三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

東大・前真之先生の住宅取材同行

2015年05月17日 06時40分11秒 | Weblog


きのうの続きであります。
前先生は、北海道内の住宅の研究を続けられていて
たくさんの住宅の熱環境計測に取り組んでいます。
過日もそうした成果を発表する機会を当社を使って行われましたが、
今回の講演に際しても、精力的に視察を重ねられていました。
そんなことで、きのうは若手の設計者・丸田絢子さんの
ご自宅を見学していただきました。
丸田絢子さんは山形県出身で、東北大学~東京芸大卒業後、
東京で青木淳設計に勤務されたあと、札幌で設計事務所を開設された方。
経歴からすると、ピュアなデザインを志向されているのかなと
思っていたのですが、ご自宅はQ値1.15、気密性能も0.3レベルということ。
平屋で1.15のQ値はなかなか難しいと思いますが、
聞くと、グラスウール100mmの充填断熱に付加断熱150mmの
透湿機能も持った外断熱用に開発された板状断熱材を使っています。
事務所開設後は、店舗設計などの仕事が多く、
北海道では本格的な住宅設計は、このご自宅が初めてだったそうです。
そういうことなので、寒冷地住宅にはまだ不慣れなので、
建築家の小室雅伸さんにいろいろと相談しながら、
さらに、工務店も氏から紹介されて施工を依頼されたと言うこと。
うかがうと、やや湿度の感じられる室内で、
ちょっとテラスドアを開けると、
びっくりするほど冷涼な外気が飛び込んできました。
まことに高断熱高気密な仕様になっていると実感できます。



わたしが面白かったのが、平屋でフラットルーフなのに、
大きく張り出している庇の部分であります。
神社仏閣の屋根端部のように下に向かって徐々に逓減させている。
まるで「せり上がり」のようにデザインされているのです。
長さは居間の外周部分では1mほどになっているということ。
居間は南と西側に向かって開口しているので、
夏期のオーバーヒート対策として、大きくせり出させているとのこと。
デザイナーらしく、こうした庇をどのようにデザインすべきか、
その先達をなにに求めるべきか、
むしろ温暖地の伝統的住宅のプロポーションに興味が高まっていると
話されていました。
このあたりはまことに興味深い。
札幌という地域性をよく考え、雪の問題の解決策を求めれば
このようなフラットルーフに結論が至るでしょうが、
その上で長い庇を出していくとすると、前人未踏っぽい領域になる。
ハネ出しで庇を出して行っていますが、
この冬の雪の中でも、積雪荷重には十分に耐えていたということ。
お話しの中では、F.L.ライトの建築プロポーションに話が及び
その水平ラインのデザインと、日本の伝統建築の再発見が
この寒冷地北海道で進みそうな話題の進展。
さらに寒冷地住宅が、関東以南の住宅と
デザイン的にどのように違いを持って行くのかというポイントで、
日射の性質の違いがもたらす「地域の陰影感」や暮らしぶりに
たいへん繊細で人間的な感受性を持たれていると思いました。
地域によっての日射の性質の違いが、
どのような室内と外観デザイン、色使いの違いになるか、
さらには、「北海道らしい暮らしぶり」という
形では見えにくいテーマ・要素についてのデザイン的解析姿勢が、
お話しの随所にうかがえて、たいへん面白かったです。
そして、こんな住宅取材が前先生の研究にどんなふうに役立つか、
注目していきたいと思っています。
なお、時間がなくて、きのう書いたわが家のサーモ画像の件については、
先生には確認できませんでした。
やや怖いもの見たさではありますが・・・(笑)。
すぐに次号の原稿〆切も迫ってきますが、
なんとか、無事に進行できるように祈るような思いであります(笑)。


コメント
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