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女として、母として信じる道を清冽に生きた月光院の生涯。
火伏の路
花鳥
蝉(せみ)しぐれ
狂乱
雪花
わかれ道
鶯(うぐいす)
月明かり
沙羅双樹(さらそうじゅ)
明暗
山里
仁愛
白玉降る
幼将軍
黒い影
紅い罠(わな)
攻防
月光の下で 長編
羽根を痛めた小鳥を養育したいと連れ帰った幼き日の輝だったが、時は五代将軍・徳川綱吉の発布した「生類憐れみの令」の真っ最中。生き物を飼育し、万が一のことがあればただでは済まない。
途方にくれているところ、身分高き若侍主従が快く小鳥を引き取ってくれた。
これが、後の六代将軍・家宣と、同じく七代将軍の生母となる月光院の花鳥が運んだ、運命の出会いであった。
やがて唯念寺の坊守・竜野に、教養や礼儀作法を学んだ輝は、竜野の思い通りの聡明で美しい娘へと成長し、甲府徳川家の桜田御殿へ奉公に上がり、思いもよらぬ運命の再会を果たすのだった。
綱豊(後の家宣)の側室となった輝は、お喜世の方となり、綱豊の寵愛を独り占めしていく。
やがて綱豊が六代将軍へと上り詰め、側近の間部詮房と共に、将軍を補佐してしていく中で、正室・近衛熙子(後の天英院)や、側室・お古牟の方(後の法心院)、
大典侍(お須免の方・後の蓮浄院)との確執や、桜田屋敷からお喜世の方に仕え、信頼の厚い絵島を巻き込んだ、徳川政権最大のスキャンダル事件が起こる。
花鳥をシンボリックに演出し、輝(お喜世)と家宣のピュアな恋を描いた長編である。
莫大な量の参考文献が列記されているだけあり、背景も登場人物も詳しく描かれているが、物語としては、理想的・夢見がちな純愛とでも言ったところだろうか。
清廉潔白な家宣、忠義の間部詮房、そして女として理想のお喜世の方が3本柱である。
正直、作者は何を言いたかったのだろう。恋物語を描きたかったのか…。ひとりの女性の生涯を描きたかったのか…。
このお喜世の方の生涯とは、本来であれば、裕福でない寺の娘の立身出世物として終わるところであるが、絵島生島事件がお喜世の方を語る上でのクライマックスとなっているため、物語も成り立つ訳だが(これは史実なので、作家の想像力ではない)、そのクライマックスの大舞台が、史実に追われるあまり、お喜世の方主導の物語が、急に絵島が主役になり焦点がずれた感も否めず。
また、創作上の人物であろう塚田四郎次が、輝の淡い初恋の相手となるのだが、この人の印象も薄い。ただし、薄いながらも冒頭と終焉は、この人が登場している。これ程、本文を読む限りでは、輝に関わる人物だったとは思えないのだが。
また、播州赤穂藩浅野家の件は必要だったのだろうか。
途中、「行く」「いく」の使い分けがされているのも気になり(誤植では?)、桜田屋敷に途中から仕えた絵島が、鍋松を見て、「父上の幼い頃に良く似ている」みたいな発言をしているが、年齢からいっても、奉公時期からいっても、絵島が、家宣の幼い頃はむろん、若かりし頃を知っているのもおかしな話である。
当方の勘違いでなければ、作者というよりも編集者のミスになるが、残念。
主要登場人物
輝(喜世→月光院→左京の方)...浅草唯念寺塔頭・林昌寺の住職の娘→六代将軍・家宣の側室→七代将軍・家継の生母
徳川家宣(綱豊)...甲府宰相→六代将軍
間部詮房...綱豊の用人→家宣の側衆→老中次席、上野高崎藩主→越後村上藩主
新井白石...学者、将軍・家宣侍講
竜野...唯念寺の坊守、旗本矢島家の娘
塚田四郎次(真圓)...行脚僧、元能登加賀藩前田家藩士
玄鉄(佐藤治郎左衛門)...林昌寺の住職、輝の父親、元能登加賀藩前田家藩士
富...輝の母親
知世...輝の義姉、先代林昌寺住職の娘、播州赤穂藩浅野家江戸屋敷奥女中
絵島...尾張徳川家奥女中→甲府徳川家奥女中→江戸城大奥総取締、旗本・白井平右衛門の養女
徳川家継(鍋松)...七代将軍
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