最適化問題に対する超高速&安定計算

大規模最適化問題、グラフ探索、機械学習やデジタルツインなどの研究のお話が中心

スケジューリング学会シンポジウム:大規模災害からの避難計画

2012年09月30日 00時26分33秒 | Weblog
スケジューリング学会シンポジウム(2012年9月29、30日:成蹊大学)で以下の特別セッションを行います。JST CREST でのグラフ探索プロジェクトとも関連性の高い内容です。


大規模災害からの避難計画【9:00~11:00】

OS3-1 大地震時における広域避難行動シミュレーション
○沖 拓弥, 大佛 俊秦 (東京工業大学大学院)

[概要] 本稿では,市街地における広域避難時の安全性を人々の避難場所への到達可能性というミクロな視点から捉え,①大地震時に生じる建物倒壊,市街地延焼,道路閉塞といった物的被害を記述するモデルを構築し,②パーソントリップ調査のデータから施設内滞留者と歩行者の時空間分布を推定し,③人々が大地震発生時の居場所から避難場所に向かうまでの避難行動をモデル化し,④現実のデータを用いて避難行動シミュレーションを行った。本稿で構築したシミュレーションモデルは,物的被害パターンや発災時刻の違いを加味し、広域避難時に人々が危険にさらされる可能性の高い地域を街区レベルのミクロな空間単位で特定できるだけでなく、人々の持つ属性(性別,年齢階層,職業など)や市街地の建物用途分布の違いも考慮できる。また、市街地の様々な空間性状と避難困難率の関係や、地域間比較、発災時刻の違いによる影響などに関する考察を行った。

OS3-2 津波避難シミュレーションによる避難計画策定支援
○志村 秦知, 北上 靖大, 森 俊勝 (株式会社構造計画研究所)

[概要] これまで災害対策として、防波堤・堤防の構築や 避難施設の構築,情報インフラ整備などハード面の対策に力が入れられてきた。しかし、東日本大震災の教訓から、人的被害を最小限にするためには、津波の到 達を防ぐ、または遅らせるといったハード面の対策に加えて、住民の早期避難の計画や防災意識の向上などのソフト面の対策が重要であることが指摘されている。ソフト面の対策である避難計画の策定に当たっては、津波の到達までに住民が高台、避難施設などの一時避難場所に到着可能かどうか、到着を可能にする方法はどのようなものかなどを検討する必要がある。そこで本発表では、避難弱者や防災知識の有無などの個々の特性や避難行動を考慮できるシミュレーションを中心に、避難困難地域の把握、避難プロセスの把握、避難誘導の評価、避難時ルールの周知度による影響の予測などによって避難計画策定を支援する津波避難シミュレーションについて紹介する。

OS3-3 緊急避難行動の動的ネットワークフローモデルとその応用
○瀧澤 重志, 加藤 直樹 (京都大学)

[概要] 避難行動をモデル化する研究は,土木や建築分野を中心として行われてきた.例えば土木分野では均衡流等に基づく交通流モデルを用いた研究が進んでおり,建築分野ではマルチエージェントモデルを応用した研究が行われている.一方,離散アルゴリズムの分野では,動的ネットワークフローを元にした避難計画の研究が進んできた.この分野で扱われるモデルは前者のモデルと比較して現実の条件の記述力がやや弱い面があるが,その反面,計算効率や最速避難完了時間を理論的に導出できるといった,他のモデルにはない利点を有している.本発表では,筆者らがこれまで行ってきた,動的ネットワークフローの枠組みによる避難計画問題に関する,津波避難などを含むいくつかの研究を紹介するとともに,近年行っている研究についても紹介したい.

OS3-4 東日本大震災後計画運転時の首都圏電車ネットワーク混雑シミュレーション
○田口 東 (中央大学)

[概要] 東京首都圏の鉄道網は,30の事業者,130路線,1800駅, 8000本の電車(いずれも概数)からなる大規模で広範囲なネットワークを形成しており,800万人の通勤通学客が移動している.これに対して,時刻表通りの電車運行を表現する時空間ネットワーク,通勤通学客の移動データ,利用者均衡に基づく電車選択ルールを用いて表現する数理モデルを構成している.昨年春,東日本大震災による電力供給不足に対応するため,電車運転本数の削減が行われた.輸送力削減の利用者に対する影響は,平常時に一緒にいる利用者の多寡だけでなく,ネットワーク全体から利用路線が受ける影響による.鉄道の混雑を和らげる決め手は,利用者による分散乗車である.ここでは,ネットワーク全体を対象として,分散乗車の詳細なシミュレーションを行ってその効果が提示できることを示し,分散乗車を説得する基礎となる実現目標を具体化できることを示す.
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