うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

斎藤一~新選組三番隊組長~

2013年07月20日 | ほか作家、アンソロジーなど
菊池道人

 2003年11月発行

第一章 池田屋事件
第二章 油小路
第三章 必殺! 突き技ーー天満屋事件
第四章 敗走
第五章 新生の地 会津
第六章 春なき新天地
第七章 昨日の敵は今日の友なれど
第八章 侍たちへの挽歌ーー西南の役
終 章 永遠なれ 会津魂

 新選組屈指の剣豪であり、三番隊(組)組長の斎藤一の半生を綴ったノンフィクション的要素の多い一冊。
 明石藩足軽であった父が、御家人株を購入し、武家の身分になった山口家(斎藤一の本名)はだったが、つまらぬ諍いから旗本の子息を斬り殺してしまった斎藤は、京都へ逃れ、やがて旗揚げした壬生浪士組(新選組の前身)の門戸を叩く。
 物語は、そんな経緯を交えながら、新撰組最大の見せ場である池田屋事件から始まり、戊辰戦争での敗走により会津へと転戦。
 会津開城後、越後高田藩での謹慎→陸奥斗南藩での苦渋の生活→警視庁に出仕後西南戦争への参戦。そして死に至までを、莫大な資料から克明に描いている。
 従来の寡黙で暗殺を得意とする、陰の男としてのイメージの強かった新選組の斎藤ではなく、新政府への疑念、会津への郷愁、二度の結婚による私生活、山川浩(大蔵)ら、旧会津藩士との交流などをとおして、人間臭い喜怒哀楽も描かれている。
 
 会津戦線を離れようとする土方歳三に、「今、会津を離れるは義に非ず」。このひと言にしびれ、新選組内で一番好きな人物が、斎藤一である。大変興味深く項をめくった。
 斗南への移動方法や、そこでの至急米の事など、詳しい数値まで引用され、作者の並々ならぬ知識がそこかしこに溢れ、実に興味深いのだが、当方の認識が違っていたのか、年代に違いがみられる部分があり? の疑念が浮かぶ場面が数カ所感じられた。
 だが、斎藤一を知る上では、貴重な一冊と言えるだろう。


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