A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記257 「独学の精神」

2009-05-01 21:53:33 | 書物
タイトル:独学の精神
著者:前田英樹
装幀:間村俊一
発行:筑摩書房/ちくま新書769
発行日:2009年2月10日
内容:
本当に大切なことは、学校では教えられない。

ほんとうに大事なことは、何ひとつ教えることができない。この自覚のないところに、教育があるだろうか。学ぶということが成り立つだろうか。学ぶのは、この自分が学ぶのである。生まれてから死ぬまで、身ひとつで生きる自分が学ぶ‥‥‥(本文より)
(本書帯より)

‥‥‥この本は、教育論というようなものとは違う。学者の教育論など、私は信用していない。…近頃は教育論がはやりで、たくさんの論者がぺらぺらと喋っている。この流行の背景には、努力して生きることへの根本からの自身のなさがある。どう学び、どう教えたらいいかがわからないのは、そのせいでしかない。………

漢字が読めない、歴史を知らない、計算ができない……大学生の「基礎学力」のなさが言われて久しい。だが、「教育」に過剰なこの国の若者が「学力」を欠いているとは驚くべきことではないか。なぜ私たちはかくも「無教養」になったのか。本書は、現代の日本人が見失った「独学の精神」をめぐる思索である。「ほんとうに大事なことは何ひとつ教えることなどできない」「学ぶことは身ひとつで生きる自分が学ぶというあり方でしかなされえない」―こうした単純で大切な事実について、その当たり前の事実が行き着く先について、根っこから考え抜く。

購入日:2009年4月9日
購入店:ぽんぽん船 白金ブックセンター
購入理由:
春の入学シーズンに合わせてか「独学」についての本が出た。しかし、それがただの独学本になっていないのは、前田英樹氏だからだろう。
 ところで、私は昔から学校と名の付くところが大嫌いで、「独学」タイプの人間である。勉強などは自分がするものだという考え方があり、学校システムの師弟制、狭小な専門性には嫌気がしてきた。だから本書のようなタイトルを見ると、ようやくまっとうなことを言う大人が出てきたんだなと思う。
 前田英樹氏の近年の著作は倫理や教養をめぐる思考がさまざまな専門領域を超えた論考として展開され充実した読書経験を与えてくれる。本書も「独学の精神」についてするどい洞察が展開されていると期待している。それにしても、自身も大学教授でありながら、このようなことを書いてしまっていいものか他人事ながら驚くが、しかし真実というのはいつの時代も変わらないことであり、それを伝える大人が少ない時代ということなのだろう。なんだかんだ言っても、「独学」というのは、不安になるもので、ここで「独学の精神」を得て安心したいものだなどと考えたりする。
 
 今回、購入した白金ブックセンターは古書店なのだが、あまりの充実ぶりに驚く。浪人生時代にこの付近でバイトをほんの少ししていたことがあったのだが、その時よく行った本屋がこの書店であった。思い出すと、あの時はまだ地下鉄ができていなかった‥。某アートコンプレックスにもほど近く、ギャラリーに行くときはこの書店に立ち入ろうと決め、散歩の楽しみがまた一つ増えた。
 


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