某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

丸谷 才一さん

2012-10-14 11:09:31 | ぼやき
 丸谷才一さんが亡くなった。骨太ながっちりした作品をいくつか読んだことがあるので、しばらくご冥福を祈った。
彼の講演を一度だけ聴いたことがある。ジェイムズ・ジョイスについてのもので、アイルランドの友人たちと一緒に聴きに行った。博識でアイルランドの歴史的事情なども長く話し、『ユリシーズ』についても話した。翻訳をしているのだから当然だが、ちょっと気になることを言った。
 19世紀80年代のアイルランドの政治リーダー、無冠の帝王パーネルは政治活動の同志キャプテン・オシーの夫人キティーと長年通じていた(10年も一緒に暮らしていた。)亭主は見て見ぬふりをしていたが、遂に離婚訴訟をおこし、世間の知るところとなった。大スキャンダルとなり、パ―ネルは失脚し、すぐ失意のうちに亡くなるのだが、この三角関係とユリシーズに描かれている主人公と奥さんと友人の三角関係が相似形だという。つまり、ユリシーズに描かれた小三角関係はパーネル達の大三角関係を投影し、卑少に描いたものだ、と言った。才人才に溺れるの類いか。
 私に文学を語る資格はないが、それでもオヤッと思った。一緒に行ったアイルランド人たちはびっくりした。丸谷さんはユリシーズを翻訳した偉い人だと尊敬していたからなおさらだろう。せっかくジョイス記念の良い話を期待してきたのに、なんてことだ、と帰りには散々だった。
個人のことをあげつらうのは礼を失しているからこれでやめるが、残念な記憶だ。
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