人的な独断ではあるが、ちょっと「違うかな」感が拭えず、物語に入り込めなかった。
 畠中氏は、ファンタジーを得意としているのだから、この作品もいっそ、華姫をファンタジー仕立てにしてくださった方が、分かり易かったような気がする。
 ただし、飽くまでも、個人的感想であって、嗜好の相違だろう。因に、畠中氏の作品で一番好きなシリーズは、「まんまこと」。作品としては、「こころげそう」である。

主要登場人物
 お華…真の井戸から引き上げた水を固めたような玉の目を持つ、木偶の姫様人形
 月草…腹話術の人形遣い(元は西国の人形師)
 山越…両国の地回りの頭、小屋主
 お夏…山越の娘



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若様とロマン

2016年10月21日 | 畠中恵
 2016年4月発行

 文明開化華やかし明治を舞台にした青春ストーリー。「アイスクリン強し」、「若様組まいる」に続くシリーズ第3弾。

園山・運動会
小山と小沼・川開き
加賀・百花園
長瀬・居留地
真次郎・亜米利加 計5編の短編連作

 平穏に過ぎていた明治の世に、不穏な空気が漂い始めていた。戦へと突き進みつつある一派の意向を押さえようと、成金のひとり小泉琢磨はこのままでは開戦派を押さえようと秘策を練る。
 それは、若様たちに縁組をし、開戦派に対抗する同士を増やそうというその魂胆。早々、若様たちの見合いを画策するが…。

 漸く、時間が取れ、読み終えました。若様それぞれが、小泉琢磨の政治力の為に、見合いをさせられる話で、一章毎に、各々が主役となる、同シリーズ初めての手法で描かれている。見合いひとつにおいても、相手の事情やシチュエーションなどが絡み、一筋縄ではいかないといった具合。
 そして、多分…大凡…。同シリーズはこれで終幕か、もしや、舞台や時代を移して第二幕の幕開けとなるのか…。いずれにしても、それぞれの人生の岐路を描いて筆を置いている。
 確か、第1弾の「アイスクリン強し」では、ミナこと、皆川真次郎が主役だった筈が、第2弾の「若様組まいる」では、若様たち(永瀬健吾・園山薫)が主役になり、今回は満遍なく主役のバトンを繋ぐといった、考え抜かれたシリーズだ。

主要登場人物
 永瀬健吾...巡査(若様組の頭/元二千石の若様)、ミナの幼馴染み
 福田春之助...巡査(若様組/元千石の若様)
 園山薫...巡査(若様組/元三千石の若様)
 小山孝...巡査(元三百石の若様)
 小沼武一...巡査(元五百石の若様)
 皆川真次郎(ミナ)...築地外国人居留地の西洋菓子店風琴屋の主
 小泉琢磨...小泉商会の主
 沙羅...琢磨の娘、女学生、ミナの幼馴染み









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