うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

もういちど

2021年11月06日 | 畠中恵
2021年 月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第20弾。

もういちど
おににころも
ひめわこ
帰家
これからも 計5編の短編連作

もういちど
 夏にはまだ早い四月。いつにない猛暑で一太郎は寝付いていた。町々では、雨乞いの祈祷を行うほどで、あちこちで呼び出された龍神たちが、大川から神田川にうじゃうじゃいるのだった。
 その川を船で、根岸の寮まで療養に赴こうとしていた一太郎たちだったのだが、龍神の反乱で一太郎は船から放り投げられ、あわや川の中。
 無事引き上げられはしたが、その姿は、赤子へと変化していたのだった。

おににころも
 僅かの間に健康な5歳児へと、成長した一太郎。兄やたちからはキツく外出を禁じられていたが、たまたま野草探しをしていた勘助なる少年の手伝いをすることに。
 勘助は、貧しさからじきに奉公に出ると言う。ほかにも幼くして奉公に出る子どもが多いらしい。
 不審に思った一太郎。どうも先の川の反乱に原因があるようだ。

ひめわこ
 あっと言う間に12歳くらいにまで成長した一太郎。そんな訳で一箇所に住まい続けることが困難となり、両国・回向院近くに住まい移りをした。
 江戸の大繁華街・両国見物を楽しむ中、宮芝居の一座に傾倒し、その役者でもある浪人の五郎左衛門から剣術指南を受けることになった。
 だが、五郎左衛門が元の仕官先の旗本の三男により、厄介ごとに巻き込まれ、一太郎の身も剣呑なことに…。
 そして成長を続ける一太郎の健康な身体に、何やら異変が。

帰家
 十カ月振りに日本橋の長崎屋に戻った一太郎。待っていたのは、幼な馴染みの美春屋栄吉が修行を終え帰宅して居ることと、その栄吉の縁組がまとまったと言う、目出度い話だった。
 鯉吉の嫁になるのは紙屋・如月屋のお多真。だが、この縁組に何かしら不安を感じた一太郎。そんな折に一太郎の持ち物が何者かに持ちさられ…探すうちに如月屋の秘密や意外な盗人の存在が明らかになる。

これからも
 長崎屋へ戻った一太郎。ひょんなことから荷車の荷台の下敷きになってしまい、長く寝付くことになった。その原因ともなった編笠の青い着物の男正体を探るべく、妖たちが総動員。すると、3枚の青い着物が見付かる。それも、皆、思いも寄らぬところからだった。
 なんでも持ち去られた龍の石を取り戻そうと、その石の所在を探ってのことだったらしい。
 一太郎が赤子に戻った天変地異が、ほかでも異変を起こしていたのだった。

かたみわけ
 時は進み、長崎屋の主人となった一太郎。だが、周りを固める妖たちは、年も取らずば姿も変えず、あいも変わらず、一太郎を守っている。
 その一太郎が商いの為不在の折、上野広徳寺の高僧・寛朝の跡を継いだ、秋英から、寛朝のかたみわけの折に、付喪神や妖を封じ込めた遺物の封印が解かれ、それらが世に放たれてしまったので、是が非でも探す手伝いを。と、こわれたのだ。
 手分けしてことに当たった長崎屋の妖たち、三つまでは難なく解決したが、手強い残り三つ。そんな降り、小坊主の寛春が妖に捕まっているらしい。まずは、寛春奪還へと動き出す。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 禰々子...関東河童の大親分
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男、一太郎の幼馴染み
 お多真…紙屋・如月屋の娘
 寿真...東叡山寛永寺の僧侶
 秋英...上野広徳寺の僧侶、高僧・故寛朝の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家