今ネットでは、「能登に行くのが、いいのか、邪魔で悪いのか」の意見が錯綜しています。
今日の東京新聞・本年のコラム欄には、文芸評論家の斎藤美奈子氏が「自粛の背景」として書いていますので、紹介します。
自粛の背景
斎藤美奈子
能登半島地震から2週間の14日。<「道路が渋滞するから控えて」ではなく「公の活動を補完するために万難を排して来てください」と言うべきでした>。防災研究の第一人者で石川県の災害危機管理アドバイザーを務める室崎益輝さんが朝日新聞電子版のインタビューで語った言葉だ。
振り返ると・・。4日、深刻な渋滞を理由に、石川県警が輪島市や珠洲市に向かう車両を制限、国交省北陸地方整備局が一般車両の能登への移動を控えるよう呼びかけた。同日、岸田首相が同様の要請を行い、5日には林官房長官と石川県の馳知事が続いた。同日、社民やれいわを除く6与野党の党首が国会議員の視察の自粛を申しわせた。
このへんからメディアは能登へ行くなの大合唱となり、影響力のある政治家や著名人が同様の情報を拡散。5日に現地入りした山本太郎議員はほぼ非国民扱いされた。私たちはいわば「大本営発表」に乗ったのだ。
災害対応には自衛隊、消防、警察などの官だけでなく民の力が欠かせない。が、先の宣伝効果で専門性の高いボランティアまで現地に行くのをためらった。<悔恨の年にかられれいます>と語る室崎さん。17日で阪神・淡路大震災から29年。以来蓄積されたノウハウを能登の初動では生かせなかった。現地も見もせず自粛要請を右から左へながした首相と知事の責任は重い。
(文芸評論家)