2013年5月発行
お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第4弾。
朝を覚えず
たからづくし
きんこんかん
すこたん
ともすぎ
ときぐすり
朝を覚えず 計7編の短編連作集
朝を覚えず
妻のお寿ずを亡くしてから1年、未だ本来の姿には程遠い麻之助は、清十郎から眠り薬を巡る騒ぎの相談を受ける。
太源という若い医者が処方した眠り薬を飲んだ人が死亡したり目を覚まさなくなったり…。飲んだ人によって効能が違うばかりか一服の分量にも違いが。
麻之助、清十郎は、我が身を張った危険な手段で薬の謎を解明する。
たからづくし
親類たちから縁組みを強く迫られたその日、清十郎はその場から飛び出したまま、姿を消した。清十郎を探す麻之助と吉五郎だったが、両国の貞が、金貸しの丸三が、見目麗しい武家娘に熱を上げていると聞かされ、同時にその娘を探って欲しいと頼まれる。
きんこんかん
両国広小路の小屋掛けで、3人の見目麗しい娘が営む菓子屋が繁盛していた。男たちは娘目当てに店に通うも、娘たちの目当ては吉五郎にあると言う。それを両国の貞から聞かされた麻之助だっが、吉五郎の身持ちの固さを思うとにわかには信じ難い。
娘3人の吉五郎を巡るバトルには絡繰りがありそうだと、麻之助は貞の父親である元締め・大貞を巻き込み采配に出る。
すこたん
菓子を食べるとき不可欠なのは、皿か、それとも茶か。 瀬戸物問屋・小西屋彦六と茶問屋・増田屋久七の跡取り息子同士の下らない裁定をすることになった麻之助。だが、その背後には茶屋娘を巡る恋の鞘当てがあった。
因果を含め争いを終わらせた麻之助だが、しばらくすると、いわくつきの娘・緒すなの高額の持参金を巡る縁組にて、またも両家は歪み合う。
緒すなに相応しい縁組みとは。麻之助は、彼女の気質・条件を考慮し、鼈甲櫛笄商・辰巳屋春之助に妻合わせてはどうかと…。
ともすぎ
吉五郎が足繁く市谷御門へ通っていると耳にし、麻之助と清十郎、金貸しの丸三は真意を確かめるため、市谷御門へと赴く。そこで出会った徒目付組頭の村井新左衛門に案内されたのは、彼の許嫁の三吉潤。嫁入り前に小太刀を習いたいと言う潤に義父・小十郎の命で吉五郎は指南をしていたのだった。
一方で、武家たちが出世のために、金貸しを仲立に上役に賄賂を送っている事を探る吉之助。その矢先、丸三が忽然と消えた。
丸三の行方を追う、3人。果たして意外な人物が浮かび上がる。
ときぐすり
愛猫・ふにが、高い木から降りられなくなり難義しているところを、北国から江戸にやって来たばかりの少年・滝助に救われた。
ひょんな出会いから麻之助は、滝助の身の振り方に手を差し伸べる運びとなる。
麻之助は滝助を、糊売りの老婆・むめに預け、独り暮らしの袋物師・数吉親方の飯炊きをさせる。
だが、滝助の生い立ちは、孤児だったところを掏摸に拾われ、盗賊の手下として飯炊きをしていたというものだった。折しも、北国での検挙を逃れた盗賊の一味が江戸に潜伏。
そしてついにある夜、盗賊たちが滝助の元にやって来た。
畠中氏の作品の中で、一番好きなシリーズの待ちに待った新作。胸を躍らせながら読んだ。そして期待を裏切らない素晴らしい内容であった。
シリーズ開始時は、お由有に淡い恋心を抱いていた麻之助だったが、寿ずを娶り子が授かり幸せが続くと思われた矢先に、産褥から母子共に鬼籍に入る。
そして、その傷を癒しながら、友情、町名主としての責務に関わるといった内容である。
そんな中、やはり麻之助も物語も成長し、関わる人物も変わってきた。吉五郎の姪に当たるおこ乃との今後の進展を匂わせながら、高利貸し・丸三や両国の貞との繋がりが全編に広がる。
「すこたん」と「ともすぎ」に関しては、詰め込み感が多少否めなくもあるも、全体を通し、ふんわりと柔らかい麻之助ワールドに、江戸を背景に見る事が出来る作品である。
また、本作品から吉五郎の養子先の様子も少しづつ描かれ、義父・小十郎に関してはかなり魅力的なキャラに仕上がっているため、今後のシリーズに顔を出し、関わっていく事を感じさせる。
畠中氏の作品は、登場人物を頭の中で整理し易いのも特徴的で、よって物語に入り込むのが容易である。
発売から未だ幾日を過ぎていないので、結末などは伏せておくが、この一冊から読み始めても、前作までの流れを掴め、更には前作を読みたくなる事は必須だろう。
今後も、同シリーズの更新を望んで止まない。
畠中氏と言えば、「しゃばけ」シリーズが余りにも有名だが、未だ氏の作品を読んだ事のない方には、この「まんまことシリーズから入る事をお勧めしたい。今回は切なさの募る話や、ほろ苦さは含まれていなかったが、寿ずを失った麻之助の描写は、シリーズ中でも畠中氏の作品中でも、3本の指に入る巧さである。同シリーズには、決して裏切らない面白さがある。
主要登場人物
高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
八木清十郎...隣町の町名主
相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
おさん...麻之助の母親
故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
お由有...清十郎の義母、故・源兵衛(清十郎の父親)の後妻
幸太...清十郎の義弟
おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
大貞....両国の顔役、貞吉の父親
丸三...神田の高利貸し
庄吉...丸三の手代
相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
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お気楽な、名主の跡取り麻之助と、家督を継いで名主となった清十郎。そして八丁堀見習同心の吉五郎。3人の悪友たちが繰り広げる人情物語「まんまこと」シリーズ第4弾。
朝を覚えず
たからづくし
きんこんかん
すこたん
ともすぎ
ときぐすり
朝を覚えず 計7編の短編連作集
朝を覚えず
妻のお寿ずを亡くしてから1年、未だ本来の姿には程遠い麻之助は、清十郎から眠り薬を巡る騒ぎの相談を受ける。
太源という若い医者が処方した眠り薬を飲んだ人が死亡したり目を覚まさなくなったり…。飲んだ人によって効能が違うばかりか一服の分量にも違いが。
麻之助、清十郎は、我が身を張った危険な手段で薬の謎を解明する。
たからづくし
親類たちから縁組みを強く迫られたその日、清十郎はその場から飛び出したまま、姿を消した。清十郎を探す麻之助と吉五郎だったが、両国の貞が、金貸しの丸三が、見目麗しい武家娘に熱を上げていると聞かされ、同時にその娘を探って欲しいと頼まれる。
きんこんかん
両国広小路の小屋掛けで、3人の見目麗しい娘が営む菓子屋が繁盛していた。男たちは娘目当てに店に通うも、娘たちの目当ては吉五郎にあると言う。それを両国の貞から聞かされた麻之助だっが、吉五郎の身持ちの固さを思うとにわかには信じ難い。
娘3人の吉五郎を巡るバトルには絡繰りがありそうだと、麻之助は貞の父親である元締め・大貞を巻き込み采配に出る。
すこたん
菓子を食べるとき不可欠なのは、皿か、それとも茶か。 瀬戸物問屋・小西屋彦六と茶問屋・増田屋久七の跡取り息子同士の下らない裁定をすることになった麻之助。だが、その背後には茶屋娘を巡る恋の鞘当てがあった。
因果を含め争いを終わらせた麻之助だが、しばらくすると、いわくつきの娘・緒すなの高額の持参金を巡る縁組にて、またも両家は歪み合う。
緒すなに相応しい縁組みとは。麻之助は、彼女の気質・条件を考慮し、鼈甲櫛笄商・辰巳屋春之助に妻合わせてはどうかと…。
ともすぎ
吉五郎が足繁く市谷御門へ通っていると耳にし、麻之助と清十郎、金貸しの丸三は真意を確かめるため、市谷御門へと赴く。そこで出会った徒目付組頭の村井新左衛門に案内されたのは、彼の許嫁の三吉潤。嫁入り前に小太刀を習いたいと言う潤に義父・小十郎の命で吉五郎は指南をしていたのだった。
一方で、武家たちが出世のために、金貸しを仲立に上役に賄賂を送っている事を探る吉之助。その矢先、丸三が忽然と消えた。
丸三の行方を追う、3人。果たして意外な人物が浮かび上がる。
ときぐすり
愛猫・ふにが、高い木から降りられなくなり難義しているところを、北国から江戸にやって来たばかりの少年・滝助に救われた。
ひょんな出会いから麻之助は、滝助の身の振り方に手を差し伸べる運びとなる。
麻之助は滝助を、糊売りの老婆・むめに預け、独り暮らしの袋物師・数吉親方の飯炊きをさせる。
だが、滝助の生い立ちは、孤児だったところを掏摸に拾われ、盗賊の手下として飯炊きをしていたというものだった。折しも、北国での検挙を逃れた盗賊の一味が江戸に潜伏。
そしてついにある夜、盗賊たちが滝助の元にやって来た。
畠中氏の作品の中で、一番好きなシリーズの待ちに待った新作。胸を躍らせながら読んだ。そして期待を裏切らない素晴らしい内容であった。
シリーズ開始時は、お由有に淡い恋心を抱いていた麻之助だったが、寿ずを娶り子が授かり幸せが続くと思われた矢先に、産褥から母子共に鬼籍に入る。
そして、その傷を癒しながら、友情、町名主としての責務に関わるといった内容である。
そんな中、やはり麻之助も物語も成長し、関わる人物も変わってきた。吉五郎の姪に当たるおこ乃との今後の進展を匂わせながら、高利貸し・丸三や両国の貞との繋がりが全編に広がる。
「すこたん」と「ともすぎ」に関しては、詰め込み感が多少否めなくもあるも、全体を通し、ふんわりと柔らかい麻之助ワールドに、江戸を背景に見る事が出来る作品である。
また、本作品から吉五郎の養子先の様子も少しづつ描かれ、義父・小十郎に関してはかなり魅力的なキャラに仕上がっているため、今後のシリーズに顔を出し、関わっていく事を感じさせる。
畠中氏の作品は、登場人物を頭の中で整理し易いのも特徴的で、よって物語に入り込むのが容易である。
発売から未だ幾日を過ぎていないので、結末などは伏せておくが、この一冊から読み始めても、前作までの流れを掴め、更には前作を読みたくなる事は必須だろう。
今後も、同シリーズの更新を望んで止まない。
畠中氏と言えば、「しゃばけ」シリーズが余りにも有名だが、未だ氏の作品を読んだ事のない方には、この「まんまことシリーズから入る事をお勧めしたい。今回は切なさの募る話や、ほろ苦さは含まれていなかったが、寿ずを失った麻之助の描写は、シリーズ中でも畠中氏の作品中でも、3本の指に入る巧さである。同シリーズには、決して裏切らない面白さがある。
主要登場人物
高橋麻之助...神田の古町名主宗右衛門の総領息子
八木清十郎...隣町の町名主
相馬吉五郎...北町奉行所見習同心
宗右衛門...神田の古名主、麻之助の父親
おさん...麻之助の母親
故・野崎寿ず...麻之助の妻、吉五郎の遠縁
お由有...清十郎の義母、故・源兵衛(清十郎の父親)の後妻
幸太...清十郎の義弟
おこ乃...吉五郎の姪、寿ずの又従姉妹の娘
貞吉(両国の貞)...両国の顔役、物売り
大貞....両国の顔役、貞吉の父親
丸三...神田の高利貸し
庄吉...丸三の手代
相馬小十郎...北町奉行所定町廻り同心、吉五郎の義父
相馬一葉...小十郎の娘、吉五郎の許嫁
みけ(八木家)、とら(相馬家)、ふに(高橋家)...兄弟猫
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