2010年8月発行
江戸一番の商人の町、日本橋で細腕一本で生きる美人女将お瑛を取り巻く、男と女の愛情劇を描いたシリーズ第7弾。
第一話 藤娘
第二話 はやぶさの七
第三話 十六番目の男
第四話 朝顔市の女
第五話 鬼火 計5編の短編集
主要登場人物(レギュラー)
蜻蛉屋(とんぼ屋)お瑛...日本橋室町反物・陶磁器の商い
お豊...お瑛の義母
市兵衛...蜻蛉屋の番頭
文七...蜻蛉屋の使い走り
お民...蜻蛉屋の女中
お初...蜻蛉屋の賄い、お瑛の婆や
若松屋誠蔵...日本橋室町紙問屋の主、お瑛の幼馴染み
井桁屋新吉...十軒店新道居酒屋の若旦那
岩蔵(とかげの親分)...岡っ引き
第一話 藤娘
お瑛の元に、以前、若松屋誠蔵の子を宿し女手一つで育てるお絹が顔を出し、誠蔵に繋を付けて欲しいと告げた。折しも、猿渡九谷の窯元四代目圓次郎の作を蜻蛉屋で即売する催しが開かれる。
お絹の過去と女心が、交差する。
勝手ではあるが、お絹の心情は察するに余あり、取り返しの付かない人生ながら、漸く大切な事に気付いた女心が描かれている。
主要登場人物
お絹(おりん)...馬喰町公事宿屋山佐の下働き
四代目圓次郎(竹次郎)...加賀豊浦藩猿渡郷陶工
第二話 はやぶさの七
余命幾許もない定七は、賭場で見掛けた若い男が、どうも洪水で流され行方知れずの我が子ではないかと疑念を抱く。手掛かりを求め定七に変わってお瑛を訪った京蔵の口から、お瑛は意外な真実を耳にする。それは、蜻蛉屋存続に関わるある一件にあった。
定七の息子探しと言うよりも、たった一度の出会いが、お瑛に染みた定七の面影が印象的な作品。
主要登場人物
定七(はやぶさの七)...渡世人
お仲...定七の女房、日本橋小網町足袋屋藤村屋の娘
京蔵...渡世人
竜七...渡世人
第三話 十六番目の男
失火で店を閉めた大店井筒屋の奉公人たちが、5年前後顔を揃えた。失火の原因を探る噂話に花が咲く中、その火事で焼死した番頭の重兵衛に出会ったと、寅吉が息を弾ませ現れる。そして与志田の女将志津の口から、同時に焼死した女中頭のお菅と重兵衛の意外な関係が洩らされる。
失火なのか、放火なのか。その目的は。
お瑛と松五郎の淡い恋心を搦めながら、5年前の井筒屋の内状、事件当夜の様子。そして奉公人それぞれが抱える秘密などが語られ、正しく同窓会。
そして結末は煙に巻かれたままといった完成度の高い一編である。
主要登場人物
松五郎...本所木綿問屋の番頭、元大伝馬町木綿問屋井筒屋の手代
千蔵...呉服問屋の着付係り、元井筒屋の手代
清次郎...小間物の行商人、元井筒屋の手代
留七...芝居小屋の呼び込み、元井筒屋の手代
寅吉...貸本担ぎ、元井筒屋の丁稚
伍助...廻船問屋の算盤方、元井筒屋の丁稚
志津...蔵前料理茶屋与志田の女将
第四話 朝顔市の女
朝顔市でお瑛は、お稲を見掛けた気がした。だが、その女は、評判の占い師の神田乙女であるらしい。地廻りの岡っ引きに寄れば、余りに事件を言い当てるので、近く奉行所の手が入ると言う。お稲であれば放っておけず、お瑛が確かめてみると、意外な真実が…。
ひとりの男との出会いが、女を悪事に走らせる。そしてそれが分かっていても女は、どこかで男を信じる気持ちを捨てられない。女心を逆手に取った悪しき話である。
主要登場人物
神田乙女(お稲)...占い師
お瀧(滝川)...お耳様(看取り人)
願真...破戒僧
第五話 鬼火
武家に嫁いだ登勢は、里帰りの帰りに幼馴染みのお袖とばったり出会した。数年振りの出会いは、お袖をすっかり変貌させ、登勢はお袖に誘われるまま悪所で身を売るようになる。
だが、数カ月後、登勢は一通の脅迫状を受け取り、その差出人が、お瑛も義兄弥太郎ではないかと疑惑が掛る。
話自体は、「必殺シリーズ」の序盤のような展開。結末は、ハッピーエンド。物語としては山場もあり纏まってはいるが、どうしてもこの主人公の登勢の行動が掴めず。美男で真面目な夫に添え、姑との確執もなく幸せな筈が、単に好色な女だったのだろうか? とすれば、それなりの悲惨な結末や、堕落した人生が待っていても良いのだが、何事もなかったかのように、貞淑な妻に戻っている。寸の間の気の迷いか? にしては解せず。
主要登場人物
朝比奈良太郎...若年寄配下御勝手方勘定所組頭
登勢...良太郎の妻、日本橋通町呉服問屋加賀屋の娘
お袖...式亭櫓庵の妾、日本橋通町乾物屋の娘
式亭櫓庵...黄表紙作家
郁...深川仲町料理茶屋生島屋の女将
著者の作品は初めて読ませて頂いた。この「日本橋物語」もシリーズ化されているので、人気の作品だろう。確かに、短編集として読み易い。無駄な登場人物おらず、並びに回想シーンも分かり易い。
美人独身女将が市井の出来事に関わる物語として、映像化されていても可笑しくないと思う(もし既存なら申し訳ありません)。事件が起きる訳ではなく、捕り物劇でもない為、ドラマとしては成立しないのだろう。
それにしてもお瑛さん。たった1冊の中で、過去に淡い恋心を幾つ抱いていた事やら。この分では、シリーズを通して読むと、相当な数になるだろう。
更に、よくもまあ、訳ありな人との関わりが多い事(そうでなければ物語にならないが)。
感想としては、淡々と物語が進み、切なさや悲しみが込み上げてくるような作品ではない為、同じ市井物なら、個人的にはやはり宇江佐真理さんに軍配。
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江戸一番の商人の町、日本橋で細腕一本で生きる美人女将お瑛を取り巻く、男と女の愛情劇を描いたシリーズ第7弾。
第一話 藤娘
第二話 はやぶさの七
第三話 十六番目の男
第四話 朝顔市の女
第五話 鬼火 計5編の短編集
主要登場人物(レギュラー)
蜻蛉屋(とんぼ屋)お瑛...日本橋室町反物・陶磁器の商い
お豊...お瑛の義母
市兵衛...蜻蛉屋の番頭
文七...蜻蛉屋の使い走り
お民...蜻蛉屋の女中
お初...蜻蛉屋の賄い、お瑛の婆や
若松屋誠蔵...日本橋室町紙問屋の主、お瑛の幼馴染み
井桁屋新吉...十軒店新道居酒屋の若旦那
岩蔵(とかげの親分)...岡っ引き
第一話 藤娘
お瑛の元に、以前、若松屋誠蔵の子を宿し女手一つで育てるお絹が顔を出し、誠蔵に繋を付けて欲しいと告げた。折しも、猿渡九谷の窯元四代目圓次郎の作を蜻蛉屋で即売する催しが開かれる。
お絹の過去と女心が、交差する。
勝手ではあるが、お絹の心情は察するに余あり、取り返しの付かない人生ながら、漸く大切な事に気付いた女心が描かれている。
主要登場人物
お絹(おりん)...馬喰町公事宿屋山佐の下働き
四代目圓次郎(竹次郎)...加賀豊浦藩猿渡郷陶工
第二話 はやぶさの七
余命幾許もない定七は、賭場で見掛けた若い男が、どうも洪水で流され行方知れずの我が子ではないかと疑念を抱く。手掛かりを求め定七に変わってお瑛を訪った京蔵の口から、お瑛は意外な真実を耳にする。それは、蜻蛉屋存続に関わるある一件にあった。
定七の息子探しと言うよりも、たった一度の出会いが、お瑛に染みた定七の面影が印象的な作品。
主要登場人物
定七(はやぶさの七)...渡世人
お仲...定七の女房、日本橋小網町足袋屋藤村屋の娘
京蔵...渡世人
竜七...渡世人
第三話 十六番目の男
失火で店を閉めた大店井筒屋の奉公人たちが、5年前後顔を揃えた。失火の原因を探る噂話に花が咲く中、その火事で焼死した番頭の重兵衛に出会ったと、寅吉が息を弾ませ現れる。そして与志田の女将志津の口から、同時に焼死した女中頭のお菅と重兵衛の意外な関係が洩らされる。
失火なのか、放火なのか。その目的は。
お瑛と松五郎の淡い恋心を搦めながら、5年前の井筒屋の内状、事件当夜の様子。そして奉公人それぞれが抱える秘密などが語られ、正しく同窓会。
そして結末は煙に巻かれたままといった完成度の高い一編である。
主要登場人物
松五郎...本所木綿問屋の番頭、元大伝馬町木綿問屋井筒屋の手代
千蔵...呉服問屋の着付係り、元井筒屋の手代
清次郎...小間物の行商人、元井筒屋の手代
留七...芝居小屋の呼び込み、元井筒屋の手代
寅吉...貸本担ぎ、元井筒屋の丁稚
伍助...廻船問屋の算盤方、元井筒屋の丁稚
志津...蔵前料理茶屋与志田の女将
第四話 朝顔市の女
朝顔市でお瑛は、お稲を見掛けた気がした。だが、その女は、評判の占い師の神田乙女であるらしい。地廻りの岡っ引きに寄れば、余りに事件を言い当てるので、近く奉行所の手が入ると言う。お稲であれば放っておけず、お瑛が確かめてみると、意外な真実が…。
ひとりの男との出会いが、女を悪事に走らせる。そしてそれが分かっていても女は、どこかで男を信じる気持ちを捨てられない。女心を逆手に取った悪しき話である。
主要登場人物
神田乙女(お稲)...占い師
お瀧(滝川)...お耳様(看取り人)
願真...破戒僧
第五話 鬼火
武家に嫁いだ登勢は、里帰りの帰りに幼馴染みのお袖とばったり出会した。数年振りの出会いは、お袖をすっかり変貌させ、登勢はお袖に誘われるまま悪所で身を売るようになる。
だが、数カ月後、登勢は一通の脅迫状を受け取り、その差出人が、お瑛も義兄弥太郎ではないかと疑惑が掛る。
話自体は、「必殺シリーズ」の序盤のような展開。結末は、ハッピーエンド。物語としては山場もあり纏まってはいるが、どうしてもこの主人公の登勢の行動が掴めず。美男で真面目な夫に添え、姑との確執もなく幸せな筈が、単に好色な女だったのだろうか? とすれば、それなりの悲惨な結末や、堕落した人生が待っていても良いのだが、何事もなかったかのように、貞淑な妻に戻っている。寸の間の気の迷いか? にしては解せず。
主要登場人物
朝比奈良太郎...若年寄配下御勝手方勘定所組頭
登勢...良太郎の妻、日本橋通町呉服問屋加賀屋の娘
お袖...式亭櫓庵の妾、日本橋通町乾物屋の娘
式亭櫓庵...黄表紙作家
郁...深川仲町料理茶屋生島屋の女将
著者の作品は初めて読ませて頂いた。この「日本橋物語」もシリーズ化されているので、人気の作品だろう。確かに、短編集として読み易い。無駄な登場人物おらず、並びに回想シーンも分かり易い。
美人独身女将が市井の出来事に関わる物語として、映像化されていても可笑しくないと思う(もし既存なら申し訳ありません)。事件が起きる訳ではなく、捕り物劇でもない為、ドラマとしては成立しないのだろう。
それにしてもお瑛さん。たった1冊の中で、過去に淡い恋心を幾つ抱いていた事やら。この分では、シリーズを通して読むと、相当な数になるだろう。
更に、よくもまあ、訳ありな人との関わりが多い事(そうでなければ物語にならないが)。
感想としては、淡々と物語が進み、切なさや悲しみが込み上げてくるような作品ではない為、同じ市井物なら、個人的にはやはり宇江佐真理さんに軍配。
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