某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

面白かった英文法

2009-11-21 03:07:51 | ぼやき
 中学での補講は面白かった。特に英語。T先生は双中の大先輩で東大卒、モンゴル史の専門家だから漢文が得意。黒板に漢文を書いて、英語と語順が同じだろと言った。「吾愛爾」I love you.主語+動詞+目的語。漢文につけるレ点や一、ニ点を英語につけて意味を考えた。圧巻は仮定法と条件文。中学英語の難所。T先生はいきなり「月が鏡であったなら、恋しあなたの面影を、夜毎写してみようもの・・・」と言い出した。先生が教室で流行歌を?いや面食らった。そんな「下品」なもの、東京の中学で歌ったらぶったたかれる。T先生はそこでこう言った。「月は今現在鏡じゃない。鏡ではないという現在の事実に反する仮定をするとき、日本語でも あったなら と過去形で言う。英語も同じだ。そうした場合ifの後の動詞は過去形になる。それに続く文章、条件文も 写す と断定して言うのではなく、写せるのになあ、写したいなあ、と言う願望を示す表現になっている。英語ではこういう場合やはり過去形になる。willではなく wouldだ。」
 今考えると少々問題のある説明だが、大雑把に言って中学二年生にはこれで十分だ。高校英語入試問題などみな簡単に解けてしまった。疎開組は皆力をつけ、地元生徒と対等に渡り合えるようになった。
 しかし、T先生は何故あれほど熱心に「敵国の言葉」を教えて下さったのだろう。数学も国語も。中学生も間もなく勉強が出来なくなることを、先生方は感じていて、せめて今だけでも、と懸命に教えて下さったのだろう。事実翌年昭和20年には国民学校以外のすべての学校が授業停止になった。
コメント
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