憂国

2011年03月26日 | Weblog
(*ここはぼくの個人ブログです。ただ、今日のこの書き込みに限っては、ある部分は、個人レベルでぼそぼそ語るいつもの話ではありません。いつもの個人のつぶやきもあります。混じります。個人の庭に、ちょこっと臨時のちいさな掲示板を立てるようなものです)


▼原子力安全・保安院は、すくなくとも直近の記者会見で、真実を明らかにしていない。
 それは、3号機のタービン建屋で3人の作業員が被曝なさったことに関連して、どこからその強い放射線量を放つ漏れが発生したかについて、その水の線量だけを発表して、3号機の周辺、具体的には3号機の建屋とタービン建屋の間の、大気中の放射線量を一切、明らかにしていないことだ。隠している。
 水の中だけではなくて、建屋周辺の大気中でも、放射線量があまりにも異常に、あまりにも格段に、増えている。その具体的な数字には、極めて信頼すべき情報当局者によっても、二説あり、どちらか正しいのか、わたしは確認中だ。
 しかし現時点で、保安院の発表に隠されたところがあることは、わたしとしては、もはや疑いようがない。

 おそらくは使用済み核燃料棒のプールからの放射性物質漏洩だけではなく、すくなくとも3号機と隣のタービン建屋を繋ぐ配管の、つなぎ目、管そのもの、弁などに損傷が起きている怖れがある。
 3号の圧力容器や格納容器そのもの、あるいは圧力抑制室の損傷の怖れも、充分に考えねばならない。
 その怖れ自体は、原子力安全・保安院も公表しているが、その怖れの根拠として、水中の異常に高い放射線量だけを公表している。
 建屋周辺の大気中の線量も異常に高いことを公表していない。隠している。
 こうした姿勢は、まったくの大間違いだ。

 この大気中の線量も水中の線量も東電が測定し、原子力安全・保安院に報告し、保安院がそれをいわば選別して、水中についてだけ発表していると思われる。大気中の異変を隠していると思われる。
(ただし、この発表プロセスについては、わたしもまだ確認が不充分だ。この部分だけは、あくまで推測も加えて「思われる」すなわち「その可能性が強い」というにとどまる)


▼ただし、福島第一原発の外、発電所構内ではなく外の放射線量は実際に、増えていない。
 構内とはいえ大気中の線量が3号機とタービン建屋の間で異常に増えているのだから、発電所の外の環境にひろく拡散してもおかしくない、と言うよりその方が自然当然だが、実際に増えていない。むしろ全体には、あくまでも現時点では、減少傾向にある。
 この理由は正直まったく分からない。
 しかし水中だけではなく大気中の異変だから、今後、発電所の外にも出ていくリスクは、もちろんある。


▼わたしは、こうした情報を、内閣府の原子力委員会の原子力防護専門部会の専門委員だから、受け取っているのではない。
 また、総合資源エネルギー調査会の核セキュリティWG(ワーキンググループ)の専門委員だから、でもない。
 いずれも「原子力防護」、「核セキュリティ」の専門グループ、すなわち原子力や核へのテロ・サボタージュを防ぐという専門分野であり、『今回はテロやサボタージュという事態ではないから』という理由なのか、政府からの情報提供はただ一つ、原子力安全・保安院がプレス発表してから、かなり時間が経ってから、そのプレス発表で配られたのと同じ資料がEメールで届くだけで、そのほかの情報提供は一切ない。

 もともと、こうした専門委員を務めていても、政府側から情報の提供があったためしは、平時でも、こうした緊急時でも、基本的にない。
 それは民主党政権の情報隠しではない。
 わたしは自民党政権時代から、こうした公職を務め、それは政党色とは関係のない中立の実務であるから、民主党政権になっても、そのまま務めている。(※総合資源エネルギー調査会においては、政権交代後の去年4月に、坦務が、それまでの『無任所』から『核セキュリティWG所属』に変わったが、核セキュリティサミットが史上初めて開かれたからであり、政権交代とは関係がない)
 自民党政権の時代から、政府からの情報提供は何も無かった。

 だから自分で切り開いて、情報を集めていくしかない。筆舌に尽くしがたい分厚い壁があり、どんどん費やされる時間とコストがある。
 そうやって自力で集めた情報に基づいて意見を整理し、原子力委員会の原子力防護専門部会の会議や、総合資源エネルギー調査会の核セキュリティWGの会議で、タブーなく発言し、まっすぐ真ん中から実務上の提案をする。
 また同時に、わたし自身の情報と、独研の研究員が独自に集めた知見を統合して、さまざまな政府機関に、国家と国民を護るためのあくまでも実務上の調査・研究を、原子力発電をめぐる課題を含めて、逆提案する。
 日本のシンクタンク(といっても単なる提言ではなく、実務に関わっているシンクタンクは驚くほど少ない)は、政府から話が降りてくるのを待つところが多いから、これは「逆提案」である。
 ほとんどは、完璧に無視される。
 ごくごく稀(まれ)に、例外的に良心的な政府当局者が「これは、ほんとうはやらねばならないのでは」と考える。そして現実に動き始めても、それは「調査研究プロジェクトの公募」になり、こうなると突如、既存のシンクタンクがどっと押し寄せてくる。独研が実際に、調査・研究を遂行できることは例外的であり、したがって、政府に都合の悪い結論であってもフェアな報告書をまとめて提出できることは、少ない。
 独研がそうした仕事をしていると既得権益の側に良く知れ渡ってからは、ますます、どんどん少なくなっている。加速度が付いて少なくされている。それでも、かろうじて潰れないでいるだけで充分に奇跡だというのが、実感だ。
 この4月に創立から満9年を迎え、足かけ10年目に入る。まさか10年もつとは…。


 きのうの朝、わたしは日本政府のインテリジェンス機関のひとと会った。
 ほんらいは原子力と関係がない機関である。
 ところが、原子力安全・保安院が国内外で不信感を抱かれているために、この機関が実質的に仕切るようになっている。
 会った結果、保安院をはじめ、首相官邸も含めて現在の日本政府がどれほど機能を喪っているかを知って、あらためて愕然とすると同時に、この機関のなかで、彼をはじめとする良心派、そして国士の人々によって、かろうじて政府機能の一部は保たれていることも確認した。

 その彼の情報を、別ルートで精査・確認したうえで、独立総合研究所の祖国と世界への任務として配信している『東京コンフィデンシャル・レポート』にまとめて、配信しようとして、いったん止めた。
 なぜか。
 彼を通じたそのインテリジェンスの中で、あるいは彼と厳しく議論したなかで、3人の作業員のかたがたの被曝をめぐって、その原因となった高レベル放射性物質、つまり高い放射線量の構内漏洩について、まだ確認せねばならないところがあると考えたからだ。
 その作業の途中で、わたしはいったん自然に、わずかに仮眠した。退院したばかりの身体は、まだほんらいの体力を取り戻してはいないから、大腸を15センチ切り取る前のような、あんな無茶ら苦茶らな不眠不休は、やらねばならなくても、どうしても、できない。
 朝方にソファでわずかな仮眠に落ち込んでいると、良心派の別の人物(やはり政府のインテリジェンス機関の人物ではあるが別機関の別人)から携帯電話に電話がかかってきた。おかげで、飛び上がって起きることができた。そしてこの電話で、この書き込みの冒頭に記したこと、保安院が真実を公表していない、隠していることを最終的に確認した。

 東京コンフィデンシャル・レポートの会員からは「速報でもいいから早く配信を」という要求も届いている。
 しかし、短い言葉での速報はできない。しない。
 完全にクローズドな会員制レポートではあっても、社会の中へ発信しているのであり、短い説明で不用意に誤解されると、農業、漁業の尊い働き手、そして消費者や幼子の父母などなどに、風評被害をさらに広げることに手を貸すことになりかねない。

 今のわたしには、ふだんに増して、さまざまな強い言葉で『要求』が寄せられる。
 しかし、ここで、わたしが慌てたら、おしまいだ。
 何を言われようと、しっかり確認が取れたことだけを、充分な説明とともにレポートに記し、機会があれば、テレビラジオなどでも発信する。
 テレビラジオは、そもそもテレビラジオからのオファーが少ない。オファーが無いところに、わたしや独研から「発言させてくれ」と言うことはない。「では言ってくれ」という声も寄せられるだろうが、テレビラジオはそんなことでは変わらない。また、「売り込みはしない」という、わたしと独研の鉄則は、決して変えない。
「売り込みはしない」ということは、テレビラジオだけのことじゃない。たとえば講演についても、売り込みはしないし、前述の公職についても「なりたい」と売り込んだことは一切ない。
 いずれもある日突然、その政府機関から話が来た。
 わたしは、誰がわたしを推薦したかも知らない。そんなことは聞かない、調べないからだ。
 あまりにも当たり前ながら、政府が困ることもどんどん言うから、その政府の実務機関の中でわたしを推薦する人がいて、それが実現するということは、日本はすこし良くなったのかというのが、ありのままの気持ちだ。
 こう記すと、必ず「自慢話だ」と口を極めて非難するコメントが届くだろう。どうぞ、やってくだされ。
 わたし個人の話をしてるんじゃない。政府に都合の悪いことも申す人間を、審議会の委員などに起用することは以前からあった。しかし、それはガス抜きであり、実務の結論は官僚が用意した結論のままになっていた。しかし、前述の公職は、いずれも専門部会の実務家としての公務である。

 テレビラジオに話を戻せば、たまたまのご縁があって、つまり利害関係なく以前から関わっている関西テレビの報道番組「スーパー・ニュース・アンカー」と、RKB毎日放送のラジオ番組「スタミナラジオ」がレギュラーとしてはあるだけだ。それ以外に、最近にややご縁のできたテレビ大阪の、たかじんさんの番組にも、顔を出すことがある。
 これも長いご縁のテレビ朝日の「TVタックル」からはオファーがあり、いま独研の総務部が日程の調整を急いでいるようだ。
 タックルは、まだ未定だろうけど、画期的なナマ放送も考えているようで、最終的に実現するかどうかは別にして、わたしが参加するかどうかも別にして、その「編集できない」「やり直しできない」放送にチャレンジしようかという姿勢は、断固、支持する。

 独研は、この際だから、何を言われようがはっきり申しますが、日本で初めての独立系シンクタンクであり、いかなる既得権益からの圧力にも負けずに発行する「東京コンフィデンシャル・レポート」は、生命線の一つだ。
 独研の歴史よりもさらに古く、レポート第1号の配信は2000年3月30日、まもなく足かけ12年目に入り、いま仕上げ中の最新レポートは第501号になる。
 このレポートが有償でなければ、レポートのために費やしている膨大なコストをみずからの力だけで捻出することは全くできない。コストを自力で賄わなければ、ど真ん中のフェアネスを貫き通すことはできない。
 だから、レポートを支えてくれる会員は、レポート参加のきっかけが何であれ、考え方の違いがどうであれ、憂国の同志である。

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