三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【“環境住宅”はデザイン系だけの領域か?】

2018年02月02日 06時56分22秒 | Weblog
さて2日間の日程で、月曜火曜と日本建築学会・地球の声委員会の
北海道住宅見学&セミナーの協力をしておりました。
さすがに15-6人のみなさんの応接なので
はじめてじっくり接触する方もいてあれこれと気働きする部分もあり、
自分の意見を申し述べるという状況にはありませんでした。
また会社を2日間空けていたので、処理対応すべき案件も多く、
ようやくすこし対象化して見られるようになって来た次第です。

建築には、構造、計画、環境工学、意匠といった「領域」があります。
それぞれが一定の独立性を持って絡み合いながら進んでいる。
構造は基本的力学の世界のことなので、
いわばモノそのものの物理の世界。
計画とは、一般的には「都市計画」のような領域でしょう。
で、近年になって住宅などでその室内気候について研究解析が進んだ。
とくに日本では北海道という積雪寒冷条件地域への総体的対応が
明治以降の150年の間に急速にテーマとして浮上し、
どうしたらこの地で安定的に日本人が定住できるか、
その基盤としての住宅建築技術の試行錯誤が繰り返されてきた。
従来の日本家屋技術で建てたのでは、写真のような「お寒い」現実だった。
このテーマについては当然ながら地域としての当事者意識から
北海道がフロンティアとして研究解析に取り組んできた。
そういうなかで領域としての「環境工学」は急速に進化してきた。
この建築領域の協働がなければ現場設計者や工務店組織は
「どうつくったらいいのか」の手掛かりが得られなかった。
意匠とは、こうした基本テーマを踏まえて実践的に「つくる」立場。
もちろん意匠には「芸術」に通じる部分もあるけれど、
まずは環境工学での研究が最優先され、それを尊重してきたといえる。
今日「環境」というコトバは、この「環境工学」的立場が切り開き、
それを「意匠」の立場が咀嚼しながら高断熱高気密住宅として
ある領域形成に至ってきたのだと思う。
だから、北海道ではこうした「環境工学」の立場からの関与が大きく、
荒谷登先生や鎌田紀彦先生などの研究開発努力が基盤を形成した。
鎌田紀彦先生はこうした基盤に立って実践的工法研究開発という
日本の柱・梁で構成される木造工法の技術革新に取り組んできた。
こうした基盤的な研究開発があってはじめて
住宅においての「室内気候のコントロール」ということが可能になった。
外気候にただただ翻弄される「環境」の住宅から人間は解放された。
北海道・寒冷地の人間からすれば、これが「環境住宅」という概念の基本。
現実の建築を作っている設計者や工務店組織は
こうした最新研究に対しリスペクトを持ち、実験にも大いに協力してきた。
高断熱高気密住宅の工法開発はそのように生まれてきた。
今日北海道の住宅からはおおむね氷柱は解消された。

今回の日本建築学会“地球の声”委員会in北大では、
この「環境住宅」というテーマについて、主に意匠系の研究者や
実践者としての設計者だけによって議論が展開されていた。
流れなどもあって、そのこと自体はあるいは自然なのかも知れないけれど、
これまでの北海道での住宅論議ではいわゆる「環境工学」的意見と
現場的な意匠の立場とが相互にリスペクトを持って対話してきた。
このあたりは「主催」としての日本建築学会“地球の声”委員会の考え方と
北海道「環境住宅」との相違というようにも受け取れた次第です。
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