飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

【宇宙空間産業研究会】20120519

2012-05-19 15:00:00 | 佐鳥新の教授&社長日記

タイトル: 最も重い反物質を発見、米RHIC

Rachel Kaufman for National Geographic News

 アメリカ、ニューヨーク州ロングアイランドで実施された小規模のビッグバン実験により、新しいタイプの反物質が作り出された。実験に参加した科学者によると、文字通り“規格外”の物質だという。

「反ハイパー三重陽子(antihypertriton)」と名付けられた新発見の反物質は、過去最大の質量を誇るが特徴はそれだけではない。反ストレンジクオークを構成要素とする初の粒子であり、従来の元素周期表には収まりきらないのである。

 新しい反物質は昨春、ニューヨーク州のブルックヘブン国立研究所(BNL)にある相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)を稼働して作り出された。RHICでは電子を除去した原子「重イオン」同士をほぼ光速で衝突させて、構成粒子に分解することができる。

 金イオンを10万回以上も衝突させた末に微粒子の「破片」をふるいにかけたところ、約70個の反ハイパー三重陽子が発見された。この粒子は、質量の最大記録を保持していた反ヘリウムより200ミリ電子ボルトほど重い。

 通常の原子の核は、陽子や中性子と呼ばれる素粒子で構成される。素粒子はさらに小さいクオークやグルーオンなどの粒子で作られている。一方、反物質の核は、元の素粒子と質量は同じだが電荷と磁気モーメントが逆転した反素粒子から成っている。

 ビッグバン実験の初期段階では、同量の正物質と反物質が作り出された。しかし、重力の影響を受けて拡散しない物質が非常に多く存在したのである。その小さな空間で反物質と正物質が衝突して対消滅を起こし、質量が純粋なエネルギーへと変化したという。

 物理学界では、実際の対消滅後も物質が存続した理由、現在の宇宙に反物質より多くの正物質が存在する理由をいまだ導き出せていない。その謎を解く1つの手段として、RHICでは今回のようなミニ・ビッグバン実験が続いている。

 ワシントンD.C.で開催されたアメリカ科学振興協会の会合で実験結果を発表したRHICの研究者チャンブー・シュー(Zhangbu Xu)氏は、「RHICで粒子同士が超高速衝突を起こすと、クオークやグルーオンの“スープ”が作り出される」と述べている。

 そしてスープが一瞬で冷めると、素粒子が結合してハイパー三重陽子や反ハイパー三重陽子など大きめの粒子が形成されるという。科学界では、ビッグバン直後もまったく同じ現象が起きたと考えられている。

 物理学者たちは、反ハイパー三重陽子の発見に興奮しきりのようだ。元素の“立体周期表”で考えた場合に、従来何も存在しなかった場所に位置するからである。

 理科の教科書に描かれている2次元周期表の配列は、原子核が保持する陽子の個数(質量の大小も示す)を基準としている。しかし素粒子物理学者はさらに中性子の個数や、陽子や中性子にはないストレンジクオークの個数も基準に加え、周期表を立体的に表現する手法を編み出した。

 通常の水素原子、ヘリウム原子、リチウム原子の中にはストレンジクオークを保持する種類もあり、それらは2次元周期表の平面の“上”に位置する。しかし新発見の反ハイパー三重陽子は反ストレンジクオークを保持する初の反物質であり、前例のない平面の“下”に位置することとなった。

「反ハイパー三重陽子の発見自体は素晴らしいが、物理学的な意義はいまのところはっきりしない」と、イギリスにあるオックスフォード大学の物理学者で反物質に詳しいフランク・クローズ氏はコメントする。

「切手収集のようなもので、手に入れば何でも良いわけではない。今回の発見では、“正物質と反物質は同数出現する”という通説が裏付けられた。ただし、現実の宇宙で反物質が非常に少ない理由を導くまでには至っていない。手掛かりの1つにはなるかもしれないがね」。

Photograph courtesy Brookhaven National Laboratory

出典:http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110223001&expand#title 

 



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