書 名:イオンエンジンによる動力航行
著 書:国中 均 中山 宜典 西山 和孝 (荒川 義博 監修)
出版社:コロナ社
イオンエンジンという惑星探査用エンジンに関して、近年稀にみるほど詳細に書かれている書籍である。著書の最先端の宇宙探査機の開発における鋭い視点から、現場のエンジニアらが現実の設計で考えなければならない設計手法を余すところなく詳述されている。
しかし、本書はイオンエンジンの研究を目指す大学院生および開発実務者にとってのバイブルとなることは間違いなく、名著として歴史に残る書籍といえる。
第1章 推進概要
ロケット推進の原理と電機推進シリーズの解説。
第2章 イオン生成
弱電離プラズマおよび放電現象についての一般論と、直流放電、高周波放電、マイクロ波放電といった放電方式の特徴が説明されている。またイオンエンジンの性能評価に重要な『イオン生成コスト』という概念が説明されている。
第3章 静電加速
イオンエンジンの3枚の電極である、スクリーングリッド、アクセルグリッド、ディセルグリッドの役割と、それらの電極が与える電気的特性が理論的に説明されている。
イオンシースの概念からボーム条件の導出は明快である。書籍としてグリッド設計に関する設計上のポイントが書かれているのは他に例を見ない。
イオンエンジンのグリッド支持部の設計というのは実はエンジンの実用化において極めて重要なポイントになる。通常はこの辺りのノウハウはあまり触れられないものだが、本書ではアメリカの設計事例を通して記述されていた点が興味深い。
第4章 中和
イオンエンジンから推力の担い手であるイオンだけを放出しようとすると衛星全体が負に帯電してしまうため、電気的に中和するために積極的に電子を放出する機構を持っている必要がある。そのための装置を『中和器』と呼んでいる。中和器の原理だけではなく、電子流と主エンジンからのイオン流が合流する領域でのプラズマ現象が説明されている。著者らが中和現象に伴う電磁ノイズの発生機構がE.W.Crawford(1961年)の静電イオン音波でると突き止めた現象は、プラズマ物理学の現象としても非常に深いといえる。
第5章 地上試験
イオンエンジンは宇宙空間で1万時間以上作動しなければいけないので、その耐久性を実時間で確認するためのノウハウがある(加速実験は実証にならないので)。動運転システムについてのポイントは確かに正確であったが、私には現場の苦労を削除した形で説明されているように思われたが、メーカーならば開示しない情報まで惜しみなく放出している点については、私個人としては驚きを隠しきれない思いである。
・ガス絶縁器の設計のポイントが詳述されていた。
・DCブロックの設計のポイントが詳述されていた。
・推力測定方法のポイント。
・多価イオン測定のポイント。
・ビームのエネルギー分布測定のポイント。
・推力方法のドリフト計測のポイント。
第6章 宇宙利用への最適比推力
ロケットという推進原理の観点から電機推進の最適な使い方についての説明がある。
これまでの衛星設計から、深宇宙探査にはイオンエンジンが、近地球運用にはDCアークジェットが有効であることが説明されている。
第7章 宇宙動力航法
・国中氏による『電気推進ΔVEGA』の提案は興味深かった。
・ラグランジュ点維持での電気推進の利用は興味深かった。
第8章 宇宙機システムと電気推進
・衛星におけるグランドの取り方に関するポイントは興味深い。
・射場におけるイオンエンジンの推進剤供給方式について詳しく書かれていた。
第9章 イオンエンジンの宇宙運用
著 書:国中 均 中山 宜典 西山 和孝 (荒川 義博 監修)
出版社:コロナ社
イオンエンジンという惑星探査用エンジンに関して、近年稀にみるほど詳細に書かれている書籍である。著書の最先端の宇宙探査機の開発における鋭い視点から、現場のエンジニアらが現実の設計で考えなければならない設計手法を余すところなく詳述されている。
しかし、本書はイオンエンジンの研究を目指す大学院生および開発実務者にとってのバイブルとなることは間違いなく、名著として歴史に残る書籍といえる。
第1章 推進概要
ロケット推進の原理と電機推進シリーズの解説。
第2章 イオン生成
弱電離プラズマおよび放電現象についての一般論と、直流放電、高周波放電、マイクロ波放電といった放電方式の特徴が説明されている。またイオンエンジンの性能評価に重要な『イオン生成コスト』という概念が説明されている。
第3章 静電加速
イオンエンジンの3枚の電極である、スクリーングリッド、アクセルグリッド、ディセルグリッドの役割と、それらの電極が与える電気的特性が理論的に説明されている。
イオンシースの概念からボーム条件の導出は明快である。書籍としてグリッド設計に関する設計上のポイントが書かれているのは他に例を見ない。
イオンエンジンのグリッド支持部の設計というのは実はエンジンの実用化において極めて重要なポイントになる。通常はこの辺りのノウハウはあまり触れられないものだが、本書ではアメリカの設計事例を通して記述されていた点が興味深い。
第4章 中和
イオンエンジンから推力の担い手であるイオンだけを放出しようとすると衛星全体が負に帯電してしまうため、電気的に中和するために積極的に電子を放出する機構を持っている必要がある。そのための装置を『中和器』と呼んでいる。中和器の原理だけではなく、電子流と主エンジンからのイオン流が合流する領域でのプラズマ現象が説明されている。著者らが中和現象に伴う電磁ノイズの発生機構がE.W.Crawford(1961年)の静電イオン音波でると突き止めた現象は、プラズマ物理学の現象としても非常に深いといえる。
第5章 地上試験
イオンエンジンは宇宙空間で1万時間以上作動しなければいけないので、その耐久性を実時間で確認するためのノウハウがある(加速実験は実証にならないので)。動運転システムについてのポイントは確かに正確であったが、私には現場の苦労を削除した形で説明されているように思われたが、メーカーならば開示しない情報まで惜しみなく放出している点については、私個人としては驚きを隠しきれない思いである。
・ガス絶縁器の設計のポイントが詳述されていた。
・DCブロックの設計のポイントが詳述されていた。
・推力測定方法のポイント。
・多価イオン測定のポイント。
・ビームのエネルギー分布測定のポイント。
・推力方法のドリフト計測のポイント。
第6章 宇宙利用への最適比推力
ロケットという推進原理の観点から電機推進の最適な使い方についての説明がある。
これまでの衛星設計から、深宇宙探査にはイオンエンジンが、近地球運用にはDCアークジェットが有効であることが説明されている。
第7章 宇宙動力航法
・国中氏による『電気推進ΔVEGA』の提案は興味深かった。
・ラグランジュ点維持での電気推進の利用は興味深かった。
第8章 宇宙機システムと電気推進
・衛星におけるグランドの取り方に関するポイントは興味深い。
・射場におけるイオンエンジンの推進剤供給方式について詳しく書かれていた。
第9章 イオンエンジンの宇宙運用
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