昭和47年5月、中原先生との第31期名人戦第6局です。
前に第7局をやりましたが、この2局は中原先生が振り飛車。来年もまた挑戦できるから振り飛車を勉強しようという話がありました。順位戦は全勝ですし、タイトルも持っていればそういう自信があるのでしょう。この後は大山先生が名人復位することはありませんでした。大山(一強)時代は終わったのです。

中原先生が三間飛車、大山先生は居飛車です。

これは機敏な動き。浮き飛車にしたので角交換はしないのかと思ったのですが

角交換すると88角の傷があります。すぐにやるのは怖いですが。77桂もはねにくいし、大山先生の序盤感覚がよいというか、中原先生が不慣れな気がします。

中原先生から端角を打ちました。これは形のようですが打ったのですから珍しい手です。

大山先生の64銀が軽い受けで、65歩同銀78飛でどうかと思いましたが、86歩同角74銀でだめですね。あとは74歩同歩同飛73歩64角という筋ですが、この55歩同歩が入れば有力のような気がします。あるいは55同歩は54歩の意味か。
大山先生は43銀と受けて

75歩としますよの74歩に、やって来いと桂馬を跳ねる。どちらかが悪くなりそうですが

75同銀より飛車を回るのが本筋ですね。

これで案外バランスが取れているようです。しかし問題発生。

河口先生が89飛はポカだと解説されていました。
大山康晴の晩節 (ちくま文庫)

銀を取り返して飛金取りで、飛車に当たるのをうっかりしたとか。

それでもまだまだに見えるのですが、中原先生が駒損を解消できたのが大きいです。

この銀も仕方なく打ったという感じです。

端に手を付けたのが決め手。ですが、取らずに53角なら難しかったのではないでしょうか。端を詰められるのは痛いのですが。

端を工作して馬を切ります。大山先生はこれを軽視したのでしょう。名人戦でやる度胸があるのかと。

飛車を打って桂馬を取ると34桂が先手になります。馬銀交換でも桂香を拾えば3枚換えです。

馬を作って粘ればまだまだに見えますが

取った桂香で端を攻めるのが急所です。

41金が質駒なので端を受けき切れません。

この香車が決め手です。左右挟撃が決まりました。
角交換になれば大山先生のほうがいいはず。金銀はバラバラでもうまくまとめました。89飛が敗因ですが、52金(これが普通)は97馬で長いからと香車を取るのを優先したのでしょう。51香で馬取りと57歩成があります。31銀をうっかりするのは私も同じです。
プロは美濃囲いで端を攻められたらまず取るのですが、私は手抜きから考えてしまいます。端を工作して馬切りが平凡なようでも厳しい手でした。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:中原十段
後手:大山名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 9六歩(97)
4 4四歩(43)
5 7八飛(28)
6 4二銀(31)
7 4八玉(59)
8 4三銀(42)
9 3八玉(48)
10 4二玉(51)
11 6八銀(79)
12 3二玉(42)
13 5六歩(57)
14 6二銀(71)
15 5七銀(68)
16 5四歩(53)
17 4六歩(47)
18 3五歩(34)
19 2八玉(38)
20 5三銀(62)
21 3八銀(39)
22 3四銀(43)
23 7五歩(76)
24 1四歩(13)
25 7四歩(75)
26 同 歩(73)
27 同 飛(78)
28 7三歩打
29 7六飛(74)
30 4五歩(44)
31 2二角成(88)
32 同 玉(32)
33 4五歩(46)
34 同 銀(34)
35 5八金(69)
36 3二金(41)
37 1六歩(17)
38 8四歩(83)
39 9五歩(96)
40 3三桂(21)
41 4六歩打
42 3四銀(45)
43 9七角打
44 6四銀(53)
45 6六歩(67)
46 8五歩(84)
47 5五歩(56)
48 4三銀(34)
49 5四歩(55)
50 同 銀(43)
51 2六歩(27)
52 7四歩(73)
53 7七桂(89)
54 7五歩(74)
55 同 角(97)
56 5六歩打
57 4八銀(57)
58 7二飛(82)
59 6四角(75)
60 7六飛(72)
61 5三角成(64)
62 4三銀(54)
63 7八歩打
64 8九飛打
65 3一銀打
66 同 金(32)
67 4三馬(53)
68 7一飛(76)
69 8二銀打
70 3二銀打
71 7一銀成(82)
72 同 金(61)
73 5三馬(43)
74 6二銀打
75 3五馬(53)
76 9九飛成(89)
77 5九歩打
78 5一香打
79 1五歩(16)
80 同 歩(14)
81 1三歩打
82 同 香(11)
83 6二馬(35)
84 同 金(71)
85 7一飛打
86 4一金(31)
87 8一飛成(71)
88 3四歩打
89 9一龍(81)
90 5七歩成(56)
91 同 銀(48)
92 9七角打
93 7一龍(91)
94 5二金(62)
95 6五桂(77)
96 4三金(52)
97 1八香打
98 5七香成(51)
99 同 金(58)
100 6八角打
101 5八金(57)
102 9五角成(68)
103 9六歩打
104 8四馬(95)
105 5五桂打
106 4四金(43)
107 1五香(18)
108 1四歩打
109 同 香(15)
110 同 香(13)
111 同 香(19)
112 5一香打
113 1九香打
114 3一玉(22)
115 6三桂成(55)
116 5八香成(51)
117 5三桂成(65)
118 投了
まで117手で先手の勝ち
前に第7局をやりましたが、この2局は中原先生が振り飛車。来年もまた挑戦できるから振り飛車を勉強しようという話がありました。順位戦は全勝ですし、タイトルも持っていればそういう自信があるのでしょう。この後は大山先生が名人復位することはありませんでした。大山(一強)時代は終わったのです。

中原先生が三間飛車、大山先生は居飛車です。

これは機敏な動き。浮き飛車にしたので角交換はしないのかと思ったのですが

角交換すると88角の傷があります。すぐにやるのは怖いですが。77桂もはねにくいし、大山先生の序盤感覚がよいというか、中原先生が不慣れな気がします。

中原先生から端角を打ちました。これは形のようですが打ったのですから珍しい手です。

大山先生の64銀が軽い受けで、65歩同銀78飛でどうかと思いましたが、86歩同角74銀でだめですね。あとは74歩同歩同飛73歩64角という筋ですが、この55歩同歩が入れば有力のような気がします。あるいは55同歩は54歩の意味か。
大山先生は43銀と受けて

75歩としますよの74歩に、やって来いと桂馬を跳ねる。どちらかが悪くなりそうですが

75同銀より飛車を回るのが本筋ですね。

これで案外バランスが取れているようです。しかし問題発生。

河口先生が89飛はポカだと解説されていました。
大山康晴の晩節 (ちくま文庫)

銀を取り返して飛金取りで、飛車に当たるのをうっかりしたとか。

それでもまだまだに見えるのですが、中原先生が駒損を解消できたのが大きいです。

この銀も仕方なく打ったという感じです。

端に手を付けたのが決め手。ですが、取らずに53角なら難しかったのではないでしょうか。端を詰められるのは痛いのですが。

端を工作して馬を切ります。大山先生はこれを軽視したのでしょう。名人戦でやる度胸があるのかと。

飛車を打って桂馬を取ると34桂が先手になります。馬銀交換でも桂香を拾えば3枚換えです。

馬を作って粘ればまだまだに見えますが

取った桂香で端を攻めるのが急所です。

41金が質駒なので端を受けき切れません。

この香車が決め手です。左右挟撃が決まりました。
角交換になれば大山先生のほうがいいはず。金銀はバラバラでもうまくまとめました。89飛が敗因ですが、52金(これが普通)は97馬で長いからと香車を取るのを優先したのでしょう。51香で馬取りと57歩成があります。31銀をうっかりするのは私も同じです。
プロは美濃囲いで端を攻められたらまず取るのですが、私は手抜きから考えてしまいます。端を工作して馬切りが平凡なようでも厳しい手でした。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:中原十段
後手:大山名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 9六歩(97)
4 4四歩(43)
5 7八飛(28)
6 4二銀(31)
7 4八玉(59)
8 4三銀(42)
9 3八玉(48)
10 4二玉(51)
11 6八銀(79)
12 3二玉(42)
13 5六歩(57)
14 6二銀(71)
15 5七銀(68)
16 5四歩(53)
17 4六歩(47)
18 3五歩(34)
19 2八玉(38)
20 5三銀(62)
21 3八銀(39)
22 3四銀(43)
23 7五歩(76)
24 1四歩(13)
25 7四歩(75)
26 同 歩(73)
27 同 飛(78)
28 7三歩打
29 7六飛(74)
30 4五歩(44)
31 2二角成(88)
32 同 玉(32)
33 4五歩(46)
34 同 銀(34)
35 5八金(69)
36 3二金(41)
37 1六歩(17)
38 8四歩(83)
39 9五歩(96)
40 3三桂(21)
41 4六歩打
42 3四銀(45)
43 9七角打
44 6四銀(53)
45 6六歩(67)
46 8五歩(84)
47 5五歩(56)
48 4三銀(34)
49 5四歩(55)
50 同 銀(43)
51 2六歩(27)
52 7四歩(73)
53 7七桂(89)
54 7五歩(74)
55 同 角(97)
56 5六歩打
57 4八銀(57)
58 7二飛(82)
59 6四角(75)
60 7六飛(72)
61 5三角成(64)
62 4三銀(54)
63 7八歩打
64 8九飛打
65 3一銀打
66 同 金(32)
67 4三馬(53)
68 7一飛(76)
69 8二銀打
70 3二銀打
71 7一銀成(82)
72 同 金(61)
73 5三馬(43)
74 6二銀打
75 3五馬(53)
76 9九飛成(89)
77 5九歩打
78 5一香打
79 1五歩(16)
80 同 歩(14)
81 1三歩打
82 同 香(11)
83 6二馬(35)
84 同 金(71)
85 7一飛打
86 4一金(31)
87 8一飛成(71)
88 3四歩打
89 9一龍(81)
90 5七歩成(56)
91 同 銀(48)
92 9七角打
93 7一龍(91)
94 5二金(62)
95 6五桂(77)
96 4三金(52)
97 1八香打
98 5七香成(51)
99 同 金(58)
100 6八角打
101 5八金(57)
102 9五角成(68)
103 9六歩打
104 8四馬(95)
105 5五桂打
106 4四金(43)
107 1五香(18)
108 1四歩打
109 同 香(15)
110 同 香(13)
111 同 香(19)
112 5一香打
113 1九香打
114 3一玉(22)
115 6三桂成(55)
116 5八香成(51)
117 5三桂成(65)
118 投了
まで117手で先手の勝ち