2月上旬のとある日、筆者は、宿根木にあるお宿「花の木」さんに投宿した。午後3時半頃にお宿に到着した。三部屋続きの離れの真ん中のお部屋が用意されており、10畳の和室には既にお布団が敷かれていた。目の前には一面の銀世界が広がっており、遠くには小木の海岸線がよく見えた。お部屋は全て真西に向いており、幸いにも束の間の晴れ間に恵まれ、燦々と照り輝く沈みゆく太陽を眺めながら夕食までの一時を過ごす事ができた。雪がアンテナに張り付いたため、テレビの地デジの受信状況は良好では無かったものの、エアコンがほどよく効いており、更にエアコンだけでは寒い人用にと石油ファンヒーターまで用意してあり、真冬の宿としては申し分が無かった。
夕食は午後6時から母屋に用意されていた。宿泊客は筆者以外に、宿泊を兼ねた女子会を行う、40代後半から50代前半とおぼしき地元のおばさん9人組と、これまた地元の30代カップルであった。テーブルの上には、「鮭のルイベ・蛸の燻製・蟹の身」と海老と野菜サラダ、茄子のシギ焼き、烏賊刺身が置かれていた。お野菜は全て自家製の椿油で和えられており、真稜の生酒をやりながら、これらを一気に食べ干した。全量を完食したところで、ようやくおばさん女子会の会話内容を耳をそばだてて聞く余裕が生まれてきた。どうやら新穂か畑野から来たおばさん集団らしかった。おばさんが集まると、地震のような身近な出来事、子供の話、そして飲食店情報の交換などがまず話題の中心になる。誰かが、「畑野の中堀亭のお料理は美味しいんだけど、弁当は敬老弁当みたいで駄目よ」と不満を述べると、誰かが「そお~、当たり外れがあるんだあ~」と応じた。すると、「畑野だったら、神楽が一番!私、あそこのオープン初日に行ったのよ!美味しかったあ~」と激賞すると、全員が「そうよねえ~」と言った顔つきで頷いた。どうやらこのおばさん集団の中には味音痴はいないようだったが、潟端の「清助」や「妙生庵」や「のら犬カフェ」などが話題に上らなかったところを見ると、佐渡では40を過ぎると、お洒落系のカフェや隠れ家レストラン系のお店には興味を示さなくなるのだろうか?やがて、筆者に背を向けたおばさんの一人が、「この年になってもトキメキを失わない事が大事なのよ。朱鷺メッセは駄目だけどね」とダジャレを一発かました。そうなのだ「幾つになってもお洒落心とエッチ心を失わない事」が長生きする秘訣なのさ。更にこのおばさん、「職場にお茶目で我儘な男性がいて、あたし、密かに好意を抱いてるの」とのろけだした。おばさんが浮気心を吐露している間に、旦那は子守りか夜勤に精出しているのかもしれないのに。。。すると誰かが「じゃあ、あんたバレンタインにその人にチョコを贈ったら」とまぜっかえした。好色おばさんは「あたし、ビールを飲んだら何だか体が火照ってきて興奮しちゃった」と、勝手に一人で濡れ始めた。