うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

この世の春 上下刊

2017年12月18日 | 宮部みゆき
 2017年8月発行

 宮部氏の作家30周年に当たる、21世紀最強のサイコ&ミステリー大作。

上刊
第一章 押込(おしこめ)
第二章 囚人(めしゅうど)
第三章 亡霊
第四章 呪縛
第五章 暗雲
第六章 因果

下刊
第七章 闇と光
第八章 解明
第九章 愛憎
終章 この世の春

 押し込めに合った元藩主を蝕む病い。村を焼き討ちされた青年の復讐。勾引しで消えた子どもたち。正体不明の悪意が怪しい囁きと化して、人々を蝕み…。

 冒頭「孤宿の人」を彷彿とさせる蟄居騒動に巻き込まれる主人公。だが、それは単なる乱心・蟄居といった物語ではなく、それに至までの過去の出来事に込められた怨念や怒りが人々を蝕む様子や、根底に潜む問題の解決など、とにかく絡み合う過去の繋がりに圧倒される。
 完成度は完璧。宮部氏の洞察力や文章力に今更ながら感銘を覚える作品。読み応え有り。

主要登場人物
 各務多紀…元下野北見藩・作事方組頭・数右衛門の娘、嫁ぎ先を離別
 田島半十郎…下野北見藩・検見役・角兵衛の子息、無役、多紀の従兄弟
 北見重輿…下野北見藩・六代藩主、乱心のため隠居
 石野織部…元下野北見藩・江戸家老、五香苑館守
 白田登…重輿の主治医
 伊東成孝…元下野北見藩・御用人頭
 脇坂勝隆…下野北見藩・筆頭家老
 お鈴…五香苑の女中
 おごう…五香苑の女中
 寒吉…五香苑の男衆、元白田家の家人
 五郎助…五香苑の家守