長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

池袋に帰ってきたウルトラマン 後編

2010年09月21日 03時04分12秒 | 特撮あたり
《前回までのあらすじ》
 え! 庵野監督と団時朗さんのトークショーが始まるというこの映画館の中に、『帰ってきたウルトラマン』の「中の人」だったきくち英一さんがいんの!? そうだい大ピンチ! 幸せすぎて死ぬかも。

 時間通りに始まったトークショー。司会進行のライター・清水節(たかし)さんによるスムースな紹介により、大きな拍手に迎えられて庵野秀明監督と俳優の団時朗さんが登場しました。私は座席の最前列。2メートルもしないまん前に、庵野監督と郷秀樹さんがぁ!
 庵野監督も団時朗さんも、でかっ!
 お2人とも、身長180代の長身なんですね。
 庵野監督はお歳が50手前なはずなのに非常に若々しくスリムな体型で、対する団さんも60を超えておられるのに、非常に大人の魅力あふれるロマンスグレーでもあり、不良っぽくもあり。とにかくカッコイイ! そして、たぶん団さんだと思うんですが……
 酒くさっ!
 心なしか赤ら顔の団さん。やっぱり夜中10時30分からのトークショーということで、一杯やっとくのは必要だったか? しかし、そこはさすが、歴代ウルトラマン俳優屈指の酒豪と呼ばれる団さん。酒は仕事の潤滑油とばかりに、軽快&ご機嫌な感じで、『帰りマン』撮影当時の貴重なエピソードをペラペ~ラと語っていきます。
 いわく、モデルの仕事しかやっていなかった自分が突然にTVドラマの主役を演じることになった戸惑いと楽しさ。いわく、劇団出身の俳優と映画スター俳優との演技スタンスの違い、いわく、若いスタッフが多かった現場の明るい雰囲気……
 さすがは主人公。次々と出る興味深いお話に、放映当時10歳で『帰りマン』に夢中だったという庵野監督も、思わず聞く側にまわってました。
 さて、そんな庵野監督も、今回のセレクション11話の選考理由を語っていくにつれて、監督本人の現在の作風にも通じるような感動ポイントの解説に熱が入っていきます。
 やっぱり監督、夕陽が好きなのねぇ~! 本人による夕陽の良さに関する発言を聞けてほんとによかったです。そうねぇ、『新世紀エヴァンゲリオン』の3号機のボディの黒さは、『ウルトラマン夕陽に死す』の用心棒怪獣ブラックキングの黒さを継承してたんだなぁ! しみじみ再確認。
 あげればキリがないのですが、トークショーは非常に楽しい雰囲気で時間ちょい押し気味に終了しました。そしてその終盤、進行の清水さんがこう言ったのです。
「今回、関係者として『帰ってきたウルトラマン』のメインスーツアクターを務めておられたきくち英一さんもいらっしゃっているそうです。きくちさん、おられますか?」
 その声にこたえて、スックと立ち上がる1人の男。彼に贈られる万雷の拍手!
 きくちさんだ……おん歳67にも関わらず、精悍に日焼けしたお姿は若い若い! さすがは、歴代ウルトラマンのスーツアクターの中で初めて、本格的に武道をアクションに取り入れたお方だ。背筋もまっすぐだぜ!
 さぁ、興奮もさめやらぬ中、ついに庵野秀明監督のセレクションによる『帰りマン』傑作11話の上映が始まります。私は最前列。ほとんど首だけプラネタリウム状態。大丈夫か?

 結論としては……大っ正解でした!! 大迫力!
 正直なところ、TV番組をモノラル音声のまま映画館の大スクリーンでやるという点に不安をかかえていた私だったのですが、最前列はそんな問題は全っ然ナッシング!
 怪獣がほんとにでけぇ! ウルトラマンがほんとにでけぇ! 怪獣撃退チームMAT(マット)の有名な「ワンダバテーマ」がうるさいぐらいにガンガンなり響く! もう最高……
 さすがは庵野秀明監督が選ぶ、全51話中、厳選の傑作11話。眠気が襲ってくるヒマもありゃしません。朝5時半のゴールまであっという間でした。
 2大怪獣グドンとツインテールの猛攻に、MATが大都市東京の存亡を賭けてジープ2台とバズーカ2本だけで立ち向かう第5・6話。異才・実相寺昭雄の脚本による文明諷刺の切れ味するどいコメディ篇の第28話。ウルトラマンに不敵な挑戦をしかける宇宙人が化けた少年の演技が怖い第31話。田舎で巻き起こる怪獣騒動の中でつづられる人情ドラマがしみじみいい第32話。現在にいたるまで『帰りマン』にとどまらずウルトラシリーズ中でも屈指の大傑作とたたえられる第33話。『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒の中にまじってても違和感がないような斬新なデザインの怪獣がインパクト大の第35話。主人公・郷秀樹の恋人が宇宙人に惨殺され、ピンチにおちいった帰りマンを助けるために初代ウルトラマンとウルトラセブンが登場する巨編の第37・38話。そして、郷秀樹=帰りマンが最強怪獣ゼットンを倒して地球に別れを告げる感動の最終第51話……
 最終回ラスト、ウルトラマンとなって空のかなたへ去っていく郷秀樹を追って、手を振りながら海岸の砂浜を駆けていく少年のほほをつたう涙。当然のごとく、映画館は再び万雷の拍手。
 明るくなった館内で、私は迷わず、きくちさんのところへ駆けていきました。
「きくちさん、ウルトラマン役、本当に素晴らしかったです! あ、あ、あ、握手していただけますか!?」
 きくちさんは満面の笑みで応えました。
「もちろんです、どうもありがとう! ちゃんと寝られました?」
「いやいや、ほんとにおもしろくて眠気なんか全然きませんでした! ありがとうございます!」
「そうかそうか。来年は『帰ってきたウルトラマン』の40周年だからね。またどこかで会いましょう!」
「は、はひ~……」
 その時の、握手したきくちさんの手の温かさときたら。がっしりしてて、やわらかい。本物のヒーローの手でした。ヒーローは本当にいるんだ。信じてきてよかった。
 ヒーローの輝かしい活躍を堪能して、そのヒーロー本人と握手をする。最高のオールナイト上映会でした。
 あ、あと、先日に紹介した、親友にもらったサイボーグ怪獣ガイガンのTシャツとまったく同じものを着てきていた青年に、思わず声をかけて話し込んでしまったのも楽しかったなぁ。こういう場所では趣味がおんなじだから、見知らぬ方とも案外きさくに会話ができるもんですね。

 そして朝日の輝く中、私は満ちたりた心をおみやげにして家路につきました。その感情とは180度逆に、リストラされたサラリーマンのように首をガックリとうつむけながら。
 く、首がいてぇ……でも超満足!! きくちさん、どうもありがとうございました~! 

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