うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

ひとめぼれ

2017年04月30日 | 畠中恵
 2017年4月発行

 お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第6弾。

わかれみち
昔の約束あり
言祝(ことほ)ぎ
黒煙
心の底
ひとめぼれ 計6編の短編連作

わかれみち
 お由有にひどい仕打ちをした、幸太の父親である横平屋の達三郎が何喰わぬ顔で江戸に舞い戻ったと知り、お由有の実父・札差しの大倉屋は、横平屋の取り潰しを画策する。その鮮やかな手管を目の当たりにしたばかりの麻之助たちに、今度は定町廻り同心・山本家に養子に入った又八郎が、襲われる事件に関わってしまった。
 そもそも又八郎は町家の出であり、実家の酒屋・高須屋の出見世を任されていたが、甲斐性がなく潰してしまったのだった。その当時の奉公人たちの恨みからではあるが、麻之助は裏で糸を引く存在に気付き…。

昔の約束あり
 相馬吉五郎は、両国橋西詰にて衆人観衆の下、「千里眼の予言で相馬家と縁を結ぶ者である」と、仏具屋・東国屋の娘・お蝶に詰め寄られる。
 元より養子である吉五郎には、身に覚えがないばかりか、居合わせた麻之助もその内容も腑に落ちない。事情を義父・小十郎告げるも、一蹴するのだが、気になるのは、相馬家の娘で吉五郎の許嫁の一葉である。
 麻之助たちの制止を聞かずに、お安、お虎と共に東国屋を訪なうが、そのまま足取りが消えてしまった。
 麻之助たちは、三人の行方を追ううちに、お蝶には、小普請組世話役の多村との縁組の話があると知るのだった。
 
言祝ぎ
 吉五郎の姪・おこ乃に三つもの縁談が持ち込まれた。大名家の陪臣で、200石の頼町の娘の縁談とあっては、慎重にならざるを得ない。
 そしてどの縁も、どこかが引っ掛かる、吉五郎の養父・相馬小十郎は、麻之助に、3人の調べを依頼する。麻之助は金貸しの丸三、両国の顔役の貞吉と共に、おこ乃にとっての良縁を探り出した。

黒煙
 支配町で火事が起きた。たまたま居合わせた麻之助は。逃げ遅れた者がいないか見回る中、泣いている双子の子どもを無事保護した。それは、唐物屋・菊屋仙十郎の子どもであったが、何故に子どもだけが取り残されたのかと、訝しがる仙十郎。
 一方、八木家の支配町では、火事騒動の最中に、小間物屋・丸太屋から螺鈿細工の櫛が失せ、それが扇屋・紅屋の娘・おかやの仕業ではないかと、ひと悶着。
 双方の、腑に落ちない点を繋ぐと、ひとつの答えが…。

心の底
 定廻り同心・相馬小十郎の頼みで、麻之助は、商いの為、旅に出たきり行方知らずの、葉茶屋鳴海屋の二男・丈之助を探しに東海道を旅する運びとなっていた。
 同行は、丈之助の許嫁・料理屋花梅屋の隠居・お浜である。孫娘・お雪の縁組相手が行く方知らずとあって、我が目で確かめようとしていた。
 が、いつしか麻之助は、方々から土産を頼まれたり、許嫁のお雪までもが旅に同道すると言い出したり。
 そんな中、江戸で丈之助を見掛けたという話が伝わり…。

ひとめぼれ
 吉五郎の許嫁である養子先のひとり娘・一葉に、仏具屋の四男坊の春四郎が「同心になりたい。武士になりたい」と、近付いていた。
 春四郎の甘い顔立ちに、若い一葉は夢中になり、吉五郎は気が塞いでいた。
 だが、相馬家当主の小十郎は、跡取りは吉五郎とし、一葉は好いた相手に嫁がせると決断。一葉の思いと、春四郎の思惑が擦れ違う。

主要登場人物
 高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
 八木清十郎...隣町の町名主
 相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
 高橋宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
 故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
 お由有...清十郎の義母、故・源兵衛(清十郎の父親)の後妻
 幸太...お由有の実子、清十郎の義弟
 お安....清十郎の妻、町名主・甲村家の娘
 頼町おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
 貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
 大貞....両国の顔役、貞吉の父親 
 丸三...神田の高利貸し
 お虎....丸三の妾
 相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
 相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
 みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫






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