TWV 55:B5。
一応テレマンの代表曲のひとつなんですけども。
序曲『いろんな国々』。ドイツ語名だと「民族」で、フランス語名だと「国家」。ややこしくなりますね。
才能溢れた天才だったテレマンがしかけたいたずら曲のひとつだと思います。でも私はテレマンについての本は一冊も持っていませんし、Wikipediaにもこの曲についての項は立てられてませんので、以下はこの曲についての私の勝手な考察。
そもそも「序曲」ってなんぞや。序曲ってもっと華々しくする曲だと思う。序曲って楽章に分かれているものだっけ、と思うのは自分がベートーヴェン以降のブルジョワ志向にまみれていると反省してしまいますけど、序曲には派手さが欠けぬものだと思う。テレマンはヘンデルとバッハと親しく、その両者の大量な曲を綿密に研究した人であるとされているため、でもテレマン自身も天才だったから、この曲はなんか変な謎に満ちたパロディ曲なのです。ラモーの『インドの優雅な国々』と共通する意味のわからなさがあるとも思いますけど、それとは別種のテレマン的世界。
曲の構成。
1.序曲(0:00)、2.メヌエット(7:10)、3.トルコ人(11:21)、4.スイス人(14:20)、5.モスクワ人(16:04)、6.ポルトガル人(18:29)、7.脚の不自由な人々(21:13)、8.走る人(22:30)
・・・いや全然トルコ人はこんなじゃない、とかスイス人ってヴェネツィア人ぽいよね、とかポルトガル人って何人? と思うのはテレマンの罠にはまっているのであって、この曲集の一番の中枢は第5曲のモスクワ人。なんだこの突然現れる現代音楽。これだけで「テレマンは天才なのだった」と私は愕然とするわけです。他は結局テレマン的楽曲なのにこの曲だけが他を圧倒している。「足の不自由な人々(Les Boiteux)」とか「ランナー(Les Coureurs)」とか、何のこと? と思うのですけど、これもブーレ(bourrée)とクーラント(courante)のパロディなのでした。
・・・いや、はたしてそうなのかな。
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