A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

Recording Words 019

2009-08-14 23:46:03 | ことば
「幸せとか不幸せとか関係ない世界をみんなで作りましょう。」
(保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.31)


上記の言葉は、保坂和志氏の言葉ではなく、氏が数年前のあるパーティのスピーチで麻薬不法所持の逮捕歴がある元パンクロッカー、現僧侶という男が話した言葉の孫引きである。
先の言葉に対して、保坂氏はこう続ける。
「この言葉には、人間と世界との関係の変化がある。まず「幸せ」と「不幸せ」が同じ系の中の解釈の問題にすぎないという認識が前提となっていることは当然として、この言葉には、「自分は世界からの見返りを期待していない。」という宣言ともいえる覚悟がこめられている。」

毎度毎度、怪しまれるような言葉を引用しているが、宗教的なわけではなく、もちろん不幸せより幸せの方がいいわけだが、幸せとか不幸せとかの思考の枠を超えた地点で、ものを考えたい。通常の思考なら「幸せ」⇔「不幸せ」というベクトルなのかもしれないが、長い時間軸で考えれば「幸せ」のなかに「不幸せ」があり、「不幸せ」の中に「幸せ」があるだろう。つまり、幸/不幸のボーダーなどわからず、そんなものとは関係ない世界に私は生きている。