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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(42);穴熊に引き角棒銀

2016-01-22 | 大山将棋研究
昭和47年6月、米長先生との第11期十段戦です。十段リーグは6人で先手後手2局ずつですから10局指します。


大山先生は四間飛車穴熊。その前の米長先生の36歩は急戦を見せたものですが、66歩はなにか思いついたのでしょう。

左側は位取りのように見えたのですが、棒銀に。引き角棒銀がまた出現しました。

46角で63金を誘って棒銀で華々しく攻める意味でしょう。これに45歩の反発。米長先生と大山先生は将棋では仲が悪く、意地を張って激しい戦いが多かったように思います。

米長先生も当然歩を取るのですが、角を引き戻して銀の繰り替えで手損です。大山先生のほうが形がよくなりました。

もう1歩損して、この飛車浮きも形がいいです。

74歩で73角を見せたので、また48銀と手損が続きます。

これは大山流の金を囲いに戻す(63から)繰り替え。54歩の準備です。

歩のぶつけあいです。互いに素直には進みません。

もう一回金を寄せます。

とうとう73角が実現してやや後手が指しやすいか。

仕方ないとはいえ角は死にます。まあ穴熊相手なので71角成なら構いません。

24飛を狙います。

24飛は実現しても33桂と使われては大山先生のペースです。

角取りに対して56歩も激しいやり取りです。意地の張り合い。

大山先生は角銀とはがされましたが、金を取って飛車が成ればバランスが取れています。

桂馬を取らせて55角に46角。このあたりのやり取りで形勢が決まったはず。46同角ではなく82角成同角72金ではなかったかと思います。

角を取ってもう一回64角に73角。これで後手玉が安定してきました。

米長先生も飛車を成りこみましたが、攻め駒が足りません。53角から71金のねらいですが

大山先生の36角が攻防の手。56桂で寄せに入ります。

71金には72銀で寄りません。

竜を回るのが両取りで決め手です。

投了図。


意地の張り合いが面白い将棋でした。2歩得でも米長先生の手損が大きく、中盤まで大山先生がリードしていたと思います。そこから穴熊の金銀をはがして互角の終盤になったかと思いましたが、55角46角同角というのが敗着でしょうか。穴熊の再構築に成功してしまえば桂得が出てきて大山先生の攻め合い勝ちです。36角が攻防に働きました。
互いに良いところが出た好局です。大山先生の序中盤感覚の良さ、米長先生の終盤の食いつきの強さ、大山先生の粘り腰と見るところが多い将棋でした。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:米長8段
後手:大山王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 6八銀(79)
14 8二玉(72)
15 5八金(49)
16 9二香(91)
17 3六歩(37)
18 4三銀(32)
19 2五歩(26)
20 3三角(22)
21 6六歩(67)
22 5二金(41)
23 6七銀(68)
24 6四歩(63)
25 3七銀(48)
26 9一玉(82)
27 1六歩(17)
28 1四歩(13)
29 7九角(88)
30 8二銀(71)
31 4六角(79)
32 4五歩(44)
33 6四角(46)
34 7一金(61)
35 4八銀(37)
36 5四銀(43)
37 5七銀(48)
38 3二飛(42)
39 3七角(64)
40 5一角(33)
41 2六角(37)
42 3五歩(34)
43 同 角(26)
44 3四飛(32)
45 2六飛(28)
46 7四歩(73)
47 4八銀(57)
48 6三金(52)
49 3七桂(29)
50 4三銀(54)
51 5五歩(56)
52 6二金(63)
53 5七角(35)
54 5四歩(53)
55 4六歩(47)
56 5五歩(54)
57 4五歩(46)
58 7二金(62)
59 3五角(57)
60 5四飛(34)
61 2四歩(25)
62 同 歩(23)
63 4七銀(48)
64 7三角(51)
65 4六銀(47)
66 3四銀(43)
67 7一角成(35)
68 同 金(72)
69 3五歩(36)
70 4三銀(34)
71 4四歩(45)
72 同 飛(54)
73 4五銀(46)
74 6四飛(44)
75 4四歩打
76 5四銀(43)
77 2四飛(26)
78 3三桂(21)
79 5四銀(45)
80 同 飛(64)
81 6五銀打
82 5一飛(54)
83 7四銀(65)
84 5六歩(55)
85 7三銀成(74)
86 5七歩成(56)
87 8二成銀(73)
88 同 金(71)
89 5七金(58)
90 同 飛成(51)
91 6八金打
92 3七龍(57)
93 5五角打
94 4六角打
95 同 角(55)
96 同 龍(37)
97 6四角打
98 7三角打
99 同 角成(64)
100 同 金(82)
101 6二銀打
102 7二金打
103 7三銀成(62)
104 同 金(72)
105 2一飛成(24)
106 8二銀打
107 5三角打
108 3六角打
109 8八玉(78)
110 5六桂打
111 5八金(68)
112 5七歩打
113 5九金(58)
114 4八桂成(56)
115 7一金打
116 7二銀打
117 6八金(59)
118 5八歩成(57)
119 同 銀(67)
120 同 成桂(48)
121 同 金(69)
122 5六龍(46)
123 6五桂打
124 5八角成(36)
125 7三桂成(65)
126 7九銀打
127 投了
まで126手で後手の勝ち



20160122今日の一手<その251>; 駒損を避ける

2016-01-22 | 今日の一手
20160122今日の一手

11月29日の名南将棋大会からMさんとMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
金歩と飛の交換で、馬を作られています。損得なしに近いです。
玉の堅さは後手のほうが少し堅いようです。59飛も囲いの一部と考えて同程度です。
先手の攻め駒は持ち駒飛角2枚。
後手の攻め駒は67馬と持ち駒金で2枚。
総合すれば互角です。


大局観として
この局面は互角ですが、銀取りの処置は難しいです。取らせてもいいかと思うかもしれませんが、銀を取られてしまえば完全な2枚換え(飛と金銀)で、穴熊の場合は(玉が堅いあるいは遠いので)大駒を切るというのも頻出するのですが、枚数の減る駒損はまずいです。現状でも金歩と飛の2枚換えで歩切れゆえ、後手からだけ55歩同歩56歩という と金つくりの筋があるのです。
対抗型で大駒交換をして駒を拾い合ってから寄せ合い、という展開になった場合、駒の損得は大きく利いてきます。さらに と金をどちらが作るかということも関係します。ここでは駒損しそうで将来 と金つくりで攻められそうですから先手のほうが苦しい展開です。後手の飛車を捨てても金を取って馬を作れば十分、という判断が素晴らしかったといえるでしょう。

× 実戦は82飛でした。これは悪手です。

71金から66馬なら後手は楽勝でした。それを逃して66馬81飛成42金寄(これはすぐに必要ではない)91竜77馬39飛66馬と駒の取り合いです。

ここで先手は69飛から68香と攻めたつもりが後手は57馬から58馬で飛車を取ってしまい、後手が優勢で寄せきりました。
この局面、歩があれば62歩から と金で攻められるので先手十分ですが、72角52銀打83角成で互角だと思います。
後手は66馬で飛車を取っていいというわけではないので、55歩同歩56歩の と金つくりでやや有利だったと思います。


× 82飛ではなく61飛のほうが正しいのですが、駒を取り合えば実戦と合流します。途中で85桂と逃げ出せればいいのですが

48金が嫌味です。
なお、71飛は金銀を持たれて82銀81飛成71金という筋があるので、打つなら61飛です。

銀桂を取られても桂香を拾える、99香は取られにくいから、ということもあるのですが、働いていない99香と持ち駒の銀の比較ですから、これで互角というわけにはいきません。


△ 銀を守る手を見ていきます。69飛は

68金なら同飛同馬75銀で嬉しいのですが、58馬39飛55歩

やはりやや苦しいです。65銀とぶつけて戦えないことはないのですが。でもこれはほかに見つからなければ候補になります。


× 69飛打なら

68金同飛同馬39飛67馬65銀77馬64銀同歩

桂損だけで、82角から取り返せるのですが、攻め足が遅いです。速度負けしそうです。


× 39角は68金で困ります。



× 48角は

68金39飛58金

75銀48金同金75銀同歩77馬

61飛42金寄81飛成66角

金が離れているので66角(あるいは馬)が先手で打たれるのが嫌味で、99香を拾われますし、将来は5筋の と金が当たってくるのも嫌です。


△ 57角は

58金同飛同馬61飛59飛

39角49馬48金打67馬

75銀同銀同歩77馬81飛成

39角が守りにしか働いていないのが不満ですが、これなら長期戦です。55歩からのと金つくりを緩和しているので、手抜いて91竜~93竜~58歩とする感じです。角を打つなら57からでした。


× 銀を逃げる手、57銀は

77馬39飛65桂48銀55歩

手順に攻められてつまらないです。


× 65銀は

77馬69飛57桂

残念ながら千日手にはなりません。


△ 75銀は

77馬39飛53銀61飛

55歩81飛成56歩91竜42金寄(22香を防ぐ)

ここでは66香、65桂、71角、26香などいろいろな攻め筋があり、互角以上になっているようです。(有力な攻め筋が多いということは形勢好転。)金歩2と角香の交換ですから、駒損でもありません。57歩成に駒が当たらないのも大きいです。

途中53銀とかわす一手を75銀と取れば1手早く攻められるのですが

75同銀同歩55歩同歩56歩54銀

千日手含みで絡まれます。42銀と打てば千日手、57歩成43銀成同金82飛52銀61銀とかも千日手になりやすいです。
ということでこれは完全に互角です。

☆ まとめ

問題図では考えられる手は多いのですが、
61飛などとして66銀を取らせたくない(理由は銀桂と桂香の取り合いになり99香が取り残される)
69飛は58馬~55歩~56歩の と金つくりが嫌。
75銀は有力で、57歩成に当たる駒が無くなるので寄せ合いになり、最悪でも千日手か。
角を打つなら57からで、固めて長期戦。
というのが結論です。

対抗型で横からの寄せ合いになるときは、(すぐに寄らなくて)駒の取り合いになることも多く、その時には駒の損得が利いてきます。穴熊の場合は金銀の価値が上がるので損得がずれてくるのですが、取れる駒の枚数(戦力の数)で劣らないようにしなければいけません。さらには と金を作る作られるで駒の損得は変化していきます。


*20180122間違いを直しました。