ドラマ『名探偵金田一耕助の傑作推理 八つ墓村』(1991年7月1日放送 TBS 『月曜ドラマスペシャル』 93分)
監督 …… 関本 郁夫(49歳)
脚本 …… 関本 郁夫、新津康子(?歳)
音楽 …… 真鍋 理一郎(66歳 2015年没)
主題曲 …… レモ=ジャゾット『アルビノーニのアダージョ』(1958年)
おもなキャスティング
寺田辰弥 …… 鶴見 辰吾(26歳)
森美也子 …… 夏木 マリ(39歳)
多治見春代 …… 浅田 美代子(35歳)
多治見小竹 …… 北城 真記子(73歳 1995年没)
多治見小梅 …… 高橋 芙美子(76歳 2006年没)
多治見久弥・要蔵・庄左衛門(3役) …… ジョニー大倉(38歳 2014年没)
久野恒実医師 …… 戸浦 六宏(61歳 1993年没)
里村慎太郎 …… 朝日 完記(36歳)
濃茶の尼・妙蓮 …… 堀 永子(50歳)
麻呂尾寺の英泉 …… 田中 公行(?歳)
慶勝院の梅幸尼 …… 楠本 光子(59歳)
新居医師 …… 西園寺 章雄(44歳)
15代目・金田一耕助 …… 古谷 一行(47歳)
12代目・等々力大志警部 …… ハナ 肇(61歳 1993年没)
岡山県警の銀川警部 …… 石井 愃一(45歳)
八つ墓村の駐在・今村巡査 …… タンクロー(?歳)
井川丑松 …… 浜村 純(85歳 1995年没)
井川鶴子 …… 小沢 幹子(27歳)
辰弥の下宿先の大家・お島 …… 夏海 京子(?歳)
ナレーション …… 城 達也(59歳 1995年没)
※日本ミステリー界の巨星・横溝正史による金田一耕助ものの第4長編『八つ墓村』(1949年3月~51年1月連載)の6度目の映像化
※TBS 系列で不定期に放映された2時間サスペンスドラマ『名探偵金田一耕助の傑作推理』シリーズ(1983~2005年 全32作)としては第13作にあたり、古谷一行が金田一を演じた『八つ墓村』としては1978年4~5月放映の連続ドラマ『横溝正史シリーズⅡ』版以来2作目となる。
※監督の関本郁夫は、『名探偵金田一耕助の名推理』シリーズ中最多登板した監督であり(8作)、本作は監督3作目にあたる。シリーズで関本が監督と脚本を同時に兼任したのは本作のみである。
※時代設定が原作の「昭和二十三(1948)年」ではなく「昭和二十八(1953)年」に修正されている
※原作での重要登場人物である「里村慎太郎の妹」「諏訪弁護士」らが本作ではカットされている
※原作では八つ墓村の有力者一族は「田治見」なのだが、本作ではなぜか「多治見」表記になっている
※公式資料によると、原作で「八つ墓村」事件の捜査にあたった時点(1948年5月)での金田一耕助の年齢は「35歳」だった
※本作が放映された1991年当時は、市川崑による「東宝金田一耕助シリーズ」の演出法が復活した映画『天河伝説殺人事件』が公開され(7月)、古谷主演の TBS版は年に2~3作の割合で製作されており、そのいっぽうで片岡鶴太郎の主演によるフジテレビ版金田一耕助シリーズ『昭和推理傑作選 横溝正史シリーズ』(1990~98年放映 全9作)も製作されていた。
※本作で井川丑松を演じた浜村純は、1977年版の映画『八つ墓村』では森美也子の義父・森荘吉(原作における野村荘吉)の役で出演していた。ここでは死んじゃった……
そいじゃまぁ~、恒例のやつ、いってみよぉか~!!
≪ドキドキッ☆ 1991年の『八つ墓村』 殺人だらけの本編タイムスケジュール≫
0~45秒 プロローグからタイトル
いかにも不吉な印象の BGMが流れ、ナレーションによって、岡山・鳥取県境にある四方を山々に囲まれた集落・八つ墓村が紹介される。
八つ墓村の遠景、稲光が走る暗雲、八つ並べられた落ち武者の生首と短いカットが続き、最後に神社か寺の境内とおぼしき場所に立ち並ぶ八つの石塔の映像を背景にタイトル『金田一耕助の傑作推理 八つ墓村』が大きく表示される。「金田一耕助の傑作推理」は白字の明朝体、「八つ墓村」は大きく赤字の筆書き。
※抑制のきいた城達也のナレーションと、『横溝正史シリーズ』時代から使用されている真鍋理一郎のおどろおどろしい音楽とが絶妙なバランスをとり、短いながらも非常にインパクトのある開幕となっている。最後の八つの石塔の手前にある「八つ墓明神」と墨書された木札が、いかにも年月を経て読めるか読めないかギリギリの朽ち方になっているあたり、かなり芸が細かい。
※事件も何も始まっていないタイトルの時点で「傑作推理」と銘打たれている点、このシリーズの金田一耕助にかかるプレッシャーはかなりのものであったと思われる。
45秒~1分30秒 東京 尾行される寺田辰弥
「昭和28年 東京」というテロップが入り、冬場のコートにマフラーをかけた、仕事帰りらしいスーツ姿の青年・寺田辰弥が登場する。
夜、線路下の地下道らしい場所を一人で歩く辰弥。ふいに後ろをつけてくる足音を不審に感じ、待ち伏せをして「誰だ!」と声をかける。辰弥を尾行していたと思われる、鳥打帽にコートを着た人影は、慌てたように走って逃げ去る。
※夜の陰影をうまく使ったこの尾行シーンはスリラーとして非常に面白く、辰弥もそれなりに肝のすわった青年であることがわかる。しかし、1953年の道路にはっきりと視覚障害者誘導用ブロック(ポチポチのある黄色いやつ)が映り込んでいるのは、ちょっと……重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、視覚障害者誘導用ブロック(日本発祥)が公道に導入されたのは、1967年の岡山市中区が最初である。岡山すごい!
1分30秒~3分30秒 下宿の辰弥
下宿に帰ってくる辰弥。迎えた大家との会話から、辰弥が九州地方に数日出張に出かけていたことが分かるが、大家によると、辰弥の不在中に私立探偵の金田一耕助という人物が何度も下宿を訪ねてきたという。
大家から辰弥の帰ってくる日を聞いた金田一は、辰弥に「翌日の午後6時に喜久井町のよしせいという小料理屋にぜひ来てほしい」という伝言を残していた。
また大家は、金田一とは別の人物も下宿を訪ねてきて、辰弥のことを根掘り葉掘り聞いていったと語る。
またまた大家は、辰弥あてに届いた封筒入りの手紙を渡す。辰弥が開封すると、そこには血で書いたような赤い文字で「八つ墓村へかえって来てはならぬ」などと書かれた脅迫状が入っていた。
※出張帰りで疲れている上に、尾行されて気がピリピリしている辰弥に対して、何の気遣いもせず新情報をペラペラとまくしたてる大家のおばちゃんの能天気さが実に素晴らしい。それに対して「なんだよ!」とキレる辰弥のほうが大人げなく見えてしまうのは、それを観ている私(そうだい)が大家さんのほうに年齢が近くなってきたからなのか……おせっかいって、いとおしい。
※辰弥が九州土産だと言って大家に渡した、うす黄緑色のでっかくて真ん丸の果物が何なのかわからない……カボチャ? 冬瓜?
※このシーンでちらっと見えた脅迫状の封筒から、辰弥の下宿が東京都新宿区にあることが分かる。金田一が面会場所に指定した小料理屋のある喜久井町も新宿区なので、そう遠くない場所であることから金田一の気遣いが感じられる。
3分30秒~9分30秒 辰弥と金田一、井川丑松の対面
翌日、約束の小料理屋で金田一と会う辰弥。面談によって、辰弥が金田一に人捜しを依頼した岡山県・八つ墓村の資産家・多治見家の捜している人物に間違いないことが判明する。その場で、辰弥は多治見家の使いとして東京にやって来た祖父・井川丑松とも面会する。
丑松は多治見家の人物(久弥、春代、小竹、小梅、いとこの里村慎太郎)に関する説明を始め、辰弥に多治見家の後継者となるために八つ墓村に帰ってきてほしいと話す。しかし丑松は、不意におそった咳をおさえようとしてカプセル剤を飲んだ直後に大量の血を吐いて死亡してしまう(第1の殺人)。
※この面談の時に辰弥が見せた母の形見の出生書きから、辰弥は「昭和二年九月六日」に生まれたことがわかるので、本作での辰弥の年齢は26歳ということになる(演じた鶴見辰吾も当時同じ26歳)。ちなみに、辰弥は形見としてこの出生書きの他に、「龍の顎」などと書かれた迷路の地図のような書置きも持たされていた。その他、このシーンで現在の辰弥が化粧品メーカーに勤務している会社員であることも語られる。辰弥の下宿の部屋に貼られていたポスターから推測すると資生堂だろうか(放送当初のスポンサー?)。
※井川丑松を演じた浜村純は、1977年の映画版『八つ墓村』にも出演していたが、最終的に死ななかった1977年版よりも、すぐに死んじゃう1991年版のほうが数倍セリフが多いというのは、どういうことなのか……14年ぶりに俳優としての面目を躍如した執念のリベンジであった。ちなみに、本作での「井川」の読みは原作小説通りに「いかわ」である。
※このシーンでの丑松の「鶴子は、生まれて間もないお前をつれて多治見の家を飛び出した。もう25年も前になるかのう。」というセリフから、辰弥が1歳前後の昭和三(1928)年に「多治見32人殺し」が発生したことがわかる。ところが、この発言は……
※カプセル剤自体は19世紀からある物なのでこの時代に丑松が服用していてもなんの問題もない。でも、飲んだ瞬間に喀血するというのは、いかにもまぎらわしい描写ではある。
9分30秒~11分30秒 牛込警察署の辰弥
金田一の助言を受けた等々力警部の捜査によって、丑松の死は辰弥に会う数時間前に丑松が服用したカプセル剤による毒殺であることが判明し、丑松殺害の嫌疑をかけられていた辰弥は解放される。
疲弊した辰弥は八つ墓村へ向かうことを拒否するが、丑松に代わる多治見家の使いとして牛込警察署に現れた、多治見家の遠縁にあたる女性・森美也子と出会う。
※つまり、丑松が死亡した原因は辰弥が見ている時に飲んだカプセル剤ではなく「その前」に呑んだカプセル剤であることが判明するわけだが、妙にタイミングが合いすぎていて変ではある。
※全身赤のスーツで現れる妙齢の美女・美也子のインパクトがすさまじいが、その一方で誤認逮捕を謝っているとはとても思えない軽さで浅~く頭を下げるだけの、ハナ肇演じる等々力警部の態度のデカさも地味にすさまじい。官憲こえ~!!
※牛込警察署の外観を映したカットで雪が降っているため、本事件の発生時期が真冬であることが推察される。
11分30秒~12分30秒 どこかのかなり豪華なレストラン
優雅に会食をしながら、辰弥の八つ墓村入りを勧める美也子。辰弥は心ここにあらずといったていではあるが、八つ墓村へ行くことを承諾する。同時に金田一も、小竹小梅姉妹の要請によって美也子、辰弥とともに八つ墓村へ同行することになる。
※さっきまであんなに八つ墓村行きを嫌がっていたのに……ここの心境の変化から、辰弥が初対面の時点で美也子に特別な感情を抱いていた可能性が示唆されている。
※自身の話によると、現在未亡人である森美也子は大学進学から、調布で電気器具工場を経営していた男性(森荘吉の長男)と結婚してその夫が亡くなるまで東京で生活していたという。
※話の流れから言うと、原作小説における諏訪弁護士のように八つ墓村へ行く理由が全くない金田一ではあるのだが、辰弥捜索の依頼人である小竹小梅姉妹の要請によって八つ墓村へ行く流れとなる。報酬をもらえる程度の気分で向かったのであろうが、まさか行ったらあんな大騒ぎになるとは、ねぇ。
12分30秒~16分 夜汽車での美也子の話
東京から岡山県へと向かう夜行列車の中で、辰弥から血文字の脅迫状を見せられる美也子と金田一。美也子は、八つ墓村に伝わる八つ墓明神の由来として、戦国時代の永禄九(1566)年、毛利家に敗れた戦国大名・尼子(あまご)家の落ち武者8人を、毛利家の詮議と莫大な報奨金、そして落ち武者たちが運んできた軍資金3千両に目がくらんだ多治見家の先祖にあたる名主・多治見庄左衛門と村人が皆殺しにしたという凄惨な歴史を語る。
※この時の回想シーンをはじめとして、本作では八つ墓村の過去の映像には必ず『アルビノーニのアダージョ』が流れている。予算の関係なのか新規 BGMがいっさい流れていない本作だが、非常に哀切なこの曲の選曲が見事にマッチしているため、音楽的な制限を全く感じさせない、あの1977年映画版における芥川サウンドに比肩しうるジャストフィット感を生み出している。グッジョブ!!
16~18分 辰弥、八つ墓村へ
国鉄伯備線の石蟹駅(いしがえき 岡山県新見市)を降りた辰弥一行、歩いて八つ墓村へと向かう。八つ墓村を見下ろす峠で、美也子から莫大な山林の権利を所有する多治見家のことなどを聞く辰弥と金田一。
不穏な空気を感じさせる音楽が流れるなか、多治見家に向かう辰弥たちの前に村の狂女・濃茶の尼があらわれ、「八つ墓明神は八つのいけにえを求めておいでんさる!」と不気味極まりない予言を叫ぶ(第1のたたりじゃ~!)。同時に、殺気に満ちた視線で辰弥を囲み、にらみつける村人たち。
※石蟹駅で偶然に辰弥を見かけた博労の片岡吉蔵の反応からも、辰弥の八つ墓村入りが多くの村人にとって相当に忌むべきことであることが強く伝わってくる。
※辰弥たちが石蟹駅から車に乗って八つ墓村へ向かった可能性もあるのだが、本作の映像中では車両を使った描写も言及もいっさい無いので、暫定的に石蟹駅から徒歩で行ける距離に八つ墓村があるという解釈にしておく。
18~23分 多治見家
辰弥は瓦屋根に石垣づくりのいかめしい多治見家の屋敷に到着し、病床の当主・多治見久弥をのぞいた多治見家の面々と顔を合わせる。多治見家の実権を握っている大大伯母・多治見小竹小梅姉妹は、辰弥に多治見家の次期当主になってもらうように強く要請する。
現在の多治見家には小竹小梅姉妹の他に、辰弥の母ちがいの兄・久弥と姉・春代がいるが、久弥は肺病で瀕死の状態であり、春代は腎臓を患って子が産めないことが原因で嫁ぎ先から離縁されてきていた。
23~24分 謎の来訪者
その夜。東京で自分を尾行していた人影のことが気にかかる辰弥は床についても眠れずにいたが、そこに不気味な人影が現れ、辰弥の顔をのぞき込む。辰弥は大声をあげて家人を呼び、人影はどこかへ逃げ去っていった。
※この場面で、人影が現れる直前に床の間にかけてある般若の面の目の部分が光る描写や、人影がのぞき込んだ時に辰弥の顔に落ちた水など巧みな伏線がしっかりと張られている。
24~29分 多治見家当主・久弥
翌日。辰弥は多治見家で、多治見家の親族である久野医院の久野恒実医師(多治見要蔵の弟)や、従兄の里村慎太郎らの挨拶を受け、病床の兄・久弥に初めて面会する。
重い病の身の久弥は健康な弟の辰弥に多治見家の全財産をゆずると宣言するが、叔父の久野医師の処方した常備薬を飲んだ直後に血を吐いて死亡してしまう(第2の殺人)。
※周囲からヤブ医者とののしられる久野医師を演じるのは、腕の立つ名医の役もしょっちゅう演じておられる戸浦六宏さん。ここではかなり頼りない久野医師をオロオロと好演している。
29分~31分30秒 久野医院
金田一、岡山県警の銀川警部が主任となる「八つ墓村殺人事件捜査本部」で、東京から応援に駆けつけた等々力警部と合流して捜査を開始する。
丑松も久弥も、同じく久野医師が処方した薬に混入された毒(トリカブト由来のアルカロイド系毒物)で死亡していることから、捜査本部は久野医師を第一容疑者として疑うが、久野医院の薬物管理のずさんさから、久野以外の人物が医院に侵入して薬に毒を入れたという可能性も視野に入れる。
捜査中、金田一たちは八つ墓村の隣村にある麻呂尾寺の住職・長英の使いとして長英の飲む薬をもらいに来た僧侶・英泉に出会う。英泉は礼儀正しい僧であるが、戦争中の爆撃によって顔面に大きな火傷の跡を残していた。
※東京で死亡した丑松事件の捜査のためというれっきとした理由はあるのだが……やっぱり等々力警部が岡山にがっつりいるのは違和感が残る。ヒマなのか?
※等々力警部と役割を二分する形で、原作小説における磯川警部の立場をつとめる銀川警部を演じるのは、コミカルな演技も得意な石井愃一さん。ここでは石坂浩二金田一シリーズの加藤武ほどのお笑い要員ではないコワモテのキャラクターだが、猪突猛進でどことなくおかしな味わいを見せている。
※等々力警部が銀川警部を呼ぶ時に「警部」と言うのは、どんなもんだろうか……いや、あなたも警部ですよね? 仕事 OFFなのか?
31分30秒~40分 多治見春代の告白
金田一が捜査から多治見家に戻ると、辰弥は姉・春代と美也子を相手に、自分が血文字の脅迫文を送りつけられ、何者かに尾行されるほどに村人に忌み嫌われている理由を話してくれと詰め寄っていた。
辰弥の気迫に圧された春代はやむなく、自分と久弥の父・多治見要蔵が村の娘・井川鶴子を略奪、監禁して辰弥を産ませたこと、そして鶴子が辰弥を連れて逃亡したために狂乱した要蔵が起こしてしまった「多治見32人殺し」の真相を語る。
金田一、ふと見かけた辰弥の部屋(かつての鶴子の監禁部屋。多治見家の離れにある)の屏風の中に、鶴子が当時の恋人・亀井陽一にあてて書いたとおぼしき恋文を発見する。この恋文の中にあった「龍の顎」という言葉から、辰弥が母の形見として持っていた迷路のようなものの記された書置きが、八つ墓村の地下にある広大な鍾乳洞の地図であることが判明する。
小竹小梅姉妹の「そろそろ久弥の初七日の客が来る」という横槍によって、4人の談義は中断となる。
※なにかと典型的な巻き込まれ型の主人公に見られがちな辰弥であるが、鉄格子をはめていたとおぼしき跡を発見するなど、本作ではそれなりに行動的な部分も強調されている。でも、ちょっと怒りっぽい危険な雰囲気もあるかも……
※春代の告白に合わせて、要蔵の鶴子拉致と32人殺しが回想シーンとして流れるが、意外と短くあっさりしている32人殺し(全体で1分ほど)に比べて、鶴子に対する外道すぎる悪行の数々が異様に詳細に映像化されるために(こっちは約3分)、多治見要蔵の陰湿さがイヤというほど伝わってくる。その一方で、実の父を擁護したくなる気持ちもわからんでもないのだが、この所業を「激しい恋」と表現する多治見春代の言い方もたいがいおかしい。あんた、それで実の母を殺されてんのよ!?
※32人殺しの多治見要蔵の扮装は女ものの和服(鶴子に着せていた?)の下に洋ズボンとゲートル、頭にはおなじみのナショナルランプ2本、凶器は日本刀に猟銃というもので、同じ古谷一行金田一による1978年ドラマ版の要蔵の扮装を継承したものになっている。ちなみに、本作の映像の中では要蔵は1発しか猟銃を撃っていない。
※春代の話では要蔵は一晩中殺戮を続けて夜明けに失踪したことになっているが、映像では要蔵が最初に多治見家で正妻を斬殺した時点で明るい日中であり、村で暴れているシーンも全て昼間のような明るさになっている矛盾が生じている。要蔵のナショナルランプも煌々と点いているのだが、日中なのでその必要性も不明瞭になっている。
※93分というタイトな内容時間のためか、物語の進行がかなりスピーディでシーンごとの時間関係が不明瞭な点も多い本作なのだが、辰弥が八つ墓村に来た翌日に死亡した久弥の初七日が行われるという小竹小梅姉妹の発言から、このシーンの日付が、辰弥が八つ墓村に来て7日目であることがわかる(等々力警部が八つ墓村に来たのも同じ日)。
※多治見久弥の初七日は、東日本の慣習でいうのならばその次の日(死亡日から数えて7日目)になるはずなのだが、本作の舞台は西日本であるため、その慣習にしたがって「死亡の前日から数えて7日目」にあたるこの日に行われていると解釈する。ちなみに21世紀現在のご葬儀事情では、いちいち親族に集まっていただく手間をはぶくために、葬儀の日に初七日の儀式もまとめて行う方式が浸透しているそうです。
40分~44分30秒 久弥の初七日の惨劇
多治見家でとりおこなわれた久弥の初七日の席で、辰弥は参列した慶勝院の梅幸尼から帰り際に「あなたのお身の上に関して大事なことをお話したいので明日、寺院まで来てほしい。」と告げられる。
初七日の晩の夕食の席で、経をあげた多治見家の菩提寺・蓮光寺の住職・洪禅が食事中に突然喀血して死亡してしまう(第3の殺人)。
洪禅和尚の死因は調べるまでもなく毒殺だったが、同席した麻呂尾寺の英泉は激高し、食事の膳を運んできた辰弥が自分を殺そうとして間違えて洪禅を毒殺したのだとつかみかかる。
※等々力警部も銀川警部も(あと今村巡査も)同席していたというのに、しかも連続「毒殺」事件が発生している最中だというのに、関係者全員が口にする食事を作っている台所に警官の目がじぇんじぇん行き届いていないとは……『ルパン三世』第2シリーズの銭形警部もかくやという無能ぶりである。おまえらクビ!!
44分30秒~46分20秒 謎の地下階段
その夜。眠れずにいた辰弥は、自分の部屋の隣にある土蔵の隠し階段から、供え用の花を持って地下に降りていく小竹小梅姉妹の姿を目撃する。
46分20秒~47分30秒 森家の前の橋
翌日(辰弥が八つ墓村に来て8日目)。梅幸尼との約束通りに慶勝院に向かっていた辰弥に濃茶の尼が現れ、「おめぇの行く先々には血の雨が降りよる。今度は誰を殺しに来よるんじゃ!?」と詰め寄る(第2のたたりじゃ~!)。怒りに打ち震える辰弥が濃茶の尼を突き飛ばすと吉蔵たち村人が集まって一触即発の空気となるが、森家から出てきた美也子が説得してその場はなんとかおさまる。
※この時に美也子が「この方は多治見家の跡取りなのよ? 人を殺すわけないでしょ!」と一喝するが、多治見庄左衛門と多治見要蔵の例を考えると説得力がないことはなはだしい。いや、多治見家の跡取りだから心配してるんですけど……
※このシーンから、八つ墓村(というか、そのロケ地)に雪がかなり降り積もっている。物語上、真冬であることに特に問題はないのだが、撮影現場がかなり寒かったせいなのか濃茶の尼役の女優さんの口が回らずろれつが怪しくなっていて、濃茶の尼のヤバさに磨きがかかっているのがイイ感じである。
※本作における濃茶の尼は、実はセリフとして「たたりじゃ~!」とは一度も言っておらず、八つ墓明神のたたりを本気で信じているというよりは、明確に多治見家の人間に復讐する目的で、吉蔵ら村人を計画的に扇動しているふしがある。このシーンでも村人が辰弥を取り囲んだ時にニヤリと笑っている表情があり、橋の下に吉蔵たちをスタンバらせた上で辰弥に食ってかかったんじゃなかろうかという知性すら感じさせる部分がある女性である。
47分30秒~50分 慶勝院の殺人
辰弥と美也子が慶勝院にたどり着くと、そこには昨夜の多治見家の初七日から運ばれてきた夕食の膳を食べて毒殺された梅幸尼の死体が横たわっていた(第4の殺人)。
金田一と警察の捜査により、現場から八つ墓村における対立もしくは並立する6組12名の名前が書かれたポケット手帳のメモと、濃茶の尼のわらじの足跡が発見される。これまで殺害された人物の名前に斜線が入っていることから、金田一らはそのメモを一連の連続殺人の犯人が残した殺人計画書ではないかと疑う。
※このシーンをはじめとして、本作でもたびたび金田一が見せる有名な「頭をワシャワシャとかきむしる」クセであるが、さすがに50代にも近づいてきたベテラン古谷金田一に不潔な雰囲気などあろうはずもなく、フケがいっさい落ちないきれいな髪ツヤなのがちょっと寂しい。そりゃそうですよね~。
50分~51分20秒 捜査本部での金田一の推理
メモに書かれた名前のリストを見て、金田一は連続殺人の犯人が「ペアになっている2人のうちのどちらかを殺せばよい」という思考をもって殺人を繰り返しているのではないかと推理するが、そうでない可能性も視野に入れる。
※今回の連続殺人事件の異常性が明らかになる重要なシーンであり、単なるおどろおどろしいたたりに留まらない、本作の理論ミステリとしての特異性を際立たせるくだりである。
51分20秒~53分10秒 久野医院
捜査によってメモの持ち主が久野医師であり、筆跡も久野医師のものであることが判明するが、警察が詰問すると久野医師は、メモは3ヶ月前に何者かによって往診鞄ごと盗まれた物で自分は何も知らないと弁解する。駐在の今村巡査は、メモを盗んだのは日頃から盗癖のある濃茶の尼ではないかと推測する。
警察は連続殺人の犯人が久野医師であるとの疑いを強めるが、金田一は結論を保留し、今回の連続殺人が26年前の多治見32人殺しと関係があると推理し、独自の捜査を進めるために八つ墓村を離れ、岡山市の岡山県警に向かう。
※このシーンで金田一は多治見32人殺しが「26年前に起きた」と発言しており、地元の今村巡査(当時6歳)も、それを聞いて特に異を唱える反応はしていない。これは、本作の冒頭で井川丑松が語った「25年前」という鶴子・辰弥母子の失踪年と微妙にずれのある発言であるのだが……1年の差だし、ま、いっか。ていうか、あの風体で今村巡査が32歳なのがビックリ!
53分10秒~54分 岡山県警から八つ墓村役場
多治見32人殺しの詳しい経緯と、事件の被害者たちのその後を調査するために、岡山市の岡山県警と八つ墓村の村役場を訪ね捜査を進める金田一。
※おなじみの金田一単独行のくだりであるが、本作では八つ墓村から直線距離にして50キロほどしかない岡山市におもむいて、その後すぐに八つ墓村の村役場に戻る流れになっているため、そう長くは離れていなかったようである。岡山県警では、磯川警部に会ったんだろうな~。
54分~57分40秒 洞窟で出会う辰弥と美也子
夜。辰弥はひとりで土蔵に忍び込んで隠し階段を使い、そこが地下の広大な鍾乳洞につながる入り口になっていることを発見する。
鍾乳洞をさまよう辰弥は、八つ墓村の濃茶の尼の家に近い出入り口で偶然に美也子と出会い、美也子に対する愛情を告白するが、美也子は「家柄の違いが許さない」と言って拒絶する。
辰弥と美也子は、濃茶の尼の家の周辺を立ち去る里村慎太郎の姿を見かけるが、鍾乳洞の奥には、その2人を隠れて見つめる麻呂尾寺の英泉の姿もあった。
※この1991年版『八つ墓村』最大のアレンジポイントである、「辰弥と美也子の愛」が本格的に語られる重要なシーン。しかし、家の中から成り行きで外に出てしまった辰弥はしょうがないとしても、日中にあれほど雪が積もっている真冬なのに、村の外を歩いている美也子の服装が薄手のスカートにばっくり胸のあいたブラウス姿なのがいくらなんでもおかしい。冬をナメてんのか!?
57分40秒~60分30秒 濃茶の尼の死
その翌日(辰弥が八つ墓村に来て9日目)。独自捜査から帰ってきた金田一と等々力警部は、自宅で絞殺されている濃茶の尼の死体を発見する(第5の殺人)。金田一は毒殺でなく絞殺であることから、真犯人にとって計算外の事態が発生したために急遽濃茶の尼が殺されたと推理するが、第一容疑者として警察にマークされていた久野医師が前日から失踪していることが判明し、等々力警部は久野医師を真犯人と断定して捜索する。
※このシーンでの濃茶の尼の検死は、八つ墓村の疎開医で評判の良い新居修平医師が的確に執り行っている。久野医師、不憫すぎ……
60分30秒~62分45秒 鍾乳洞のミイラ死体
その夜。前夜に引き続いて鍾乳洞の中を探索する辰弥と美也子は、迷路のように入り組んだ鍾乳洞の一角で、ミイラ化した死体が甲冑を着て祀られているのを発見して驚愕する。その場に多治見家から辰弥を追ってきた春代が現れ、そのミイラが自分たちの父親である多治見要蔵のものであると語り、26年前に村人32人を惨殺して行方不明になった要蔵を小竹小梅姉妹が秘密裏に殺害してここに隠していたと告白する。
※ここでも春代が「26年前」と言っているので、やっぱり多治見32人殺しは昭和二(1927)年に発生したってことで、いっか! 丑松さんは勘違いしてたのかな?
※ミイラ、ミイラと言っているが、鎧武者姿の死体の顔は面具の中に黒い覆面をかぶったような黒一色の処理がされていて、ミイラらしい表情は全くうかがい知れない。製作する予算なかったんだろうなぁ……
62分45秒~68分 辰弥の部屋にて
金田一、辰弥に部屋の屏風から鶴子の恋文と一緒に出てきた、鶴子の恋人・亀井陽一の写真を見せる。陽一の顔は辰弥と瓜二つであり、そこから金田一は、辰弥が多治見要蔵ではなく陽一と鶴子との間に生まれた子であると断定する。
部屋を去った金田一に代わって辰弥の部屋に入ってきた春代、辰弥が美也子に好意を寄せていることを察し、美也子への不信感を吐露する。
※この時に見せた亀井陽一の写真の裏には、撮影されたのが大正十三(1924)年の春で、陽一は当時27歳であると記されている。とすれば、亀井陽一は生きていれば56歳ということになる。
※またまた重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、この写真で亀井陽一は眼鏡をかけている。ということは、現在の陽一も目が悪いはずなので、それこそ原作小説のように眼鏡をかけていた方が物語に整合性はあったかと思われるのだが……まさか、日本では1951年に実用化されたばかりというハードコンタクトレンズを使っていたとでもいうのか(ソフトコンタクトは1961年生まれ)!? 岡山、やっぱりすげぇ!!
68~69分 動き出したミイラ武者
同じ頃に鍾乳洞に入った小竹小梅姉妹、失踪した久野医師の捜索のあおりを受けて偶然に発見されることを恐れ多治見要蔵のミイラ武者死体を別の場所に移そうとするが、突然動き出したミイラ武者が小竹のみを連れて鍾乳洞の奥へと消えていく。
69~70分 鍾乳洞の2死体
多治見家の通報を受けた等々力警部らは辰弥と鍾乳洞での捜索を行うが、すでに先回りして鍾乳洞に入っていた金田一は、尼子家の落ち武者が隠したという伝説の小判3千両を探していた里村慎太郎とともに、ミイラ武者の甲冑を着せられた小竹の死体(扼殺)と、毒殺され埋められた久野医師の死体を発見していた(第6、7の殺人)。
※本作での里村慎太郎は、まさに視聴者に対する犯人のミスリード要員でしかないといった肩身の狭さで、セリフは少ないわ人相は悪いわ恋人はいないわ……原作小説から見るとだいぶ役割を削られ脇に回ってしまっている。でもまぁ、脇役どころか存在そのものをまるごと消されている妹さん(ほんとのヒロインは私なの!!)よりはマシよね。3千両、見つかるといいですね。
※小竹小梅姉妹のうち、原作小説で殺されるのは小梅の方で、ここが事件解明につながる一つのミソとなるのだが、本作では特にそのくだりは無く真犯人の計画通りに小竹が殺されている。
70~70分40秒 暴徒化する村人たち
翌日(辰弥が八つ墓村に来て10日目)。多治見小竹と久野医師の死が明らかとなった村は大混乱におちいり、たたりの恐怖にかられた村人の一部は暴徒と化して多治見家に殺到し、命の危険を感じた春代は辰弥を地下の鍾乳洞に潜伏させる。
70分40秒~71分10秒 鍾乳洞へと逃げ込む辰弥
辰弥は単身で鍾乳洞に逃げ込むが、辰弥を心配して会いに来たという美也子と合流して、ともに奥の「龍の顎」を目指して進んでいく。
暴徒と化した吉蔵らは鍾乳洞にも入ろうとするが銀川警部らに制止され、金田一と等々力警部は鍾乳洞に潜入していく。
71分10秒~73分15秒 龍の顎の2人
辰弥と美也子は鍾乳洞の最奥部にある「龍の顎」にたどり着き、かつて辰弥の両親(鶴子と陽一)が結ばれた同じ場所で愛しあう。
※ここで流れる、井川鶴子による恋文の朗読が非常に哀切で艶っぽい。出番は少ないが、鶴子を演じた女優の小沢幹子さんは本作の MVP!!
※いや~、『アルビノーニのアダージョ』は、どこで使ってもいいなぁ。
73分15秒~75分30秒 春代の死
村の様子を見てくると言って美也子が去った後、辰弥は鍾乳洞に響きわたる叫び声を聞き、駆けつけた辰弥は倒れている瀕死の春代を発見する(ナイフで刺された?)。春代は鍾乳洞で辰弥に食料を運ぶ途上で何者かに襲われて重傷を負ったが、その人物の指を強く噛んで撃退したと語る。
春代は辰弥に、実は辰弥が多治見家の血を引いていない子であるということを自分も兄・久弥も知っていたが、「呪われた多治見家の血は自分達の代で終わりにしよう」という強い意志があったために辰弥を後継者に選んだという真実と、血のつながっていない辰弥への愛を告白して息絶える(第8の殺人)。
75分30秒~78分50秒 真犯人
春代の死にうちひしがれる辰弥は、その後ある人物と出会うが、偶然に決定的な証拠を発見して、その人物が一連の事件の真犯人であることを悟る。
態度を豹変させてナイフを振りかざす真犯人に辰弥は追い駆けられるが、寸前のところで麻呂尾寺の英泉に助けられ、さらにたどり着いた金田一と警察に真犯人が取り押さえられて事態は収束する。英泉は真犯人にナイフで腹部を刺されて負傷するが、辰弥はなぜ自分を犯人だと疑っていた英泉が助けてくれたのか不思議に思う。
※鍾乳洞内での真犯人の豹変は、多治見要蔵の32人殺しと並んで、『八つ墓村』の映像化における大きな見どころであるのだが、本作でも1977年の映画版に比べればだいぶ地味ではあるものの、ちょっとだけメイクがキツくなって低音の唸り声をあげながら襲ってくるナチュラル野獣スタイルな真犯人がなかなか怖い。
※1977年映画版ではえんえん10分ものあいだ真犯人に追いかけられ続ける辰弥だったが、本作ではわずか1分弱で英泉さんの助太刀が入っておしまいとなる。ショーケンはひとりでよくがんばったなぁ!
※この後のシーンでも何度も画面に映る、真犯人が指に負った傷の特殊メイクがかなりリアルで痛々しい。すごく上手!
78分50秒~83分30秒 金田一耕助の解明
八つ墓村の事件捜査本部内で、警察陣と真犯人、辰弥を集めた上で、金田一が今回の連続殺人事件の犯行の経緯を説明する。
※内容時間の関係なのか久野医師がかなりの推理小説マニアだったという言及がカットされているため、久野医師が手慰みに殺人計画書を作成したというくだりが少々突飛に聞こえる。
※このシーンで久野医師の毒殺のもようが流れるのだが、久野医師を演じる戸浦さんが、おにぎりを食べた直後に血を吐く一連の流れをワンカットで映す演出上の都合で、口に血のりを含みながらおにぎりをほおばっているため、かじりついたおにぎりが真っ赤に染まっているのがチラリと見えてしまっている。食べる前から血ィ出ちゃってんじゃん! 戸浦さんも関本監督もよくやるわ……
83分30秒~86分40秒 真犯人の告白と最期
金田一の推理を受けて、真犯人は犯行の動機を語るが、突然容体が悪化して重体に陥る。
※ここで真犯人が語る犯行の理由は原作小説には無い本作オリジナルの設定であるが、多治見32人殺しとからめてそれなりに説得力のある動機となっている。ただ、真犯人にそんな経歴があったのならば多治見家がそれを知らないはずがなく、相当に警戒するはずであるのだが……
※本作オリジナルの設定が効果的であるだけに、事件の真相に深く関係しているはずの森荘吉が登場しないのが非常に惜しい。病床に伏していると語られているので仕方ないのだが、同じ事情で登場しない麻呂尾寺の長英和尚もあわせて、「あんたらがちょっとでも出てきてしゃべってくれたら、ここまでひどくはならなかったのに!」と悔やまれてならないものがある。
※特に関係ないのだが、回想シーンで真犯人の子供時代を演じている子役さんが非常にかわいい。元℃-ute の中島早貴さんみたい!
86分40秒~89分30秒 辰弥と金田一の別れ
八つ墓村のある日(辰弥が八つ墓村に来て11日目か、それ以降)。東京へ帰る直前の金田一は、辰弥を隣村の麻呂尾寺へ連れて行きながら、英泉の正体と、その日の朝に岡山市内の病院で真犯人が死亡したことを告げる。
金田一に今後の身の振り方を尋ねられた辰弥は、多治見家の権利を里村慎太郎に譲渡する一方でとりあえずは英泉を看病したいと語り、金田一と別れて麻呂尾寺へと入っていく。
89分30秒~92分30秒 金田一と等々力警部~エンドロール
東京へ帰る金田一と等々力警部が、途上の橋の上や石蟹駅のホームでしみじみと事件の感想を語る。そして八つ墓村の遠景を映しながらナレーション「それから一年後。この世にも恐ろしい伝説を持つ八つ墓村は、町村合併してその名を永久に消した。」が入り、最後の『アルビノーニのアダージョ』が切々と流れて、おっしま~い!!
いや~、すみません、今回も長くなった長くなった!! ほんじゃま、そんななわけで具体的なあれこれは、まったじっかい~!!
やっぱ大好きだな~、このバージョン。
監督 …… 関本 郁夫(49歳)
脚本 …… 関本 郁夫、新津康子(?歳)
音楽 …… 真鍋 理一郎(66歳 2015年没)
主題曲 …… レモ=ジャゾット『アルビノーニのアダージョ』(1958年)
おもなキャスティング
寺田辰弥 …… 鶴見 辰吾(26歳)
森美也子 …… 夏木 マリ(39歳)
多治見春代 …… 浅田 美代子(35歳)
多治見小竹 …… 北城 真記子(73歳 1995年没)
多治見小梅 …… 高橋 芙美子(76歳 2006年没)
多治見久弥・要蔵・庄左衛門(3役) …… ジョニー大倉(38歳 2014年没)
久野恒実医師 …… 戸浦 六宏(61歳 1993年没)
里村慎太郎 …… 朝日 完記(36歳)
濃茶の尼・妙蓮 …… 堀 永子(50歳)
麻呂尾寺の英泉 …… 田中 公行(?歳)
慶勝院の梅幸尼 …… 楠本 光子(59歳)
新居医師 …… 西園寺 章雄(44歳)
15代目・金田一耕助 …… 古谷 一行(47歳)
12代目・等々力大志警部 …… ハナ 肇(61歳 1993年没)
岡山県警の銀川警部 …… 石井 愃一(45歳)
八つ墓村の駐在・今村巡査 …… タンクロー(?歳)
井川丑松 …… 浜村 純(85歳 1995年没)
井川鶴子 …… 小沢 幹子(27歳)
辰弥の下宿先の大家・お島 …… 夏海 京子(?歳)
ナレーション …… 城 達也(59歳 1995年没)
※日本ミステリー界の巨星・横溝正史による金田一耕助ものの第4長編『八つ墓村』(1949年3月~51年1月連載)の6度目の映像化
※TBS 系列で不定期に放映された2時間サスペンスドラマ『名探偵金田一耕助の傑作推理』シリーズ(1983~2005年 全32作)としては第13作にあたり、古谷一行が金田一を演じた『八つ墓村』としては1978年4~5月放映の連続ドラマ『横溝正史シリーズⅡ』版以来2作目となる。
※監督の関本郁夫は、『名探偵金田一耕助の名推理』シリーズ中最多登板した監督であり(8作)、本作は監督3作目にあたる。シリーズで関本が監督と脚本を同時に兼任したのは本作のみである。
※時代設定が原作の「昭和二十三(1948)年」ではなく「昭和二十八(1953)年」に修正されている
※原作での重要登場人物である「里村慎太郎の妹」「諏訪弁護士」らが本作ではカットされている
※原作では八つ墓村の有力者一族は「田治見」なのだが、本作ではなぜか「多治見」表記になっている
※公式資料によると、原作で「八つ墓村」事件の捜査にあたった時点(1948年5月)での金田一耕助の年齢は「35歳」だった
※本作が放映された1991年当時は、市川崑による「東宝金田一耕助シリーズ」の演出法が復活した映画『天河伝説殺人事件』が公開され(7月)、古谷主演の TBS版は年に2~3作の割合で製作されており、そのいっぽうで片岡鶴太郎の主演によるフジテレビ版金田一耕助シリーズ『昭和推理傑作選 横溝正史シリーズ』(1990~98年放映 全9作)も製作されていた。
※本作で井川丑松を演じた浜村純は、1977年版の映画『八つ墓村』では森美也子の義父・森荘吉(原作における野村荘吉)の役で出演していた。ここでは死んじゃった……
そいじゃまぁ~、恒例のやつ、いってみよぉか~!!
≪ドキドキッ☆ 1991年の『八つ墓村』 殺人だらけの本編タイムスケジュール≫
0~45秒 プロローグからタイトル
いかにも不吉な印象の BGMが流れ、ナレーションによって、岡山・鳥取県境にある四方を山々に囲まれた集落・八つ墓村が紹介される。
八つ墓村の遠景、稲光が走る暗雲、八つ並べられた落ち武者の生首と短いカットが続き、最後に神社か寺の境内とおぼしき場所に立ち並ぶ八つの石塔の映像を背景にタイトル『金田一耕助の傑作推理 八つ墓村』が大きく表示される。「金田一耕助の傑作推理」は白字の明朝体、「八つ墓村」は大きく赤字の筆書き。
※抑制のきいた城達也のナレーションと、『横溝正史シリーズ』時代から使用されている真鍋理一郎のおどろおどろしい音楽とが絶妙なバランスをとり、短いながらも非常にインパクトのある開幕となっている。最後の八つの石塔の手前にある「八つ墓明神」と墨書された木札が、いかにも年月を経て読めるか読めないかギリギリの朽ち方になっているあたり、かなり芸が細かい。
※事件も何も始まっていないタイトルの時点で「傑作推理」と銘打たれている点、このシリーズの金田一耕助にかかるプレッシャーはかなりのものであったと思われる。
45秒~1分30秒 東京 尾行される寺田辰弥
「昭和28年 東京」というテロップが入り、冬場のコートにマフラーをかけた、仕事帰りらしいスーツ姿の青年・寺田辰弥が登場する。
夜、線路下の地下道らしい場所を一人で歩く辰弥。ふいに後ろをつけてくる足音を不審に感じ、待ち伏せをして「誰だ!」と声をかける。辰弥を尾行していたと思われる、鳥打帽にコートを着た人影は、慌てたように走って逃げ去る。
※夜の陰影をうまく使ったこの尾行シーンはスリラーとして非常に面白く、辰弥もそれなりに肝のすわった青年であることがわかる。しかし、1953年の道路にはっきりと視覚障害者誘導用ブロック(ポチポチのある黄色いやつ)が映り込んでいるのは、ちょっと……重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、視覚障害者誘導用ブロック(日本発祥)が公道に導入されたのは、1967年の岡山市中区が最初である。岡山すごい!
1分30秒~3分30秒 下宿の辰弥
下宿に帰ってくる辰弥。迎えた大家との会話から、辰弥が九州地方に数日出張に出かけていたことが分かるが、大家によると、辰弥の不在中に私立探偵の金田一耕助という人物が何度も下宿を訪ねてきたという。
大家から辰弥の帰ってくる日を聞いた金田一は、辰弥に「翌日の午後6時に喜久井町のよしせいという小料理屋にぜひ来てほしい」という伝言を残していた。
また大家は、金田一とは別の人物も下宿を訪ねてきて、辰弥のことを根掘り葉掘り聞いていったと語る。
またまた大家は、辰弥あてに届いた封筒入りの手紙を渡す。辰弥が開封すると、そこには血で書いたような赤い文字で「八つ墓村へかえって来てはならぬ」などと書かれた脅迫状が入っていた。
※出張帰りで疲れている上に、尾行されて気がピリピリしている辰弥に対して、何の気遣いもせず新情報をペラペラとまくしたてる大家のおばちゃんの能天気さが実に素晴らしい。それに対して「なんだよ!」とキレる辰弥のほうが大人げなく見えてしまうのは、それを観ている私(そうだい)が大家さんのほうに年齢が近くなってきたからなのか……おせっかいって、いとおしい。
※辰弥が九州土産だと言って大家に渡した、うす黄緑色のでっかくて真ん丸の果物が何なのかわからない……カボチャ? 冬瓜?
※このシーンでちらっと見えた脅迫状の封筒から、辰弥の下宿が東京都新宿区にあることが分かる。金田一が面会場所に指定した小料理屋のある喜久井町も新宿区なので、そう遠くない場所であることから金田一の気遣いが感じられる。
3分30秒~9分30秒 辰弥と金田一、井川丑松の対面
翌日、約束の小料理屋で金田一と会う辰弥。面談によって、辰弥が金田一に人捜しを依頼した岡山県・八つ墓村の資産家・多治見家の捜している人物に間違いないことが判明する。その場で、辰弥は多治見家の使いとして東京にやって来た祖父・井川丑松とも面会する。
丑松は多治見家の人物(久弥、春代、小竹、小梅、いとこの里村慎太郎)に関する説明を始め、辰弥に多治見家の後継者となるために八つ墓村に帰ってきてほしいと話す。しかし丑松は、不意におそった咳をおさえようとしてカプセル剤を飲んだ直後に大量の血を吐いて死亡してしまう(第1の殺人)。
※この面談の時に辰弥が見せた母の形見の出生書きから、辰弥は「昭和二年九月六日」に生まれたことがわかるので、本作での辰弥の年齢は26歳ということになる(演じた鶴見辰吾も当時同じ26歳)。ちなみに、辰弥は形見としてこの出生書きの他に、「龍の顎」などと書かれた迷路の地図のような書置きも持たされていた。その他、このシーンで現在の辰弥が化粧品メーカーに勤務している会社員であることも語られる。辰弥の下宿の部屋に貼られていたポスターから推測すると資生堂だろうか(放送当初のスポンサー?)。
※井川丑松を演じた浜村純は、1977年の映画版『八つ墓村』にも出演していたが、最終的に死ななかった1977年版よりも、すぐに死んじゃう1991年版のほうが数倍セリフが多いというのは、どういうことなのか……14年ぶりに俳優としての面目を躍如した執念のリベンジであった。ちなみに、本作での「井川」の読みは原作小説通りに「いかわ」である。
※このシーンでの丑松の「鶴子は、生まれて間もないお前をつれて多治見の家を飛び出した。もう25年も前になるかのう。」というセリフから、辰弥が1歳前後の昭和三(1928)年に「多治見32人殺し」が発生したことがわかる。ところが、この発言は……
※カプセル剤自体は19世紀からある物なのでこの時代に丑松が服用していてもなんの問題もない。でも、飲んだ瞬間に喀血するというのは、いかにもまぎらわしい描写ではある。
9分30秒~11分30秒 牛込警察署の辰弥
金田一の助言を受けた等々力警部の捜査によって、丑松の死は辰弥に会う数時間前に丑松が服用したカプセル剤による毒殺であることが判明し、丑松殺害の嫌疑をかけられていた辰弥は解放される。
疲弊した辰弥は八つ墓村へ向かうことを拒否するが、丑松に代わる多治見家の使いとして牛込警察署に現れた、多治見家の遠縁にあたる女性・森美也子と出会う。
※つまり、丑松が死亡した原因は辰弥が見ている時に飲んだカプセル剤ではなく「その前」に呑んだカプセル剤であることが判明するわけだが、妙にタイミングが合いすぎていて変ではある。
※全身赤のスーツで現れる妙齢の美女・美也子のインパクトがすさまじいが、その一方で誤認逮捕を謝っているとはとても思えない軽さで浅~く頭を下げるだけの、ハナ肇演じる等々力警部の態度のデカさも地味にすさまじい。官憲こえ~!!
※牛込警察署の外観を映したカットで雪が降っているため、本事件の発生時期が真冬であることが推察される。
11分30秒~12分30秒 どこかのかなり豪華なレストラン
優雅に会食をしながら、辰弥の八つ墓村入りを勧める美也子。辰弥は心ここにあらずといったていではあるが、八つ墓村へ行くことを承諾する。同時に金田一も、小竹小梅姉妹の要請によって美也子、辰弥とともに八つ墓村へ同行することになる。
※さっきまであんなに八つ墓村行きを嫌がっていたのに……ここの心境の変化から、辰弥が初対面の時点で美也子に特別な感情を抱いていた可能性が示唆されている。
※自身の話によると、現在未亡人である森美也子は大学進学から、調布で電気器具工場を経営していた男性(森荘吉の長男)と結婚してその夫が亡くなるまで東京で生活していたという。
※話の流れから言うと、原作小説における諏訪弁護士のように八つ墓村へ行く理由が全くない金田一ではあるのだが、辰弥捜索の依頼人である小竹小梅姉妹の要請によって八つ墓村へ行く流れとなる。報酬をもらえる程度の気分で向かったのであろうが、まさか行ったらあんな大騒ぎになるとは、ねぇ。
12分30秒~16分 夜汽車での美也子の話
東京から岡山県へと向かう夜行列車の中で、辰弥から血文字の脅迫状を見せられる美也子と金田一。美也子は、八つ墓村に伝わる八つ墓明神の由来として、戦国時代の永禄九(1566)年、毛利家に敗れた戦国大名・尼子(あまご)家の落ち武者8人を、毛利家の詮議と莫大な報奨金、そして落ち武者たちが運んできた軍資金3千両に目がくらんだ多治見家の先祖にあたる名主・多治見庄左衛門と村人が皆殺しにしたという凄惨な歴史を語る。
※この時の回想シーンをはじめとして、本作では八つ墓村の過去の映像には必ず『アルビノーニのアダージョ』が流れている。予算の関係なのか新規 BGMがいっさい流れていない本作だが、非常に哀切なこの曲の選曲が見事にマッチしているため、音楽的な制限を全く感じさせない、あの1977年映画版における芥川サウンドに比肩しうるジャストフィット感を生み出している。グッジョブ!!
16~18分 辰弥、八つ墓村へ
国鉄伯備線の石蟹駅(いしがえき 岡山県新見市)を降りた辰弥一行、歩いて八つ墓村へと向かう。八つ墓村を見下ろす峠で、美也子から莫大な山林の権利を所有する多治見家のことなどを聞く辰弥と金田一。
不穏な空気を感じさせる音楽が流れるなか、多治見家に向かう辰弥たちの前に村の狂女・濃茶の尼があらわれ、「八つ墓明神は八つのいけにえを求めておいでんさる!」と不気味極まりない予言を叫ぶ(第1のたたりじゃ~!)。同時に、殺気に満ちた視線で辰弥を囲み、にらみつける村人たち。
※石蟹駅で偶然に辰弥を見かけた博労の片岡吉蔵の反応からも、辰弥の八つ墓村入りが多くの村人にとって相当に忌むべきことであることが強く伝わってくる。
※辰弥たちが石蟹駅から車に乗って八つ墓村へ向かった可能性もあるのだが、本作の映像中では車両を使った描写も言及もいっさい無いので、暫定的に石蟹駅から徒歩で行ける距離に八つ墓村があるという解釈にしておく。
18~23分 多治見家
辰弥は瓦屋根に石垣づくりのいかめしい多治見家の屋敷に到着し、病床の当主・多治見久弥をのぞいた多治見家の面々と顔を合わせる。多治見家の実権を握っている大大伯母・多治見小竹小梅姉妹は、辰弥に多治見家の次期当主になってもらうように強く要請する。
現在の多治見家には小竹小梅姉妹の他に、辰弥の母ちがいの兄・久弥と姉・春代がいるが、久弥は肺病で瀕死の状態であり、春代は腎臓を患って子が産めないことが原因で嫁ぎ先から離縁されてきていた。
23~24分 謎の来訪者
その夜。東京で自分を尾行していた人影のことが気にかかる辰弥は床についても眠れずにいたが、そこに不気味な人影が現れ、辰弥の顔をのぞき込む。辰弥は大声をあげて家人を呼び、人影はどこかへ逃げ去っていった。
※この場面で、人影が現れる直前に床の間にかけてある般若の面の目の部分が光る描写や、人影がのぞき込んだ時に辰弥の顔に落ちた水など巧みな伏線がしっかりと張られている。
24~29分 多治見家当主・久弥
翌日。辰弥は多治見家で、多治見家の親族である久野医院の久野恒実医師(多治見要蔵の弟)や、従兄の里村慎太郎らの挨拶を受け、病床の兄・久弥に初めて面会する。
重い病の身の久弥は健康な弟の辰弥に多治見家の全財産をゆずると宣言するが、叔父の久野医師の処方した常備薬を飲んだ直後に血を吐いて死亡してしまう(第2の殺人)。
※周囲からヤブ医者とののしられる久野医師を演じるのは、腕の立つ名医の役もしょっちゅう演じておられる戸浦六宏さん。ここではかなり頼りない久野医師をオロオロと好演している。
29分~31分30秒 久野医院
金田一、岡山県警の銀川警部が主任となる「八つ墓村殺人事件捜査本部」で、東京から応援に駆けつけた等々力警部と合流して捜査を開始する。
丑松も久弥も、同じく久野医師が処方した薬に混入された毒(トリカブト由来のアルカロイド系毒物)で死亡していることから、捜査本部は久野医師を第一容疑者として疑うが、久野医院の薬物管理のずさんさから、久野以外の人物が医院に侵入して薬に毒を入れたという可能性も視野に入れる。
捜査中、金田一たちは八つ墓村の隣村にある麻呂尾寺の住職・長英の使いとして長英の飲む薬をもらいに来た僧侶・英泉に出会う。英泉は礼儀正しい僧であるが、戦争中の爆撃によって顔面に大きな火傷の跡を残していた。
※東京で死亡した丑松事件の捜査のためというれっきとした理由はあるのだが……やっぱり等々力警部が岡山にがっつりいるのは違和感が残る。ヒマなのか?
※等々力警部と役割を二分する形で、原作小説における磯川警部の立場をつとめる銀川警部を演じるのは、コミカルな演技も得意な石井愃一さん。ここでは石坂浩二金田一シリーズの加藤武ほどのお笑い要員ではないコワモテのキャラクターだが、猪突猛進でどことなくおかしな味わいを見せている。
※等々力警部が銀川警部を呼ぶ時に「警部」と言うのは、どんなもんだろうか……いや、あなたも警部ですよね? 仕事 OFFなのか?
31分30秒~40分 多治見春代の告白
金田一が捜査から多治見家に戻ると、辰弥は姉・春代と美也子を相手に、自分が血文字の脅迫文を送りつけられ、何者かに尾行されるほどに村人に忌み嫌われている理由を話してくれと詰め寄っていた。
辰弥の気迫に圧された春代はやむなく、自分と久弥の父・多治見要蔵が村の娘・井川鶴子を略奪、監禁して辰弥を産ませたこと、そして鶴子が辰弥を連れて逃亡したために狂乱した要蔵が起こしてしまった「多治見32人殺し」の真相を語る。
金田一、ふと見かけた辰弥の部屋(かつての鶴子の監禁部屋。多治見家の離れにある)の屏風の中に、鶴子が当時の恋人・亀井陽一にあてて書いたとおぼしき恋文を発見する。この恋文の中にあった「龍の顎」という言葉から、辰弥が母の形見として持っていた迷路のようなものの記された書置きが、八つ墓村の地下にある広大な鍾乳洞の地図であることが判明する。
小竹小梅姉妹の「そろそろ久弥の初七日の客が来る」という横槍によって、4人の談義は中断となる。
※なにかと典型的な巻き込まれ型の主人公に見られがちな辰弥であるが、鉄格子をはめていたとおぼしき跡を発見するなど、本作ではそれなりに行動的な部分も強調されている。でも、ちょっと怒りっぽい危険な雰囲気もあるかも……
※春代の告白に合わせて、要蔵の鶴子拉致と32人殺しが回想シーンとして流れるが、意外と短くあっさりしている32人殺し(全体で1分ほど)に比べて、鶴子に対する外道すぎる悪行の数々が異様に詳細に映像化されるために(こっちは約3分)、多治見要蔵の陰湿さがイヤというほど伝わってくる。その一方で、実の父を擁護したくなる気持ちもわからんでもないのだが、この所業を「激しい恋」と表現する多治見春代の言い方もたいがいおかしい。あんた、それで実の母を殺されてんのよ!?
※32人殺しの多治見要蔵の扮装は女ものの和服(鶴子に着せていた?)の下に洋ズボンとゲートル、頭にはおなじみのナショナルランプ2本、凶器は日本刀に猟銃というもので、同じ古谷一行金田一による1978年ドラマ版の要蔵の扮装を継承したものになっている。ちなみに、本作の映像の中では要蔵は1発しか猟銃を撃っていない。
※春代の話では要蔵は一晩中殺戮を続けて夜明けに失踪したことになっているが、映像では要蔵が最初に多治見家で正妻を斬殺した時点で明るい日中であり、村で暴れているシーンも全て昼間のような明るさになっている矛盾が生じている。要蔵のナショナルランプも煌々と点いているのだが、日中なのでその必要性も不明瞭になっている。
※93分というタイトな内容時間のためか、物語の進行がかなりスピーディでシーンごとの時間関係が不明瞭な点も多い本作なのだが、辰弥が八つ墓村に来た翌日に死亡した久弥の初七日が行われるという小竹小梅姉妹の発言から、このシーンの日付が、辰弥が八つ墓村に来て7日目であることがわかる(等々力警部が八つ墓村に来たのも同じ日)。
※多治見久弥の初七日は、東日本の慣習でいうのならばその次の日(死亡日から数えて7日目)になるはずなのだが、本作の舞台は西日本であるため、その慣習にしたがって「死亡の前日から数えて7日目」にあたるこの日に行われていると解釈する。ちなみに21世紀現在のご葬儀事情では、いちいち親族に集まっていただく手間をはぶくために、葬儀の日に初七日の儀式もまとめて行う方式が浸透しているそうです。
40分~44分30秒 久弥の初七日の惨劇
多治見家でとりおこなわれた久弥の初七日の席で、辰弥は参列した慶勝院の梅幸尼から帰り際に「あなたのお身の上に関して大事なことをお話したいので明日、寺院まで来てほしい。」と告げられる。
初七日の晩の夕食の席で、経をあげた多治見家の菩提寺・蓮光寺の住職・洪禅が食事中に突然喀血して死亡してしまう(第3の殺人)。
洪禅和尚の死因は調べるまでもなく毒殺だったが、同席した麻呂尾寺の英泉は激高し、食事の膳を運んできた辰弥が自分を殺そうとして間違えて洪禅を毒殺したのだとつかみかかる。
※等々力警部も銀川警部も(あと今村巡査も)同席していたというのに、しかも連続「毒殺」事件が発生している最中だというのに、関係者全員が口にする食事を作っている台所に警官の目がじぇんじぇん行き届いていないとは……『ルパン三世』第2シリーズの銭形警部もかくやという無能ぶりである。おまえらクビ!!
44分30秒~46分20秒 謎の地下階段
その夜。眠れずにいた辰弥は、自分の部屋の隣にある土蔵の隠し階段から、供え用の花を持って地下に降りていく小竹小梅姉妹の姿を目撃する。
46分20秒~47分30秒 森家の前の橋
翌日(辰弥が八つ墓村に来て8日目)。梅幸尼との約束通りに慶勝院に向かっていた辰弥に濃茶の尼が現れ、「おめぇの行く先々には血の雨が降りよる。今度は誰を殺しに来よるんじゃ!?」と詰め寄る(第2のたたりじゃ~!)。怒りに打ち震える辰弥が濃茶の尼を突き飛ばすと吉蔵たち村人が集まって一触即発の空気となるが、森家から出てきた美也子が説得してその場はなんとかおさまる。
※この時に美也子が「この方は多治見家の跡取りなのよ? 人を殺すわけないでしょ!」と一喝するが、多治見庄左衛門と多治見要蔵の例を考えると説得力がないことはなはだしい。いや、多治見家の跡取りだから心配してるんですけど……
※このシーンから、八つ墓村(というか、そのロケ地)に雪がかなり降り積もっている。物語上、真冬であることに特に問題はないのだが、撮影現場がかなり寒かったせいなのか濃茶の尼役の女優さんの口が回らずろれつが怪しくなっていて、濃茶の尼のヤバさに磨きがかかっているのがイイ感じである。
※本作における濃茶の尼は、実はセリフとして「たたりじゃ~!」とは一度も言っておらず、八つ墓明神のたたりを本気で信じているというよりは、明確に多治見家の人間に復讐する目的で、吉蔵ら村人を計画的に扇動しているふしがある。このシーンでも村人が辰弥を取り囲んだ時にニヤリと笑っている表情があり、橋の下に吉蔵たちをスタンバらせた上で辰弥に食ってかかったんじゃなかろうかという知性すら感じさせる部分がある女性である。
47分30秒~50分 慶勝院の殺人
辰弥と美也子が慶勝院にたどり着くと、そこには昨夜の多治見家の初七日から運ばれてきた夕食の膳を食べて毒殺された梅幸尼の死体が横たわっていた(第4の殺人)。
金田一と警察の捜査により、現場から八つ墓村における対立もしくは並立する6組12名の名前が書かれたポケット手帳のメモと、濃茶の尼のわらじの足跡が発見される。これまで殺害された人物の名前に斜線が入っていることから、金田一らはそのメモを一連の連続殺人の犯人が残した殺人計画書ではないかと疑う。
※このシーンをはじめとして、本作でもたびたび金田一が見せる有名な「頭をワシャワシャとかきむしる」クセであるが、さすがに50代にも近づいてきたベテラン古谷金田一に不潔な雰囲気などあろうはずもなく、フケがいっさい落ちないきれいな髪ツヤなのがちょっと寂しい。そりゃそうですよね~。
50分~51分20秒 捜査本部での金田一の推理
メモに書かれた名前のリストを見て、金田一は連続殺人の犯人が「ペアになっている2人のうちのどちらかを殺せばよい」という思考をもって殺人を繰り返しているのではないかと推理するが、そうでない可能性も視野に入れる。
※今回の連続殺人事件の異常性が明らかになる重要なシーンであり、単なるおどろおどろしいたたりに留まらない、本作の理論ミステリとしての特異性を際立たせるくだりである。
51分20秒~53分10秒 久野医院
捜査によってメモの持ち主が久野医師であり、筆跡も久野医師のものであることが判明するが、警察が詰問すると久野医師は、メモは3ヶ月前に何者かによって往診鞄ごと盗まれた物で自分は何も知らないと弁解する。駐在の今村巡査は、メモを盗んだのは日頃から盗癖のある濃茶の尼ではないかと推測する。
警察は連続殺人の犯人が久野医師であるとの疑いを強めるが、金田一は結論を保留し、今回の連続殺人が26年前の多治見32人殺しと関係があると推理し、独自の捜査を進めるために八つ墓村を離れ、岡山市の岡山県警に向かう。
※このシーンで金田一は多治見32人殺しが「26年前に起きた」と発言しており、地元の今村巡査(当時6歳)も、それを聞いて特に異を唱える反応はしていない。これは、本作の冒頭で井川丑松が語った「25年前」という鶴子・辰弥母子の失踪年と微妙にずれのある発言であるのだが……1年の差だし、ま、いっか。ていうか、あの風体で今村巡査が32歳なのがビックリ!
53分10秒~54分 岡山県警から八つ墓村役場
多治見32人殺しの詳しい経緯と、事件の被害者たちのその後を調査するために、岡山市の岡山県警と八つ墓村の村役場を訪ね捜査を進める金田一。
※おなじみの金田一単独行のくだりであるが、本作では八つ墓村から直線距離にして50キロほどしかない岡山市におもむいて、その後すぐに八つ墓村の村役場に戻る流れになっているため、そう長くは離れていなかったようである。岡山県警では、磯川警部に会ったんだろうな~。
54分~57分40秒 洞窟で出会う辰弥と美也子
夜。辰弥はひとりで土蔵に忍び込んで隠し階段を使い、そこが地下の広大な鍾乳洞につながる入り口になっていることを発見する。
鍾乳洞をさまよう辰弥は、八つ墓村の濃茶の尼の家に近い出入り口で偶然に美也子と出会い、美也子に対する愛情を告白するが、美也子は「家柄の違いが許さない」と言って拒絶する。
辰弥と美也子は、濃茶の尼の家の周辺を立ち去る里村慎太郎の姿を見かけるが、鍾乳洞の奥には、その2人を隠れて見つめる麻呂尾寺の英泉の姿もあった。
※この1991年版『八つ墓村』最大のアレンジポイントである、「辰弥と美也子の愛」が本格的に語られる重要なシーン。しかし、家の中から成り行きで外に出てしまった辰弥はしょうがないとしても、日中にあれほど雪が積もっている真冬なのに、村の外を歩いている美也子の服装が薄手のスカートにばっくり胸のあいたブラウス姿なのがいくらなんでもおかしい。冬をナメてんのか!?
57分40秒~60分30秒 濃茶の尼の死
その翌日(辰弥が八つ墓村に来て9日目)。独自捜査から帰ってきた金田一と等々力警部は、自宅で絞殺されている濃茶の尼の死体を発見する(第5の殺人)。金田一は毒殺でなく絞殺であることから、真犯人にとって計算外の事態が発生したために急遽濃茶の尼が殺されたと推理するが、第一容疑者として警察にマークされていた久野医師が前日から失踪していることが判明し、等々力警部は久野医師を真犯人と断定して捜索する。
※このシーンでの濃茶の尼の検死は、八つ墓村の疎開医で評判の良い新居修平医師が的確に執り行っている。久野医師、不憫すぎ……
60分30秒~62分45秒 鍾乳洞のミイラ死体
その夜。前夜に引き続いて鍾乳洞の中を探索する辰弥と美也子は、迷路のように入り組んだ鍾乳洞の一角で、ミイラ化した死体が甲冑を着て祀られているのを発見して驚愕する。その場に多治見家から辰弥を追ってきた春代が現れ、そのミイラが自分たちの父親である多治見要蔵のものであると語り、26年前に村人32人を惨殺して行方不明になった要蔵を小竹小梅姉妹が秘密裏に殺害してここに隠していたと告白する。
※ここでも春代が「26年前」と言っているので、やっぱり多治見32人殺しは昭和二(1927)年に発生したってことで、いっか! 丑松さんは勘違いしてたのかな?
※ミイラ、ミイラと言っているが、鎧武者姿の死体の顔は面具の中に黒い覆面をかぶったような黒一色の処理がされていて、ミイラらしい表情は全くうかがい知れない。製作する予算なかったんだろうなぁ……
62分45秒~68分 辰弥の部屋にて
金田一、辰弥に部屋の屏風から鶴子の恋文と一緒に出てきた、鶴子の恋人・亀井陽一の写真を見せる。陽一の顔は辰弥と瓜二つであり、そこから金田一は、辰弥が多治見要蔵ではなく陽一と鶴子との間に生まれた子であると断定する。
部屋を去った金田一に代わって辰弥の部屋に入ってきた春代、辰弥が美也子に好意を寄せていることを察し、美也子への不信感を吐露する。
※この時に見せた亀井陽一の写真の裏には、撮影されたのが大正十三(1924)年の春で、陽一は当時27歳であると記されている。とすれば、亀井陽一は生きていれば56歳ということになる。
※またまた重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、この写真で亀井陽一は眼鏡をかけている。ということは、現在の陽一も目が悪いはずなので、それこそ原作小説のように眼鏡をかけていた方が物語に整合性はあったかと思われるのだが……まさか、日本では1951年に実用化されたばかりというハードコンタクトレンズを使っていたとでもいうのか(ソフトコンタクトは1961年生まれ)!? 岡山、やっぱりすげぇ!!
68~69分 動き出したミイラ武者
同じ頃に鍾乳洞に入った小竹小梅姉妹、失踪した久野医師の捜索のあおりを受けて偶然に発見されることを恐れ多治見要蔵のミイラ武者死体を別の場所に移そうとするが、突然動き出したミイラ武者が小竹のみを連れて鍾乳洞の奥へと消えていく。
69~70分 鍾乳洞の2死体
多治見家の通報を受けた等々力警部らは辰弥と鍾乳洞での捜索を行うが、すでに先回りして鍾乳洞に入っていた金田一は、尼子家の落ち武者が隠したという伝説の小判3千両を探していた里村慎太郎とともに、ミイラ武者の甲冑を着せられた小竹の死体(扼殺)と、毒殺され埋められた久野医師の死体を発見していた(第6、7の殺人)。
※本作での里村慎太郎は、まさに視聴者に対する犯人のミスリード要員でしかないといった肩身の狭さで、セリフは少ないわ人相は悪いわ恋人はいないわ……原作小説から見るとだいぶ役割を削られ脇に回ってしまっている。でもまぁ、脇役どころか存在そのものをまるごと消されている妹さん(ほんとのヒロインは私なの!!)よりはマシよね。3千両、見つかるといいですね。
※小竹小梅姉妹のうち、原作小説で殺されるのは小梅の方で、ここが事件解明につながる一つのミソとなるのだが、本作では特にそのくだりは無く真犯人の計画通りに小竹が殺されている。
70~70分40秒 暴徒化する村人たち
翌日(辰弥が八つ墓村に来て10日目)。多治見小竹と久野医師の死が明らかとなった村は大混乱におちいり、たたりの恐怖にかられた村人の一部は暴徒と化して多治見家に殺到し、命の危険を感じた春代は辰弥を地下の鍾乳洞に潜伏させる。
70分40秒~71分10秒 鍾乳洞へと逃げ込む辰弥
辰弥は単身で鍾乳洞に逃げ込むが、辰弥を心配して会いに来たという美也子と合流して、ともに奥の「龍の顎」を目指して進んでいく。
暴徒と化した吉蔵らは鍾乳洞にも入ろうとするが銀川警部らに制止され、金田一と等々力警部は鍾乳洞に潜入していく。
71分10秒~73分15秒 龍の顎の2人
辰弥と美也子は鍾乳洞の最奥部にある「龍の顎」にたどり着き、かつて辰弥の両親(鶴子と陽一)が結ばれた同じ場所で愛しあう。
※ここで流れる、井川鶴子による恋文の朗読が非常に哀切で艶っぽい。出番は少ないが、鶴子を演じた女優の小沢幹子さんは本作の MVP!!
※いや~、『アルビノーニのアダージョ』は、どこで使ってもいいなぁ。
73分15秒~75分30秒 春代の死
村の様子を見てくると言って美也子が去った後、辰弥は鍾乳洞に響きわたる叫び声を聞き、駆けつけた辰弥は倒れている瀕死の春代を発見する(ナイフで刺された?)。春代は鍾乳洞で辰弥に食料を運ぶ途上で何者かに襲われて重傷を負ったが、その人物の指を強く噛んで撃退したと語る。
春代は辰弥に、実は辰弥が多治見家の血を引いていない子であるということを自分も兄・久弥も知っていたが、「呪われた多治見家の血は自分達の代で終わりにしよう」という強い意志があったために辰弥を後継者に選んだという真実と、血のつながっていない辰弥への愛を告白して息絶える(第8の殺人)。
75分30秒~78分50秒 真犯人
春代の死にうちひしがれる辰弥は、その後ある人物と出会うが、偶然に決定的な証拠を発見して、その人物が一連の事件の真犯人であることを悟る。
態度を豹変させてナイフを振りかざす真犯人に辰弥は追い駆けられるが、寸前のところで麻呂尾寺の英泉に助けられ、さらにたどり着いた金田一と警察に真犯人が取り押さえられて事態は収束する。英泉は真犯人にナイフで腹部を刺されて負傷するが、辰弥はなぜ自分を犯人だと疑っていた英泉が助けてくれたのか不思議に思う。
※鍾乳洞内での真犯人の豹変は、多治見要蔵の32人殺しと並んで、『八つ墓村』の映像化における大きな見どころであるのだが、本作でも1977年の映画版に比べればだいぶ地味ではあるものの、ちょっとだけメイクがキツくなって低音の唸り声をあげながら襲ってくるナチュラル野獣スタイルな真犯人がなかなか怖い。
※1977年映画版ではえんえん10分ものあいだ真犯人に追いかけられ続ける辰弥だったが、本作ではわずか1分弱で英泉さんの助太刀が入っておしまいとなる。ショーケンはひとりでよくがんばったなぁ!
※この後のシーンでも何度も画面に映る、真犯人が指に負った傷の特殊メイクがかなりリアルで痛々しい。すごく上手!
78分50秒~83分30秒 金田一耕助の解明
八つ墓村の事件捜査本部内で、警察陣と真犯人、辰弥を集めた上で、金田一が今回の連続殺人事件の犯行の経緯を説明する。
※内容時間の関係なのか久野医師がかなりの推理小説マニアだったという言及がカットされているため、久野医師が手慰みに殺人計画書を作成したというくだりが少々突飛に聞こえる。
※このシーンで久野医師の毒殺のもようが流れるのだが、久野医師を演じる戸浦さんが、おにぎりを食べた直後に血を吐く一連の流れをワンカットで映す演出上の都合で、口に血のりを含みながらおにぎりをほおばっているため、かじりついたおにぎりが真っ赤に染まっているのがチラリと見えてしまっている。食べる前から血ィ出ちゃってんじゃん! 戸浦さんも関本監督もよくやるわ……
83分30秒~86分40秒 真犯人の告白と最期
金田一の推理を受けて、真犯人は犯行の動機を語るが、突然容体が悪化して重体に陥る。
※ここで真犯人が語る犯行の理由は原作小説には無い本作オリジナルの設定であるが、多治見32人殺しとからめてそれなりに説得力のある動機となっている。ただ、真犯人にそんな経歴があったのならば多治見家がそれを知らないはずがなく、相当に警戒するはずであるのだが……
※本作オリジナルの設定が効果的であるだけに、事件の真相に深く関係しているはずの森荘吉が登場しないのが非常に惜しい。病床に伏していると語られているので仕方ないのだが、同じ事情で登場しない麻呂尾寺の長英和尚もあわせて、「あんたらがちょっとでも出てきてしゃべってくれたら、ここまでひどくはならなかったのに!」と悔やまれてならないものがある。
※特に関係ないのだが、回想シーンで真犯人の子供時代を演じている子役さんが非常にかわいい。元℃-ute の中島早貴さんみたい!
86分40秒~89分30秒 辰弥と金田一の別れ
八つ墓村のある日(辰弥が八つ墓村に来て11日目か、それ以降)。東京へ帰る直前の金田一は、辰弥を隣村の麻呂尾寺へ連れて行きながら、英泉の正体と、その日の朝に岡山市内の病院で真犯人が死亡したことを告げる。
金田一に今後の身の振り方を尋ねられた辰弥は、多治見家の権利を里村慎太郎に譲渡する一方でとりあえずは英泉を看病したいと語り、金田一と別れて麻呂尾寺へと入っていく。
89分30秒~92分30秒 金田一と等々力警部~エンドロール
東京へ帰る金田一と等々力警部が、途上の橋の上や石蟹駅のホームでしみじみと事件の感想を語る。そして八つ墓村の遠景を映しながらナレーション「それから一年後。この世にも恐ろしい伝説を持つ八つ墓村は、町村合併してその名を永久に消した。」が入り、最後の『アルビノーニのアダージョ』が切々と流れて、おっしま~い!!
いや~、すみません、今回も長くなった長くなった!! ほんじゃま、そんななわけで具体的なあれこれは、まったじっかい~!!
やっぱ大好きだな~、このバージョン。
推理ものが好きで、国内外新旧問わず観ている伊藤です。
僕も1991年の「八ツ墓村」が一番好きです。
雰囲気もおどろおどろしくて、毒殺のシーンも迫力あって、(「青酸カリは窒息だから血は吐かないよ」ってツッコミは抜きにして(^_^))、あと、夏木マリさんの森美也子が妖艶で…。
友人は小川眞由美さんの美也子の方がいいって言いますが、僕は夏木さんです。
ちなみに、辰弥役は個人的には一番新しい藤原竜也さんが似合ってたと思います。
あと、個人的には、「犬神家の一族」は石坂浩二さん(1976年)、「獄門島」は片岡鶴太郎さん(1990年)、「女王蜂」は役所広司さん(1990年)のバージョンが好きですね。
基本、本格が好きなので、一番好きな横溝作品はトリックオンパレードで血生臭くない「獄門島」ですが、個人的好みを抜きにして、文学的でドラマチックな作品を挙げろと言われたら「八ツ墓村」を推します。
推理や怪奇だけでなく、人間の心の弱さ醜さ、男女の愛憎を見事に描いてると思うので。
好きが過ぎて少し長くなりすぎました…。
乱文、失礼しました。
国内外新旧問わずとは……そうとういけるクチのお方とお見受けいたしました。
以前このブログで小川さんの映画『八つ墓村』を取り上げたことはあったのですが、私のナンバーワンはやはりこの1991年版でしたので、最近になって DVDマガジンで購入して観直した感想みたいなものを書こうと思っていたのでした。
確かにあなたさまのおっしゃる通り、毒殺がものすごくインパクトがありましたね……そこらへんのことは、必ずや近いうちに!
いやぁ伊藤さま、私と My Favoriteがおんなじおんなじ! 『犬神家の一族』も『獄門島』も『女王蜂』も、ぜ~んぶ私がいちばん好きなバージョンといっしょですよ! 私と同じ30代中盤ですか!?
最近のあっぱれな日清カップヌードルの CMを観てもわかる通り、功罪は相半ばであるにしても金田一耕助カルチャーに関する古谷一行さんの功績は絶大なものでして、今回、非常に安価な DVDマガジンという形で2時間ドラマシリーズ版が全作入手できるというのは、ものすごく幸運なことだとつくづく思うんですね。
その点、あれほどに志の高かった片岡版やクオリティの高い役所版が簡単に入手できないのがつくづく残念でしかたなく……特に稲垣版なんか、映像ソフト化なぞほぼ絶望的なお話でございましょ!? ひどい話ですよねぇ。
パスティーシュは盛んみたいなんですが、金田一耕助ファンにとって2010年代は本当に冬の時代で……春はいつやってくるのでしょうか。
ちなみに私は、今あがったような超有名タイトルは当然ベストテンに入れるとしても(やっぱりナンバーワンは『獄門島』です)、『三つ首塔』『幽霊男』『吸血蛾』といった「大都会の金田一耕助もの」も大好きです! 高望みにもほどがありますが、また映像化してほしいなぁ~。
最近は森博嗣とか有栖川有栖とかの後輩のみなさんが映像化に恵まれているみたいですが、ここらでまたドカンと大先輩にご復活ねがいたいところですね!!
ありゃま、こちらこそ好きが過ぎて長文になってしまいました!
大変に失礼いたしました……コメント本当にありがとうございました。
小沢さんの御年齢、インターネットで調べた限りは分からなかったんですよね……そこまであなた様がお詳しい経緯にも非常に興味があるのですが、無粋な詮索はなしにしまして、早速この情報を記事に反映させていただきたいと思います。
小沢さん演じる井川鶴子、当然ながら重要な役柄ではあるのですが、寺田辰弥が活躍する時代にはすでに物故しているということで出番がかなり限られているのが残念でした。でも、クライマックスでの非常にロマンチックな恋文の朗読は、純粋でもあり艶っぽくもあるという、素晴らしい名演だったと思います。
どちらかというと、小沢さんは古谷金田一シリーズの『悪魔の手毬唄』(1990年)のほうに多めに出演されているんですよね!
いちばん好きと言っておきながら、感想を数年ほっぽっておいてしまい、大変に申し訳これなく……
でも、私の『八つ墓村1991』への愛情はいささかも衰えておりません! あともうちょっと生活に時間的余裕があれば……
本文開始までもうしばらく! もうしばらくお待ちくださいませ~。
小沢さん、今どうしているのか、生きているのか、幸せに暮らしているのか、そんなことを考えます。
ご存じかもしれませんが、彼女は桐朋学園大学短期大学部演劇科(現・桐朋学園芸術短期大学)で、南果歩の同級生です。実は、南果歩さんと仕事で会ったことがあるのですが、雑談で小沢さんの話も出ました。
では、この辺で(笑)。
ちなみに南果歩さんは、1964年1月20日生まれで彼女と誕生日が近いのですね。
そうだったのですか、小沢幹子さんが南果歩さんと同じ誕生年・誕生月で、しかも同じ学び舎の出身だったとは! 全く存じあげませんでした。
お仕事上、共演されるということは少なかったかもしれませんが、お話に出たということは、学生時代にも小沢さんと南さんはちかしい関係にあったのでしょうね。青春の絆は人生の財産ですね~。
10年前くらいでしょうか、私も桐朋学園芸術短期大学さんの卒業記念公演であったかを拝見したことがあります。一般の演劇公演と遜色ないスケールと熱量の作品で圧倒されましたね~。まさしく青春でした!