うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

おおあたり

2016年08月20日 | 畠中恵
 2016年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第15弾。


おおあたり
長崎屋の怪談
はてはて
あいしょう
暁を覚えず 計5編の短編連作

おおあたり
 一太郎の幼馴染み・栄吉の拵えた「辛あられ」が大当たり。その「辛あられ」は、栄吉の実家・三晴屋で制作し、長崎屋で販売すると、瞬く間に評判となったのだった。
 だが、そこから栄吉の許嫁・お千夜との祝言話やら、「辛あられ」の類似品やらで、一太郎始め長崎屋の面々も騒動に巻き込まれていく。

長崎屋の怪談
 真夏のある日、清涼のため長崎屋所有の一軒家で、本島亭場久の寄席を開くこととなった。場久の悪夢の怪談は大盛況で幕を下ろしたが、すぐに場久自身が、悪夢に追い掛けられていると感じるようになった。
 同時に、岡っ引きの才蔵の姿が消え失せ、嫌疑の目が日限の親分に向けられて…場久の噺のとおりの悪夢なのか、それとも…。長崎屋に集う妖たちが立ち上がる。

はてはて
 貧乏神の金次が、落とされた饅頭の代金の代わりに渡された、富籤が300両の大当たり。しかし、その富籤は、割り札で2枚のところが3枚持ち主がいた。一体誰の富籤が偽物なのか…。
 そんな最中、長崎屋に3人の女が、自分こそ富籤の賞金を手にするに相応しいと、分け前を要求。
 偶然手にした1枚の富籤が、とんだ大騒動へと。人間の依怗や欲を目の当たりにした時、金次は…。

あいしょう
 仁吉と佐助が、一太郎に仕えた時の初めて物語り。十歳の小僧に姿を代えて、長崎屋にやって来た仁吉と佐助。
 だが、顔合わせの直後に一太郎が忽然と消えていた。長崎屋に住う妖と共に、仁吉と佐助は、一太郎の追跡を始めるが、そこには、大店の子どもの勾引(かどわか)しに関わる事件の匂いが…。そして合羽まで現れて…。
 果たして人の仕業か、はたまた妖なのか、仁吉と佐助の意見は真っ二つに分かれる。

暁を覚えず
 釣りの接待に行くことになった一太郎の供に誰がなるか。妖たちは、美晴屋の饅頭に3個だけ栄吉の拵えた饅頭を混ぜておき、引き当てた者が釣りに出掛けるといった懸けを思い付くが、一太郎の異母兄・松之助が栄吉の拵えた饅頭を沢山携えて来たことから…。
 その松之助到来の目的は、ある悩み事の相談であった。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 伊三郎...一太郎の祖父、皮衣(ぎん)の亭主
 皮衣(ぎん)...一太郎の祖母、妖
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 野寺坊...獺の妖
 美春屋栄吉...日本橋菓子屋の嫡男(安野屋で修行中)、一太郎の幼馴染み
 青玉屋松之助...日本橋小間物屋の主、一太郎の異母兄
 本島亭場久...貘の妖、噺家
 お千幸...万之助の妹




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歴史のなかの家族と結婚~ジェンダーの視点から~

2016年08月20日 | ほか作家、アンソロジーなど
服藤早苗/監修 伊集院葉子・栗山圭子・長島淳子・石崎昇子・浅野富美枝/著

 2011年4月発行

 男女の出会いと結婚、家と家族の営み、育児や老いの問題など、家族と結婚の日本史をたどった家族のあり方の歴史と現在。

第1章 古代 共同体に育まれる家族(伊集院葉子)
恋イコール結婚の時代 母の許しと共同体の承認 通い婚から同居へ 離婚 性への女の拒否権 家父長制の未成立と双系的・両属的社会 里刀自、家刀自の指 揮下での共同労働 経営手腕を振った富豪の刀自たち 命がけの出産と多産報奨 父の育児と男子教育 共同体の老人扶養慣行 百姓の葬地、貴族の営墓

第2章 中世 「家」成立の時代(栗山圭子)
当事者同士の結婚から親の決める結婚へ 婿取婚から嫁取婚へ 不均衡な男女関係 夫による離婚権の把握 強姦の発生 遊女の性格変化 男色 白拍子から猿楽能へ 「家」の成立 「家」の経営と相続 家長と家妻の共同経営 生まれる子ども・死ぬ子ども 子どもの成長と養育 「家」と老人 別墓から同墓へ 家族を持てなかった人々

第3章 近世 嫁入り婚と小家族の展開(長島淳子)
身分によるさまざまな結婚のかたち 結婚の過程と嫁入り婚の儀式 身分・階層差による夫婦関係 離婚の実態と縁切寺 村の若者による娘・後家の性支配 遊 廓の成立と私娼 江戸の同性愛と異性装者 近世家族の歴史的位置 階層差による経営形態の諸相 農家の性別役割分業 出産の習俗と堕胎・間引き 育児と公 的支援制度 老人の位置と養生訓 葬送儀礼と墓参 シングルとして生きる

第4章 近代 都市家庭の形成と結婚観の変化(石崎昇子)
恋愛の自由・結婚の自由 神前結婚式の始まり 性の二重規範 少なくなる離婚 公娼制批判の始まり 戦争と軍「慰安所」 同性の恋愛を生きる 明治維新と 明治民法 夫婦中心の都市家庭の形成 良妻賢母規範の誕生と変容 「産児制限」の誕生 仕事と育児の両立への提言 老後の保障は社会権 少なかった単身者  明治民法改正の試み

第5章 現代 多様化する家族と結婚のかたち(浅野富美枝)
個人の権利となった結婚の自由 多様化する結婚式 問われる夫婦のきずな 変わる離婚 後を絶たない性暴力6 深刻化する性の商品化 多様な性愛 変わる 制度としての家族 日本経済を支える家族 性別役割家族の確立とゆらぎ 生殖をめぐるポリティクス 少子化のなかの子育て 高齢社会と高齢者 変わる葬送 と墓 増える単身者と家族のゆくえ




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