うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

月明かり~慶次郎縁側日記~

2012年07月17日 | 北原亜以子
 2007年9月発行

 元南町奉行所定町廻り同心で「仏の旦那」と呼ばれた森口慶次郎が、養子の晃之助に家督を譲り、山口屋の根岸寮番になるも、何かと事件に関わる「慶次郎縁側日記」13作目にして初の長編。

ほくろの男
女と女
おりき
お萱
父子
弥兵衛

それぞれの旅 長編
 
 11年前に父の弥兵衛を目の前に刺殺された弥吉は、母のおふさの遺言を胸に、父の敵討ちだけを願い江戸で暮らしていた。
 そんなある日、件の下手人に出会ったと、十五郎に伴われ慶次郎を訪う。
 弥吉の記憶にある下手人は、鼻の脇に黒子のある男。当時は、幼い子どもの月明かりの下でのあやふやな記憶とされ、相手にされなかったが、間違いなく下手人だと言う弥吉。
 慶次郎は、弥兵衛が何故刺殺され、一時は江戸を離れたと思しき下手人が11年の歳月を経て、舞い戻ったのか…探りを入れるうちに、次第に明らかになる、複雑に絡み合う男女の因縁と業。
 次第に明らかになる十五郎の過去と弥吉との繋がり…。
 登場人物が多く、人物の因果関係が複雑過ぎて読み砕くのに、時間が掛かり何度もページを捲り直した。ここまで多くの人物を搦めた意図が理解出来ない。
 映像ならば、スペシャル版なので、これ迄のレギュラーを総動員させ、豪華さを出したといった感じである。
 慶次郎シリーズは、「その夜の雪」の表題である最初の作品を読んだだけなので、第1作から読んでいるなら分かり易かったのかも知れないが、加えて、これ迄短編できていたところ敢えて長編にしたのには、北原さんの並々ならぬ思い入れもあろう。
 だが、だが、残念ながら、事件をミステリアスに追う事に終始してしまった為、北原さんの持ち味の美しい状況描写も少なく江戸を感じられなかった。
 妻と情女といった立場の女たちの、悲痛な思いを雅趣人探しに絡め、伝えたかったのかも知れないが、真に申し訳ないが、要蔵の父と、おりきの関わりなど、最期まで引っ張ってはいるが、こういった小さな因縁めいた話が多過ぎて本筋に集中出来ない要因だったように思える。
 また、語り部がぱたぱたと変わるのも、読み手が混乱する。
 本作品だけでは、人気シリーズ「慶次郎縁側日記」の力量が分からないので、同シリーズの他作品も読んでみようと思う。
 
主要登場人物
 森口慶次郎...霊岸島の酒問屋山口屋の根岸寮番、元南町奉行所定町廻り同心
 森口晃之助...慶次郎の養子、南町奉行所定町廻り同心
 佐七...山口屋の根岸寮下男
 辰吉(天王橋の辰吉)...森口晃之助の手下(岡っ引き)
 要蔵(湯島の要蔵)...島中賢吾の手下(岡っ引き)
 吉次(蝮の吉次)...秋山忠太郎の手下(岡っ引き)
 おきわ...吉次の妹、大根河岸蕎麦屋の女将
 菊松...大根河岸蕎麦屋の主、おきわの亭主
 島中賢吾...南町奉行所定町廻り同心
 佐々木勇助...南町奉行所定町廻り同心
 秋山忠太郎...北町奉行所定町廻り同心

 十五郎...浅草元鳥越町の隠居(=伸蔵 元日本橋安針町の質屋の主)
 弥吉...建具職人修行中
 弥兵衛...弥吉の父親、建具職人
 おふさ...弥吉の母親、弥兵衛の女房
 おりき...弥吉の伯母、おふさの姉、川崎の料理屋瀬川の女将
 卯之助...浅草元鳥越町の建具職人、弥吉の親方、弥兵衛の朋友
 おてい...卯之助の女房
 おあさ...元卯之助の情女、田原町数珠職人嘉市の女房
 お萱...富沢町手跡指南所一草堂の師匠、弥兵衛に横恋慕
 忠助...十五郎の異母弟



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