「『アオイホノオ』に、庵野ヒデアキが『ウルトラマン80』を語るシーンが出てけえへんやないか!」
テレビの前でそんな熱い咆哮を発しそうになったのは、第8話の岡田トシオ登場のシーンを見ていたときであった。
『アオイホノオ』に私がハマッていたことは先日語ったが(→こちら)、このドラマは原作者島本和彦氏の自伝ということで、様々な「伝説」ともいえるエピソードが盛りこまれている。
庵野秀明さんが大学の課題で作った「じょうぶなタイヤ」や、岡田斗司夫さんの家には核シェルターがあったなどは、私でも知っている有名なネタ。
「あー、聞いたことある」「やっぱ、この逸話ははずせへんわなあ」と見ていて楽しいものだが、となるとファンとしては当然、このような不満も出るわけですね。
「なんで、あんなオモロイ話を使えへんねん!」
そう、庵野秀明に関する私がもっとも気に入っている「あの」エピソードが入っていないではないか!
それが、
「若き日の庵野秀明、『ウルトラマン80』について大いに語る」
これは岡田さんのコラムで紹介されていたのだが、そもそもまず『ウルトラマン80』とはどういう番組なのかといえば、これが実にスットコなヒーローである。
たとえば、ウルトラマンの最終回といえば、無敵だったウルトラマンがゼットンに完敗を喫したり、瀕死のモロボシ・ダンがアンヌ隊員に自らの正体を告げ最後の戦いに挑むシーンや、レオが一人、海に向かって旅立つなどハードなものが多い。
サブタイトルも大団円にふさわしく、
ウルトラマン:「さらばウルトラマン」
ウルトラセブン:「史上最大の侵略」
帰ってきたウルトラマン:「ウルトラ5つの誓い」
ウルトラマンA:「明日のエースは君だ!」
ウルトラマンタロウ:「さらばタロウよ! ウルトラの母よ!」
ウルトラマンレオ:「さようならレオ! 太陽への出発(たびだち)」
などとシブイものが並ぶ。「さらば」という、日常生活ではなかなか使わないであろう言葉の語感がいいではないか。
で、ここで80である。
1980年代を代表するヒーローということで名づけられ、第2期ウルトラブームの最後を飾る男の最終回というのが、
「あっ! キリンも象も氷になった!!」
そうでっか……。
いやまあ、氷にはなったんか知らんが、「史上最大の侵略」などとくらべると、あまりにも緊迫感がなさすぎではないのか。なんだか札幌雪祭りの宣伝みたいだ。
まあ80自体が、
「学校の先生がウルトラマンになる」
という金八先生など学園ドラマブームに便乗したという、トホホ企画の番組であり、ついでにいえばデザインも微妙にダサく、ヘッポコピーな気分になるヒーローである。
最終回だけでなく、他の回のサブタイトルを見ててもその思いは強まる。
たとえば『ウルトラマン』など
「無限へのパスポート」
「恐怖のルート87」
「禁じられた言葉」
「故郷は地球」
そのままシリアスなSF小説に流用できそうなものばかりだ。
一方『80』の方を見てみると、
「泣くな初恋怪獣」
「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」
「がんばれ! クワガタ越冬隊」
「ボクは怪獣だーい」
「山からすもう小僧がやってきた」
「さすが! 観音さまは強かった!」
……なんだかよくわからんタイトルである。
だれなんだ、すもう小僧。「ヘンテコリンな魚」を釣ったと明るく言われても困る。
『ウルトラマン』でも海の怪獣は出てきたが、『大爆発5秒前』『沿岸警備命令』『海底科学基地』であった。イメージ違いすぎだろう。
とどめは「さすが!観音さまは強かった」において怪獣を倒す武器は、スペシウム光線でもアイスラッガーでもなく、
「ウルトラ観音光線」
リアルタイムで見た子供たちが、どんな反応をしたか非常に興味があるところだ。
そんな円谷黒歴史全開の80を庵野秀明が語る! もうその一点だけでも、興味津々であろう。
(続く【→こちら】)