うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

わが殿

2020年01月15日 | 畠中恵
2019年11月発行

 幕末の越前大野藩。土井家七代目藩主・利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、わずか八十石の内山家の長男・七郎右衛門。奇抜な作で大野藩の再生に奔走する。


序  殿十五歳  七郎右衛門十九歳
一章 殿二十七歳 七郎右衛門三十一歳
二章 殿二十八歳 七郎右衛門三十二歳
三章 殿三十二歳 七郎右衛門三十六歳
四章 殿三十三歳 七郎右衛門三十七歳
五章 殿三十六歳 七郎右衛門四十歳


六章 殿三十九歳 七郎右衛門四十三歳
七章 殿四十四歳 七郎右衛門四十八歳
八章 殿四十五歳 七郎右衛門四十九歳
九章 殿四十六歳 七郎右衛門五十歳
十章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳
終章 殿五十歳  七郎右衛門五十四歳 上下巻 長編

 幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、莫大な借財を抱えた大野藩も例外ではなかった。
 時の藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、藩財政を立て直そうとする。
 その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
 銅山の開拓や、特産品の強化などで、借財を返し終えた七郎右衛門は、更には、上方に藩の店を出店。果ては、船を買い取り、北方との取引で利益を上げることに成功すれど、実弟・隆佐と藩主・利忠による藩校創立やら、蝦夷開拓やらと次々と入り用な金子は増えるばかり。
 七郎右衛門は奔走するのだった。
 
 著者初の実存する人物をテーマに書き上げた、珠玉の一冊。
 これはかなり面白く、興味深い作品だった。文自体もこれまでの作品とは一線を画し、著者にとっての新境地とも言えるだろう。
 ラスト一文の素晴らしさは、著者作の「こころげそう」を彷彿とさせる。この方の物語の締め方は決まる! と、毎度ながら感嘆する。
 是非とも、読むべき作品である。


主要登場時運物
 土井利忠...土井家七代・大野藩主。藩の財政を立て直すべく、藩政改革を断行。
 内山七郎右衛門...大野藩士。利忠に登用され、奇抜なアイディアで財政改革の実務を担う。後の家老。
 内山隆佐...七郎右衛門の次弟。文武ともに優れ、若い頃から才能を評価され、登用されるが、金勘定は苦手。
 内山介輔...二十歳離れた七郎右衛門の末弟。武芸に優れたしっかり者。
 中村重助...利忠の覚えめでたい大野藩重臣(家老)。