映画ビギナーは、まず『シベリア超特急』を観よう! その5

2016年10月18日 | 映画
 前回(→こちら)の続き。

 深夜にたまたま鑑賞した『シベリア超特急』を通して、

 「映画って、基本的にはつまらないものなんや!」

 という、『スタージョンの法則』を彷彿させる銀幕の真理を学んだ、わが友ヒラカタ君。

 ちなみに、そこからバカ映画にハマった友は、私がすすめた『幻の湖』を鑑賞して、それをつき合っていた彼女に見せて嫌がられたのは第一回で書いた通り。

 だから、ハズレ映画をひいても、「オレの読解力がないせいか……」などと落ちこむ必要もないわけで、「そういうもんや」とすましていればいいわけだが、友はそれだけなく、もうひとつの映画的発見があったというのだ。

 それは、

 「バカ映画をつっこみながら観るのは楽しい」

 それまでのヒラカタ君は、映画というのはまじめなもので、感動したり泣いたりするために観るものだと思っていたそうだ。

 もちろん、それも映画の見方の一つだが、世の中にはバカな映画、ダメな映画、トホホな映画、たまには

 「おしいねんけどなー」

 と苦笑されるような、でもどこか愛嬌のあるB級映画など、多彩な作品が転がっているもの。

 そういう、人によっては「ふざけんな!」な映画を、

 「まあまあ、これはこれでおもしろいやないですか」
 
 と、愛を持って受け入れてあげる。「んなアホな」と、ダメなところをつっこみながらも慈しんであげる。

 バカな子ほどかわいいではないが、そういう楽しみ方もあるということに目覚めたのである。

 それ以来、ヒラカタ君はすっかり玄人の映画ファンになり、世間の評判よりも、自分の感性や好みでリラックスして鑑賞できるようになった。

 と同時に、ダメな映画を観ても、

 「それはそれで、いろんな意味で勉強になる」

 という、大人の態度で接することもできる。

 「そのことを教えてくれたんが『シベリア超特急』なんや。だからオレは、映画初心者には過去の名作と一緒に、『シベ超』も観るようにすすめてんねん」

 そう友は言うのである。

 そしてそれは、映画を語るにおいては、なかなかに本質的なところをついているような気がしないでもなかった。

 だから私もあやかって、彼と同じように、

 「良い映画と一緒に、ダメな映画もしっかり観といた方がいいよ」

 というのだ。

 これは、かの淀川長治先生もおっしゃっていた。


 「いい映画をたくさん見なさい。つまらない映画もたくさん見なさい」


 チリのノーベル賞作家パブロ・ネルーダの言葉にも、こういうのがある。


 「名作しか読まない人を私は信用しない。それは世界を知らない証拠だ」


 これから映画をたくさん見ようというヤング諸君。

 これら先人の言う通り、つまらない作品にもたくさん触れ、

 「ふざけんな、このぼけなす!」

 「金と時間返さんかいこのタコスケ!」

 とDVDを割りそうになりながら、映画の持つ奥深さをゆっくりと学んでいくのが正しい映画道だ。

 とりあえず人生の先輩は『去年マリエンバートで』がダメだったなあ。

 映画好きの先輩から、「完璧な作品や。一回観とけ」と言われて観たけど、開始5分で爆睡寸前さ!

 その後もがんばって観ようとしたけど、とにかく眠気が……。全然おもしろくない……。

 ネルーダ先生、ボクは人生を知ってますよね!



 ■おまけ 友人の映画観を一変させた名作『シベリア超特急』は→こちらから。



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