A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1121 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

2015-12-19 23:02:26 | 書物
タイトル:目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
シリーズ名:光文社新書, 751
著者:伊藤亜紗
装幀:アラン・チャン
発行:東京 : 光文社
発行日:2015.4
形態:216p ; 18cm
内容:
私たちは日々、五感―視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚―からたくさんの情報を得て生きている。なかでも視覚は特権的な位置を占め、人間が外界から得る情報の八~九割は視覚に由来すると言われている。では、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか――?
美学と現代アートを専門とする著者が、視覚障害者の空間認識、感覚の使い方、体の使い方、コミュニケーションの仕方、生きるための戦略としてのユーモアなどを分析。目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことそのものを問い直す。

目次
まえがき
《本書に登場する主な人々》
序章 見えない世界を見る方法
第1章 空間――見える人は二次元、見えない人は三次元?
第2章 感覚――読む手、眺める耳
第3章 運動――見えない人の体の使い方
第4章 言葉――他人の目で見る
第5章 ユーモア――生き抜くための武器
謝辞

購入日:2015年12月18日
購入店:ブックオフ 京都三条駅ビル店
購入理由:
 12月のつくるビルゼミの参考文献として購入。今月のテーマは、豊田市美術館にて開催された「ソフィ・カル 最後のとき/最初のとき」だったが、展覧会の関連イベントに本書の著者・伊藤亜紗氏が講演会をししており、参考になると思った次第。
 読み始めてみると、近年まれにみる面白さで引き込まれてしまう。障害や福祉という文脈ではなく、美学や身体性という視点から、「目が見えない」ことを考察した論点がこれまでになく新しい。「目が見えない」とは欠如ではない。その例えとして、「脚が一本ないという「欠如」ではなく、三本が作る「全体」を感じるということです」という一文にはハッとさせられた。
 文体も平易で、それでいて感情的・情緒的でなく、冷静な分析や観察に基づいた記述、経験談がすばらしい。加えて、本書は目が見えない人の話を通じての現代美術入門でもある。おすすめ。