うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

あやかし草紙〜三島屋変調百物語伍之続~

2018年09月28日 | 宮部みゆき
2018年4月発行

 不幸な出来事で傷心のおちかは、叔父の袋物屋の三島屋伊兵衛に引き取られ、悲しい過去や不思議な出来事を体験した人たちの話に耳を傾ける。
 神田袋物屋三島屋の黒白の間で、明かされる不思議な話。「三島屋変調百物語事始」の第5弾。

第一話 開けずの間
第二話 だんまり姫
第三話 面の家
第四話 あやかし草紙
第五話 金目の猫 計5編の短編連作

第一話 開けずの間
 塩断ちが元凶で、「行き逢い神」を呼び込み、家族が費えるといった身も凍る不幸を招いた三好屋の話。

第二話 だんまり姫
 不吉と言われる「もんも声」の老婆の波乱万丈な人生の語り。

第三話 面の家
 お家騒動から殺害されながら、その土地の災いを一身に集める「形代」となろうと城から離れられない、10歳の若殿・一国様の霊。

第四話 あやかし草紙
 複写することにより、己が寿命を知ってしまう曰く付きの草紙。白羽の矢を立てられた、浪人には言われぬ過去があり…。

第五話 金目の猫
 おちかが貸本屋・瓢箪堂勘に嫁ぎ、聞き手が三島屋の二男・富次郎へと引き継がれる。その最初の語り部は、三島屋の長男であり兄の伊一郎。
 兄弟二人が体験した、子供の頃飼っていた金眼の白猫の正体とは。

 五話全ての完成度が高く、シリーズ最高傑作と言っても過言ではない。また、今回で主人公がおちかから富次郎へと交代し、物語は新たなステージへと展開するようだ。
 この富次郎は、聞いた話を画に託し、厄落としをするといった手法を用い、この画が、今後、どのようなポジションを締めるかも興味深い。
 続編が待たれる。
 宮部みゆき氏の才能に、感服。

主要登場人物
 おちか...川崎宿旅籠丸千の娘
 三島屋伊兵衛...神田三島町袋物屋の主、おちかの叔父
 お民...伊兵衛の女房
 富次郎...伊兵衛、お民の二男
 伊一郎...伊兵衛、お民の長男(通油町小間物商・菱屋で修行中)
 おしま...三島屋の女中
 新太...三島屋の丁稚
 お勝...三島屋の女中
 瓢箪堂勘一…神田多町・貸本屋の長男