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メタルショップと片腕の修理屋〜空母「ミッドウェイ」博物館

2018-07-02 | 軍艦

 

さて、空母「ミッドウェイ」艦内探訪、いよいよ最後の部分になりました。
郵便局を過ぎると、機関室です。

はっきり言ってわたしが一番「お手上げ」なのがこの部分。
説明がなければ何を行うものか想像すらつきません。

この狭い部屋では部品を展示していましたが、実際にここで
このような部品の調整をした訳ではないと思います。

その心は狭過ぎるから。(という程度のことしかわからない)

部屋の外側には

「マシーン&メタルショップ」

と説明ガイドのための看板がありました。

ここで使われていた調整・修理のためのパーツのいろいろ。

「マシンゲージ」「スライドゲージ」「ホールゲージ」「プラナーゲージ」

何やらゲージ的なものばかりが集まっている訳ですが、これらも
何一つ用途が想像できません。
ゲージだから「測るもの」であるくらいはわかりますが。

あっ、「センターパンチ」これはわかる。穴あけ機ですよね。
それから「Tスクェア」ってバンド名、これから来てたの!?(衝撃)

マシーン&メタルショップというのは、船の動力そのものではなく、
艦内で必要なものを修理、あるいは調整、作製する部門だと思われます。

船に必要な部品を部品を海の上でも作ってしまえるこの施設、
時と場合によっては艦載機部隊の必要な部品も調達していたそうです。


今度はわたしに少しは何に使うのかわかる道具が出て来ました。
こちらも全体的にキーワードは「測るもの」ですよね!?

カリパス(calipers)なんて言葉、生まれて初めて知る訳ですが、
ものさしで測ることのできない内径や外径を測るための道具、
三日月のような「アウトサイド・マイクロメーター」なるものは

精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に変位を置き換えることによって拡大し、
精密な長さの測定に用いる測定器。
ノギスよりも精度の高い測定に用いられる。 一般的なものは目盛は0.01mm。

だそうです。はえ〜。

手前の機械に「ミルウォーキー」とありますが、アメリカの工具メーカーです。
アメリカではしょうもないCMを懲りもせず出している企業というイメージ。

Milwaukee Tool Commercial - Very Funny

もう一丁。

funny ad for milwaukee tools

いずれも、「強力に回転する」ということを訴えたい模様。
同社は1924年に最初の軽量ドリル穴あけ機を発売して以来、
工具一筋のメーカーとして業界に君臨しています(多分)

工作室のドアには黄色に赤字で大きく

「プロフェッショナルとは」

いやしくも価値のあることは正しく行う価値があると
信じている人間のことである

(One who believes that if something is worth
doing its worth doing right.)

と書かれています。

If a thing's worth doing, it's worth doing well.
(いやしくも為すに足る事ならりっぱにやるだけの価値がある)

というイディオムをアレンジしたものだと思われます。

壁にペイントされている指矩とハンマーの組み合わせのマークは
海軍のレイティングで、

「 HULL TECHNICIAN 」(船体技術者)

を意味します。

船体技術者は、あらゆる種類の船舶構造物とその表面を
良好な状態に保つのに必要な金属作業を行います。
また、配管、小型ボートの修理、バラスト制御システムの運用と保守、

品質保証プログラムの管理を行っています。

そのために溶接、ろう付け、リベット締めまたはコーキングを行い、
放射線、超音波、および磁性粒子検査装置を使用して、船舶構造を検査、
金属の熱間および冷間成形における熱処理、
パイプの切断、ねじ込み、および組み立て、換気ダクトの修理、
金属、木材、ファイバーグラスボートの修復
断熱材の設置と修理など、多岐にわたる作業を任されています。

右側のマークは

「MACHINARY REPAIRMAN」(機械修理士)

です。

旋盤、フライス盤、ボーリング・ミル、グラインダ、パワー・ハック・ソー、
ドリル・プレス、その他の工作機械を操作して、
蒸発器、エアコンプレッサー、ポンプなどの交換部品を製造しています。
ウィンチやホイストの修理はも行います。

機械修理師は、基本的に部品を修理または製造することによって、
エンジニアを支援するというポジションです。

ちなみにデスク下部に設置されているのは

HITACHI Super Pair 200RP

という低圧配線用の遮断器で、このシリーズは現行です。
「ペア」という名前なのは二つセットで使用するからです。


 
金属を切断するための機械だと思います。

続いて、「SCULLERY」スカラリー、食器洗い場。
この単語のイメージはどちらかというと「邸宅に設置してある食器洗い場」だそうです。

食器だけでなく調理に使ったポットやフライパンなど調理器具全てを洗う場所です。
ここではトレイだけで毎日1万5千枚を処理していたということです。

この窓口に洗うものを置いていき、中に送り込むようになっていたようです。

海軍と我が海上自衛隊でもおなじみ、トレイが見えます。
呉の海自カレー・チャレンジでは、確か最高賞に自衛隊で使っているのと
全く同じこのトレイがもらえた記憶がありますが、今もやってるんでしょうか。

左の機械まで運べば自動洗浄が行われますが、ある程度までは人間が行います。
皆さんも自宅で食器洗い器を使うとき、ある程度予洗してから入れるでしょ?


ところで超私事ですが、我が家の食器洗い器がついに動かなくなりました。
キッチンに作りつけたビルトインタイプで、他の収納部分とと一体化となる
木製のドアが貼ってあり、何よりも超大型で便利なのですが、
いかんせん耐用年数が限界まできてしまったようです。

 

もう家電では日本から撤退してしまったBOSHの製品。
本社に電話すると、地元の修理業者を紹介されたのですが、案の定

「もう部品がないので修理できないんすよねー」

と頭から直らないと決めてかかっている様子。
それどころか

「新しいのに買い換えた方がいいと思いますが」

ってそれは直らないってことにして新品をを売りつけるつもりかい?

比べるつもりはないけど「ミッドウェイ」の上なら、どんなことがあっても
何があっても故障したものは直すし、部品がなければ作る、
少なくとも見もしないで直らないなんて言わないぞ?

たまたまこれを作成したその日にこんなことが起こったので、
ついついこんなことを考えてしまいました。

 

がしかし、流石の「ミッドウェイ」でも直せない機材もあります。
あまりに酷い事故が起こると、外部から人を呼んでこなくてはなりません。

「ミッドウェイ」では艦載機が発艦したとき、ショックを和らげるために付いていた
ウォーターポンプが破損したことで、左舷先端が吹っ飛んだことがあります。
しかも、その破片を、発艦した戦闘機のインテークが吸い込んでしまい
(ファントムだと言われている)戦闘機は海に墜落、パイロットは
脱出するのに成功したものの、カタパルトは使用不可能になってしまいました。

多少のことならなんでも直すメタルショップも、これはちょっと無理、
ということでわざわざアメリカ本国から修理人を呼び寄せることになりました。

この時、「ミッドウェイ」はその修理人の噂で騒然となったといわれています。

なぜならその修理人は元海軍水兵で、現役時代「ミッドウェイ」の、
カタパルトの修理を専門に行っていたのですが、任務中に事故に遭い、
片腕を失っていたからでした。

数人の助手を使って作業する修理屋を皆遠巻きにして見守り、
中には写真を撮る人もいるという具合に、片腕のインパクトは凄かったようですが、
凄かったのはそれだけでなく、航行中に直すのは不可能だと思われたカタパルトを
結局この人は夜にも作業を続け、修復することに成功したということです。


ちなみに我が家の食器洗い機、直らないと言われては致し方なく、
取り替えを決意したのですが、
取り付け工事の来る日、
念のため動かしてみたらなぜか正常に
動き出しました。

つまり壊れていなかったことが判明したのですが、考えた末、
工事を中止することなく続行してもらい、換装を決行しました。

新しい食器洗浄器も同じBOSHの最新型です。

ゼオライト乾燥システムを使っていて、前より若干パワーは落ちますが、
何と言っても音が静かで、使用する水の量が少なくて済むので、
結果論ですがもっと早く替えていればよかったと思っています。

 

続く。


参考:「空母ミッドウェイ アメリカ下士官の航海記」 J.スミス著

 



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5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
成せば成る (Unknown)
2018-07-02 14:30:43
Machine shopは自衛隊だと工作室です。Hull Technician(船体整備)は運用、Machinery Repairmanは応急工作です。

今はやらないそうですが、昔は退艦者(転勤で船を降りる人)がいると、撃ち殻薬きょうを輪切りにして、記念に灰皿を作ってくれたりしました。

空母は昔から蒸気タービン(昔はボイラで今は原子力)動力なので、相当数の配管が走っています。これらが壊れた時に取り換えるための管を作っていたのだと思います。

船は一旦出港してしまうと、なにか問題があったら、乗組員で直すしかありません。もちろん、乗員整備が出来ない範疇のトラブルなら仕方ないですが、船体に関しては乗員だけでもかなりのことが出来ます。

ベント弁が故障して、潜航出来なくなった潜水艦で、故障した弁が内穀と外穀の間で人が入れる隙間があったので、直して帰って来た船があります。

凄まじいのは海軍の駆逐艦「涼月」です。戦艦大和最後の出撃の坊ノ岬沖海戦で米軍の空襲を受け、艦長以下主要幹部が戦死し、艦橋が破壊され、海図やジャイロコンパスを失った状態で、生き残った乗員の記憶を元に、佐世保に帰投しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%BC%E6%9C%88_(%E9%A7%86%E9%80%90%E8%89%A6)

成せば成るですね。
返信する
工作機械 (お節介船屋)
2018-07-02 20:45:41
現在は自動化が進み、写真のような昔の工作機械の説明が難しいですが、インターネットから添付します。
http://www.jmtba.or.jp/machine/introduction
写真の大きな長い機械が旋盤で、色々な機械部品が作製できますが、結構熟練工が必要です。
奥に見えるのが穴あけ等が可能なボール盤です。
工具の中にあるエンドミルを使って溝を掘ったり、段を作ったり出来るのがフライス盤、曲げ加工機や、万力が見えています。

壁掛け展示工具のなかにあるものを少し説明します。
センターパンチ 日本ではポンチと言っており、点で凹まして位置を示すのに使用します。
エンドミル フライス盤で回転させる金属を削る歯
タップ 雌ネジを加工する工具
アウトサイド・マイクロメーター 幾つもありますが外径が各々決まっており、小さい径から大きな径で使い分けて正確な寸法を計測します。
デイアルカリパス ノギスでこれは左上の爪で内径を、左下の爪で外径が測れます。
コンパスのようなカリパス 爪先が外を向いているのが内径を測り、円形に内向きが外径を、尖がった爪のものは直線を測ったり、コンパスの様に金属板に円形を描いたりします。
全てを説明すべきでしょうがそこまで詳しくありませんし、専門過ぎて面白くないので止めさせていただきます。
たださすが空母であり、相当な物まで作れて修理可能の範囲が大きかったように見受けられます。

「ミッドウェー」は1線部隊から引退しても練習空母に使用する案もあったようですが1990年6月20日にカタパルトの蒸気パイプが破損、横須賀艦船修理廠で早期に修理し、7月6日作戦航海に出動しましたが、老朽が進んでいると判断されたのか退役を早める一因となったとも言われているそうです。
参照海人社「世界の艦船」No776
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機械化の哲学 (鉄火お嬢)
2018-07-03 07:26:48
エリス中尉 の詳細極まるレポートのお陰で、ほぼ行かずとも全部見た気がするミッドウェイですが、海上自衛隊が近い将来空母を持つにしても、ここまで機械化できるのかなと。新しい護衛艦の厨房を見たり、乗艦の機会があっても、食器洗い機があるかどうか確かめることもなかったのですが、こんど&「いずも」あたりに行ったら聞いてみようと。人がするまでもない事はじゃんじゃん機械化するのが当たり前のアメリカと、W杯のゴミ拾いじゃないですが、艦のペンキ塗りも自分達でが美徳(実は経費節約)の日本ではまさに哲学が違いますが、乗員の確保が逼迫の中で大型艦をさらに増やそうとしたら、あちこち自動化と機械を導入するしかないでしょうね。
しかし家庭の食器洗い機を「換装」って……どんな大掛かりな(笑)
ドリルはですね、マキタ電機の地元出身ですから、ドリルはやっぱり世界のマキタですよ~ww
返信する
呉海自カレーシールラリー (お節介船屋)
2018-07-03 13:00:39
今年で早や5年目
https://www.kaijicurry.com/
>全く同じこのトレイがもらえた記憶がありますが、今もやってるんでしょうか。
このトレイは最初の年の完食賞品でしたが予想外に多くの方が完食され賞品が足りなくなって後日発送で800個を超えたそうです。賞品トレイは最初の1年のみでした。
2年目からお店が増え、昨年は30店舗、シール2枚で缶バッチ、5枚でクリアファイル、10枚でピンバッチ、20枚で記念メダル、30枚でカレー皿でした。
これでも完食された方が多くてカレー皿も後日発送となったようです。
海自カレーを認定され提供される店舗も色々あるようで出入りが結構あり、今年は6月になって29店舗となっているようです。
返信する
HITACHI Super Pair 200RP (20b)
2018-07-05 10:30:06
毎度余計なコメント失礼します。
民間船であっても、私が見た外航船にはワークスペース(工作室)が有り、
壊れた部品やパーツの補修・修正をするそうです。
鬼籍に入った義父は外航船で機関長もしていたので、航海時の作業について
懐かしそうに話していました。
毎度つまらぬ指摘を致します、
HITACHI Super Pair 200RPについて
本機はアルゴン制御装置内蔵交直両用アーク溶接機です。
TIG溶接機と言われる装置で、不活性ガス(シールドガス)にアルゴンを用います。
1980年代頃の製品かもしれません。ヤフオク等で同型機が出品されています。
なお日立は2010年に溶接機生産を終了しています。
ネットで見ると同じ日立産機システム社でNew Pair Seriesという低圧配線用遮断機、
いわゆるブレーカを生産していますね。
これは、分電盤内や電気設備で回路保護行うものです、電子式と機械式の二重保護機能を
実現しているので、New Pairと名付けたのか不明ですが、何故ペアなんでしょう。
というのも製品自体は1個で利用できる物、する筈のもので、2個セット利用では無いと思います。
間違っておりましたら御容赦下さい。それでは。
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