ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

ZOOT AT EASE

2010年10月29日 | レコードのお話
秋もさかりの或る日のタンノイによれば、ズートは、レコードのB面の最後にふたたびテナーサクスに持ち替えて、シャワーのあとになんどかひらめいた新しいフレーズを、この『マイファニー・バレンタイン』で試しているような一瞬の導入から、しだいに確固とした音像になって聴く者は魅入られてゆく。
調子に乗っているときの、フレーズの周回でバッ!バッ!と機関車が余った蒸気を排気するいつもの合いの手を入れるところまで聴こえて、当方としてはニッコリだ。
ズートの録音盤をいろいろ鳴らしていると、同じ曲になかなか巡り合いがないから、ミデアムレアに料理した1973年のこの演奏が、あとあとまでやり直す気にならないマイハニー・バレンタイン解釈であったのか。
ハンクジョーンズ氏のピアノ、ミルトヒントンの豪華なベース、グラディテイトの一瞬キラめくハイハットが、コーヒーの味も忘れる気分である。
そのとき電話が鳴って、お忙しい時間を縫ってジャズとオーディオの近況を知らせてくださる杉並のS先生の声がきこえた。
このたびはちょっとした異変があった。
「こんど、眼の手術を受けることになりまして」
それは大変なことであるが、3カ月絶食して心臓にカテーテルを挿してえらいめにあった10年前の経験から、こちらは驚く感受性が、どうも希薄になっている。
平安時代の兼好法師も、「頑強な体のひとは山登りにも待ってくれぬ」と言っているし、ハイパワーのS先生が、なにかいよいよ身近に思えたのがもうしわけない。
どうか上首尾で、またいつものジャズのようなお話を聴かせてもらいたいが。
S先生の地下要塞のオーディオ装置を、ステレオ・サウンド誌で拝見したことがあるが、前後を4つのオーディオ装置に囲まれて、しあわせな日々をおくられているかたである。



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