A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1177 『光の化石』

2016-04-19 23:44:49 | 書物
タイトル:光の化石 : 瑛九とフォトグラムの世界
別書名:Fossilization:imprinted light : Ei-kyu and photogram images
執筆編集:梅津元
アシスタント:松永康
翻訳:松谷誠子、水谷みつる
デザイン:秋山伸/Les sœurs Papin
発行:浦和 : 埼玉県立近代美術館
発行日:c1997
形態:167p ; 23cm
注記:展覧会カタログ
    会期・会場:1997年6月14日〈土〉-7月27日〈日〉 埼玉県立近代美術館
内容:
あいさつ
謝辞
テキスト「浮遊する視覚―フォトグラムをめぐって」梅津元
イントロダクション
第1部 光の化石―フォトグラムの世界
第2部 瑛九のフォト・デッサン―浮遊する視覚
 2-1 フォト・デッサンの理論と実践―杉田秀夫から瑛九へ
 2-2 光と影のたわむれ
 2-3 人・人型・人形
 2-4 マチエールとジェスチュア
 2-5 浮遊する視覚
第3部 フォトグラムの現在―杉浦邦恵
資料

購入日:2016年4月19日
購入店:埼玉県立近代美術館
購入理由:
 galleryαMに「トランス/リアル―非実体的美術の可能性 vol.1 越野潤」を見に行った際、企画者・梅津元氏の選書コーナーで知り、購入した1冊。以前にフォトグラムについて書いたことがあるが、その時に本書を知っていればよかった。本展がおもしろいのはイントロダクションに植物の葉が痕跡として残っている化石を展示していることである。フォトグラムが光の痕跡なら、化石もまた光の痕跡か。写真と化石という別のものと思われているものが一つの展覧会に並ぶことで、時間的スケールがひろがる。このような時間軸のスケールが大きい視点は好みだ。

未読日記1176 『1981』

2016-04-18 23:22:33 | 書物
タイトル:1981
著者:手塚敦史
発行:調布 : ふらんす堂
発行日:2016.4
形態:117p ; 20cm
内容:
◆第五詩集
あることの悲しみのため、小さな字で書き込んでおいたわたしとは、誰か誰でもないものを指す一人称なのかもしれない。(「あとに」より)

◆「再訪」より
二人でいるよりも一人でいたほうがよい
一人でいるなら一度は夜の森の奥へ、入って行くとよい
いつしか暗やみをおそれ─
…抱くことを覚え、身の竦む思いをするようなら後ろへだんだんと、引き返して行けばよい
何かにみられている
通行人のテンポに合わせ、アザレアの来たほそみちに灼ける皮ふの痛覚─

頂いた日:2016年4月18日
 著者より献本頂きました。どうもありがとうございます。
 私は手塚の前著『おやすみの前の、詩篇』では装幀を担当したが、そのときは仮フランス装という造本だった。そして、本書はドイツ装である。ドイツ装とは、背と表紙が別の素材になっている装丁のことで、背と表紙で色が異なる。こんな装幀はほとんど見たことがない。手にして手帳のような軽さ、佇まいに魅了される。
 そして、タイトルが『1981』である。最初の詩は「ひかりは、カスタネット」と題され、「思いだす人々がいる」で始まる。カスタネットという楽器の懐かしさと滑稽さが手塚らしい。本書は、「1981」という年号で過去を連想させ、カスタネットの音色を遠鳴りにさせつつ、「思いだす人々がいる」という言葉で詩に引き込まれていく。快作。



未読日記1175 『南無阿弥陀仏』

2016-04-17 23:35:18 | 書物
タイトル:南無阿弥陀仏―付・心偈 (岩波文庫)
シリーズ名:岩波文庫, 青(33)-169-4
著者:柳宗悦
発行:東京 : 岩波書店
発行日:2015.8第42刷(1986.1第1刷)
形態:342p ; 15cm
注記:底本: 『柳宗悦全集著作篇第19巻』(筑摩書房, 1982). 『心偈』は私家本(日本民藝館, 1959)
内容:
南無阿弥陀仏という六字の名号が意味するものを説き明かしつつ、浄土思想=他力道を民芸美学の基盤として把え直した書。なかでも、日本における浄土思想の系譜を法然‐親鸞‐一遍とたどり、一遍上人をその到達点として歴史的に位置づけた点は注目される。柳宗悦晩年の最高傑作であり、格好の仏教入門書である。

目次

趣旨
因縁
一 念仏の仏教
二 三部経
三 沙門法蔵
四 阿弥陀仏
五 第十八願
六 念仏
七 他力
八 凡夫
九 六字
十 西方
十一 一念多念
十二 廻向不廻向
十三 来迎不来迎
十四 往生
十五 行と信
十六 自力と他力
十七 僧と非僧と捨聖
十八 仮名法語
附 時宗文献
口絵略註
心偈
解説(今井雅晴)

購入日:2016年4月17日
購入店:丸善 京都本店
購入理由:
 高島野十郎展を見た際、野十郎が仏教に関心を持っていたことを知り、私も仏教について勉強してみようと思い購入。
 柳宗悦の短い文章を重ねていくリズムが心地いい。そして、仏教全体の見取り図を与えてくれるようなわかりやすい本である。

未読日記1174 『資本空間 : スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸』

2016-04-16 22:23:40 | 書物
タイトル:資本空間 : スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸
別書名:The capital room : beyond three-dimensional logical pictures
     Curated by Yamamoto Kazuhiro
シリーズ名 : αMプロジェクト; 2015
執筆:山本和弘
編集:保谷香織
翻訳:クリストファー・スティヴンズ
会場撮影:木奥恵三
造本設計・デザイン:大西正一
発行:小平 : 武蔵野美術大学法人企画グループ法人企画チーム
発行日:2016.3
形態:171p : 挿図 ; 19×24cm
注記:展覧会カタログ
    会期・会場: 2015年4月11日-2016年3月26日:galleryαM
    主催: 武蔵野美術大学
    出品作家とその会期: vol. 1 豊嶋康子: 2015年4月11日-5月16日. vol. 2 村上華子: 2015年5月30日-7月4日. vol. 3 隠崎麗奈: 2015年7月18日-8月29日. vol. 4 鈴木孝幸: 2015年9月12日-10月17日. vol. 5 藤堂: 2015年10月31日-12月5日. vol. 6 河合政之: 2015年12月19日-2016年2月6日. vol. 7 白川昌生: 2016年2月20日-3月26日
    作家略歴: p164-167
    出品作品リスト: p168-171
内容:

展覧会データ
ご挨拶
「資本空間―スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸」山本和弘
Vol.1|豊嶋康子
Vol.2|村上華子
Vol.3|隠崎麗奈
Vol.4|鈴木孝幸
Vol.5|藤堂
Vol.6|河合政之
Vol.7|白川昌生
「資本空間と資本主義空間との闘争について」山本和弘
アーティストトーク記録
略歴
出品リスト

頂いた日:2016年4月9日
 galleryαMにて「トランス/リアル―非実体的美術の可能性 vol.1 越野潤」を見に行った際、受付で無料配布されていたので頂きました。どうもありがとうございます。毎回無料配布してるなんてすばらしい。2015年度のαMプロジェクトは鈴木孝幸と藤堂しか見れてないので、各回の展示がわかる図録は参考になる。
 

未読日記1173 『島野十郎 : 光と闇、魂の軌跡』

2016-04-15 23:31:22 | 書物
タイトル:島野十郎
タイトル別名:没後40年高島野十郎展
        Takashima Yajuro : 40th anniversary exhibition
        高島野十郎 : 光と闇魂の軌跡
編集・執筆:西本匡伸、高山百合、山田敦雄、江尻潔
撮影:坂本淳宏、徳山裕武、山田満穂
デザイン:山口至剛デザイン室(多菊佑介)
編集協力:有限会社アイズ(伊勢京子)
翻訳:有限会社ザ・ワード・ワークス(ルース・マクレリー)
発行:東京 : 東京美術
発行日:2015.12
形態:233, vip ; 26cm
注記:展覧会カタログ
    会期・会場: 2015年12月4日-2016年1月31日:福岡県立美術館, 2016年4月9日-6月5日:目黒区美術館, 2016年6月18日-7月31日:足利市立美術館, 2016年8月7日-9月22日:九州芸文館
    展覧会名: 没後40年高島野十郎展 = Takashima Yajuro : 40th anniversary exhibition
    その他の編集・執筆者: 高山百合, 山田敦雄, 江尻潔
    おもに図版
    あいさつ文 日本語・英語併記
    高島野十郎年譜 / 西本匡伸編: p224-233
    主な参考文献 / 西本匡伸編: 巻末pi-ii
    没後40年高島野十郎展作品リスト: 巻末piii-vi
    「高島野十郎」の「高」は「梯子高 (はしごだか) 」の置き換え

内容:
没後40年高島野十郎展公式図録。孤高の画家の新たな全貌。
写実を超えて、存在の深奥に迫る慈悲のまなざしを読み解く。

目次
ごあいさつ
「高島野十郎の昨日、今日、明日」西本匡伸

第1章 初期作品 理想に燃えて
 コラム1嶋家の人々
 「《百合とヴァイオリン》または蛇行する直線」山田敦雄

第2章 滞欧期 心軽やかな異国体験
 コラム2野十郎の欧州歴遊

第3章 風景 旅する画家
 コラム3帰らざる故郷―福岡の風景
 コラム4科学調査を通してみる島野十郎の油絵技法
 「「輪郭線」の表現をめぐって」高山百合
 画家の見た「風景」をたどる
 ①有明海干潟と雲仙岳
 ②秩父・長瀞渓谷
 コラム5「《雨 法隆寺塔》―作品保持にかける画家の思い」渡邉郁夫
 エッセイ「執拗に求め続けた写実」十文字美信
 コラム6一通の手紙から―野十郎との、幻のような一瞬の出会い
 インタビュー「光も闇も見えていた人」井浦新

第4章 静物 小さな宇宙
 エッセイ「立ちどまってしまう絵」川上弘美

第5章 光と闇 太陽 月 蝋燭
 コラム7野十郎と仏教
 「生命と宗教と芸術が織りなす連環の輪」西本匡伸

「島野十郎《蝋燭》の知られざる光」高山百合
「距離零の遠い光」江尻潔
「「偶然」との遭遇」川崎浹
島野十郎「遺稿ノート」(全文)

野十郎の写生地
観察図・デッサン/手紙
島野十郎 年譜
没後40年 島野十郎展作品リスト
主な参考文献

購入日:2016年4月9日
購入店:目黒区美術館
購入理由:
 展覧会「High-Light Scene」のための参考文献として購入。
 私が初めて島野十郎を知ったのは、2005年に三鷹市美術ギャラリーで開催された展覧会であった。今回は「ハイライト」のことが念頭にあったためか、野十郎の太陽(光)を描いた作品、静物にあたる「ハイライト」の描写に見入ってしまう。あいかわらず作品の吸引力、見せる力がとてつもない。描かれているのは珍しいものではなく、ごく日常的なものばかりなのに見飽きない。
 今展は科学調査や新たな調査研究の成果も取り入れらており興味深い。なかでも私が興味を魅かれたは、野十郎が仏教に関心をもっていたことだった。仏教に関心をもっていた画家としては、私が愛好する大正期の日本画家・村上華岳がいる。どちらも画壇と交わらず、隠遁的、求道的な生き方をした点が共通している。ただし、村上華岳は観音や如来を描いたが、野十郎は風景や静物が中心であった点が異なる。野十郎は後半に蝋燭や月、太陽など超越的な主題がでてくるが、これも仏教の影響か。あらためて芸術と仏教の関係、仏教に傾倒・関心をもった作家、仏教を通じたものの見方、感受、世界観について研究してみると、何が見えてくるか調査してみたい。

未読日記1172 『國府理展 オマージュ 相対温室』

2016-04-14 22:23:23 | 書物
タイトル:國府理展 オマージュ 相対温室
写真・デザイン:豊永政史
発行:東京 : ギャラリーエークワッド
発行日:2016.3
形態:[30]p ; 22cm
注記:展覧会カタログ
    会期・会場: 2016年3月7日-5月9日: GALLERY A⁴
    主催:ギャラリーエークワッド
内容:
ご挨拶
「凍結温室」ヤノベケンジ
図版
「國府理の『相対温室』」豊永政史
「循環する水、反転する世界―相対温室の一考察」近藤由紀
作家略歴

購入日:2016年4月8日
購入店:GALLERY A⁴
購入理由:
 國府理は、2014年4月29日に国際芸術センター青森で開催された展覧会『國府理展 相対温室』の開催中、展示作品の点検中に事故で亡くなった。本展は、展覧会開催3日目で閉会となった『相対温室』を再現展示したものである。
 不慮の事故によって亡くなったアーティストと作品の存在は別であるべきで、このような展覧会によって作品とあらためて接する機会が訪れたことをまず喜びたい。私は國府と面識はなく、熱心なファンでもなかったが、今展を見られてよかった。國府のこれまでの作品は車のメカ性、マニア、フェティッシュさゆえに、車に興味のない私にとっては、マッチョ、少年的、児戯的に見えてしまう点があった。だが、今展を見たとき、水や温室というシステムを視覚化した作品であり、自動車という装置は後景へとさがっていた。これまでの作品がガソリンやエンジンという暴力的、熱力的、男性的な作品だったとすれば、本展は植物的、水力的、女性的な作品へと転じたものだったのだ。本書でヤノベケンジが書くように、「最高傑作」だった。
 なお、本書はギャラリーのウェブサイトで閲覧できる。

未読日記1171 『船底に銅をかぶせる』

2016-04-13 23:56:57 | 書物
タイトル:船底に銅をかぶせる
別タイトル:FUNAZOKO NI DO WO KABUSERU
       Covered with a copperplate into the boat bottom
編集:池垣タダヒコ、上田良、山田卓矢
デザイン:山田卓矢
発行:Los de NAZCA ?
発行日:2016.4
形態:32p ; 26cm
注記:edition: 500
    展覧会カタログ
    会期・会場: 2016年4月4日-4月10日: Kara-S
内容:
熊谷誠
山口麻加
上田良
池垣タダヒコ
阿部大介

購入日:2016年4月6日
購入店:Kara-S
購入理由:
 京都精華大学の池垣タダヒコ、阿部大介、熊谷誠、山口麻加、上田良による銅版画+近作の展覧会に合わせて刊行された作品集。
 よい展覧会だった。久しぶりにまとまって見た熊谷誠の作品がおもしろい。ほかに山口麻加、上田良、阿部大介もよい仕事をしている。池垣タダヒコのノートに書かれたドローイングも楽しい。そう、観念的でなく、手を楽しく動かしている感覚がある。先頃終わった「PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ」よりも版画の可能性と奥深さを感じた。 これくらいのコンパクトさ、フットワークの軽さが版画らしい気がする。
 作品集は約30ページで、各作家6ページで図版が載っているので見応えがある。これで500円とはお買い得。ノートブックみたいなデザインだが、表紙がカバーになっている。

未読日記1170 『第1回 藝文京展 2015』

2016-04-12 23:28:15 | 書物
タイトル:第1回 藝文京展 2015
別タイトル:藝文京展 2015 図録
写真:大島拓也
デザイン:仲村健太郎
編集:古川真宏、西尾咲子(京都芸術センター)
発行:京都 : 京都市芸術文化協会
発行日:2015.3
形態:61p(おもに図版) ; 26cm
注記:展覧会カタログ
    会期・会場: 2015年1月10日-2月1日:京都芸術センター ギャラリー北・南
    主催: 京都市、京都市芸術文化協会
内容:
作品図版
作品目録
審査員総評
公募データ/表彰式/講評会
会場風景
トークイベント「装飾と暮らし」

頂いた日:2016年4月4日
 京都芸術センターよりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
 本展は京都芸術センターを管理運営する京都市芸術文化協会が開催した初めての公募展。第1回のテーマは「装飾と暮らし」と題し、工芸作品が募集された。


未読日記1169 『ハイパートニック・エイジ』

2016-04-11 23:01:39 | 書物
タイトル:夏休み企画展2015『ハイパートニック・エイジ』
AD+デザイン:三重野龍
撮影:松見拓也
制作・発行:京都 : 京都芸術センター
発行日:2015.8
形態:4冊(枚) ; 40cm ; 封筒入り
注記:展覧会カタログ
    会期・会場: 2015年7月20日-8月30日:京都芸術センター ギャラリー北・南ほか
    主催: 京都芸術センター
    企画・運営:武本彩子(京都芸術センター)
内容:
「ハイパートニック・エイジ」武本彩子
川田知志
NAZE
前谷開
薬師川千晴

頂いた日:2016年4月4日
 京都芸術センターよりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
これまた困ったデザインである。封筒は大きく、かさばり、その中に各作家ごとにサイズも形態もバラバラな図版冊子が封筒に封入されているのである。本として製本されていたら、手軽に手にとって中を見たりできるのに、これではいちいち封筒を開けて、目当ての冊子を探し出さねばならない。デザイナーの表現としてはいいだろうが、見る・使う側のことは考慮されていない。
 ちなみに、テキストは清々しい名文。おそらく出品作家と年齢が近いゆえの共感、同時代性があるゆえに書ける言葉だと思う。