ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

マクソニック・スピーカーの客

2008年03月01日 | 巡礼者の記帳
「わたしのスピーカーはマクソニックです」
寒気の少し緩んだ或る日、ロイスのソフアで寛ぐその客は、ジャズのフレーバーをしゃれたジャケットに包んで、メガネの奥に柔和な眼差しをのぞかせている。
するとその人物は、これまで大勢の客の話題にあった宮城県北のトラディッショナルなジャズ喫茶『J』のあるじだろうか。
マクソニック・サウンドはまぼろしの音とよばれ、タンノイと同じコアキシャル・ユニットや、ウエスターンの励磁型に範を取ったタイプなど、いまでは異色となった造形から轟いてくるジャズの音像は、多くの逸話を残してきた。
その客は、タンノイのブリテン・サウンドが聴かせる燻銀のビル・エバンスをしばらく楽しんでいたが「友人がさきごろタンノイ・ウエストミンスターを購入しました」と言いながらバッグから1枚のCDを取り出された。
早速LEVOXのトレイに載せてプレイボタンを押してみる。突然、床を踏み抜きそうな熱気の炸裂するビッグバンド・ジャズが鳴った。「ダイナミック・レンジが広いので気をつけてください」と、その客は言っている。
近隣のジャズ演奏に堪能な面々が一堂に会した或る日の熱演が、この有名なプライベート盤となったそうで、貴重な歴史のワンシーンを当方は謹んで拝聴した。
マクソニック・システムといい、割拠するジャズ・バンドといい、芭蕉もさぞかし、しのぶもちずり石の『歌枕』をそぞろ歩きに喜ぶことだろう。いつか、孤高の装置をぜひ訪ねてみたいものである。


コメント
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