自分の手で、自分の
一日をつかむ。
新鮮な一日をつかむんだ。
スがはいっていない一日だ。
手にもってゆったりと重い
いい大根のような一日がいい。
それから、確かな包丁で
一日をざっくりと厚く切るんだ。
日の皮はくるりと剝いて、
面とりをして、そして一日の
見えない部分に隠し刃をする。
火通りをよくしてやるんだ。
そうして、深い鍋に放りこむ。
底に夢を敷いておいて、
冷たい水をかぶるくらい差して、
弱火でコトコト煮込んでゆく。
自分の一日をやわらかに
静かに熱く煮込んでゆくんだ。
こころさむい時代だからなあ。
自分の手で、自分の一日をふろふきにして
熱く香ばしくして食べたいんだ。
熱い器でゆず味噌で
ふうふういって。
長田弘「食卓一期一会」『長田弘全詩集』みすず書房、2015年、188頁。
ふろふき大根のような一日、人生がいいなあ。
弱火でコトコト静かに熱く煮込んだ時間を過ごしたい。
一日をつかむ。
新鮮な一日をつかむんだ。
スがはいっていない一日だ。
手にもってゆったりと重い
いい大根のような一日がいい。
それから、確かな包丁で
一日をざっくりと厚く切るんだ。
日の皮はくるりと剝いて、
面とりをして、そして一日の
見えない部分に隠し刃をする。
火通りをよくしてやるんだ。
そうして、深い鍋に放りこむ。
底に夢を敷いておいて、
冷たい水をかぶるくらい差して、
弱火でコトコト煮込んでゆく。
自分の一日をやわらかに
静かに熱く煮込んでゆくんだ。
こころさむい時代だからなあ。
自分の手で、自分の一日をふろふきにして
熱く香ばしくして食べたいんだ。
熱い器でゆず味噌で
ふうふういって。
長田弘「食卓一期一会」『長田弘全詩集』みすず書房、2015年、188頁。
ふろふき大根のような一日、人生がいいなあ。
弱火でコトコト静かに熱く煮込んだ時間を過ごしたい。