A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記140 「美術批評と戦後美術」

2007-12-12 23:23:22 | 書物
タイトル:美術批評と戦後美術
編者:美術評論家連盟
発行:ブリュッケ
発行日:2007年11月20日
定価:3360円(本体3200円+税)
内容:
美術批評は、時代の体温計たりえるか?
熱っぽい言葉のバトルが繰り広げられたシンポジウムの記録と12のトピックスによって実践された戦後美術を問う批評・研究の試み。
(本書帯より)

刊行の辞 針生一郎
第1部 日本の美術批評のあり方 美術評論家連盟50周年記念シンポジウム
「挨拶」草薙奈津子
「基調講演-戦後美術批評の再検討のために」針生一郎
第一部 日本美術を批評する
    パネラー=針生一郎/中原佑介/峯村敏明
    司会=千葉成夫
第二部 現在そして未来
    パネラー=針生一郎/中原佑介/峯村敏明
          岡崎乾二郎/南嶌宏/椹木野衣/光田由里
    司会=千葉成夫
第二部 美術批評と戦後美術
「いわゆる「ルポルタージュ絵画」」針生一郎
「伝統論争-六〇年代アヴァンギャルドへの隘路」北澤憲昭
「アンフォルメル」尾崎信一郎
「芸術・不在・日常-「反芸術」をめぐる批評言説」光田由里
「言説としての≪模型千円札事件≫-原資料による再構成」富井玲子
「「人間と物質」展」中原佑介
「日本万国博覧会-万博芸術再考」中井康之
「批評の風景-もの派の窓から」峯村敏明
「作品の復権に向けて」本江邦夫
「ネオ・ポップの展開」椹木野衣
「美術館の条件-戦後日本の「近代美術館」の出発から」水沢勉
「批評を召喚する-かつて存在した美術批評の回顧に変えて」岡崎乾二郎
編集後記 水沢勉
美術評論家連盟と戦後美術の歩み[年表] 倉林靖+暮沢剛巳
英文レジュメ

購入日:2007年12月8日
購入店:東京国立近代美術館 ミュージアムショップ
購入理由:
先日、東京国立近代美術館で行われた<「日本彫刻の近代」展パネルディスカッション(パネラー=黒川弘毅(彫刻家、武蔵野美術大学教授)、田中修二(大分大学教育福祉科学部准教授)、古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)、松本透(東京国立近代美術館企画課長))を聞きに行った。その時、偶然友人に会い、教えてもらったのがこの本。その場で「欲しい!」と思い、ミュージアムショップに駆け込み衝動買い。
実際のシンポジウムは聞くことができなかったため、読むことができることに興奮をおぼえる。なぜなら、これだけのパネラーが参加したシンポジウムがおもしろくないはずがない。事実、冒頭から中原佑介、峯村敏明による以下のような熱いスペクタルな展開から始まるのだ。

中原「では、峯村くんに聞きたいんだけれども、もの派という名前の運動を認識していましたか?」
峯村「はっきり認識していました。運動ではなく、一つの動向です。」
中原「そうすると、もの派というのは、アーティストが限定されますか?」
峯村「限定されております。私ははっきり限定して書いております。」
中原「その限定はどこからきたんですか?」
峯村「自分でやっております。」
中原「そういうのはもの派とは言わないんですよ。峯村くんのもの派なんです。」
峯村「それで結構です。」
中原「それでは、あなたが肯定したのは自分のもの派にすぎないのであって・・・。」
峯村「(中略)私は提案しているわけで、決めつけたわけでもなければ、これを世間に押し通そうなどと不遜なことは言っておりません。(略)」
(本書p.26)

このようなスリリングなディスカッションが繰り広げられ、血湧き肉踊るシンポジウムとなっている。このシンポジウムに較べれば、この日聞いたパネルディスカッションなど、甘く感じられるくらいだ。

なお、この日のシンポジウムにおいても「戦後美術」、とくに1960年代以降の美術をどのように捉えるかが問題点としてあげられた。「戦後美術」を考察することから戦前及び近世以前の日本美術、そして「近代」という言葉の捉え方をどのように理解するかまでへと論議は波及し、大いに刺戟を受けたディスカッションとなった。その意味で、「日本彫刻の近代」展パネルディスカッションで充分討議することができなかった年代を引き継ぐかたちで、本書を読むと日本美術の近代から現代までのさまざまな問題点をたどることができるだろう。