A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記254 「マーク・ロスコ」

2009-04-26 22:38:24 | 書物
タイトル:マーク・ロスコ
企画・監修:川村記念美術館
翻訳:木下哲夫
監修・校閲:林寿美、林道郎、沼辺信一
ブックデザイン:秋田寛、アキタ・デザイン・カン(森田恭行+佐々木未来)
製版:中江一夫(日本写真印刷株式会社
編集:淡交社 美術企画部
発行:株式会社淡交社
発行日:2009年3月12日
定価:2,800円+税
内容:
川村記念美術館にて開催された「マーク・ロスコ」展(2009年2月21日―6月7日)の展覧会カタログ。

晩年の傑作からみたロスコ芸術の全貌
マーク・ロスコ晩年の傑作<シーグラム壁画>シリーズ(1958-59)は、当初ニューヨークの高級レストランのために制作されたが、ロスコが一方的に契約を破棄したため、作品群は散逸する。2008-09年、全30点の現存が確認されているシーグラム壁画のうち、9点を所蔵するロンドンのテート・モダンと、7点を所蔵する川村記念美術館の共同企画により、シーグラム壁画に始まる、ロスコの晩年に焦点を当てた国際巡回展が実現し、制作から半世紀を経て壁画の半数にあたる15点が一堂に会す、歴史的な機会となった。
この展覧会を記念して刊行される本書は、ロスコの代表作約100点を収録した、日本で初の本格的作品集である。また、生前のロスコを知る美術評論家へのインタヴュー、テート修復部による壁画の化学分析と内外の研究者による、評伝と論考、年表・参考文献など、最新情報を反映したロスコ論と資料を収録し、ロスコ芸術の全貌に迫る。

SEAGRAM MURALS シーグラム壁画1958-59
 「私にはロスコの声が聞こえる―ドリー・アシュトンとの対話」林寿美(川村記念美術館主任学芸員)
 「光の影―マーク・ロスコ晩年のシリーズ」アヒム・ボルヒャルト=ヒューム(テート・モダン近現代美術担当学芸員)
WORKS 作品1949-1969
 円熟期/シーグラム壁画/晩年
BIOGRAPHY ロスコ評伝
 「マーク・ロスコの生涯」村田真(美術ジャーナリスト)
ESSAYS ロスコ論集
 「「対幻想」としてのカラー・フィールド」加治屋健司(広島市立大学芸術学部准教授)
 「保存修復から見たシーグラム壁画」レズリー・カーライル(テート修復部部長)、ヤープ・ボーン(保存科学者(博士))、メアリ・バスティン(絵画修復家)、パトリシア・スミゼン(テート絵画修復部主任)
 「絵画と空間―ロスコ・チャペルの経験」林道郎(上智大学国際教養学部教授)
APPENDIX 資料編
 ロスコの言葉
 年譜
 主要参考文献
 ロスコをめぐるキーワード50
 作品リスト

購入日:2009年4月3日
購入店:川村記念美術館ミュージアムショップ
購入理由:
待望のマーク・ロスコのシーグラム壁画のみを焦点とした展覧会。次に実現することはもうないかもしれない。それに合わせて、刊行されたのが本書。シーグラム壁画だけでなく、ロスコの代表作も納めて、資料や文献も充実した決定版の作品集といえるだろう。
 本当はもっと早くに見に行きたかったが、いろいろとバタバタとしてしまい行くことができなかった。だが、翌日にトーキョーワンダーサイト本郷にて<美術犬企画 シンポジウム「絵画」>に行こうと考えていたため、それならばこの展覧会を見ておこうと思ったのだ(実際、そのシンポジウムではロスコ展の話は一切でなかったが‥)。
 「絵画は奇蹟をおこさなければならない。」というロスコの言葉を、神秘的、形而上的、感情的、非科学的として斥けてしまうだろうか。ただ仄暗い色彩が塗られているだけというだろうか。すべてはこの作品を前にすればわかることだ。崇高としか言えない感情を湧かせるこの絵画経験は、静かに、しかし確実に私の内に浸透していく。見る者に緊張と静けさと落ち着きを要請、喚起させる作品なのだ。
 この体験は、カール・ドライヤーの映画『奇蹟』を見たときの感情に近い。あるいは、この「経験」のルーツを探っていくと、3月末に行った京都の大徳寺の庭で沸き起こった感情ともつながってくる。庭を見ているだけなのに、心が真空になるようなあの空白と充実感を思い出すのだ。この超越的ともいえる感覚を経験してしまうから、美術から抜け出せないのだろう。
 この、いつまでも見ることができる持続性は何なのだろうと考える。もちろんその時の体調や気分もあるだろうが、作品の方から吸引力でもって捉まえてしまうようなこのパルス。たった1枚のパネルやキャンバスという物質でしかないものが、何か神聖で尊いものに向かい合っているような聖性を現代の絵画に感じてしまうとは。


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