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タイトル:アートのとびら 国立新美術館ガイドブックVol.4
編集:国立新美術館 教育普及室
デザイン:近藤一弥
写真提供:和歌山県立近代美術館、アートコートギャラリー、水戸芸術館現代美術ギャラリー
写真撮影:中野正貴、豊永政史
印刷:印象社
発行:独立行政法人国立美術館 国立新美術館
発行日:2009年5月27日
内容:
野村仁 変化する相―時・場・身体
なぜ、くずれていくのでしょう
地球と太陽の365日
いん石さん、ようこそ地球へ
美しい空を行く、鶴たちの音楽
すくすく育つのはどんな色?
太陽の光で走る。太陽の光で生きる。
入手日:2009年7月3日
入手場所:国立新美術館
国立新美術館にて開催された<野村仁 変化する相―時・場・身体>展(2009年5月27日―7月27日)の会場にて配布されていた子ども向けの解説リーフレット。私が見たのは金曜日の夜間開館だったが、国立新美術館でこんなに人がいないのも珍しいぐらい閑散としていた。入る前、今日は閉館しているのかと思ってしまったくらいだ。だが、いい時に行ったもので七夕直前イベントとやらを開催しており、短冊に願い事を書けば展覧会入場料が無料!になるというのだ。そこで、1フロア上がってイベントスペースに行き、七夕の願い事を急いで書いて無料券を持って行きそそくさと入場した。切符売り場で教えてくれた販売員の方に心から感謝を述べたい。そして、とても笑顔が素敵な人で私はうれしかった(変な意味でなく、そういう接客が少ないもので・・)。
ところが、そういう展覧会に限ってかすばらしい展覧会であった。時系列で展示されたことでわかったのは、野村仁という人は最近の言葉で言えば「ブレ」ていないということだ。ひとつの作品を制作し、そこから次の作品へのアプローチを見出して展開しているのである。それはまるで月や太陽の動きのように一定のリズムと法則さえ見出せるのだ。個人的には後半のソーラーカーの作品などは、軌道を外れてしまった感もするのだが、それはそれで個人的好みであり、作家の理屈上はブレていない。
やはり一番の見どころは前半だろう。ダンボールによる「変化していく彫刻」である『Tardiology』(1969/2009)はそのコンセプトも明快であり、早くも野村の関心を表している。その後の「記録」ぶりは河原温と対比したくなるような記録魔ぶりである。同じく記録好きの1人としてうれしくなる。特にテレビのアンテナコードを電気店で買い求めた際の店員とのやりとりを記録した音声など、何でもない普通の会話なのに可笑しみを感じる。時代のせいかもしれないが、たかがアンテナコード1本買うだけの会話がこんなにおもしろいとは予想外であった。視聴機ブースで1人ニヤニヤしながら聞いているは怪しいので、ぜひともCD化してほしいものである。
そして、野村の代表作である星や太陽の軌道を定点観測で撮影したシリーズが展示されるが、この見えない自然の摂理を視覚化、音楽化し、かつそれがこの上なく美しいということの「現実」たるや、発見が「作品」となる「現代美術」らしい。もちろん月や太陽というそれ自体が美しい対象を作品にして卑怯だなどというアマノジャクもいるかもしれないが、それは見るところを誤っている。野村は月や太陽を撮影してはいるが、その見えないシステムを撮っていることに気づくべきだ。目に見える対象にばかりかまけていると、月や太陽が奏でる音楽も耳に入ってこないだろう(それはそれで人の話なのでどうでもいいし、私は宇宙や星が好きなのでこの傾向の話やヴィジュアルに弱いというだけだ)。その後、七夕や皆既日食もあり、入場者数が伸びたかわからないが、このアートブック片手に子どもたちにも見てほしい展覧会であった。
そして本書を子ども向けとあなどるなかれ、作品図版もしっかりと7点掲載され、概要を知るにはちょうどいいし、バイリンガル本なので、英語もわかりやすくて勉強にもなる。子どもと言わず大人も楽しめる一冊である。
編集:国立新美術館 教育普及室
デザイン:近藤一弥
写真提供:和歌山県立近代美術館、アートコートギャラリー、水戸芸術館現代美術ギャラリー
写真撮影:中野正貴、豊永政史
印刷:印象社
発行:独立行政法人国立美術館 国立新美術館
発行日:2009年5月27日
内容:
野村仁 変化する相―時・場・身体
なぜ、くずれていくのでしょう
地球と太陽の365日
いん石さん、ようこそ地球へ
美しい空を行く、鶴たちの音楽
すくすく育つのはどんな色?
太陽の光で走る。太陽の光で生きる。
入手日:2009年7月3日
入手場所:国立新美術館
国立新美術館にて開催された<野村仁 変化する相―時・場・身体>展(2009年5月27日―7月27日)の会場にて配布されていた子ども向けの解説リーフレット。私が見たのは金曜日の夜間開館だったが、国立新美術館でこんなに人がいないのも珍しいぐらい閑散としていた。入る前、今日は閉館しているのかと思ってしまったくらいだ。だが、いい時に行ったもので七夕直前イベントとやらを開催しており、短冊に願い事を書けば展覧会入場料が無料!になるというのだ。そこで、1フロア上がってイベントスペースに行き、七夕の願い事を急いで書いて無料券を持って行きそそくさと入場した。切符売り場で教えてくれた販売員の方に心から感謝を述べたい。そして、とても笑顔が素敵な人で私はうれしかった(変な意味でなく、そういう接客が少ないもので・・)。
ところが、そういう展覧会に限ってかすばらしい展覧会であった。時系列で展示されたことでわかったのは、野村仁という人は最近の言葉で言えば「ブレ」ていないということだ。ひとつの作品を制作し、そこから次の作品へのアプローチを見出して展開しているのである。それはまるで月や太陽の動きのように一定のリズムと法則さえ見出せるのだ。個人的には後半のソーラーカーの作品などは、軌道を外れてしまった感もするのだが、それはそれで個人的好みであり、作家の理屈上はブレていない。
やはり一番の見どころは前半だろう。ダンボールによる「変化していく彫刻」である『Tardiology』(1969/2009)はそのコンセプトも明快であり、早くも野村の関心を表している。その後の「記録」ぶりは河原温と対比したくなるような記録魔ぶりである。同じく記録好きの1人としてうれしくなる。特にテレビのアンテナコードを電気店で買い求めた際の店員とのやりとりを記録した音声など、何でもない普通の会話なのに可笑しみを感じる。時代のせいかもしれないが、たかがアンテナコード1本買うだけの会話がこんなにおもしろいとは予想外であった。視聴機ブースで1人ニヤニヤしながら聞いているは怪しいので、ぜひともCD化してほしいものである。
そして、野村の代表作である星や太陽の軌道を定点観測で撮影したシリーズが展示されるが、この見えない自然の摂理を視覚化、音楽化し、かつそれがこの上なく美しいということの「現実」たるや、発見が「作品」となる「現代美術」らしい。もちろん月や太陽というそれ自体が美しい対象を作品にして卑怯だなどというアマノジャクもいるかもしれないが、それは見るところを誤っている。野村は月や太陽を撮影してはいるが、その見えないシステムを撮っていることに気づくべきだ。目に見える対象にばかりかまけていると、月や太陽が奏でる音楽も耳に入ってこないだろう(それはそれで人の話なのでどうでもいいし、私は宇宙や星が好きなのでこの傾向の話やヴィジュアルに弱いというだけだ)。その後、七夕や皆既日食もあり、入場者数が伸びたかわからないが、このアートブック片手に子どもたちにも見てほしい展覧会であった。
そして本書を子ども向けとあなどるなかれ、作品図版もしっかりと7点掲載され、概要を知るにはちょうどいいし、バイリンガル本なので、英語もわかりやすくて勉強にもなる。子どもと言わず大人も楽しめる一冊である。
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