うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

ビジュアル幕末1000人~龍馬と維新の群像歴史を変えた英雄と女傑たち~

2013年10月17日 | ほか作家、アンソロジーなど
大石学監修

 2009年12月発行

第一章 坂本龍馬をめぐる人々 

第二章 薩長と勤王倒幕の志士 

第三章 徳川家と幕臣、朝廷

第四章 新撰組と草莽崛起の人々

第五章 会津藩と奥羽越列藩同盟

第六章 幕末・最後の藩主 

第七章 幕末の異能者

 タイトル通りに幕末を生きた1000人の名鑑であり、幕末を知る上での貴重な資料でもある。あるいは、幕末辞典と言ってもいいだろう。
 あの偉人がこんな顔だったのかと、興味の尽きない一冊。



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将軍家・大名家お姫さまの幕末維新~古写真で甦る姫君たちの面影~

2013年10月17日 | ほか作家、アンソロジーなど
別冊歴史読本

 2007年11月発行
 
 大政奉還、廃藩置県と、幕藩体制が崩壊して行く中、大名家のお姫様に待ち受けていた定めとは。
 徳川家、松平家、島津家などの大大名始め、維新の戦に巻き込まれていった松前藩、盛岡藩、秋田藩、二本松藩、佐倉藩、請西藩などのお姫様たちを夫である殿様と共に、エピソードと写真で紹介。

 当時の歴史から、髪型や着付方なども解り興味深い一冊。それにしても、お姫様はやはりいずれも美しい。




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楠(くす)の実が熟すまで

2013年10月16日 | 諸田玲子
 2009年7月発行

 禁裏・公家の不正の証しを掴もうとする幕府側が、最後の切り札として送り込んだ隠密・利津が、真実を探り当てるまでに女心を絡めたミステリーが展開する長編。

楠(くす)の実が熟すまで 長編

 安永年間、禁裏での出費増大に頭を悩ませた幕府は、公家の不正探索を図るも、密偵たちが次々と何者かにより殺害されてしまう。
 最後の切り札として目を付けたのは、幕府探索方の御徒目付・中井清太夫の姪・利津であった。無事、役目を果たさなければ清太夫は切腹。かつ上意であれば利津に選択の余地はない。
 利津の任務は、禁裏口向役人・高屋遠江守康昆の継妻として、同家に入り込み、不正の証しを捜す事だった。その期限は、楠の実が熟すまで。
 その輿入れの日に、康昆のひと粒種である千代丸が病いでもがき苦しんでいた。それを救った利津。
 それからは、千代丸の愛らしさ、そして何より康昆に惹かれていくのだが、夫の弟である右近が幽閉されている事を知り、高屋家に対する疑惑も抱き始める。
 そして蔵の中から、証しを見付け出すや、老僕の忠助、下女のなかが何者かに殺害され、時を同じくし、利津は、父の危篤の文を受け取るのだった。
 もはや夫への疑惑は覆せず、だが夫への思慕も覆せない。そんな利津が選んだのは、康昆の妻として千代丸の継母として生きる道だったが、夫が選んだのは、利津の命だった。

 元値の安い御戸帳を高値で買ったことにして、寺社へ寄贈し、差額を騙し取るというのが、不正の手法であり、私腹を肥やす公家たちと幕府役人との葛藤であり、高屋家は首謀ではいのだが、弟・右近幽閉の謎や、清太夫の小者・留吉の存在を表に出し、終盤まで謎解きが解らないといった深いミステリー仕立てになっている。
 また、密偵として割り切ったにも関わらず、康昆へ惹かれていく利津の女心に加え、千代丸といった幼児を登場させた事により、母性愛までをも組み入れた感動巨編と言える。
 全ての黒幕が、何であの人? といった不振はあるのだが、最後まで引っ張る力量と同時進行する恋。やはり諸田氏は凄い。
 序盤の小見出し3作目とは打って変わった本編。そしてその本編が序盤へと繋がる辺りの巧さ。唸らずにはいられない計算され尽くした力作である。
 主役は飽くまでも利津なのだが、康昆の人柄に深く感化されてしまった。
 ラストも悲壮感がないのが良い。やはり売れている作家さんって、こうなんだなと思わせる作品である。

主要登場人物
 中井利津...清太夫の姪、河内国楠葉村・郷士の娘
 高屋遠江守康昆...禁裏口向役人・御取次衆
 中井清太夫...幕府・御徒目付
 高屋千代丸...康昆の嫡男
 高屋右近...康昆の弟
 忠助...高屋家老僕
 なか...高屋家下女
 石上伝兵衛...立花町万屋の主、広橋家未勤家臣、康昆の母方の叔父
 山村信濃守良旺...京都西町奉行
 中井万太郎...河内国楠葉村・郷士、利津の父親
 留吉...清太夫の小者





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お順~勝海舟の妹と五人の男~(上・下巻)

2013年10月12日 | 諸田玲子
  2010年10月発行

 勝海舟の妹であり、佐久間象山の妻であったひとりの女性・お順が辿った女としての道。そして彼女を取り巻く幕末の動乱を描いた長編作品。

上巻
第一章 小吉の放蕩(ほうとう)
第二章 虎之助の野暮(やぼ)
第三章 象山の自惚(うぬぼ)れ
下巻
第三章 象山の自惚(うぬぼ)れ(承前)
第四章 隣太郎の人たらし
第五章 俊五郎の無頼
終 章 お順のその後 長編

 奔放ではあるが、情に深く義を重んじる父・勝小吉を崇拝するお順は、貧困の中にあってもそれを苦にもせず、当時の女性としては進歩的思考に育っていった。
 そんな彼女が思慕を抱いたのは、父親程も年の離れた剣客・島田虎之介であった。
 この初恋は実ろうかといった矢先、虎之介が病いに倒れる。
 そして、やはり親子程も年の離れた佐久間象山の正室として嫁すが、そこには妾の産んだ幼い恪二郎と、同じく妾のお蝶が先住しているのだった。
 いきなり恪二郎の母として家刀自として、一切を任されたお順。胸の奥に虎之介の思いを秘めながらも、象山を尊敬し、妻として相応しくあろうと努めるが、嘉永7 (1854)年、再び来航したペリーの艦隊に門弟の吉田寅次郎(松陰)が密航を企て、象山も事件に連座して伝馬町に入獄。更に松代での蟄居を余儀なくされる。 
 お順も松代まで同道し、江戸を離れ長い蟄居生活を送る。
 実母・信子の病い看病のため、単身江戸へと戻ったお順。時に、実兄の麟太郎(海舟)は、幕府の重鎮として出世を果たし、蟄居を解かれた象山は一橋慶喜に招かれて上洛し、公武合体論と開国論を説くも、尊皇攘夷派の志士・前田伊右衛門、河上彦斎等により暗殺される。
 再び勝家に戻ったお順は、山岡鉄太郎(鉄舟)の門弟であった村上俊五郎に亡き虎之介の面影を見出し、恋に落ちる。
 幕府が倒れ、駿府へと移住を余儀なくされた旧幕臣たちであったが、お順はここで俊五郎との生活を始めるも、俊五郎の身持ちの悪さに愛想を尽かしたお順はひとりで歩き出す事を誓う。

 愛した島田虎之介、尊敬する佐久間象山、女としての幸せを掴もうとした村上俊五郎。そして敬愛止まない父・小吉。勝家再興を果たし、先見の明のある兄・麟太郎(海舟)。
 お順に生涯に多大な影響を及ぼした5人の男たちである。
 さすが勝家の娘。ほかにも彼女を取り巻く人物がひとかどではない。当然なのだが、幕末で名の知れ人たちばかりである。
 物語は、お順の目を通して描かれており、幕末の政治や歴史をくどくどと論じる事もなく、自然に頭に入ってくるので、歴史が苦手な方でも難なく読みこなせるだろう。
 諸田氏渾身の作と感じ入った。
 大変に面白い作品である。
 
主要登場人物
 勝順子...勝家の二女、佐久間象山の妻
 勝小吉(夢酔)...順の父親、旗本・小普請組
 勝麟太郎(海舟)...順の兄、海軍奉行並、陸軍総裁、軍事取扱など歴任
 勝信子...順の母親
 勝はな...順の姉
 勝民子...麟太郎の正妻
 男谷信友...小吉の甥、幕臣、道場主
 島田虎之介...順の許嫁、剣客、武蔵忍藩藩主・松平忠敬の出入り師範
 島田菊...虎之介の娘
 佐久間象山...順の夫、松代藩士、兵学者・朱子学者・思想家
 村上俊五郎...順の内縁の夫、元道場主、浪士組道中目付
 佐久間恪二郎(三浦啓之助)...象山の庶子、後の新選組隊士、松山県裁判所判事
 お蝶...佐久間象山の妾


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再会~あくじゃれ瓢六~

2013年10月02日 | 諸田玲子
 2013年7月発行

 長崎の古物商・綺羅屋の息子で、元は阿蘭陀通詞見習いもした地役人で、唐絵目利きで、蘭医学、天文学、本草学の心得もある上に世之介ばりの色男・瓢六が、その才覚を見込まれ、無骨な同心・篠崎弥左衛門と組んで、難事件を解決していく人気シリーズの第4弾。

再会
無念
甲比丹
縁者
でたらめ
毒牙
泣き所 長編
 
 あれから十数年。四十路となった瓢六は、大火により、内縁の恋女房・お袖を失い、不良旗本・小出家の店子となり、昔の縁を切り、自堕落な暮らしを送っていた。
 ある日、賭場の手入れの折りに救われた、奈緒の手引きに寄り、岡っ引きの源次や北町奉行所の同心・篠崎弥左衛門と再会を果たし、天保の改革を押し進め、この世を牛耳ろうとする老中・水野越前守忠邦、南町奉行に就任した鳥居耀蔵の陰謀に巻き込まれていくのだった。
 彼らの威を借りた大蛤の次助による非道で、源次は一命を落とし、篠崎弥左衛門は病いから右手が不自由になりながらも、一子・弥太郎に跡目を継がせるまではと同心を続けている。
 時の移り変わり、深く負った傷を封印し、瓢六は弥左衛門の小者として働く事に決める。そこには奈緒の存在もあった。
 そして水野越前守忠邦の改革に、危うい目に会う者たちを救うべく立ち上がるが、実家である綺羅屋もそれに巻き込まれ…。

 これは凄い。シリーズ最高傑作であると同時に、諸田氏にとっても屈指の作品と言える。
 江戸風情を織り込んだフィクション小説なので、受賞作品と比べるとネームバリューに欠けるだろうが、ところがどっこい。背景の時代考証は素晴らしく物語に生きており、勝小吉・海舟親子を交えての展開など、幕末・歴史ファンにはたまらない実存した人物とフィクションが見事に重なり合った。
 未だ、後作に続きそうな締め括りであったので、今後も見過ごす事の出来ないシリーズと言える。
 このところ、諸田氏らしくないと思っていたので、目から鱗。やはり底力を感じる作家である。歴史的背景と搦めての展開が続けば、諸田氏の代表作になるだろうと思われる。一気に読み終え、読んで良かったと実感出来た。

主要登場人物
 瓢六(六兵衛)...長崎の古物商・綺羅屋の息子、元長崎の地役人、弥左衛門の相棒
 篠崎弥左衛門...北町奉行所定町廻り同心
 源次...岡っ引き、弥左衛門の手下
 菅野一之助...北町奉行所吟味方与力
 篠崎八重...弥左衛門の後添え、後藤忠右衛門の三女
 篠崎弥太郎...弥左衛門の嫡男
 鶴吉...賀野見堂の手代
 平吉...元きねへいの奉公人(瓢六の瓦版仲間)
 作次郎...長崎の古物商・綺羅屋の奉公人、元きねへいの奉公人(瓢六の瓦版仲間)
 筧十五郎...元武士、絵師(瓢六の瓦版仲間)
 小出茂右衛門...小普請組旗本、瓢六の大家
 奈緒...阿部正寧家・奥女中
 勝小吉...小普請組旗本の隠居
 勝麟太郎(後の海舟)...小吉の嫡男、小普請組旗本
 男谷信友...麻布狸穴・道場主、幕府勘定方旗本、勝麟太郎の従兄弟
 阿部正寧(不浄斎)...備後国福山藩主・第六代藩主、隠居 
 都甲𨨞太郎...幕府御小人目付、元馬医
 ※お袖...辰巳芸者、瓢六の情婦
 ※杵蔵...深川亀久町・一膳飯屋きねへいの主
 ※ちえ婆...さんきねへいの奉公人(瓢六の瓦版仲間)
 ※賀野見堂弐兵衛...深川亀久町・貸本屋の主
  ※は故人






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