うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

花見ぬひまの

2013年04月29日 | 諸田玲子
 2012年9月発行

 時代や環境に翻弄されながらも、真実の恋に身を焦がした女たちの七つの生き方、そして愛し方を描いた作品。

おもしろきこともなき
対岸まで
待ちわびた人
おもいあまりて
鬼となりても
辛夷の花がほころぶように
心なりけり

おもしろきこともなき
 勤王の志士たちの手助けをする望東尼。志しを同じくする隣家の北岡勇平に次第に心を惹かれるも、それは胸の内に秘めなくてはならない思いだった。
 そんなある日、高杉晋作・おうのを匿いおうのの正直でひた向きな晋作への姿に感銘する。
 だが、時は勤王派へは未だ厳しく、北岡勇平は何者かに惨殺される。
 夫・野村新三郎清貫亡き後、髪を下ろし、平尾村にあった自分の山荘に勤皇の士を匿ったり、密会の場を提供するなど、勤王派として時代を生きた実存の野村望東。言わずと知れた高杉晋作を登場させ、尼僧の成せぬ恋心を晋作の歌になぞる。切ないラストが印象的である。

主要登場人物
 野村望東尼..歌人、勤王家、筑前国福岡藩黒田家家臣・浦野重右衛門勝幸の娘
 北岡勇平..岡藩黒田家徒罪方
 高杉晋作(谷梅之助)..長門国長州藩毛利家家臣
 おうの..高杉晋作の妾

対岸まで
 身分違いとは知りつつ、武家の高林勘七郎とおつがは、何時しか惹かれ合う仲になっていた。蓮月尼に相談をすると、2人にと手ずからの歌を彫った湯飲みをくれたのだった。
 ある日、蓮月尼に住まいに押し込みが入る。だが、その押し込みは間もなく毒により命を落とすのだった。毒入りと思われるはったい粉は、湯飲みの礼に勘七郎が届けたものであった。
 やがて勘七郎は姿を消し、おつがは兼ねてよりの縁組みを受け入れ嫁ぎ2年。
 西賀茂村に隠棲する蓮月尼が、若い男と祖母と孫のように暮らしていたと知る。それは追っ手から逃れた勘七郎であったも、隠遁先を知られ再び姿を消したのだった。
 おつがが次に勘七郎に出会ったのは、惨たらしい勘七郎の遺骸であった。
 自分の歌を彫り込んだ、陶器蓮月焼で知られる蓮月尼が静かに見守る中、おつがの狂おしい恋心を描いている。
 蓮月尼暗殺者に向けられた刺客なのか、高林勘七郎の正体は最期まで不明でであるが、実直な人柄と、正義への苦悶などを見事に表現している。

主要登場人物
 おつが..京聖護院村植木屋の娘
 高林勘七郎..郷士の三男、河原町町医者・頌庵の弟子
 蓮月尼..京都知恩院の寺侍大田垣光古の養女、聖護院村の陶芸師
 
待ちわびた人
 赤穂浪士の討入りにより、御家断絶となった吉良家の家臣の娘・佳江は、両親を失い、ひとり茶店の女将となり、行く方知れずになった村山甚五右衛門を待ち続けている。
 そこに、討入りに参加した四十七士のひとりである中村正辰勘助の遺児が、伊豆大島から赦免になるため、出迎えに来た白河在の男が立ち寄った。
 流刑先の諏訪高島城で若き命を散らした吉良家当主・左兵衛義周と同じ年頃の遺児が無事帰還するとあって佳江は穏やかではないと同時に、もしや甚五右衛門が、その命を狙うのではないかと不安が過る。
 案の定、甚五右衛門らしき男の姿があったが、仙桂尼のとりなしで、事なきを得たと聞き安堵したが、甚五右衛門の残した絵馬を手にした時、待つだけではなく彼を追う決意を固める。
 運命に翻弄されながらも、希望を捨てず逞しく生きる女の姿を描いている。物語のキーである仙桂尼と村山甚五右衛門は語りのみの登場だが、存在は大きい。
 静かな流れの話ではあるが、鼻の奥が痛くなる感銘の残る作品である。
 個人的に村山甚五右衛門をに関しては山吉新八郎、新貝弥七郎と共に上杉から吉良家に入った義周の近習として、討入り後がほかの2人に反してあやふやなので尚更、また目から鱗であった。
 因に山吉新八郎は、ここで描かれている通り左兵衛義周を看取り、越後上杉藩に戻り生涯を閉じた。新貝弥七郎は赤穂浪士の討入りによって討ち死に。

主要登場人物
 佳江..下谷稲荷町門前町・茶店の女将、旧吉良家家臣の娘
 仙桂尼..下谷稲荷町宗源寺の庵住
 村山甚五右衛門..旧高家肝煎吉良家当主・左兵衛義周の近習(出羽米沢藩上杉家から)
 白河在の男 
 中村忠三郎..播磨国旧赤穂藩浅野家・祐筆兼馬廻役・中村正辰勘助の嫡男

おもいあまりて
 心通わぬ夫との暮らしの中で出会った、旅の俳諧師・湖白に惹かれるなみは、共に婚家を出奔する。
 そして幾年月が流れ、故郷にほど近い直方で尼僧として暮らしていたなみだったが、一度で良い、故郷を見て、祖先の墓前に手を併せてからみまかりたいといった思いで、縁者のまんに伴われ、数十年振りに筑後川を渡り故郷の大地に立つのだった。
 そこで、見覚えのある着物を着た、童女・なみに出会う。童女の後を追うと、そこには鬼籍に入った筈の湖白後ろ姿が…。なみが目を覚ました時には、童女の幻影も消え果てていた。それは夢か幻か…。
 収録中、唯一のシュールな作品である。瞬時には、不仲の夫との恵まれない生活を余儀なくされていた女が、真実の恋を知るといった単純な話にも読み取れるが、その中に含まれたメッセージは深いものがあり、それを理解するのは難解であり、読み手の人生経験も試されるだろう。
  
主要登場人物
 諸九尼(なみ)..筑後唐島庄屋・松永家の娘→万右衛門の妻→筑前国直方在の尼僧・俳諧師
 まん..湖白の甥の娘(実はなみと万右衛門の実子)
 湖白(浮風)..俳諧師、松尾芭蕉の弟子・志太野坡の門人、元筑前福岡藩黒田家書記役
 ゑん女..志太野坡の門人、なみの近所の女房
 万右衛門..筑後川南方・庄屋、なみの元夫

鬼となりても
 美しい尼僧・志燕尼と恋に落ちた木綿屋庄左衛門こと東瓦が、彼女の切なくも悲しい生涯を語る。
 妾の子として産まれた志燕尼こと志えんは、旦那に死なれ放浪を繰り返す母と2人、各地を転々としながら生きてきたが、常に母を脅かしながらも追い回す男を、ついに自らの手にかけてしまった。後に、その男こそ、実父であると知った志えんは若くして髪を下ろす。
 だが、男は未だ死んではおらず、志えんが実の子と知り、自ら入水したのだった。
 東瓦と知り合うことで、俳句を通し心を通わせ穏やかな晩年を迎えたであろう志燕尼の後半生の物語であるが、出家までの経緯とは裏腹に、なぜか作者の意図が読み取り難い。

主要登場人物
 志燕尼(志えん)..糸海社の門人、有岡の酒問屋の庶子
 木綿屋庄左衛門(東瓦)..摂津伊丹野田村大醸造家の隠居、俳諧・糸海社の師

辛夷の花がほころぶように
 おあんは、故郷の讃岐丸亀から逃げるようにして瀬戸内海を渡ったのだった。そして灘屋で賄い方の女中として働くことができ束の間の安堵感を抱いていた矢先、丸亀藩の役人が灘屋に逗留することになった。そして、役人と共にやって来た水夫に見付けられ、過去の殺人を脅される。灘屋から逃げた先は、隣の禅寺。そこの国師によって尼僧の貞閑尼に預けられるのだった。
 やがて、件の丸亀の水夫が、あおんに連れなくされた腹いせに、おあんに思いを寄せる東太に盗みの罪を被せたと知る。どうにかして東太を救いたいのだが、既に東太は仕置にかかったのだと知らされるのだった。
 我が身を攻めるおあんであったが、ほっとする結末に胸をなで下ろす事が出来た。国師、貞閑尼の働きかけで、おあんと東太は結ばれるであろう終わり方である。
 
主要登場人物
 おあん..播磨網干湊廻船問屋・灘屋の下女
 東太..灘屋の手代
 貞閑尼..不徹庵の庵主

心なりけり
 福岡藩で、尊攘派弾圧の動きが強くなり、姫島へ流された望東尼は、、高杉晋作の指揮により福岡脱藩志士・藤四郎、多田荘蔵らの手引きで、下関に招かれ、勤皇の豪商・白石正一郎宅に匿われる運びとなった。
 だが、望東尼が下関に着いた頃、胸の病を発症していた晋作は、病いの床に着き明日をも知れに命であった。
 懸命に看病をするおうのに、妾・おうの、正妻・まさ。双方の胸中を察する望東尼は、晋作の妻子に知らせるよう進言し、渋るおうのに親子そして家族のいにしを語り聞かせる。
 家族、友に見守られ晋作はみまかり、望東尼はそれを見届けると山口へと旅立つ。
 思い人・北岡勇平を暗殺した藤四郎に対しても寛大な望東尼の静かな恋と、おうのの苦しい胸中、嫉妬心など激しい女心を対比しながら読み進めた。
 第一章「おもしろきこともなき」の続編である。

主要登場人物
 野村望東尼..歌人、勤王家、筑前国福岡藩黒田家家臣・浦野重右衛門勝幸の娘
 高杉晋作(谷梅之助)..長門国長州藩毛利家家臣
 おうの..高杉晋作の妾
 まさ..高杉晋作の妻 

 良い作品に出会った。諸田氏のこれまでとは違った作風と題材に、引き出しの多さを感じ入る。そして違った一面も読み取れ、共感した。短編で、かつ重くないながらも情緒的にまた、切ない女心をここまで表現出来るのだといった、氏にとっての代表的な作品と言えるだろう。
 長州弁や福岡弁などを巧みに用いているので、九州の方かと思いきや、静岡の方であった。そのプロとしての緻密さぬにも頭が下がる思いである。並びに、実存した人物の史実も忠実に織り込まれている。
 派手な山場がない分、読者を引き付けさせる文章力は素晴らしく、また、シンボリックとなっている各章の美しい日本語のタイトルが胸に沁みる。カバーの挿絵がしっとしとして、内容に合っている。
 ほとんどの章が、尼と俳諧の組み合わせなので、ひとつひとつ整理しないとエピソードが入り混じり、項を目繰り返すことも何度かあったが、これは当方が俳諧に疎いせいであろう。
 さらりと書かれた七つの女心。そのまま読むには読み手を選ばないが、作者のメッセージを受け止めるには、若年者には難解であろうと思われる。大人の小説。



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不忠臣蔵

2013年04月26日 | ほか作家、アンソロジーなど
井上ひさし

 1985年12月発行

 元禄15年12月15日未明、赤穂浪士47名が両国の吉良邸に討入り本懐を達成した。この義挙に参加しなかった旧赤穂藩士。彼らはなぜ討入りを行わなかったのか。その理由と彼ら19名のその後の生き様を一話完結で綴った短編集。
 厳密な歴史考証と豊かな想像力でを問い直した、「第20回吉川英治文学賞」受賞の傑作。

小納戸役 中村清右衛門
江戸留書役 岡田利右衛門
大坂留守居役 岡本次郎左衛門
江戸家老 安井彦右衛門
江戸賄方 酒寄作右衛門
馬廻 橋本平左衛門
江戸給人百石 小山田庄左衛門
江戸歩行小姓頭 中沢弥市兵衛
江戸大納戸役 毛利小平太
小姓 鈴木田重八
浜奉行代行 渡辺半右衛門
在々奉行 渡辺角兵衛
武具奉行 灰方藤兵衛
馬廻 片山忠兵衛
近習 村上金太夫
江戸留書役 大森三右衛門
舟奉行 里村津右衛門
元ノ絵図奉行 川口彦七
江戸給人百石 松本新五左衛門 計19編の短編

小納戸役 中村清右衛門

主要登場人物
語部   越前屋定七...神田明神下一膳めし屋の主
聞手   熊...神田明神下の大工
     六...神田明神下の左官職
登場人物 中村清右衛門...神田明神下中村道場の主、播磨国旧赤穂藩浅野家小納戸役
     吉富五左衛門...肥後国熊本藩細川家小姓組(磯貝十郎左右衛門の介錯人)

理由 内匠頭が何故に上野介に対峙し、突かずに振りかぶって切りつけたのか。殺すつもりなら突くべきだった。また、音曲嫌いの内匠頭には、長時間に渡る饗応の能が辛く、癪もちでもあったことなどから、逆上し突発的に斬り付けたのではないかとの疑念を大石内蔵助に打ち明けたところ、「討ち損じた時の二陣に残れ」と命じられた。

江戸留書役 岡田利右衛門

主要登場人物
語部   梶川与惣兵衛頼照...旗本・大奥御台所付き留守居番(内匠頭の凶行を止めた人物)
聞手   織田刈右衛門(岡田利右衛門)...梶川家物書役、播磨国旧赤穂藩浅野家江戸留書役
登場人物 丹六...大坂道頓堀西竹本座の表方

理由 殿中にて吉良を討ち果たせなかった内匠頭の無念を、それを留めた梶川与惣兵衛頼照に向け、刺客として同家に潜入。だが、梶川の人物や当時の回想を聞くにつけ、思いは果たせず、梶川家物書役として書き留めた松の廊下の事件を浄瑠璃の本に書き留める。

大坂留守居役 岡本次郎左衛門

主要登場人物
語部   向井将監忠勝...旗本・江戸船手頭
聞手   岡本次郎左衛門...向井家用人、播磨国旧赤穂藩浅野家大坂留守居役

理由 身体が不自由で討入りに参加できないため、付け火をし、仲間が吉良邸の図面を書くための手引き役。

江戸家老 安井彦右衛門

主要登場人物
語部   高梨武太夫...安井家用人
     多胡外記...岩見国津和野藩亀井家筆頭家老
登場人物 安井彦右衛門...隠棲、播磨国旧赤穂藩浅野家江戸詰家老
     日庸取頭...前川忠太夫の手下

理由 内匠頭の性格からして一波乱あることを案じ、竹に肩代わりを願うも、内匠頭の逆鱗に触れ、「大役を務めた後は、汝の首をはね てやる」と脇息投げ付けられ、この時点で浅野家を去る決意を固める。

江戸賄方 酒寄作右衛門

主要登場人物
語部   妙海尼...泉岳寺側清浄庵庵住、元堀部家下女・お順
     酒寄作右衛門...白金四丁目そば茶屋の主、播磨国旧赤穂藩浅野家江戸賄方
登場人物 堀部弥兵衛金丸...播磨国旧赤穂藩浅野家前江戸留守居
     堀部安兵衛武庸...播磨国旧赤穂藩浅野家馬廻役

理由 討入りに参加せず、商人になった旧藩士たちが不忠者とされ、商いが立ち行かなくなったのを案じた妙海尼が、彼らは縁の下で義士を支えていたと論じ、それを受け、酒寄作右衛門も己も縁の下の義士であったと話して欲しいと頼む。
 ※脱退の理由はなしだが、義士への献金のための商いか?また、妙海尼は、堀部安兵衛の妻を名乗るも実は下女であった。

馬廻 橋本平左衛門

主要登場人物
語部   近松門左衛門(信盛)...戯作者、元越前国吉江藩松平家家臣
     天満屋惣兵衛(佐々小左衛門)...大坂曽根崎新地蜆川遊女屋の(雇われ)主、播磨国旧赤穂藩浅野家足軽頭
登場人物 橋本平左衛門...播磨国旧赤穂藩浅野家馬廻役

理由 死地に向かう前に、馴染みの遊女を身請けして善行を施そうと刀を売りに出したのを、仲間に詰られ、死を恐れぬ潔白の為に、遊女・お初と相対死(心中)を果たす。
 「早見家文書」によれば、淡路屋のお初という遊女と元禄14年11月6日の夜に心中。

江戸給人百石 小山田庄左衛門

主要登場人物
語部   小山田一閑(十兵衛)...庄左衛門の父親、元播磨国旧赤穂藩浅野家山鹿素行学問指南
     大石内蔵助良雄...播磨国旧赤穂藩浅野家筆頭家老
聞手   堀内伝右衛門...肥後国熊本藩細川家白金下屋敷用人

理由 娘の婚家に身を寄せる父が肩身の狭い思いをしているのを案じ、旧浅野家御抱医師の息子・寺井玄達金策するも適わず出奔。25両を盗んで出奔かとおもわせる。
 事実は、同志の片岡高房から金5両と小袖を盗んで逃亡。父・一閃は詳細を知りこれを恥じて12月18日に切腹。

江戸歩行小姓頭 中沢弥市兵衛

主要登場人物
語部   白壁屋勘八...麻布今井町豆腐屋の主
登場人物 市兵衛(中沢弥市兵衛)...白壁屋奉公人、播磨国旧赤穂藩浅野家歩行小姓頭
     落合与左衛門...播磨国旧赤穂藩藩主・浅野内匠頭長矩室瑤泉院(阿久里)奥様衆

理由 内匠頭の後室・瑶泉院に懸想し、彼女の死に殉じて自刃。

江戸大納戸役 毛利小平太

主要登場人物
語部   木村岡右衛門貞行...播磨国旧赤穂藩浅野家馬廻役・絵図奉行
聞手   波賀清太夫...伊予国松山藩松平家三田中屋敷世話役
登場人物 毛利小平太...播磨国旧赤穂藩浅野家江戸大納戸役
     大石主税良金...播磨国旧赤穂藩浅野家家臣

理由 茶器屋・岡崎屋の奉公人に化し、吉良邸の陣容を探中、間者であると知れ、吉良方の目を欺くため、討入り当夜、遊女屋への逗留を指示される。

小姓 鈴木田重八

主要登場人物
語部   小関岡文之進...元上野国伊勢崎藩酒井家旗組小頭
聞手   村尾勘兵衛...上野国伊勢崎藩酒井家目付役
登場人物 玉野平八(鈴木田重八)...本所林町五丁目堀内道場食客、播磨国旧赤穂藩浅野家小姓

理由 潜伏中に名乗った名が、仇持ちだったため、間違われて付け狙われ重傷を負い討入りならず。

浜奉行代行 渡辺半右衛門

主要登場人物
語部   青山武助...三河国岡崎藩水野家小姓組(間十次郎の介錯人)
     渡辺半右衛門...播州赤穂新浜塩田の浜男、播磨国旧赤穂藩浅野家浜奉行代行
登場人物 間十次郎光興...播磨国旧赤穂藩浅野家勝手方吟味役

理由 幼少の頃より、間十次郎光興と事を興すと、第三者に禍が降り掛かるため、どちらかが討入りを断念し、互いの老いた親の面倒を見るといった盟約の籤に外れたため。

在々奉行 渡辺角兵衛
主要登場人物
語部   渡辺角兵衛...肥前国佐賀藩鍋島家領内・金立村黒土原にて隠棲、播磨国旧赤穂藩浅野家在々奉行
聞手   田代又左衛門陣基...肥前国佐賀藩鍋島家御書物役 
登場人物 山本神右衛門...元肥前国佐賀藩鍋島家御書物役、金立村黒土原にて隠棲  

理由 山本神右衛門常朝に主君のために命を捨てるのは下下下の忠であり、上上吉の大忠節とは、主君の御心入れを直し、藩を固め申すこと」。「大石は、あらかじめ主君が間違いを起こさぬよう気配りをなし、国家の安泰をはかるべきだった」と説かれ、感銘を受ける。

武具奉行 灰方藤兵衛

主要登場人物
語部   灰方藤兵衛...京都伏見御香宮門前にて隠棲、播磨国旧赤穂藩浅野家武具奉行
聞手   村木隼人...京都伏見御香宮門前にて隠棲、元常陸国牛久沼山口家(旗本領)浪人→元京伏見御香宮門前江戸元結店の主
登場人物 お丹...藤兵衛の長妹、播磨国旧赤穂藩浅野家京留守居役・小野寺十内の妻

理由 村木隼人と出会い、互いに恋に落ちる。その後、村木は身を呈して、灰方家の窮地を救い失明。村木の面倒を見ながら共に暮らす決意をする。

馬廻 片山忠兵衛

主要登場人物
語部   片山忠兵衛...奥絵師・狩野常信の弟子、播磨国旧赤穂藩浅野家馬廻役
聞手   鎌田軍之助...肥後国熊本藩細川家用人

理由 第3代肥後国熊本藩主・細川綱利の亡き愛妾・花宴を描く依頼を受けるも、その絵の内股の黒子(片山忠兵衛は筆が落ちたと説明)に激怒した綱利の命で、詮議のために細川家に軟禁される。

近習 村上金太夫

主要登場人物
語部   徳治...廻り髪結
聞手   鵜飼惣右衛門...長門国長府藩毛利家家中(前原伊助の介錯人)

理由 乞食に身をやつし吉良邸の抜け穴の在り処を探っていたところ、酔った長屋の住人たちに、生き埋めにされる。

江戸留書役 大森三右衛門

語部   竹村一学...馬喰町町医者、元信濃国上田藩仙石家大納戸方
聞手   大森三右衛門...播磨国旧赤穂藩浅野家江戸留書役
登場人物 弓削佐次馬...信濃国上田仙石家内証用人 

理由 信州上田藩千石家内証用人・弓削佐次馬と、蕎麦饅頭の食べ比べの末、口論となり刃傷に及び、その弟・竹村一学により仇持ちとなる。主君の恨みを晴らすまでの猶予を懇願するも、「自縄自縛だ」と、己の運命を感じ入る。
 討たれたのだろうと思わせる。

舟奉行 里村津右衛門

語部   里村津右衛門...讃岐国丸亀近く塩浜(塩田)の親方、播磨国旧赤穂藩浅野家舟奉行
聞手   間喜兵衛...播磨国旧赤穂藩浅野家お勝手吟味役、里村津右衛門の義兄弟・従兄弟
     新六...間喜兵衛の二男、里村津右衛門の養子

理由 殿中で刀を抜けば、身は切腹。家臣は路頭に迷う。天下の御法に反して上野介の首級を上げれば、残されて泣くのは女であるの思いから、内匠頭と大石を非難し、武士を捨てる。
 だが、元里村家の養子であった新六の激しい罵りに、腰抜けでないことの証のために石見銀山を服毒し自裁。

元ノ絵図奉行 川口彦七

語部   林兵助...肥後国熊本藩細川家接伴人
聞手   潮田又之丞...播磨国旧赤穂藩浅野家筆頭国絵図奉行
登場人物 川口彦七(久造)...公義表絵師・狩野良信の弟子、播磨国旧赤穂藩浅野家元ノ絵図奉行
     渡辺一蔵...南町奉行所年番与力

理由 川口彦七が顔を潰された遺骸で見付かり、下手人として久造が捕まる。その久造は、どんな拷問にも口を割らなかったが、赤穂浪士が討入ったと聞くと、己が川口彦七であると名乗るのだった。川口彦七であるとなれば殺し自体が成立しなくなる。果たして久造は川口彦七なのか…。

江戸給人百石 松本新五左衛門

語部   お咲...八郎右衛門新田の開拓者八郎右衛門の孫、元津田家・安基姫付き下女
聞手   坊ちゃん...小普請組旗本・津田家の跡取り、松本新五左衛門の嫡男
登場人物 安基姫...津田家の娘
     松本新五左衛門...播磨国旧赤穂藩浅野家江戸給人・松本隼人の養子→津田家(安基姫)婿養子
     三枝左兵衛...小普請組旗本、松本新五左衛門の実兄

理由 浅野家断絶により、実兄から旗本・津田家への婿養子にいかされ、討入りを断念。だが、討入り後、浪士が義士と崇められるや、養子縁組解消と自刃を迫られ切腹。

 討入りの後、そこに名を連ねなかった旧赤穂藩士の置かれた立場と辿った道。そして彼らは討入りを如何に受け止めたのだろうか。
 彼らが、討入り不参加を選ぶに至った過程と、現況を、実存した旧赤穂藩士19名の近しい人物が語り部となり物語は進行する。
 小説になっているが、緻密な背景考証により、かなり真実に近い証言となっている。
 特に、最後の最後まで盟約に名を連ね、討入り当日の配置も裏門方に記録されている毛利小平太の失踪は謎のままであり、多くの作家が手腕を振るう読ませどころとなり、ドラマチックなシーンの筆頭に上げられる人物である。
 その毛利小平太を井上氏がどう料理するのか、興味があった。
 また、19人ものその後を史実に忠実に脚色しながらも、全てがドラマになるようなストーリに仕上がっており、読み応えあり。切ない結末も多く、華々しく散った46人よりもなお、深みのある死や無念の死を感じ得た。
 四十七士の忠臣蔵よりも、遥かに資料も資料も少なかったであろう彼らをここまで書き分けるとは、頭が下がる。井上氏の達者な文章力もさることながら、名作と言っても過言ではないだろう。
 また、本文中には、浪士潜伏中の住まいや商い、好みの食べ物から、当時の風潮、討入り便乗商売など多岐に渡り織り込まれている。元禄時代、そして赤穂浪士「忠臣蔵」を知る上で、資料としてもかなり興味深く、「忠臣蔵」よりも正確かつ中身の濃い一冊である。
 かなり共鳴を受けた一冊であるが、読むのにかなりの時間を要した。歴史好きで浅野内匠頭刃傷事件に詳しいと自負する当方でさえ、背景や氏素性に混乱する場面もあったので、時代小説好きだけでは些か難解かも知れないだろう。当方も、更に読み返すつもりである。そしてもっと簡潔かつ統一性をもたせて書き直し更新します。
 日本人の忠義の美徳とされる「忠臣蔵」ファンにとっては目から鱗の真実がここにある。
 余談ではあるが、当方は、荻生徂徠が説いた「浅野内匠頭は吉良上野介との諍いにて切腹に至ったのではなく、殿中での法度に触れた為である」の節に賛同。
 松の廊下の事件以前にも、江戸城内での刃傷は3件あったが、いずれも切腹、御家断絶である。
 中でも、春日局の曾孫に当たる稲葉石見守に至っては、その場で滅多切りにされている。
 大石内蔵助をもってしてこの事実を知らない筈もなく(何せ平成のど町人の当方さへ知っているのだ)、思うに赤穂浪士の討入りより丁度30年前の寛文12年2月3日の浄瑠璃坂の仇討を手本に、浪士たちの仕官を狙っての事と思うのだが、如何だろうか。






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つくもがみ、遊ぼうよ

2013年04月18日 | 畠中恵
 2013年 3月発行

 付喪神となり、話したり動き出したりする古道具たちと共に暮らす、古道具屋兼損料屋の出雲屋のちょっぴり不思議なファンタジー小説「つくもがみ貸します」の第2弾。


つくもがみ、遊ぼうよ
つくもがみ、探します
つくもがみ、叶えます
つくもがみ、家出します
つくもがみ、がんばるぞ
終           計5編の短編連作

 出雲屋の清次・お紅夫妻の、11歳になるひとり息子(長男・長女は夭折)十夜。近所に住む、幼馴染みの市助・こゆりと寝起きも食事も一緒にする間柄。
 そんな子どもたちにとって、出雲屋の付喪神たちは恰好の遊び相手である。
 気位高く、人とは直接話をしなかった付喪神たちであったが、相手が子どもでは、投げられたり、振り回されたりで、たまらずに悲鳴を上げ、いつしか子どもたちは元より、清次・お紅とも会話を交わす間柄となっていた。そして、子どもたちが巻き込まれる謎を解き、彼らの身を守ろうとするのだった。

つくもがみ、遊ぼうよ
 出雲屋の新参者・付喪神そう六の絵双六が、羽子板の胡鬼に乗っ取られ、十夜たち3人は双六の中に閉じ込められてしまった。
 そこから抜けるには、胡鬼の羽子・無患子と羽子板対決に勝たなければならない。
 羽子・無患子から、実に覚えの無い恨みを勝ったそう六のために、十夜と付喪神たちは、羽子・無患子の持ち主である伊勢屋のお三津の元を訪れ、その悩みと不安を解消する。

つくもがみ、探します
 出雲屋の付喪神たちが、突如現れた雛道具の付喪神たちと一戦を交える覚悟で出雲屋の2階に集結する一方、大人たちは、近頃、怪異が起きた後、盗賊に襲われる事件が続いていることから、夜は、十夜のみならず、清次とお紅もすおう屋か鶴屋に非難するように勧める。
 札差・大久屋が、深川の寮に雛人形を集めていると、噂を耳にした3人は、早々忍び込むのだが、そこは盗賊の隠れがとかし、大久屋共々人質にされてしまう。
 
つくもがみ、叶えます
 絵双六の独楽の付喪神と、独楽対決に挑むことになった十夜たち3人。
 そんなある日、近くの神社に菓子や玩具を供え詣でると、探しものが見付かると噂になっていた。
 先の一件で知合った、分限者の大久屋が、番小屋で山ほどの菓子を買い求め、どこぞに出掛けているらしい。
 実は、独楽の付喪神が欲に駆られて、勝手にお告げをしていたと知る。

つくもがみ、家出します
 絵双六の子とろ子とろ遊びで、十夜らに負けた付喪神たちは、腹いせに書き置きを残して家出を企んだ。
 目的地は御蔵蔵前・札差の大久屋である。だが、行き着いた先は、大久屋の甥であり、その財産を狙う甥の高国と孫四郎の元であった。彼らの良からぬ企みを知り、付喪神たちは必死で深川の出雲屋に帰ろうとするのだった。

つくもがみ、がんばるぞ
 願掛けをしていた行方知らずの娘・お兼が見付かり、大久屋は、霜降を崩しお兼を可愛がっている。
 そんなお兼が、十夜に「捨て子だ」と唐突に告げるのだった。清次とお紅は、十夜にその事実を告げなくてはならなくなった。そして十夜は、幼い心を痛める。
 それは、端から身代わりと承知していたお兼が、十夜こそ大久屋の実の子ではないかと勘ぐった妬みからであった。
 そしてお兼を担ぎ出し、大久屋の身代を狙う、高国と孫四郎ら親族によってお兼の身が危うくなり、寸でのところで十夜らと付喪神たちが身を救うのだった。

 面白い。独立した「つくもがみ、遊ぼうよ」として読んだ時には、毎章、子どもたちが双六の対決を絡めながら折り重なる事件を解決していく展開である。
 ただ、「つくもがみ貸します」の続編として期待していた時には、明らかにトーンが違い過ぎて清次・お紅の登場の少なさ(特にお紅)に残念な思いが残ってしまった。
 僭越ながら、畠中氏は、大分腕を上げてきたと感じる。物語自体は本当に面白く、計算されて書かれているのだ。
 十夜が実は大久屋の探し求める、実子ではないかといったニュアンスも最期まで残しながらも、清次・お紅がどれだけ彼を大切に実の親子以上に思っているかなど、出来事に情を絡めている。
 序章から十夜を拾いっ子ではないかと匂わせておいて、大久屋の登場と、彼の子探し。だが、その子は偽物であることが分かりながらも、もしやといった匂いを終章まで感じさせながらも、明らかにはせず、引っぱりながら読者の想像意識を書き立てると技法はお見事である。
 そして、前作との繋がりを後半、市助の父親であるすおう屋佐太郎が、実は前作でお紅と曰くのあった元日本橋唐物屋飯田屋の総領息子であることも明かしている。
 ただ、付喪神と子どもたちの関係など、全体のトーンが「しゃばけ」シリーズに類似していたのが気に掛かる。
 続編は難しいだろうと思われる作品であった。

主要登場人物
 十夜(とおや)...清次・お紅の二男
 市助...すおう屋の三男、十夜の幼馴染み
 こゆり...鶴屋の長女、十夜の幼馴染み
 出雲屋清次...深川・古道具屋兼損料屋の主
 お紅...清次の女房
 すおう屋佐太郎...深川・小間物屋の主、元日本橋唐物屋飯田屋の総領息子
 鶴屋平助...深川・料理屋の主
 お春...平助の女房
 大久屋...御蔵蔵前・札差の主
 そう六...絵双六の付喪神
 羽子・無患子...羽子板の胡鬼
 野鉄...蝙蝠の根付けの付喪神
 月見夜...掛け軸のの付喪神
 うさぎ...櫛のの付喪神
 猫神...猫の根付けの付喪神
 利休鼠...鼠の根付けの付喪神
 裏葉柳...青磁の香炉に身を代えた男
 五位...煙管の付喪神
 黄君...琥珀の帯留の付喪神
 お姫...姫様人形の付喪神
 唐草...金唐革の紙入れの付喪神
 青海波...守袋の付喪神




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世間の辻~公事宿事件書留帳十四~

2013年04月12日 | 澤田ふじ子
 2007年1月発行

ほとけの顔
世間の辻(つじ)
親子絆騙世噺(おやこのきずな だましのよばなし)
因果な井戸
町式目(ちょうしきもく)九条
師走の客 計6編の短編連作

 京都東町奉行所同心組頭の長男として生まれながら、訳あって公事宿(訴訟人専用旅籠)鯉屋に居候する田村菊太郎が、人の心の闇に迫り難題を解決するシリーズ第14弾。

ほとけの顔
 千両ヶ辻の大店である糸問屋・櫂屋の主・宗三は、横柄傲慢な女房のお美佐に愛想をつかし、着の身着のまま櫂屋を飛び出してしまった。
 以後12年、六波羅密寺付近の長屋に住み、陶工として働いてた宗三が亡くなったと知り、お美佐は、世間体を考え櫂屋から葬儀を出したいので、宗三を取り戻して欲しいと鯉屋に依頼する。
 
世間の辻(つじ)
 御池両替町の裏店の長屋に住む石工の松蔵は、惚けた(認知症)母親・お登世を抱え、働く事も出来ずに日々貧窮していた。一時は長屋の店子たちがお登世の面倒を見てくれていたのだが、他人の手に余る奇行に、働く事も侭ならなくなっていったのだった。
 そしてついに八条村の親戚の許に身を寄せると、長屋を出て行くのだが、その実、母子は、無住の寺・妙泉寺に移り住み、供物を食べ糊口を凌いでいたのだ。
 だが、それも尽き、疲れ果てた松蔵はお登世を殺害し、自らも自殺を図るが死に切れずに、吉左衛門、佐之助によって鯉屋に運ばれる。
 そして全てを察した恩情ある奉行の裁きが下される。

親子絆騙世噺(おやこのきずな だましのよばなし)
 三条・富小路の大店であるやきもの問屋・檜屋のひとり娘・お鈴が病いの為に亡くなり、悲嘆に暮れる主・久兵衛であったが、店の将来を考え跡取りを据えなくてはならない。
 そこで、産まれ落ちると同時に養子に出したお鈴の双子の妹を探し出して欲しいと鯉屋に依頼する。
 当時の産婆に目星を付けた菊太郎だったが、産婆・お豊とその息子の卯吉は全うな暮らしをしておらず、檜屋から大金をせしめる腹積もりで一計を企てていた。
 漸く辿り着いた妹娘のお福は、実に真っ当な意見で、久兵衛の勝手な思いを否定するのだった。

因果な井戸
 呑み足りずに、ふと一軒の居酒屋に入った菊太郎は、そこで凄惨な呑み方をしている市助という俥(くるま)職人と、一見してならず者とわかる2人が気になった。
 話の内容に耳を澄ますと、市助は、賭博の借金を自らの死をもって購うらしい。ただ事では無いと、後を付けた菊太郎は、ならず者2人は、俵屋町の昆布商・枡屋彦十郎の屋敷へと入り込み、そこの井戸に市助を投げ込まんとしていた。
 それは彦十郎が、枡屋に隣接して豆腐屋を営む実弟・富之助に井戸の水を使わせず、商いが立ち行かなくなるようにと仕向けた作であった。
 寸でのところで、悪事を未然に防いだ菊太郎は、首魁である賭場の胴元・椹木や四郎右衛門始め、関係者を鯉屋に呼び付け裁定を下す。

町式目(ちょうしきもく)九条
 二条・麩屋町で筆屋・松栄堂の隠居・お栄は、実子がおらず、従兄弟の子・安二郎を養子に向かえ、成人してからは草履屋の娘お民を嫁に迎え、孫にも恵まれていた。
 だが、5年前に夫・久右衛門が他界し、家督を譲ってからは、久右衛門が慈善で行っていた寺子屋を閉めたばかりか、お栄に対しても親身ではない。
 ある日安二郎一家は、お栄に留守番をさせ、高尾に花見に出掛けてしまう。そんなお栄ひとりの留守宅に泥棒が忍び込み…。
 高瀬川筋の船荷人足・六助と名乗った泥棒は、生活苦の中、娘が病いに陥りその薬療代目当ての仕業と知り、お栄は臍繰りを六助に与え、彼におぶわせて大津の元奉公人の元に実を寄せるのだった。
 奉行所、鯉屋、そして町年寄を挟んで、お栄の行く末が明るい未来へと繋がっていく。

師走の客
 公事宿に頼み事を抱え、30余年振りに京の土を踏んだ近江彦根の金物屋の主・富屋宇兵衛は、偶然に出会った源十郎に伴なわれ、鯉屋の客となった。
 その依頼とは、30余年前に宇兵衛が渡り中間だった頃、喧嘩の助太刀に引き出され、5年の遠島刑を受け隠岐島へ流されている間に、行く末を誓い合ったお初が死んだと知り、線香のひとつも手向けたいのだが、お初の実家である小間物屋・丹波屋も火事で焼失し、家族の行方も分からないと言う。
 事が事だけに、源十郎、下代の吉左衛門、菊太郎、彼の異母弟・鐵蔵が内密に探索を行う。
 そして漸く突き止めたのは、お初が、屋宇兵衛の娘を産んでいた事実だった。父子の名乗りを上げずに、対面し、束の間の幸せの後、屋宇兵衛は当時の中間仲間に逆恨みされ、刺されてしまう。

 同シリーズを書かれた順に読んでいない為、つい前が九巻目だったのだが、家督を譲った店の隠居が、養子夫妻に邪見にされるといった話が続いた。
 こういった事例が当時は結構多かったのではないかと考えさせられる。
 余談ではあるが、江戸時代奉公人が主を殺傷した場合は、打ち首獄門。その逆の場合は然程の罪に問われないらしく、実に理不尽だ。命は身分には関係非ずと思っていたのだが、確か澤田氏の後書きだったと記憶するが、
奉公人が主を殺めて財産を盗んだりする事件が多かったのだろうと記されていたのを読み、目から鱗。
 そうだ。ひとつの事柄でも見方によって違い、あらゆる角度から分析しなくては判断出来ないと悟った次第。
 「町式目九条」の隠居・お栄の粋な計らいや、老齢とは思えぬ思い切った判断、そして行動力には笑みがこぼれる。
 そして同シリーズ中、本作品に、ついにやり切れない空しさや悲しさの募る話が登場した。「世間の辻」がそれである。これは冒頭から鼻の奥がつんとするような哀れな話であり、目頭が熱くなった。
 物語を読んで後にカバーを見ると、その挿絵さえも物悲しく見える。
 ただ、最期は澤田氏らしく、一筋の光を含めた終わり方をしているのが救われる。
 また、「師走の客」もラストシーンで宇兵衛が刺されるのだが、これは致死に至ってはおらずに、刺した相手を改心させるといった捉え方の出来る終幕である。
 
主要登場人物(レギュラー)
 田村菊太郎...公事宿鯉屋の居候、田村次右衛門の庶子
 田村銕蔵...京都東町奉行所・吟味役同心組頭、菊太郎の異母弟、田村次右衛門の嫡子
 鯉屋源十郎...大宮通り姉小路・公事宿鯉屋の主
 多佳...源十郎の妻
 吉左衛門...鯉屋の下代(番頭)
 喜六...鯉屋の手代
 幸吉...鯉屋の手代
 佐之助...鯉屋の手代見習い
 鶴太...鯉屋の丁稚
 正太...鯉屋の丁稚
 お与根...鯉屋の下女
 お信...祇園新町・団子屋美濃屋の女将
 福田林太郎...京都東町奉行所・吟味役同心
 小島左馬之介...京都東町奉行所・吟味役同心
 岡田仁兵衛...京都東町奉行所・吟味役同心
 曲垣染久郎...京都東町奉行所・吟味役同心



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悪い棺~公事宿事件書留帳九~

2013年04月09日 | 澤田ふじ子
 2003年12月発行

釣瓶(つるべ)の髪
悪い棺
人喰(ひとは)みの店
黒猫の婆
お婆の御定法
冬の蝶 計7編の短編連作

 京都東町奉行所同心組頭の長男として生まれながら、訳あって公事宿(訴訟人専用旅籠)鯉屋に居候する田村菊太郎が、人の心の闇に迫り難題を解決するシリーズ第9弾。

釣瓶(つるべ)の髪
 川魚料理屋・美濃七の婿養子・清太郎に、やつれが
目立つ。身重の女房・お夏を亡くしたばかりではさなそうだ。
 田村菊太郎がお夏付きの女中であったお重の欲と嫉妬が生み出した幽霊騒ぎを見破る。

悪い棺
 米屋の主松野屋十左衛門の葬列に、石を投げたという少年・修平が鯉屋に連れて来られた。子ども同士の喧嘩から、狩野探幽の襖絵を破ったとして、十左衛門に多額の負債を負わされたのだ。
 菊太郎は件の襖絵をひと目見て、偽物と見抜く。と同時に屋十左衛門が私財を増やしていくに当たる嘘を暴くのだった。

人喰(ひとは)みの店
 最期の鰻を頬張った後、二条城の掘りに身投げをした母子4人を救った菊太郎。鯉屋に連れ帰り話を聞くと、姉娘が奉公先の瀬戸物屋・泉屋で些細な過ちを咎められ、下の弟妹をも泉屋に捕られるのだと言う。
 奉公人の過ちを逆手にとり無給で働かせる。あるいは死に追いやるなど評判の悪い泉屋と、口入れ屋・生田屋に菊太郎の制裁が下る。

黒猫の婆
 横諏訪町の棟割り長屋に、品の良い老婆・お里が黒猫一匹を抱き越して来た。古手問屋・伊勢屋の隠居であるお里だが、養女とその婿に店と屋敷を乗っ取られ、連日の嫌がらせに業を煮やして長屋に逃れて来たのだった。
 菊太郎は、理不尽な伊勢屋の若夫婦から、店を取り戻すために尽力する。

お婆の御定法
 欄間彫り師の利助の長男・岩松が何者かに勾引された。折しも利助は京都御大工中井家の下で、二条城の欄間を最中。これは、利助の腕を妬んでの仕業かと思われたが、当の岩松から、無事過ごしているという文が届いた。その中の一文に、菊太郎は、昔剣術の手解きを受けた亡き東町奉行所同心の坂上兵太夫を思い浮かべる。
 案の定、岩松は兵太夫の寡婦・お寿の元で下働きをしながら教育を受けていた。

冬の蝶
 お頭がおかしいお栄という娘と出会った菊太郎。五番町遊郭・末広屋の二女であった。近所の子から、「親の因果が子に報い」などと、稼業を嘲られているのに心を痛めた菊太郎は、同時にお栄の様子に疑問を抱く。
 早々にお栄の父親であり、末広屋の主・吉兵衛と膝を交える菊太郎。吉兵衛も幼き頃は遊女屋に疑問を抱いていたが、祖父が単身実を興した見世を閉める訳にもいかなかったと…。だが、そのために娘が狂人を装う程ならいっそ商い替えをすると誓う。

 いつになく、ホラーめいた話や謎が含まれた話が含まれ、かつ「お婆の御定法」以外は、店の主のありようを描いている。
 ただし、人の上に立つ者への戒めや心構えは、「お婆の御定法」にもしっかりと込められている。
 まずは、毎度の事ながら、季節感を織り込んだ序章から始まり、物語にしっかりと「色」や「匂い」を感じたところで、主題への流れとなる伏線が描かれていく。
 例えば、「釣瓶の髪」では、釣瓶に黒髪が絡んで上がってきたことから、女が殺されて井戸に投げ込まれるという事件が露見し、いずこも井戸浚えが大流行りであった。こんな序章から始まり、人の噂や女の怨念を織り込む憎い手法である。
 文章・ストーリの完成度の高さにと同時に、惨い結末がなく、爽やかな終わり方をしている点に、安堵感を抱きながら読むことができる。
 また、歴史的背景の説明も明確であり、かつ物語を遮る事なく、織り込む手腕は相当なものであり実に読み易い。
 同氏のシリーズ物の中では、好きな作品である。

主要登場人物(レギュラー)
 田村菊太郎...公事宿鯉屋の居候、田村次右衛門の庶子
 田村銕蔵...京都東町奉行所・吟味役同心組頭、菊太郎の異母弟、田村次右衛門の嫡子
 鯉屋源十郎...大宮通り姉小路・公事宿鯉屋の主
 多佳...源十郎の妻
 吉左衛門...鯉屋の下代(番頭)
 喜六...鯉屋の手代
 幸吉...鯉屋の手代
 佐之助...鯉屋の手代見習い
 鶴太...鯉屋の丁稚
 正太...鯉屋の丁稚
 お与根...鯉屋の下女
 お信...三条鴨川沿い料亭茶屋重阿弥の仲居
 福田林太郎...京都東町奉行所・吟味役同心
 小島左馬之介...京都東町奉行所・吟味役同心
 岡田仁兵衛...京都東町奉行所・吟味役同心
 松五郎...福田林太郎の手下
 曲垣染久郎...京都東町奉行所・吟味役同心
 七蔵...染久郎の手下
 三浦六衛門...勝岩院脇道場の留守居番役





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あんでらすの鐘~高瀬川女船歌五~

2013年04月05日 | 澤田ふじ子
 2011年1月発行

 荷船や客船で賑わう、高瀬川沿いに集う人々の哀歓を描いたシリーズ第5弾。

奇僧の桜
蛍の夜
厄介な客
三日坊主
兄(あん)ちゃんと呼べ
あんでらすの鐘 計6編の短編連作

奇僧の桜
 桜が満開の角倉会所の作事場で、花見の宴を楽しんでいた宗因たちの前に、徳利を枕に昼寝をむさぼる塩たれた若い僧の姿が合った。そこに現れた、やきもの問屋筑後屋の若旦那・彦市郎が毒付く。
 一触即発を危惧して、僧に声を掛けた宗因。聞けば、元京都五山の医僧であったが、蘭法を用いたため、寺を追い出されたと言うのだ。
 角倉会所の頭取・児玉吉右衛門、宗因らは彼に町医者になる事を勧める。

蛍の夜
 四条小橋の東北に立つ石灯籠に腰掛ける老婆の姿が気になる宗因。思わず声を掛けるも、老婆は依估地であった。貧しさ故に衣食もままならないと見て取った宗因は、尾張屋に伴い食を給する。
 その老婆が、血を吐いて倒れたと聞くや、町医者となった明珠が駆け付け、その看護を申し出る。
 一方、老婆の行く末を案じた宗因は、件の石灯籠は老婆の祖父が祇園社に寄進したと知り、一計を案じて、老婆のための金子を工面するのだった。

厄介な客
 旅籠・柏屋に、曰くありげな男女が宿泊した。主の惣十郎は、駆け落ち者ではないかと心中を案じ、目を離さずにいた。
 お鶴が言い難い訳を聞いたところ、女は堂島の料理屋・大和屋の娘・お松であり、地廻りのならず者の若旦那に手込めのされた上に妾になる事を強要され、板前の蓑助と逃げて来たと言う。
 折しも、堂島からならず者の子分たちが高瀬川筋まで探索に現れ、尾張屋にも姿を現したのを幸いに、宗因の怒りが炸裂する。

三日坊主
 小料理屋・辰巳屋の女中・おまさは、岡っ引き・六右衛門の手先の源七に突き纏われていた。
 そして危ういところを救ってくれた、加賀藩京屋敷詰めの神崎清十郎が、病いに伏し藩邸にて冷遇されていると知ると、明珠を伴いその身柄を預かり受けるのだった。
 
兄(あん)ちゃんと呼べ
 小料理屋・松菱の女中・おふさは、幼い弟・市松との2人暮らしであるが、最近、油問屋龍田屋の二男坊・信二郎に毎夜送って貰っている事から、「送り狼に違いない」と危惧する市松との間で、姉弟の喧嘩が絶えずにいた。
 同じ長屋に住む重兵衛も、人事ではなく気に病んでいた。そんな折り、偶然にもおふさと信二郎の身が危ういと感じ取った宗因。
 調べれば、信二郎は庶子であり、嫡子の長兄に命を狙われていると判明する。
 龍田屋兄弟、親族を呼び出し、角倉会所にて児玉吉右衛門差配が下される。

あんでらすの鐘
 尾張屋にて明珠が、霍乱に効く煎薬延命散を煎じているところに、ならず者が現れ、明珠の命を貰い受けると嘯く。依頼主は、明珠の評判を良しとしない、明珠が医僧を務めていた妙法寺の後任であった。
 宗因、吉右衛門の機転で事なきを得た明珠に、吉右衛門は長崎で蘭法を極める事を進言し、後援するのだった。

 同シリーズは以前に、第1作目を読んだのみだったので、久し振りだったのだが、登場人物の背景が変化していたのに驚かされた。
 物語の主人公はお鶴であり、その実父の宗因は、庚申堂の半僧半俗。お鶴を補佐する役割の出番だったのが、シリーズが進み、本誌では彼が主役になっていた。逆にお鶴は、宗因の娘として脇に回っている。
 また、医僧の明珠であるが、タイトルが「奇僧の桜」とあるように、登場話では実に奇僧ぶりを発揮し、彦市郎への復讐とも思えるような行動にも出ており、そら恐ろしい人物に描かれている。
 だが、二話からは、奇僧の影が消え去り、人情味のある理想的な町医者へと代わり、連作中、準主役級の人物として明珠が登場し、物語を引っ張っている。
 このままシリーズの要となると思いきや、最終章にて長崎に行く事が決まり、今後の登場が気になるところだ。
 角倉会所というものが、どれだけの権限を持った名家なのかが、分からないのと、奉公人や抱える武士ら登場人物が多いので、混乱する部分もあるが、第1弾に登場した平太をほんのワンシーンにみではあるが登場させるなど、シリーズとしての配慮を欠かさない部分が嬉しい。
 また、これは澤田氏最大の特徴であるのだが、江戸時代の風習や言葉などを現代に置き換えたり、現代の言葉にかえて2、3行で簡潔に説明しているのが素晴らしい。
 そして、その2、3行を本文中に挟んでも、物語の流れを崩さず、前後の流れを止めない手腕は澤田氏にしか書けないだろう。
 こういった本格的な物語は、安定感もあり、何より読んでいてほっとする。

主要登場人物
 宗因(奈倉宗十郎)...木屋町筋居酒屋・尾張屋の主、元尾張藩京詰勘定役、お鶴の実父
 柏屋惣左衛門...二条高瀬川上樵木町 ・旅籠の主 
 惣十郎...惣左衛門の嫡男
 お鶴...柏屋養女、惣十郎の妻
 平太...角倉会所の手代見習
 児玉吉右衛門...二条高瀬川上樵木町・角倉会所の頭取
 佐兵衛...柏屋の番頭
 お里...柏屋の女中
 市助...柏屋の下男
 お時...角倉会所の女船頭
 弥助...角倉会所の船衆
 伊八...角倉会所の船衆
 重兵衛...元幕府御大工頭・中井家の組頭
 明珠...西船頭町・町医者、元京都五山・妙法寺の医僧 





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花鳥(はなどり)

2013年04月03日 | 藤原緋沙子
 2004年5月発行

 女として、母として信じる道を清冽に生きた月光院の生涯。

火伏の路
花鳥
蝉(せみ)しぐれ
狂乱
雪花
わかれ道
鶯(うぐいす)
月明かり
沙羅双樹(さらそうじゅ)
明暗
山里
仁愛
白玉降る
幼将軍
黒い影
紅い罠(わな)
攻防
月光の下で 長編
 
 羽根を痛めた小鳥を養育したいと連れ帰った幼き日の輝だったが、時は五代将軍・徳川綱吉の発布した「生類憐れみの令」の真っ最中。生き物を飼育し、万が一のことがあればただでは済まない。
 途方にくれているところ、身分高き若侍主従が快く小鳥を引き取ってくれた。
 これが、後の六代将軍・家宣と、同じく七代将軍の生母となる月光院の花鳥が運んだ、運命の出会いであった。
 やがて唯念寺の坊守・竜野に、教養や礼儀作法を学んだ輝は、竜野の思い通りの聡明で美しい娘へと成長し、甲府徳川家の桜田御殿へ奉公に上がり、思いもよらぬ運命の再会を果たすのだった。
 綱豊(後の家宣)の側室となった輝は、お喜世の方となり、綱豊の寵愛を独り占めしていく。
 やがて綱豊が六代将軍へと上り詰め、側近の間部詮房と共に、将軍を補佐してしていく中で、正室・近衛熙子(後の天英院)や、側室・お古牟の方(後の法心院)、
大典侍(お須免の方・後の蓮浄院)との確執や、桜田屋敷からお喜世の方に仕え、信頼の厚い絵島を巻き込んだ、徳川政権最大のスキャンダル事件が起こる。
 
 花鳥をシンボリックに演出し、輝(お喜世)と家宣のピュアな恋を描いた長編である。
 莫大な量の参考文献が列記されているだけあり、背景も登場人物も詳しく描かれているが、物語としては、理想的・夢見がちな純愛とでも言ったところだろうか。
 清廉潔白な家宣、忠義の間部詮房、そして女として理想のお喜世の方が3本柱である。
 正直、作者は何を言いたかったのだろう。恋物語を描きたかったのか…。ひとりの女性の生涯を描きたかったのか…。
 このお喜世の方の生涯とは、本来であれば、裕福でない寺の娘の立身出世物として終わるところであるが、絵島生島事件がお喜世の方を語る上でのクライマックスとなっているため、物語も成り立つ訳だが(これは史実なので、作家の想像力ではない)、そのクライマックスの大舞台が、史実に追われるあまり、お喜世の方主導の物語が、急に絵島が主役になり焦点がずれた感も否めず。
 また、創作上の人物であろう塚田四郎次が、輝の淡い初恋の相手となるのだが、この人の印象も薄い。ただし、薄いながらも冒頭と終焉は、この人が登場している。これ程、本文を読む限りでは、輝に関わる人物だったとは思えないのだが。
 また、播州赤穂藩浅野家の件は必要だったのだろうか。
 途中、「行く」「いく」の使い分けがされているのも気になり(誤植では?)、桜田屋敷に途中から仕えた絵島が、鍋松を見て、「父上の幼い頃に良く似ている」みたいな発言をしているが、年齢からいっても、奉公時期からいっても、絵島が、家宣の幼い頃はむろん、若かりし頃を知っているのもおかしな話である。
 当方の勘違いでなければ、作者というよりも編集者のミスになるが、残念。

主要登場人物
 輝(喜世→月光院→左京の方)...浅草唯念寺塔頭・林昌寺の住職の娘→六代将軍・家宣の側室→七代将軍・家継の生母
 徳川家宣(綱豊)...甲府宰相→六代将軍
 間部詮房...綱豊の用人→家宣の側衆→老中次席、上野高崎藩主→越後村上藩主
 新井白石...学者、将軍・家宣侍講
 竜野...唯念寺の坊守、旗本矢島家の娘
 塚田四郎次(真圓)...行脚僧、元能登加賀藩前田家藩士
 玄鉄(佐藤治郎左衛門)...林昌寺の住職、輝の父親、元能登加賀藩前田家藩士
 富...輝の母親
 知世...輝の義姉、先代林昌寺住職の娘、播州赤穂藩浅野家江戸屋敷奥女中
 絵島...尾張徳川家奥女中→甲府徳川家奥女中→江戸城大奥総取締、旗本・白井平右衛門の養女
 徳川家継(鍋松)...七代将軍



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