オセンタルカの太陽帝国

私的設定では遠州地方はだらハッパ文化圏
信州がドラゴンパスで
柏崎辺りが聖ファラオの国と思ってます

アンスロポルニス・ノルデンショルディ。

2007年07月13日 23時24分53秒 | 今週の気になる人

<!-- ペンギン -->

ちょっと前に飼い始めたブログペットですが(白ネズミを飼っていました)、昨日のリニューアルで動物の数が増えました。その中に“ペンギン”がいた。大のペンギン党である私はさっそく取り替えてしまいました。ゴメンねずみっ。噂には聞いていましたが、おもしろいですねブログペット。(←なんせ私の好きな言葉しかいわないんです)

さて、以下の記事は前のペンギン記事に繋げるつもりだったんですけど、今日は書く事が思いつかないので、分離しちゃいます。
川崎さんの記事で、太古の最大のペンギンとして取り上げられていたのが「アンスロポルニス」、その大きさが1.7m。でかい。これって、昔のペンギン百科に載っていた「南極のジャイアントペンギン」のことですよね? 川崎さんの復元図にはちょっと不思議な点が。たしか前にどこか見た記事では(どこで見たのか覚えていませんけど)、巨大な王様ペンギンみたいな形じゃありませんでしたっけ。私は、小説『狂気の山脈にて』に出てくるテケリ=リも、これ(が白くなったもの)だと思っておりました。復元図もどんどん進化していってるんですねぇ。しかしこの姿は怖い。こいつが豪雪吹きすさぶ南極の岸辺に立ちつくしている様子は、想像したらきっと夢に出てきます。これが、巣作りに小石を口で挟んでヨチヨチ歩いてる姿や、フリッパーでぺしぺしやってる様子、またはぷくっと膨らんで海中をびゅんびゅん飛んでる様子、どれもがどうしても想像つきません。で、アデリーペンギンみたいに喧嘩っ早い様子や恍惚のディスプレイをやっている様はかろうじてイメージできたので、念のためイラストにしてみました。・・・・・・「ぼゎーっ、ぼゎーっ」とか低い声で叫んでそうだ。
(※記憶にあった『ペンギンになった不思議な鳥』という本で確かめてみたところ、皇帝ペンギンと同じ姿で復元図のあったのは、ニュージーランドで見つかったパキディプティス・ポンデロススでした。勘違いごめんなさい。ということで、私はアンスロポルニスの復元図は見た事が無かったということになる)
一番違和感があるのはその羽(フリッパー)です。折れ曲がっているぞっ。(こういう羽を持つペンギンは、現在は存在しません)。こっこれは、ペンギンなんじゃないんじゃないか。北半球に住んでいたオオウミガラスだったんじゃないか。
しかし良く見てみると、これとオオウミガラスとは羽の曲がる向きが逆になっていたのでした。謎。なんだこれは。この羽はなんでこんな形に。

『ペンギンになった不思議な鳥』には、ペンギンのフリッパー(堅い板のようになった羽)の骨格図が載っています。それを見ると、一枚のオール状に堅く進化しているフリッパーの中も、ちゃんと普通の鳥と同じ、折り曲がって羽ばたける鳥の名残の形状の骨が、ちゃんと収納されているみたい。アンスロポルニスは、ちゃんとペンギンの羽が一枚板に進化する前のペンギンなのかなぁ。(それだって不思議ですけど) それにしても、検索してもアンスロポルニスは川崎さんのところ以外では復元図を見る事ができませんので、他のと比較することができません。・・・私の書いた絵は本の詳しい記述を見ながら描いたわけではなく、「恐い生き物にしてみよう」と思っただけなので、すごいデタラメですので気を付けて。
川崎さんの説明によると、アンスロポルニスは実際に腕の関節が伸縮可能な状態になっていたそうです。つまり、現在のペンギンとは羽の仕組みが全く異なっていたということですよね。一方で、ほぼ同時期(第三期)のパキディプテスは普通のフリッパーだった。※アンスロポルニスもパキディプテスも、フリッパーと足の一部の骨しか発見されていないようです。
アンスロポルニスのこの曲がる部分、見れば見るほど不思議です。これは泳ぐ羽というより羽ばたくための曲がり方ですよね。(私の絵は変形しすぎてしまっていますから、川崎さんの絵を見てください)。アンスロポルニスとオオウミガラスは羽の曲がる向きが逆だと書きましたが、本来鳥の羽の骨には曲がる部分が2ヵ所あって、泳ぐ鳥であるアンスロポルニスとオオウミガラスの羽の曲がる部分が、第一関節が強調されたか第二関節がそうなったかの違いです。でも、オオウミガラスの曲がり方の向きの方が遥かに便利だったろうなあ。水の抵抗が少なくて。

北大西洋に住んでいたオオウミガラスは、ウミスズメの仲間で、本来はオオミズナギドリの仲間である南極のペンギンの家族ではないのですが、私にとっては彼らも立派なペンギンです。ここではペンギンだということにしてください。違う種でも似たような環境に棲んでいると似たような見た目と生態の動物になる。(収斂進化)。イクチオサウルスはイルカで、クジラは魚で、トビウオはトンボです。
第一、ペンギン以外にも水の中を自在に泳げる鳥って他にもたくさんいますが、泳ぐ事を追求して飛べなくなった鳥は、ペンギンとオオウミガラスだけなんですよ。北半球にオオウミガラスの仲間はたくさんいますが、オオウミスズメもオオハシウミガラスも、みんな飛べるんです。飛べなかったのはオオウミガラスだけ。オオウミガラスの学名もペングィニヌス・インペンニスですしね。
オオウミガラスが水中を飛ぶ姿や岸辺に立つ姿はペンギンとそっくりだった(ぷっくり?)そうなのですが、ウィキペディアのオオウミガラスの項では海面に浮かぶ姿のイラストが、まるで鴨やアヒルみたいだったので、面白く思って上のような絵にしてみました。ペンギンはこのように海面に浮かべないよ。(身体を半分沈めて首だけを出す)

しかし、飛べない鳥は全部ペンギンだとすると、まだ恐竜が生きていた白亜紀中期の飛べない鳥、ヘスペロルニス・レガリスもペンギン?
うーーーん、姿を見ると立派なペンギンだなぁ(独断)
しかしでかいなぁ。というより長いです。イカディプテス・サラシも、コレだったんじゃないでしょうか? (念のために、ペンギンと普通の水鳥の圧倒的な違いは、“水中での飛び方”です。ペンギンは羽(フリッパー)で飛びますが、普通の鳥は足の水かきで前に進む。ヘスペロルニスは長い足で水を掻くための水かきも大きい。イカディプテスはどうか知らない)
ヘスペロルニスは、検索すればたくさんのイラストを目にする事ができますがウィキペディアの参考ページがおすすめ)、羽の描き方が絵によって全然違って、悩ましいところであります。なので私はペンギン風(?)に描いてみました(笑)
ヘスペロルニスは北米カンザス州で発見されているだけだというのに、海鳥であると記述されていることに疑問を持ちました。カンザスって、アメリカの中央部にある大平原の真ん中だよ。湖の鳥だったらわかるけど、どうして海鳥なんじゃろ。慌てて参考本をめくってみますと、白亜紀前期のアメリカ大陸は、ほぼ現在の陸地とそっくりなのですが、白亜紀後期になると大陸はまっぷたつに割れ、中部に海が出来ているのです。へんなの。

 

話の先が転がってしまいましたが、もうちょっと転がします。
「北半球にもいたペンギン」ということで、私がとても気に入っているのが、もう絶滅したこのオオウミガラスなんです。
飛べもしないのに何でカラスなんだろうとか、カァカァと鳴くのだろうかとか、あんまり頭良さそうに見えないのにな、とか考えると、逆に愛おしくなってきます。そもそも私は普通のカラスも動物としては好きなんですよね。部屋の窓から見える農協の屋根でよくカラスが遊んでいるんですが、見ているといろいろな行動をしていて楽しい。そして、その遊んでいる姿は南極のペンギンに似ているかも、とまで思えてしまいます。
で、このオオウミガラスを主人公とした小説で、とても好きな小説があるんです。

川端裕人という方の書いた『みっともないけど本物のペンギン』という短編。
小説現代の2006年2月号に掲載されていた作品です。確かその頃私が初めてオオウミガラスに惹かれた時期で、いろいろ検索しているとオオウミガラスが主人公の小説があるということを知って、早速買ってきた。
一度この話の感想をどこかの場所で書いたと思うんですけど、その場所がいくら探しても見つからないので、もう一度書いてみます。

 

あらすじ
東京の、とある動物園で、飼育員の手違いから5羽のペンギンが逃げ出した。4羽はすぐ救助されたが1羽だけが見つからない。動物園の外へ逃げ出した可能性があると見て、動物園は新聞に広告を出す。「可哀想なペンギンを助けてあげて!」 タマちゃんブームに沸いていた地元では新たなヒーローの出現に沸き立ち、目撃情報が多数動物園に寄せられた。中でも一番有力視されたのは、多摩川の河口でよれよれになったペンギンが、一羽で悲しそうな甲高い声で鳴いていたのを見たという複数の情報。しかし1週間後、動物園で隙間に入り込んでいたペンギン発見。やつれてはいたが、可愛らしくイワシをねだった。…しかし、だとすると多摩川の河口にいたのはナニ?
その動物園では、夏の展示のテーマとして「ペンギンの歴史展」という出し物が決まり、全国的に「懐かしいペンギンの写真」を募集する。沢山の応募の中で、北海道から送られてきた一枚の白黒写真。そこには海辺の砂浜に立つ少女と足下の一羽の鳥が写っていた。その鳥は、どう見てもオオウミガラスに見えた…。
さっそく主人公は北海道に飛ぶ。写真の送り主の老婆はこの鳥のことを“あほ鳥”(飛べなくてすぐ捕まるから)と呼び、昔は北海道の海にたくさん棲んでいた事、とてもなつこい鳥だったこと、そして「その肉は舌がとろけるほど美味しかったこと」などを懐かしそうに教えてくれた…
主人公は北海道でその行く末を求め、調査を始める。

この小説ではオオウミガラスの生態と滅亡に際しての状況を詳しく解説してくれているのですが、動物園の飼育員としての視点から、「オオウミガラスの絶滅が近くなった頃、全ヨーロッパの動物園が「せめて剥製ぐらいは欲しい」と高値が買い取った為、オオウミガラスを殺す者が増えた」と同じ動物園関係者として慚愧をもって語っています。だから極めて熱心に消えた北海道のペンギンを追い求める。
しかし動物園の罪以上に、オオウミガラスが滅亡に至った最大の原因。物語中では、「南極のペンギンも大量に捕獲されたのに滅亡せず、北半球のペンギンは絶滅してしまった最大の理由」として、「オオウミガラスはすごく美味しかった」と描写されているのです。小説中に「北海道でペンギンを食べた」という人が何人も現れるのですが、その人たちの語るペン焼鳥のあまりに美味しそうで香ばしいこと。読んでいるだけでよだれが出てきてしまいます。

ペンギンって、美味しいのでしょうか?
北大西洋のペンギンも、南極のペンギンも、人間に大量に捕獲されました。理由は「飛べないから生きている食糧として」。北のペンギンは1844年にいなくなったので味についての本当のところはよく分からないのですが、南のペンギンは大航海の時代から20世紀初頭の南極探検の時代まで普通に捕獲されていましたので、ペンギンの味についての記録も多い。で、ペンギンは美味しいのかそうでないのかというと、、、、 どうも証言者によって両極端に分かれるんですよね。どちらかというと「美味しくない!」派が多いような。航海技術がまだそれほど進歩してない大航海時代にはペンギンは唯一無二の現地調達可能な貴重な食糧ですので、「美味しい!」という記述が多いのですが(でもむしろ味に触れずに「食糧とした」とだけさらりと書いている人が多いような)、時代がくだるにつれて「まずい」という感想が多くなってくるように思います。ポオのナンタケット島出身のゴードン・ゴムの物語にもゾウガメを何頭も積んで航海する様子が描かれてますよね。船の上なら何でも美味しく感じるような気がするんですけど、だからこそ「まずい」という記述が興味深い。
念のために、「美味しい」と書いた人の記述を羅列しておきますと、

冒険家ジョン・ディヴィス(16世紀末)
「ペンギンのおかげで栄養状態が最悪だった乗組員の状態が、完全に回復した。1万4千の干しペンギンを船に積み、船員4人あたり一日にペンギン5羽を割り当てた」

リチャード・ホーキンス卿(16世紀末)
「ツノメドリよりは遥かに美味。食べてみると魚を食べる鳥である事が即座に分かる」

探検家白瀬矗(20世紀初)
「ペンギンは味噌で煮込めば旨い」

・・・・・・あれ? 2件しかないや(笑) 微妙に褒めてないし。
ただし、私たちにはこれ以外に、あのキャプテン・クック(18世紀後半)の極めて興味深い記述があります。彼は1775年の日記に「他に食べる物が無いとき以外は食べたくない」と記しているのですが、その記述の2週間後「白状すると、他の塩漬け肉よりも何よりも、私は新鮮なペンギンの肉を欲していることに気付いた。ペン肉は去勢した雄牛のレバーと同じくらい美味い。新鮮であればあるほど」と記しているのです。うーーーむ、キャプテンクックは味わい深い人だ。しかし私は頭をひねる。こりゃ、実際に食べてみないと分からないぞ。クセのあるクセになる味なのでしょうか。どこかでペンギンが食べられる場所は無いのでしょうか。本によるとニュージーランドのマオリ族には「ファファ(もしくはフアフア)」というペンギンを使った珍味があるそうなんですが、岩波新書の『ペンギンの世界』を読む限り、詳細不明でいろんな説のある謎の料理らしいです。少なくともネットで検索しても全然ヒットしない。おっと、肉はアレでも卵は異常に美味しいことは諸書の一致したところで、“ペンギンタマゴ狩り”が伝統行事となっている地域もあるそうです。なかでもジェンツーペンギンの玉子が一番美味しいそうな。

タネ明かしをしてしまうと、1850年頃にイギリス世論を沸騰させた「ジョン・フランクリンの捜索」が関係あるとのこと。行方不明になったジョン・フランクリンの探索の悲劇の物語は探検物語好きなら知らぬ者が無いのですが(普通は知らないが)、長くなるのでここでは省略します(残念)。とにかく北米大陸の北端を通って大西洋から太平洋へと抜けるルート(北西航路)は何百年も掛けて探査されていたルートで、イギリス政府から2万ポンド、また行方不明になった著名なジョン・フランクリンを発見すれば家族からも莫大な報奨金が出るというので、数多くの探検が北極圏に旅立ったのでした。この探索行では難破や死亡者が多かったのですが、一方では数多くの伝説も生まれ、この小説では「気付かないうちに北西航路を通り抜け、ベーリング海峡を通って北海道へ辿りついた船があったのかもしれない」とまとめています。当時はオオウミガラス滅亡間近の時期ですが、船乗りの常識としてはオオウミガラスを見つけたらとりあえず捕獲して船に乗せる、でしたから、北海道のペンギンは、このようにして大西洋から運ばれてきたに違いないと。
うーーーん、ロマンがある話ですねぇ。
そういえば、ちょっと前に人気になった非日常実用講座の一冊『ティラノサウルスの育て方』にも同様の話がありましたね。「大航海時代にジパングを目指した船乗りたちは、モーリシャス諸島で食糧として大量にドードーを船に積み込んだ。江戸時代初期、日本での布教を目指した宣教師たちは生きたドードーを連れて日本に乗りこみ、九州の無人島で潜伏しながら機会を待った。彼らが食糧として飼育したドードーが五島列島の僻地に生き残っている」、、、、 そんな話が。

『みっともないけど本当のペンギン』、私の解説が中途半端ですけど(キーッ、なんでこのブログには文字数制限があるんだ)、でもとてもいい話です。
オオウミガラスのあだ名は“アホ鳥”で、ペンギンのあだ名は“バカ鳥”。この小説ではオオウミガラスは「あほでうまいけど懐っこい」鳥として描かれており、動物園でペンギンを飼育する主人公は「馬鹿なのに大人気」なこの鳥を見ていろいろ考える。結局、かわいいだけなんですよ。ペンギンは。・・・・・・ごめんなさい、少なくとも私がペンギンが好きなのは可愛いから、じゃなくて変な動物だからなのでした。あははのは。

この短編は、川端氏の単行本『星と半月の海』に加筆した上で収録されているのだそうです。残りの作品も連関してるみたいなので、読んでみたいな。

著者さんの元ネタ話

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